朗読詩「オノマトピア」ざわわと、海が鳴る事は地球が三回転半しても難しいことだろうけれどすきだと、僕が声を出すことは地球が三回転半するまでに何万回言えることか。ぱたりと、本が倒れることは風のいたずらだったりするだろうけどばったり、君と出会うことは神様だのそんな類のいたずらなんかじゃなくて僕がそう、願っていたからだと信じたい。もっと、君にすきだって言えばよかったのにな今、しゅびびんと駅へ向かう。2025.03.19 07:32
朗読詩「山田くんの」山田くん家の猫は、いつも くーすか寝ている。山田くんが帰ってくる タイミングが彼には お見通しらしくて山田くんが帰ってくる十分前になるとごはん (ほら、あのカリカリしたやつ) の前で一回だけ、「みゃあ」と 鳴く山田くんが帰ってきた後にはいつもの ひざの上でごろごろと 喉を鳴らしながら二回ほど、「みゃあ」と 鳴く一度だけ 家出をしたことがあるらしいけれど山田くんが 名前を呼ぶとどこからともなく 甘えた声で一回だけ、「みゃあ」と鳴いたらしい三回鳴く姿を 誰もみたことがないのだけれど山田くんいわく「乙女にしか、わからない」とのことなのだが乙女の私でも わからないのだなあ、みーちゃんきみ、私のこときらいなのかい?「みゃあ。」2025.03.19 07:29
朗読詩「白昼夢」流れてしまつた雲を追いかけて防波堤を越えた、二人だけの流星を掴み散りばめたあとの笑顔を見ましたらそれはもう、美しいとしかいい様のないほどにふたりの時間は流れていつたのでした。ぎいこぎいこと鳴くペダルを漕いで悠久の海を渡つてゆきますアスハルトの熱さに嫌気がさしたふたり逃げ出したのです蒼空は笑つているように思えましたふたりは、笑つています今までの些細な悪戯を数えながらペダルを漕ぐ足は速さを増し(とまつてしまう事は、優しさの延長であるかのように)今までの些細な悪戯を数えながらペダルを漕ぐ足は速さを増すのですあなたは、きようの事を話しながら制服のぼたんを外してゆき(手を振つているひとが見えます)(くやんとした顔をハンケチで拭い)(ふたりに手を振つているのです)今わたしも第一ぼたんに手をかけ制服を脱ごうとしていますあなたはそれを笑つてまたペダルを勢いよく漕いでいつたのです軌跡を儚げに残しながら。(とまつてしまう事は、優しさの延長であるかのように)2025.03.19 07:24
朗読詩「ゲル状」昨日までやわらかかった祖母の手には取り返しのつかない岩石が生えてしまった気味悪がる僕をよそにつうんとした口調でおこづかいをあげるなんて言い出したから僕は* *人間らしい動きをする人間が野菜らしい彩りの野菜を手に取り動物的にそれをくちに運ぶフロアではラルクアンシエルが流れている動物的にそれをくちに運ぶ* * *さざ波のような人だと貴方は言った数え切れないほどあたしを抱いたあとにマルボロを焚きながら言った言い放ってしまったあとまたあたしを抱いたひげが少し痛い。* * * *十八歳の夏に大抵の蝉は恋に落ちる落ちた後はダンプカーに轢かれるまたそれを繰り返すがやめる気はさらさら無い* * * あなたはまたあたしを抱いた五年遡った手紙と一緒にあたしを抱いた文字が淫乱に泳ぎ始めてあたしはまた鳩のように鳴いた落ちたわけじゃない動物的にそれをくちに運ぶ。* *後ろから突かれるたびに背中には灼熱が産まれてそれが少しずつ私を溶かし残った私は貴方のことばかり想っていた想わずには居られなかった。* **からっぽに、からっぽを注ぐとからっぽなの?*それは貰えないと断りながらも僕の目は岩石が持つその札束に目が眩んだしかしその後岩石から暖かい液体が流れている事に気づき僕は口を塞ぐ* * *あなたにまだ知っていて欲しいことがあったのあたしとてもとても人間だったのよって事。*ぬめりとした其れはかつての祖母の抜け殻を脱して今まさににんげんになろうとしている*明日には、脚が生えて世界中の写真を撮るのだとあぶくを出している。2025.03.19 07:23
朗読詩「雷雨」横たわれライオンお前は長く走りすぎた渇ききれないお前が瞳に写すのは限りない緑と求めていたはずの青だろうなあ 次第に灰色になるお前を私は少しだけ強く覆うよまだ腐らないお前を、 横たわれライオンお前は長く走りすぎた吠えたあとのあのびりびりとした振動はまだお前の周りにある渇ききれないお前の為に私は涙を流そうお前に強く打ち付けよう 横たわれライオンお前は最後まで走りすぎた2025.03.19 07:21
