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臍帯とカフェイン

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劇場版 ふとももと明太子

配役2名
性別不問

ーーー
〇:だめ……
●:だめ、じゃないだろ。ここは、嫌がってないように見えるぞ
〇:だ、だめ。まだ海苔を巻かないで…っ
●:おいおい、期待してるんじゃないか、海苔を
●:巻くなんて一言も言ってないぞ
〇:あ…あ…だ、だって
●:正直になれよ、なあ
〇:あ、ああ……だめ……だ、めぇっ……
〇:全然うまく握れないです、大将。
●:本当に不器用だなおまえは。
●:寿司のひとつも碌に握れねぇのか。
〇:す、すいません。で、でもどうしてもシャリがほぐれてしまって……
●:きちんと握れねぇ寿司なんて寿司じゃねえ、わかるか
〇:(好き、のイントネーションで)寿司……じゃない……
●:そうだ、寿司じゃない
〇:私の事……寿司じゃないんですか……
●:ああ、悪いが、そういう風に見ることはできない
〇:ひどい……っ
〇:あんだけ寿司だって、お前が寿司だって、熱く求めてくれたのに……っ
●:…聞き分けのないことを言うんじゃない
〇:嫌よ!!ちゃんと言ってよ!私の目を見て、ちゃんと寿司って言って!
●:…寿司だよ
〇:ほんとに……?
●:ああ、寿司だよ……
〇:……嘘ばっかり
●:…おまえが言えって言ったんだろ
〇:……そうだよ、女の子は誰だって言ってほしいんだよ、ちゃんと
〇:目をみて、お前の事が寿司だ、って
●:……。
〇:……別のこと、考えてるでしょ
●:考えてないよ
〇:うそ、うそばっかり。わかってる。
〇:(奥さん、のイントネーションで)国産でしょ。国産の事考えてたんでしょ。
●:…ちがうよ
〇:私の目を見て
●:……
〇:国産のこと、考えてたでしょ
●:……考えてたよ、ああ!考えてたさ!
〇:ひどい……何よ、何を考えてたのよ、国産の何を考えてたのよ!!!!
●:メバチだよ!!!!!メバチマグロのことだよ!!!!
〇:大将……っ
●:…来る日も来る日も、考えるのは国産のメバチマグロのことばっかりだ
●:でも、お前の事も寿司だと思ってる!寿司だよ、それは間違いない!!
〇:……教えて。
●:……え?
〇:……握り方、教えてよ……。
●:…弟子……。
〇:これが、最後でもいいから……最後に……
●:……わかった。
〇:あっ……
●:後ろから、抱きしめながらが、好き……だったろ
〇:覚えてて、くれたんだ…うれしい
●:……ほら、にぎって
〇:あ……熱い……
●:当然だろ……まだ炊き立てなんだ……
〇:こんなの…はじめて……
●:いつもは、俺が……酢飯にしてるからな……
〇:…いつも、がまんしてくれてたんだ
●:……どうってこと、ないさ
〇:キス……
●:え
〇:大将、キス……
●:な、お、おい
〇:キス、さばいて……?
●:大胆だな……
〇:だって……最後になっちゃうから……
●:……濃厚な、キス、さばいちゃうぞ、いいのか
〇:……うん、して
●:あ…すごい……身がきれいだ
〇:やだ、恥ずかしい
●:もっとちゃんと見せてくれ、さあ、三枚に卸すから
〇:あっ…ああっ、すごい、すごい包丁さばき、キスが卸されてる
〇:中骨も綺麗にはがされてる、すごい…すごい…ああっ
●:ほら、もうこんなに綺麗に卸されてる。ぬらぬらと、身が光ってるぞ
〇:や、やだ、言わないで
●:なんて新鮮なんだ、そのまましゃぶりつきたい
〇:やだ、言わないで、恥ずかしい
●:ほら、よく見るんだ、きらきらと、白く身が、ぷっくりとなっている
〇:い、いや……いじわる……
●:これは天ぷらにしよう、油の準備をしてくれ弟子
〇:合点承知です大将っ!
●:ほら、次はこれだ、わかるな?
〇:あ、だ、だめ、それは……
●:もうこんなに赤くなってる、今にもはじけ飛んでしまいそうだ
〇:いや……そんなんじゃない……
●:そんなんじゃなくないだろう、よく見なさい、こんなにぬらぬらと
