バナナチップス。(0:0:2)松尾 タスク:▶マツオ タスク。男性。思いつきで今回の徒歩旅行を始めた。 遼太郎が何かに悩んでいる事に薄々気づいている。 楽観的。(BLがテーマになっていますが、口調などを変更しGLとしても構いません)性別変更を許可します。その場合名前を「松尾 カナ」とします。 業平 遼太郎:▶ナリヒラ リョウタロウ。男性。タスクに巻き込まれ徒歩旅行に付き合う。 タスクが何かに悩んでいる事に薄々気づいている。 慎重派。(BLがテーマになっていますが、口調などを変更しGLとしても構いません)性別変更を許可します。その場合名前を「業平 アリス」とします。◆◆◆◆本編( 息を切らしながら歩く二人 )( 砂利道を歩く音が響く )業平:こんなことに、なるってわかってたなら、初めからお前にはついてこなかったよ!松尾:そんなこと言っても、しかたないだろ、旅にトラブルは、つきものなんだから。業平:だからって!荷物全部!無くす奴があるかよ!松尾:だってまさか、バックパックを、鷹が持ち去るなんて事象が起きるなんて、思わないだろって!業平:リスクヘッジしろよ!そういう!ところも!松尾:できるかよ!業平:お前のそういうところ、まじで、好きじゃ無い!松尾:あー!そうですか!そうですか!( 歩く音が止まる )業平:おい、止まるなって。 追いかけないと見失っちゃうだろ。松尾:もう大分前から見失ってるよ、こんな夜道で鷹が見えるわけないじゃん。業平:それはそうだけど・・・。松尾:いいよ、どうせ大した物入ってないし。業平:なら最初からそう言えよ。松尾:大した物じゃないけど、一応大事なものは入ってたんだよ。業平:なら追いかけないとだめだろ、止まるなよ。松尾:あー!もう!いいんだよ!うるさいな!業平:お前が意味分かんないこと言ってるからだろ。松尾:遼太郎からしたら大した物じゃ無いけど、俺はちょっと大事かなって思ってたものなんだよ!業平:もう訳わからん、お前がひとりで無くして、おまえがひとりでワーワー言ってんじゃん。松尾:……もういい。どうせ俺がひとりで騒いでるだけだよ。( 松尾、歩きはじめる )業平:あ、おい、タスク! 行くのか行かないのかどっちなんだよ結局!松尾:俺一人で探してくるから遼太郎は来なくて良い!業平:……はあ、なんだよ、あいつ。( 松尾の足音が遠ざかる )<< 回想 >>業平:卒業旅行?松尾:そう、就職が無事決まった二人を祝してさ、どう?業平:どう?も何も……。松尾:だめ?業平:そんなの最高じゃん!松尾:よっしゃ!流石遼太郎、わかってる!業平:就職したらお互いなかなか逢えなくなるかもしれないしな。松尾:……そうだよなぁ。業平:なに?なんかさみしそうじゃん。松尾:さみしいよ。業平:あら素直。松尾:さみしいよ、そりゃ。業平:……そんな、二度と会えなくなるとかじゃないんだから。松尾:それでもさみしいよ。業平:……まあ、そうな、今までみたいに馬鹿したりできなくなるのはちょっとさみしいよな。松尾:うん。業平:じゃあ、その分、大学生活の集大成ってことで、なんか社会人じゃ絶対できないようなこと、したいよな。松尾:社会人じゃ絶対できないこと?業平:そ。会社勤めし始めたらできないような、壮大で、馬鹿げてる……松尾:冒険みたいな?業平:お、いいじゃん、冒険。なんからしくなってきた。松尾:……じゃあさ、ちょっと、いっこ提案あるんだけど。業平:お、何?松尾:「おくの細道」って、知ってる?業平:あー、「月日は百代(ひゃくだい)の過客(かきゃく)にして、行きかふ年も又、旅人也(たびびとなり)」ってやつ?松尾:なにそれ?業平:いやお前が言い始めたんだろうが。松尾:俺詳しくない。業平:なんだよ。