大正浪漫なんて認めないでござる(0:0:2)
【あらすじ】
時は大正。
浅草六区にあるカフェー「天国」にて。
1人の侍と、1人のモダンボーイが言い争っている。
彼らの前には一杯のシャンペンサイダーと珈琲。
「大正浪漫なんて、認めないでござる!」
時代に取り残された侍の言葉が店内に響く。
【配役】
◆隠岐平 伝右衛門
→おきだいら でんえもん。 江戸時代から続く元・士族の家系で廃刀令後も侍でいることを選んだ一族の末代。 男性女性問わず、「隠岐平 伝右衛門」という名前は襲名性である為、作中のこの伝右衛門は男性でも女性でも良いものとする。 どこかの物語に出てくる伝右衛門と関係があるのかどうかは不明。
◆燻之木 みるき
→くすのき みるき。モダンボーイの格好をしたモダンボーイなのか、モダンボーイの格好をしたモダンガールなのかは不明だが、この時代に男だの女だのそんなことはどうでもいいのである。どうやら恐らくは、主人公であるような。
【本編】
隠岐平 伝右衛門:口の中が合戦場でござる!!!!
燻之木 みるき:しゅわしゅわするでしょう?
隠岐平 伝右衛門:口の中が桶狭間の戦いでござる!!!!
燻之木 みるき:ぱちぱちって弾ける感じで。
隠岐平 伝右衛門:もはや火縄銃と変わらんでござる!痛いでござるよ!
燻之木 みるき:それが、いいんだよなあ。
隠岐平 伝右衛門:なんと面妖な飲み物か!この「しやんぺいんさいだあ」というものは!
燻之木 みるき:「シャンペンサイダー」、ですよ、伝右衛門さん。
隠岐平 伝右衛門:文明開化とは痛みを伴う自傷行為であると、体現しているようなものでござろう!?こんなもの!
燻之木 みるき:例え方が大袈裟だなあ。
隠岐平 伝右衛門:大袈裟ではござらん!
燻之木 みるき:物凄く排他的なナンセンスだし。
隠岐平 伝右衛門:茄子と扇子?
燻之木 みるき:ナ・ン・セ・ン・ス
隠岐平 伝右衛門:どういう意味でござる?
燻之木 みるき:まあ、それは置いておいて。
隠岐平 伝右衛門:得体の知れないものを勝手に置くなでござる。
燻之木 みるき:どうですか?シャンペンサイダー。
隠岐平 伝右衛門:どうもこうも。
燻之木 みるき:どうもこうも?
隠岐平 伝右衛門:変わらず。
燻之木 みるき:変わらず?
隠岐平 伝右衛門:絶対に認めん!
燻之木 みるき:駄目かあ。
隠岐平 伝右衛門:そもそも何で水が弾けるのか、水が甘いまでは許せるでござる。しかし、何故弾けるのか。至極理解に苦しむ!
燻之木 みるき:別に炭酸は昔から日本にもございますけども。
隠岐平 伝右衛門:ええい!では甘露炭酸水と呼べば良いで御座ろう!
燻之木 みるき:甘露炭酸水かあ、それもまたちょっとモダンな感じがしますけどねえ。
隠岐平 伝右衛門:西洋言葉を使うなでござる!
燻之木 みるき:いやはや、そう言われてもね。古来、サイダーなんて江戸時代から存在するも
のですしねえ。
隠岐平 伝右衛門:それも結局は南蛮渡来のものでござろう!?
燻之木 みるき:当時はてっぽう水、なんて呼び方もしてたみたいですねえ。それもなんだか一周まわってモダンだなあ。
隠岐平 伝右衛門:て、てっぽう水!!!やはりてっぽう!!!火縄銃という表現は至極合っていたということでござろう!?
燻之木 みるき:いやあ、伝右衛門さん、案外語彙力がございますねえ。
隠岐平 伝右衛門:そ、それは褒めているのかバカにしているのか。
燻之木 みるき:さあて、どちらですかねえ?
隠岐平 伝右衛門:不快でござる!!