〇:い、いやっ……だって……お高いやつだから
●:切れ子でもない、バラ子でもない、一本丸々の……太くて、おおきくて、粒一つ一つがこんなにも大きい……
〇:い、いや、だめ!!あ、あ……
●:ほら、クチに出して言ってみなさい
〇:あ……一本丸々の…太くて、おおきくて、粒の立った……「明太子」
●:そうだ、握ってみなさい
〇:あ…ぷにぷにしてる……すごく、ぷにぷにしてる
●:においは…?においはどうだね……?
〇:…すごく…辛そう……
●:そうだ、「辛子明太子」だからな……子供にはまだ早い、辛くて、しょっぱい
●:酒にもあう、「辛子明太子」だ
〇:だ、だめ!!食欲が、で、でちゃう
●:ほら、もっとよく握るんだ
〇:だ、だめ、つぶれちゃう……
●:膜をとって中身をこの皿に移して、あとで軍艦にするから
〇:はい!大将!
〇:あっ……つ、つぶれた明太子が私のふとももに……
●:馬鹿野郎、もったいねえことをするな
〇:ご、ごめんなさい……
●:なめるんだ
〇:…えっ
●:なめなさい
〇:で、でも……
●:なめられないのか?
〇:だ、だって……そんなこと、したことない
●:はやく、なめなさい
〇:は、はい……(ふとももについてしまった明太子を掬い取り、なめる)
〇:あ……おいしい……
●:食品衛生的にはアウトだからな
〇:じゃあなんで舐めさせたんですか
●:味はどうだった
〇:えっ……
●:どうだったと聞いてるんだよ
〇:……おいしかった、です
●:それだけじゃないだろう
〇:そ、それは……
●:はじめてだったんだろう?
〇:は、はい……
●:ほら
〇:う、うう……しょっぱくて、海産物の……味がしました……
●:明太子だから、そりゃそうだ
〇:じゃあなんで言わせたんですか!!
●:ほら!はやく軍艦の準備をしねぇかい!
〇:う、うまくできないんです……
●:まったく、しょうがないな……ほら、まず銀シャリをひとつかみするんだ
〇:こ、こうですか
●:そうだ、いいぞ、うまいな
〇:あ…く、崩れちゃう………
●:優しく、包み込むように握るんだ…強く握ったら、シャリが固くなる
〇:ほんとだ……すごく、かたい……
●:やさしく、形を整えて……
〇:あ、こ、こうですか
●:やればできるじゃないか
〇:う、うれしい……
●:整ったら、海苔を優しく、このシャリの筋をなぞるように巻くんだ……
〇:筋……
●:筋
〇:筋……
●:筋。
〇:筋どこ……
●:横の部分だよ
〇:こ、ここですか……
●:そうだ、なんていやらしい手つきなんだ、海苔が綺麗にシャリを包んでいる
〇:い、いや、いじわる……
●:ほめてるんだよ、綺麗な巻き方だ……
〇:…寿司
●:えっ
〇:寿司……だから、なんだって、できる……
●:弟子……
〇:わたし、いつまでも、貴方のこと、寿司です……大将……
●:お、おまえ……
〇:……もう終わっちゃう、終わりたくない、もっと、もっと私のこと寿司でいてほしい
〇:いなり寿司も、手巻き寿司も、私なんだって作るよ、ねえ
〇:いや、終わりたくない……
●:……終わらせよう、弟子
〇:いや……っ
●:寿司には、終わりがくるんだよ、弟子
●:寿司は、寿司って言うだけじゃだめだ
●:握って、乗せて、味わって、それをお客さんの前に出してはじめて
●:寿司は寿司になる
〇:……
●:最高の寿司を、二人の寿司を、終わらせるんだ、弟子
〇:……はい
●:さっきの赤く、粒のでかい明太子を、そのお前の軍艦に自分で乗せるんだ
〇:あ…だめ、こわい
●:こわくない、さあ
〇:あ、あ、だめ、(軍艦の乗せるところが)狭くて、うまく、明太子が入らない……
●:大丈夫、ほら、落ち着いて、手を添えながら……
〇:あ……乗った……
●:やればできるじゃねえか、これが明太子軍艦巻きだ
〇:すごい……私、できた……
●:……寿司だよ
〇:………大将………。
〇:私も、大寿司(だいすし)……。
〇:キス……して………。
●:あ、キスのてんぷら作るの忘れてた。
〇:もう!!!大将ぅ!!!

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