松尾:遼太郎ってやっぱ頭良いね。業平:褒めても何も出ない。松尾:出ないか。業平:で? 松尾芭蕉だろ? それがどうしたって?松尾:俺、名字が「松尾」だろ? だから、よく小さい時にさ 「おくの細道」とか「俳句読んでみろよ」とか言われてからかわれたんだよね。業平:あー、なんかあるよな、そういういじり。松尾:でもさ、なんか、それがあるから他人には思えなくってさ。業平:実際名字が同じなら遠い親戚って可能性は大いにあるしな。松尾:だから、こう、やってみたいんだ、俺も。業平:おくの細道を?松尾:うん。名所を巡りながら、俳句を詠んで、戻ってくるってやつ。徒歩で。業平:徒歩で!?◆◆◆◆場面:<< 隅田川 >>松尾:くさ……業平:くさ?松尾:「草の戸も」……「住み替わる」……「すみかわるだいぞ?」業平:「すみかわるよぞ」な。松尾:あ、よぞ、か。 すみかわるよぞ、雛の家。業平:意味わかってる?松尾:全然わかんない。業平:この「雛の家」ってのはひな人形の箱の事を言ってんだよ。 芭蕉が旅に出る時に今まで住んでた家を売り払って この家も、いつか他の人が住み着いてひな人形を飾ったりすることもあるだろうって 意気込みや、別れや、人との繋がりを詠んだ俳句だよ。松尾:遼太郎ってまじで頭いいね?業平:お前が「おくの細道したい」とか言うから必死こいて勉強してきたんだろうが。松尾:ありがとうございます。業平:まあ、ここがね、スタート地点となるわけだけど。松尾:だね。ここからが旅の始まり。業平:それ俺が言ったこと言い換えただけだろ。松尾:いいじゃん、そういうのもさ。業平:……まぁ、だな。さて、タスク。松尾:何?業平:一句詠んでくれ。松尾:え?業平:これはただの旅じゃ無い、「おくの細道」なんだろ? だったらやっぱり俳句は詠まないと。松尾:え、あ、そうか、そうだよな、やべえ、全然考えてなかった。業平:考えなくていいんだよ、こういうのは、用意してたら意味ないだろ。松尾:そっか、芭蕉もその場で思った事を俳句にしてたんだもんね。業平:まあ、一つ違うとしたら俺達に俳句の才能が無いって事くらいかな。松尾:はははは、じゃあなんでこんな事しはじめたんだろうね。業平:お前がやりたいって言い始めたんだよ、ばーか。松尾:あはは、そうだった。 んー、じゃあ、そうだな。業平:俳句ってわかってるか?松尾:わかってるよ失礼だな、57577でなんか言葉を当てはめればいいんだろ?業平:ばか、それだと短歌だ。575、合計17文字で詠むんだよ。 それでいて、季語も含める、と。松尾:わ、わかってらい! 今のはボケたんだよ!業平:怪しいな。松尾:……整いました!業平:はい、どうぞ。松尾:「草の友! 隅田川から 出発だ!」業平:なんだよ草の友って。季語どれ。ってか俳句じゃなくて川柳だろそれじゃ。松尾:こまけぇ事はいいんだよ! ほら、出発出発!!!業平:先が思いやられるぞこれは。◆◆◆◆<< 回想 終了 >>( 砂利道を歩く音が続く )松尾:……なんで着いてくんの、遼太郎。業平:そりゃついていくだろ、夜道だし。危ないじゃん。松尾:子供じゃないんだから、危ない事なんてないよ。業平:子供じゃないとか、関係ないだろって。松尾:……ねえ、なんで怒ってんの、ずっと。業平:は? いや、怒ってんのタスクだろ?松尾:怒ってないよ、別に。業平:怒ってるじゃん。松尾:怒ってない。業平:いやいやいや、ずっと勝手にひとりで怒ってるのお前だって。松尾:ずーっと、朝からずーっと怒ってるじゃん、遼太郎。業平:は?松尾:光明寺越えた辺りからずっとむすーっとしててさ。業平:……別に、怒ってたんじゃないよ。松尾:じゃあなんなんだよ。業平:なんでもないって。松尾:……。業平:なんだよ。