燻之木 みるき:まあまあ、そんな腹を立たせても。そんなに嫌なもんですかねえ。大正浪漫。
隠岐平 伝右衛門:なあにが大正浪漫でござるか。西洋被れ、日本の心を忘れた売国奴に過ぎんでござろう!?
燻之木 みるき:ふむふむ、続けて?
隠岐平 伝右衛門:そんな、そんな西洋の服を纏い、なよっとした歩き方をしていては日本男児の名が廃るというもの!
燻之木 みるき:あ、ジャズが流れてきましたね、いい曲だなあこれも。
隠岐平 伝右衛門:まげも結わず、散切り頭でからから音を鳴らして歩く貴様達は、木偶の坊も同然!
燻之木 みるき:「ジ・エンターテイナー」だなあ、こいつは。てて、てれ、てれ、てれー、ててて、てれててーててーてー。うーん、実にラグタイムを感じる名曲。
隠岐平 伝右衛門:聞いてないでござろう!?
燻之木 みるき:伝右衛門さんもちょんまげは無いじゃあないですか。
隠岐平 伝右衛門:し、仕方なかろう!?もうまげを結ってくれる散髪屋がこの浅草にはござらん……。
燻之木 みるき:そりゃあ、そうでしょうねえ。
隠岐平 伝右衛門:もう浅草は、西洋に和の心を売り渡したので御座ろうな……。
燻之木 みるき:ふうむ、伝右衛門さん、そんなんだから貧乏侍だなんて馬鹿にされるんじゃあ、無いですかねえ。
隠岐平 伝右衛門:び、貧乏侍と言うな!
燻之木 みるき:だって貧乏侍は貧乏侍でしょう?きょうび、流行りもしない剣術道場。門下生は1人も居ないですよねえ?
隠岐平 伝右衛門:う……。
燻之木 みるき:この平和な大正の世に、一体誰が剣術を習うっていうんです?そんなの全くダンディじゃあない。
隠岐平 伝右衛門:だ、だんでい?
燻之木 みるき:よいものですよ、西洋文化というのは。
隠岐平 伝右衛門:こ、この軟弱者!
燻之木 みるき:そうですかねえ?
隠岐平 伝右衛門:軟弱者にござる!強い者に巻かれて、流されればいいというその考えが、軟弱にござる!
燻之木 みるき:あ、西洋文化が強いって認めてるんじゃあないですか?それ。
隠岐平 伝右衛門:ち、違う!
燻之木 みるき:あーあ、顔真っ赤にしちゃって。まるでリンゴみたいでキュートだなあ。
隠岐平 伝右衛門:や、やめろやめろ!奇妙な事を言うでないでござる!
燻之木 みるき:奇妙なのはあなたの方ですよ、伝右衛門さん。
隠岐平 伝右衛門:な、なにがだ。
燻之木 みるき:もう、侍は居ないんですよ?
隠岐平 伝右衛門:ぐ……ぐぬぬ……
燻之木 みるき:廃刀令で刀の帯刀は禁止。その腰にぶら下げてるのも、中身は木剣、模造刀の類でしょうに。
隠岐平 伝右衛門:そ、そんなことは。
燻之木 みるき:ハハッ、では何かい、廃刀令に背いて帯刀している刀(とう)サビ野郎だっていうのかい?だとしたら僕は今すぐ憲兵をここに呼びつける必要があるけれど。
隠岐平 伝右衛門:……木剣で、ござる。
燻之木 みるき:素直な所、とてもチャーミングだと思うぜ。
隠岐平 伝右衛門:ば、馬鹿にしなさんな!
燻之木 みるき:ごめんごめん、ソーリーってやつですよ、伝右衛門さん。
隠岐平 伝右衛門:ぐぬぬぬ。
燻之木 みるき:ここ、今はお洒落なカフェーですよね。
隠岐平 伝右衛門:……昔は、草団子の美味い茶屋であった。
燻之木 みるき:そうそう、餡子とよもぎ草の団子が凄くマッチして美味しかった。
隠岐平 伝右衛門:腰の曲がった老婆が出すほうじ茶が、良く団子に合ったものでござる……。
燻之木 みるき:でも今じゃ、キリマンジャロの珈琲が出てきたり、モダンボーイやモダンガールがシャンペンサイダーを飲みながらロマンスな話題にふけこむ店になったでしょう?