朗読詩「はじめへ」なあ、はじめ。知ってるか。お前がずいぶん毛嫌いしている、チンピラの田口は将来お前なんかより良い父親になるんだそれはもう驚くほど家族思いの良い父親だだが相変わらずお前は彼と馴染めないなぜって、お前の嫉妬心に屈するほどやつは弱くないしお前もお前で、実は案外どうでもいいからだ。なあ、はじめ。知ってるか。お前が大好きだったあのバンドは、メンバーの覚醒剤所持でもう解散したよ相変わらず良い歌だけど。なあ、はじめ。知ってるか。お前の住んでいたあの下町は、ついに開発が進んであのやたら開かない踏切も今じゃコンクリの高架下だもう二度と開くことはないってさ町はすっかり綺麗になって老人や障害者が住みやすい良い町になったよでももう赤い電車は見えない見えないんだ。なあ、はじめ。知ってるか。お前が付き合ってるその、香水のきつい女だがお前が仕事を首になった翌日に通帳と印鑑を持って逃げるぞそのあとお前は近所のジョナサンでしばらく途方に暮れるがそこの今、コップを盛大に割った女を忘れるなそいつが将来のお前の嫁だ。なあ、はじめ。知ってるか。専門を中退してからも、良くしてくれたゆきちゃんを覚えてるかいますぐ彼女にお前の精一杯を捧げろお前ができるすべてをしろ二○○九年の夏に本当に唐突にしんでしまうからそして、お前は彼女の通夜にいけなかったことをしぬまで後悔することになるコールドプレイなんて聴くたびになみだがとまらなくなるんだ。なあ、はじめ。知ってるか。お前の柿アレルギーは一生治らないだからお前はもう二度と柿を口にすることはないだからたまには婆ちゃんに顔を見せてやれお前がまだ柿が好きだと思って毎年送ってくれてたのにもう今じゃお前の事なんて一ミリも覚えちゃいないんだから。なあ、はじめ。知ってるか。そのホームでは年間三十人が飛び降り自殺をするそうだそのたびにそのホームでは不吉な噂が流れる死にたがりが集まる呪いのホームだってでももしお前がその目の前の学生服の肩を掴めたらそんな嫌な噂が一つだけ減るんだまあただそれだけのことだが。なあ、はじめ。知ってるか。年金はきちんと払わないといけないんだ。なあ、はじめ。知ってるか。赤ん坊は案外グロテスクに生まれるだがグロテスクなだけにお前はその光景を絶対に忘れない血のにおいと消毒液のにおいに何度か吐きそうになるがそこは踏ん張れ彼女がお前の名前をよんだときお前はなみだがとまらなくなる。なあ、はじめ。知ってるか。お前が好きだった漫画は実は未だに完結していない驚くくらい長くなりすぎてもう主人公が三回も変わってる。なあ、はじめ。お前の居るその場所が俺のすべてだと言ったらお前は笑うだろうか。なあ、はじめ。いつかは必ず世界を旅しろはじめての給料で買ったその一眼レフを首からさげて必ず世界を旅しろその時お前はパレスチナの内戦に巻き込まれてしぬがお前のしがパレスチナの何億というにんげんを救うそうだただ、お前の家族は誰ひとり救われないずっとその国を恨んで生きることになるやっと歩けるようになる子供はもうお前の顔を思い出せなくなるだがお前は必ず世界を旅しろ必ずだ。なあ、はじめ。知ってるか。お前は生まれてきて良かったんだそうだ。2025.03.19 07:20
朗読詩「海獣」昨日だってそうだった。大して金にもならない仕事で、ただ毎日を削っていた。どう削ってみても、まるで僕から出てくるフケみたいに細々と卑しく落ちてゆくだけできっと何も感じちゃいないポラロイドカメラを自分に向けて切ってみたってきっと僕だけはそこに写らないんじゃないかなんて考えてみたりもしてそこからゆっくりと、僕は夜の部屋に溶けてゆくのだから。*波の音を聞いていた記憶をいくら思い返してもそのどこからどこまでが胎動だったのかなんて思い出すことも出来ないし、思い返そうとも思わないセックスの最中に僕の性器からにおう潮の香りはいつだって偽者なのだからどうしようもなかったその後にはなんとなく煙草を火をつけて紫煙を燻らせながら横目でバスルウムを見るそこに海はない。* *昨日だってそうだった。切れ掛かった蛍光灯を取り替えぬままに。ここ三日は陽の目を見ていないタオルケットに包まるだけでもうそこに清潔さも爽快さもましてや暖かさもないそのまま水母になったようなイメエジのままで緩やかに憂鬱を漂うことだけが救いのように感じたそこに海がない、ただそれだけの理由でなんだって憂鬱だった冷蔵庫を開ければコントレックスしか無いそこに海がない、ただそれだけの理由だった。海獣になりたい2025.03.19 07:19