松尾:いや、こっちのセリフなんだけど。業平:なんでもないって。松尾:なんでもなくない感じがするから聞いてんじゃん。業平:でもなんでもないって言ってんだろ。松尾:はー!!!!面倒くさ。ほんと、そういう所だよ、そういう所!業平:言ってもしょうが無いことだってあるだろ。松尾:は?え?何それ。業平:そのままの意味だけど。松尾:ほんっとさ、何?言ってもわからないってこと?馬鹿にしてる?業平:そうじゃない。松尾:そうじゃなくないだろ!もういい!先行く!業平:さっきから先行っちゃってるのお前のほうだから!松尾:うるさいな!業平:……待てって。松尾:やだ、知らない。業平:悪かったよ。松尾:悪かったよじゃわかんない。業平:……ごめんて。松尾:……何怒ってたの。業平:怒ってたんじゃないよ。松尾:じゃあ、何?業平:……悩んでたというか。松尾:……悩んでたんだ。業平:……うん。松尾:それって、俺にも言えない話?業平:……言いづらい、とは、思ってる。松尾:なんで?業平:んー、言わなきゃだめか?全部。松尾:……そうじゃ、無いけど。業平:……わかってる、もやっとするよな、そんなんだと。松尾:……うん。業平:……タスクさ。松尾:何?業平:なんで、こんなん始めたの?松尾:こんなんって?業平:おくの細道。松尾:それは、だってなかなか会えなくなるかもって言ったのは遼太郎だし……。業平:……それはそうだけどさ。松尾:……なんだよ?業平:舐めんなよな。松尾:な、なにがよ。業平:俺の事舐めてるだろ?松尾:だから、何がだって。業平:お前のわかり手ナンバーワンと言っても過言ではないんだぞ、俺は。松尾:なんだよそれ?業平:「らしくない」って言ってんのよ、俺は。松尾:らしくないって、なんだよ、それ。業平:いつも突拍子もなく、何かを突然始める楽天家のタスクが考えそうな事ではあるよ、正直。松尾:なんか腑に落ちないけど、じゃあ「らしくない」訳なくない?業平:いいや、俺にはわかる。松尾:だから、何がよ。業平:お前は社会人になったって多分無茶な遊びを誘ってくる。松尾:……それ、馬鹿にしてる?業平:それがタスクの良さだよ、松尾タスクの良さ。松尾:褒められてんの?業平:そういうタスクが「好き」だからね、俺は。松尾:そんなこと言われるとなんか照れるんだけど。業平:だから、なんか、「らしくない」よ。すごく。松尾:……そんなこと、ないっしょ。業平:あるね。松尾:なんで断言できんの?業平:俺がお前を一番理解してるから。松尾:……なんだよ、それ。業平:お前自身より、お前の事理解してるまである。松尾:やっぱ遠回しに馬鹿にしてない?俺の事。業平:してない。松尾:……なんかずるい。業平:なにが?松尾:俺は遼太郎の事よくわかんない。業平:いいよ、わかんなくても。松尾:やだ、なんかずるいじゃんそれ。業平:ずるくない。松尾:ずるいよ。俺は遼太郎が何で悩んでるのかよくわからない。業平:……わかんなくても、いいんだよ、それは。松尾:よくないでしょ。業平:いいんだよ。松尾:そういう所だよ。いつもなんかすかしちゃってさ。業平:すかしてるか?松尾:すかしてるよ、俺は平気みたいななんかクールぶってて。業平:慎重なだけだよ。松尾:いいや、そういうんじゃない!業平:そういうんだって。松尾:俺だって遼太郎のことよくわかっていたいんだよ!業平:……。松尾:……なんかずっと、遼太郎が時々遠い目をするっていうか。 なんか、悲しそうにしてるの気づいてるよ。業平:……そっか。松尾:でも、俺にはそれの原因がわかんない。業平:うん。松尾:わかりたいよ、俺だって。遼太郎みたいに。業平:やっぱ悩んでるんだろ?タスク。松尾:俺の話は今はいいよ!業平:よくないよ。松尾:ああもう!業平:……ごめんな。松尾:……なんで謝んの。業平:なんとなく。松尾:……外れるかもしんないけど、言っていい?業平:……なにが?松尾:就職、したく無いんじゃないの。業平:……なんで?松尾:当たってる?業平:……。松尾:当たった?業平:……当たった。松尾:俺、遼太郎の事、理解できてた?業平:……かもしんない。松尾:……よっしゃ。業平:なんで、わかったの?松尾:んー、本当は、夢が諦め切れてないんじゃないかなーって。 ずっとやりたがってた、パティシエの夢。業平:覚えてたんだ。松尾:まあね。前にさ、スイパラ行ったときになんか苦々しい顔してたじゃん。業平:うん。松尾:多分、味の事とか、ケーキの事考えてんだろうなって思ったからさ。業平:……よく見てんね。松尾:そりゃね、知りたいもん、遼太郎のこと、ちゃんと。業平:わかんないって言ってたのに。松尾:わかんないよ、そりゃ、いつまで経ってもわかんない。遼太郎のことは。業平:……せっかく、頑張って就活してさ、タスクにも手伝ってもらって、いい会社の内定もらってさ。松尾:大手出版ね、すごいよ、ほんと。業平:そんな状態でさ、今更やっぱり夢を追いたいなんて、言えないじゃん。松尾:なんで。言ったらいいじゃん。業平:言えないだろ。松尾:言えば良いじゃんって。業平:日本から離れないといけなくなる。松尾:留学?業平:……うん。松尾:行けばいいじゃん。業平:簡単に言うなよ。松尾:なんで、やりたい事なんだろ?業平:そうだけど……松尾:じゃあ、やりなよ、絶対やったほうがいい。業平:簡単に会えなくなるんだぞ?松尾:わかってるよ。業平:じゃあなんでそんなこと言うんだよ。松尾:なにが?業平:寂しくないの?松尾:寂しいよ。業平:は?松尾:死んじゃいそうな程寂しいよ。業平:じゃあなんで松尾:でも、それ以上に遼太郎の事が大事だもん。業平:……言ってて恥ずかしくないの?松尾:恥ずかしいよ。業平:何お前。松尾:でも言わなきゃって思った。業平:……何、お前。松尾:後悔して欲しくないんだよ、遼太郎に。 ずっと楽しい人生であってほしい。 いつまでも幸せで居て欲しいし、ずっと自分の人生を誇ってて欲しい。業平:……恥ずかしいよ、お前それ。松尾:恥ずかしいよ?業平:何お前。松尾:しょうがないじゃん、好きなんだもん。業平:……なに?なんて?松尾:好きなんだよ、遼太郎のこと。業平:なにが?松尾:好きなの。何度も言わせないで。業平:いや、ごめん、よくわかってない。松尾:好きなんだよ、恋愛的な意味で。業平:……恋愛的な意味で?松尾:恋愛的な意味で。業平:……いつから?松尾:ずっと。業平:ずっとって?松尾:小学生の頃から。業平:……知らなかったんだけど。松尾:そりゃ、内緒にしてたもん。業平:え、は?松尾:好きで好きで、死ぬほど好きなんだよ、俺。業平:いや、ちょ、ちょっと、待って。顔赤くなってきた。松尾:ごめんね。業平:なんで謝んの?松尾:だって、気持ち悪いじゃん、こんなの。業平:……気持ち悪いとは、思ってないよ。多分。松尾:……そう?業平:……うん。松尾:……言っちゃった。業平:……なんで、言ったん?松尾:だって、今しかないと思ったから。業平:いや、それは、うん、そう、か。松尾:……好きだからさ、幸せになって欲しいんだよ、遼太郎には。業平:……。松尾:俺と結ばれたりとか、そういう、なんていうのかな……。 無理なのは、わかってるんだ。 遼太郎、橋本環奈好きだし。 (女性で演じる際には横浜流星)業平:橋本環奈、好き……松尾:可愛いよね、橋本環奈。業平:うん……松尾:いいんだ、好きなだけで居させて欲しいけど。業平:……。松尾:誰よりも、幸せで居て欲しいんだよ、遼太郎には。業平:タスク……。