Vivid case.1【悲劇のヒロイン】(0:2:2)【配役】◆ミケ:➡ミケ・オルソン。38人殺しの事件を追っていたが不幸体質により 現在は遺失物係兼お悩み相談の部署に飛ばされた刑事。 独り言が多く、まるで小説のモノローグのように語る事から 同僚からは「モノローグ」と呼ばれる事もしばしば。 作中の性別は男性ですが、性別不問とします。◆ビー:➡ビー・ドレイク。収容したヴィランの首に爆弾をつけ、いつでも殺害できる状態に してから警察の捜査に協力させるといった非人道的捜査計画「グレイ・プロジェクト」にて キャルボニー州からクエンティン州に移送されたヴィラン。 一人称が安定しないのは本人も自覚している。 作中女性で、性別変更不可です。◆ヴェロア:➡ヴェロア・モーテルタス。ストーカー被害に悩む自称アイドル。 作中女性で、性別変更不可です。◆CK:➡チェアノックという名前であると本人は豪語しているが 同僚からはCKと呼ばれている。ミケの元相棒。 現在はミケのグレイ・プロジェクトのサポートを行う。※作中、犯人というキャラクターが出てきます。 兼役をお願いします。 作中男性ですが、性別不問とします。2025.03.16 18:00
不透明少女連盟(1:2:0)【配役】◆アキラ 男性 ➡スカートとブレザーを着た、女子高生の恰好をする男子生徒。 何も気にせず、彼女はナンバーガールの話を続ける。◆あかり 女性 ➡男になりたかった女子生徒。言葉遣いは乱暴で一人称は「俺」 いじめを受けている。◆はーちゃん 女性 ➡いじめの主犯格の女子生徒。 言葉遣いも態度も乱暴で、ヒエラルキーの頂点にいる。 携帯にはストラップがジャラジャラ。いつも音楽を聴いている。※この物語は上記の性別を必ず順守し、上演してください。 性別変更不可です。2025.03.13 15:10
ミッドナイト・ウィスパー(0:0:1)【配役】このシナリオは、眠れない人のもとにだけ聞こえてくる架空の深夜ラジオ「ミッドナイト・ウィスパー」のパーソナリティをあなたに行って頂く台本です。その為、配役はあなた自身となります。2025.03.10 19:56
朗読詩「彗星観測」人って、未来を考える事ができるから。だから、不安や悲しみや、うまく行かなかった事を想像しちゃうんだって。何も浮かばない夜空の事を考えながら、玄関先の靴をかかとだけは揃えて置く眠れない夜のしっぽを追いかけながら、こすりつづけた眼が腫れてしまう前に僕らの彗星を探した。擦りむいた傷跡を知った。遠い星の出来事みたいに感じていればよかったことも、溶け切らない角砂糖のかたまりみたいな、こそこそと内緒話をするみたいな柔らかな声でどうでもいいことも、どうでもよくないこともいつかどこかにそっと置いた憂鬱の名前や嫌いになりたくてなれなかった多くの後悔を、僕はまだ持ち続けているんだなって痛みの場所を、わかっていた。「結局さ、誰かいないとさびしいんだもんね」ふとした時に隣に人がいたほうがいいんだなって、思っちゃうんだ。難しいよね、ひとって。そう言う彼女の声は掠れながら難しいよね、ひとって。そう言いながら夜は更けていく。何もかもを捨てて、夜空に浮かぶ星座みたいな生き方ができていたらもう少しやわらかな毎日がここにあったのかな。やわらかいものだけで包まれていたらいいな。でもそんな、やわらかいものばかり集めていたら。段々と溶け出して、彗星のしっぽみたいに溶けながら生きる事になるのかな。夜はいつか明ける。明けた夜が、朝となる瞬間を、きっとどんなひとも待ちわびていて。その美しさに涙を流したり、嬉しくなったりする。大事に持っていたギターケースの中身みたいな、咲き切らなかったあの日のポインセチアみたいな、やさしさの形をなぞりながら僕の心臓の形を知る。言葉の重みや、生きる事の難しさはきっとどんな時だって夜のうちに僕の中にとけていくんだ。天体観測をするみたいだ。ひとと、ひととの距離を見るのは。僕の中にある何かの星のひとつと、あの子やあの人、この子の中にある星との距離をさぐりながらようやく掴んだ星座をノートに書き記していく。体中の全部の点と点をつないで、それが夜空になっていくならどんなによかったかな。やわらかで、溶け始めている、僕の心を書き記していく。人って、未来を考える事ができるから。だから、不安や悲しみや、うまく行かなかった事を想像しちゃうんだって。何も浮かばない夜空の事を考えながら、玄関先の靴をかかとだけは揃えて置く眠れない夜のしっぽを追いかけながら、こすりつづけた眼が腫れてしまう前に僕らの彗星を探した。僕らの生き方を探した。この夜にほんの少しだけ、優しく眠れるだけでいい。君が眠れるだけでいいよ。2025.03.10 18:38
アザラシと戦うんだ。(0:0:6)◆配役 ●あざらし頭領:性別不問 以下本編内表記「頭領」 →主役の一人●ひとのこ:性別不問 以下本編内表記「ひと」 →主役の一人●あざらしA:性別不問 以下本編内表記「A」●あざらしB:性別不問 以下本編内表記「B」●あざらしC:性別不問 以下本編内表記「C」 →オウオウ要員の為3人以上居ても構いませんし、一人が兼役でも構いません。●運営スタッフ:性別不問。2025.03.09 14:41