松尾:だから、行きなよ、留学。パティシエの。業平:……。松尾:遅くないよ、今からだって。誰が否定したって、俺は遼太郎の味方だし。業平:……なあ。松尾:なに?業平:もうさ、やめようぜ。松尾:……え。業平:やめよ。全部。松尾:……ごめん、やっぱ、気持ち悪いよね、俺。業平:そうじゃなくて、この、「おくの細道」松尾:え?業平:つまんねえよ、やっぱこれ、よくわかんないし。松尾:つまんないって業平:わかんねえもん、俳句。なんか歩いてるだけで、鷹に荷物も持ってかれるし。松尾:それは、そう、だけど業平:それに松尾:それに?業平:俺達こんなことしてる場合じゃないと思う。松尾:え?業平:俺、もっとちゃんとタスクと話したい。松尾:……遼太郎。業平:もっと、もっともっと話したいよ、ちゃんと。全然、知らない事ばかりだ。 知ってるつもりで、知らない事ばかりだった。 しばらく会えなくなるなら、それこそ、もっとちゃんと話したい。松尾:……会って、くれんの?業平:当たり前だろ。松尾:留学しても、また、会ってくれんの?業平:会いたくないの?松尾:会いたい。業平:俺も会いたいよ。松尾:俺、気持ち悪くないの?業平:それはわかんない。松尾:うん。業平:でも、会いたいよ。松尾:……うん。業平:帰ろうぜ。松尾:……そうだね。業平:で、もっと話そう、俺たち。松尾:うん。業平:なんで好きになってくれたかとかさ。松尾:うん。話したい。業平:うん、聞きたい。松尾:……一句、読んでもいい?最後に。業平:懲りないじゃん。松尾:一応、「おくの細道」だから。業平:いいよ、聞いてやる。松尾:「川上と、この川しもや、月の友」業平:……お前、それ、芭蕉のやつじゃん。松尾:うん。業平:勉強したんだ?松尾:うん、これだけ。業平:……やるじゃん。松尾:……へへ、さんきゅ。(遠くを見つめながら業平)業平:……なあ、タスク松尾:うん?業平:お前のリュックってさ、赤色のアディダスのやつだっけ。松尾:うん、そう。ピーポくんの蛍光板ついてるやつ。業平:趣味悪。松尾:なんでよ、かわいいでしょ、ピーポくん。業平:あれじゃね?松尾:あれって?業平:ほら、あれ、あそこに落ちてるやつ。松尾:……あー!!!!そう!あれだ!あれだよ!!!!業平:中身無事かどうか見てみようぜ。松尾:見る!見てみる!!!(リュックに近づく2人、足跡は軽い)業平:どう?松尾:無事だったー!!!!!業平:お、よかったじゃん。松尾:はー、よかった、安心した。業平:何が入ってたの?松尾:んっとね、「バナナチップス」業平:……だけ?松尾:うん、そうだよ?業平:なんで「バナナチップス」よ。松尾:芭蕉って名前、バナナから来てるらしいよ業平:……それで?松尾:旅の終わりにさ、バナナチップスを食べて、芭蕉を感じるっていう締め方がしたくて!業平:……おまえさあ松尾:なに?業平:そういう所、「ほんっと好きだわ」。fin2025.08.14 10:51
大正浪漫なんて認めないでござる(0:0:2)【あらすじ】時は大正。浅草六区にあるカフェー「天国」にて。1人の侍と、1人のモダンボーイが言い争っている。彼らの前には一杯のシャンペンサイダーと珈琲。「大正浪漫なんて、認めないでござる!」時代に取り残された侍の言葉が店内に響く。2025.06.29 13:39
朗読詩『宇宙鯨の捨て方』喪ったものの数のかぞえかただけ、上手くなっていく日々だ。爪弾き、転がったそれらを指折り数えては、失せ物に涙することを人生と呼び始めた。何をどれだけの数、どんな形で、どれほどの価値があったのか。どんな色で、どんな形で、それを得る為に何を払ったのか。それを繰り返し、かぞえることだけ、うまくなっていく。「目に見えないものすらも、自分のものであるかのように錯覚していたんだね、アーチヒェン。」いつかの、消えたはずの幻は僕に語りかける。そこには、プレイリストから消したはずの愛の歌が流れていて。かつて、酷く愛したあの人からの言葉すら思い出すかのようで。それは、ほんの少し、煩わしいとさえ思った。「いい加減、消えてくれないか、パンディロラム。」「いい加減、忘れさせてくれないか、パンディロラム。」憂鬱な夜につけた名前を、僕は何度も呼ぶ。呼び続ける。喪って、捨て去って、自分の物ではなくなったそれらすべてを本当は愛したかったのに、本当はいつまでも、愛したかったのに。その手で握るのが痛くなった、だから、捨てたのだとごまかして。「自分の手に在る物なんて、そんなもの存在しないんだよ。アーチヒェン。」「握れば握っただけ、その手の砂は流れていく。」「置くだけなのさ、ようは共にあるということ。」「自分の物になるものなんて、自分以外に有り得ないのだから。」ぷかぷかと浮かぶ、いつかの星座の形をもう思い出せない。文字を綴るその背中と、機嫌の良いときに聞こえてくる鼻歌が好きだった。うまく出来たと言って、少しこげたクッキーを口にねじ込む強引さが好きだった。夜眠るときの、腕に残る重みが好きだった。失い続けて、からっぽになったと思ったこの気持ちは、ただのわがままなんだ。「わかってはいるんだよ、パンディロラム。」「僕の物になることなんて、何一つない。そこには、何もない。」「きっとこれは、大きな我が儘で、きっとこれは、愚かな妄想で。」「でも、でもどうしたって。」温もりを手にしていた。し続けていたい。握り返せば、微笑んでくれる夜が欲しい。抱き寄せては、溶けてしまいそうになる、熱くほどけるような言葉が欲しい。僕だけの、僕だけの星空を願ってしまう。僕にしか解明できない、未知の宇宙が欲しい。誰も見たことのないような、特別で、特別な、愛の集合体を。まるで実験を重ねるみたいに、この机の上に拡げていたい。拡げ続けていたい。そして、その机に突っ伏しながらこの愛はここにあるのだと安堵を吐きこぼして、そのまま眠りにつきたい。そうやって、そうやって、この夜を越えたい。越えてしまいたい。「そう願うのが、悪い事なのかな、パンディロラム。」見上げる度に、その遠さに頭が痛くなるほどの絶望がそこにある。届きはしない。その速度にも、その高さにも、届きはしない。きっとこの感情は、この思いは、この寂しさは、「宇宙くじら」と何ら変わりない、あって存在しないもの、なくて存在するもので。有る事を確かめる度に、無い事を認める度に。大きく、巨大で、推し測れないほどの空蝉(うつせみ)が、そこにあって、そこにないのだ。「そこにあったから、愛は痛むし、そこには無いから、愛はいつだってどこにでもある。」パンディロラムの消え入りそうな声が、何度もこの部屋に響いている。形を成さず、見えないそれが、欲しくて欲しくてたまらないのだ。僕たちは、そんな目に見えないものを、見える形で欲しくなってしまう。「自分の手に在る物なんて、そんなもの存在しないんだよ。アーチヒェン。」「握れば握っただけ、その手の砂は流れていく。」「置くだけなのさ、ようは共にあるということ。」「自分の物になるものなんて、自分以外に有り得ないのだから。」じゃあ、このからだは、この気持ちは、この心は、この苦しさも、この悲しさも。すべてが、僕のものなのだとしたら。どうやって、この苦しさを失くしていけばいいのか。「わからないよ、パンディロラム。」「どうやって、この宇宙くじらを捨てていけばいいのか。」「何を拾い集めていけばいいのか。」淡く、彗星のしっぽのように消え入りそうなパンディロラムは、常夜灯の明るさに溶けてしまいそうだ。棄てる事も、拾う事も、なんて難しいんだろう。何かを手にしたことなんて、きっと本当は無いのに。真空の中を泳いでは、クロールした。星屑も、やわらかな砂も、きっとどうだっていいんだ本当は。浮かんでいる、数々の言葉の上に浮かんでいる。いつか、それが分かる日がくるのか。ずっと考え続ける日々だ。そうやって、そうやって。また、喪ったものの数のかぞえかただけ、上手くなっていく。2025.04.22 06:43
本当に3分で帰るとは思わないじゃん(0:2:0)【配役】◆ファイトピンク: 合コンに誘った方。3分間巨大化系ヒーローとの合コンを設定したはいいが・・・ こう見えて軍事マニア。現実主義。合理的。◆マジョリージョ: 合コンに誘われた方。3分間巨大化系ヒーローとの合コンを楽しみにしていたが・・・ 脱!オタサーの姫。最近アクシーズファムで服を買うのをやめた。2025.04.20 20:06
ミッドナイトにまた逢おう(0:2:1)【配役】夏海:真淵 夏海(まぶち なつみ) 鹿骨町を離れ、離島で小学校の教師をしている。 女性。朱里:落合 朱里(おちあい あかり) 鹿骨町でバレエスクールのコーチをしている。 女性。DJ:ミッドナイトウィスパーのパーソナリティ。 性別不問。2025.04.18 12:28
「臍帯とカフェイン」方針変更のお知らせいつも台本/イラスト/シチュエーション掲載サイト「臍帯とカフェイン」をご利用いただきまことにありがとうございます。令和7年4月1日という日付を持ちまして、今後の「臍帯とカフェイン」の新しい方針に関して皆さまにご報告があり、筆を取らせて頂きました。ボイコネという声劇配信アプリが始まってから私、「にょすけ」の声劇シナリオライターとしての人生ははじまりました。月日にして、約5年。短いと言うべきなのか、長いと言うべきなのか。私の創作継続年数の中では、全力で取り組めた5年間である事は間違いないと感じております。それもすべて、キャストの皆々様、読者の皆々様。そして、何より「にょすけ」というクリエイターを推して頂いてるファンの皆様の力のおかげです。楽しかった。この5年間。本当に楽しかったです。その為、このような決断をするのが大変心苦しく思います。ですが、これも節目の時。いつまでも過去に縛られてはいけないと、そう思いました。以下、今後の「臍帯とカフェイン」新運営方針に関してを説明させて頂きます。2025.03.31 22:11
沖田メンタるクリニック ラグナロク編(0:0:2)【配役】◆沖田:うだつの上がらない精神科医。実に数年ぶりの出番でもはやどんなキャラだったか自分でもよくわからなくなっている。◆ゼウス:全知全能の神、ゼウス。のじゃろりでもいいし、おじいちゃんでもいい。何故ならゼウスとは全知全能だから。全知全能すぎてなんでもできるから。なんにでもなることができてしまうから。そうすべてはえっちのためなら。2025.03.31 15:00
朗読詩「オノマトピア」ざわわと、海が鳴る事は地球が三回転半しても難しいことだろうけれどすきだと、僕が声を出すことは地球が三回転半するまでに何万回言えることか。ぱたりと、本が倒れることは風のいたずらだったりするだろうけどばったり、君と出会うことは神様だのそんな類のいたずらなんかじゃなくて僕がそう、願っていたからだと信じたい。もっと、君にすきだって言えばよかったのにな今、しゅびびんと駅へ向かう。2025.03.19 07:32
朗読詩「山田くんの」山田くん家の猫は、いつも くーすか寝ている。山田くんが帰ってくる タイミングが彼には お見通しらしくて山田くんが帰ってくる十分前になるとごはん (ほら、あのカリカリしたやつ) の前で一回だけ、「みゃあ」と 鳴く山田くんが帰ってきた後にはいつもの ひざの上でごろごろと 喉を鳴らしながら二回ほど、「みゃあ」と 鳴く一度だけ 家出をしたことがあるらしいけれど山田くんが 名前を呼ぶとどこからともなく 甘えた声で一回だけ、「みゃあ」と鳴いたらしい三回鳴く姿を 誰もみたことがないのだけれど山田くんいわく「乙女にしか、わからない」とのことなのだが乙女の私でも わからないのだなあ、みーちゃんきみ、私のこときらいなのかい?「みゃあ。」2025.03.19 07:29
朗読詩「白昼夢」流れてしまつた雲を追いかけて防波堤を越えた、二人だけの流星を掴み散りばめたあとの笑顔を見ましたらそれはもう、美しいとしかいい様のないほどにふたりの時間は流れていつたのでした。ぎいこぎいこと鳴くペダルを漕いで悠久の海を渡つてゆきますアスハルトの熱さに嫌気がさしたふたり逃げ出したのです蒼空は笑つているように思えましたふたりは、笑つています今までの些細な悪戯を数えながらペダルを漕ぐ足は速さを増し(とまつてしまう事は、優しさの延長であるかのように)今までの些細な悪戯を数えながらペダルを漕ぐ足は速さを増すのですあなたは、きようの事を話しながら制服のぼたんを外してゆき(手を振つているひとが見えます)(くやんとした顔をハンケチで拭い)(ふたりに手を振つているのです)今わたしも第一ぼたんに手をかけ制服を脱ごうとしていますあなたはそれを笑つてまたペダルを勢いよく漕いでいつたのです軌跡を儚げに残しながら。(とまつてしまう事は、優しさの延長であるかのように)2025.03.19 07:24
朗読詩「ゲル状」昨日までやわらかかった祖母の手には取り返しのつかない岩石が生えてしまった気味悪がる僕をよそにつうんとした口調でおこづかいをあげるなんて言い出したから僕は* *人間らしい動きをする人間が野菜らしい彩りの野菜を手に取り動物的にそれをくちに運ぶフロアではラルクアンシエルが流れている動物的にそれをくちに運ぶ* * *さざ波のような人だと貴方は言った数え切れないほどあたしを抱いたあとにマルボロを焚きながら言った言い放ってしまったあとまたあたしを抱いたひげが少し痛い。* * * *十八歳の夏に大抵の蝉は恋に落ちる落ちた後はダンプカーに轢かれるまたそれを繰り返すがやめる気はさらさら無い* * * あなたはまたあたしを抱いた五年遡った手紙と一緒にあたしを抱いた文字が淫乱に泳ぎ始めてあたしはまた鳩のように鳴いた落ちたわけじゃない動物的にそれをくちに運ぶ。* *後ろから突かれるたびに背中には灼熱が産まれてそれが少しずつ私を溶かし残った私は貴方のことばかり想っていた想わずには居られなかった。* **からっぽに、からっぽを注ぐとからっぽなの?*それは貰えないと断りながらも僕の目は岩石が持つその札束に目が眩んだしかしその後岩石から暖かい液体が流れている事に気づき僕は口を塞ぐ* * *あなたにまだ知っていて欲しいことがあったのあたしとてもとても人間だったのよって事。*ぬめりとした其れはかつての祖母の抜け殻を脱して今まさににんげんになろうとしている*明日には、脚が生えて世界中の写真を撮るのだとあぶくを出している。2025.03.19 07:23
朗読詩「雷雨」横たわれライオンお前は長く走りすぎた渇ききれないお前が瞳に写すのは限りない緑と求めていたはずの青だろうなあ 次第に灰色になるお前を私は少しだけ強く覆うよまだ腐らないお前を、 横たわれライオンお前は長く走りすぎた吠えたあとのあのびりびりとした振動はまだお前の周りにある渇ききれないお前の為に私は涙を流そうお前に強く打ち付けよう 横たわれライオンお前は最後まで走りすぎた2025.03.19 07:21