隠岐平 伝右衛門:ろ、ろまんす?
燻之木 みるき:恋愛話ですよ。
隠岐平 伝右衛門:れ、れれれれれ、恋愛だなんて、なんて破廉恥でござる!!!
燻之木 みるき:あら、お嫌いですか?恋愛話。
隠岐平 伝右衛門:や、ややややや、やめるでござる!!!こんな公共の場で!!!破廉恥千万!恥ずかしいでござるぞ!?
燻之木 みるき:……キッスの味の話なんて、してみちゃったり?
隠岐平 伝右衛門:なななななな、なんてことを言う!!!???
燻之木 みるき:ハハッ、思ったよりチャーミングですね、伝右衛門さん。
隠岐平 伝右衛門:ば、馬鹿にしてるでござるな!?
燻之木 みるき:してませんよ、少しからかっただけで。
隠岐平 伝右衛門:それを馬鹿にしていると!愚弄していると言うのでござるよ!
燻之木 みるき:そういうもんですかねえ?
隠岐平 伝右衛門:そういうものでござる!
燻之木 みるき:……でも、時代は変わった。自由恋愛が認められてきている時代だ。好きな男の子の横顔の良さを話したり、初めてのキッスの事を想像して、シャンペンサイダーを飲む一日が当たり前にここにある。
隠岐平 伝右衛門:……認めないでござる。
燻之木 みるき:変わる事が、怖いですか?
隠岐平 伝右衛門:……おぬしは、怖くないのでござるか?
燻之木 みるき:……例えば?なにが怖いんです?
隠岐平 伝右衛門:……負けたので、ござるよ……?
燻之木 みるき:負けた。
隠岐平 伝右衛門:……拙者たち、日本人は、世界に負けたのでござるよ。戦争でも、文化でも、学問や、武術でも。世界に負けた、西洋に負けた。だから、こうして拙者たちは、喰われている最中なのでござろう……?
燻之木 みるき:喰われている?
隠岐平 伝右衛門:……そう、喰われているのでござる。異国の品々や、嗜好品、食べ物に飲み物、少しずつ少しずつ拙者達の周りには西洋品達で埋め尽くされていっているでござる。朝起きて、釜で飯を炊くことをやめ、前日に買ったあんぱんを頬張ったり。茶を点てず、コーシーなどと言う泥水をすする。
燻之木 みるき:コーヒーね。
隠岐平 伝右衛門:それは、文化の侵略でござろう?大正「浪漫」だのと、ちやほやしていても、それは、日本の心と引き換えに、負けて失ったものを埋めているだけでござろう!?
燻之木 みるき:なるほどね。
隠岐平 伝右衛門:それは、それはとても恐ろしい事に思えて仕方ないのでござる。それは、至極、この国が、この国で無くなっていく。そういう類の喰らわせあいに思えて仕方ないのでござるよ……。
燻之木 みるき:伝右衛門はさ、大正浪漫というものを知ってる?
隠岐平 伝右衛門:それはもう、要するに、あれでござろう?ハイカラで、西洋かぶれで……
燻之木 みるき:文化の侵略って、日本人だって、日本人にしてるじゃあないですか。
隠岐平 伝右衛門:え……
燻之木 みるき:大昔から、同じ国の中でも文化の侵略も大きく等しく行われてきましたよ、伝右衛門さん。それこそ、侍の皆さんだって、等しくね。
隠岐平 伝右衛門:それは……
燻之木 みるき:それでも
隠岐平 伝右衛門:それでも……?
燻之木 みるき:日本は無くならなかった。
隠岐平 伝右衛門:……。
燻之木 みるき:まずは知ることから。違いますかね、伝右衛門さん。知らぬものを否定すること、武士道というのはそんな門の狭い道なんですかねえ。
隠岐平 伝右衛門:……失敬。拙者、若干間違っていたでござる。
燻之木 みるき:ふふふ、素直な伝右衛門さんはやっぱりチャーミングだと思いますよ。
隠岐平 伝右衛門:せ、西洋言葉で茶化すのをやめるでござる!!!!……して、お主の言う「大正浪漫」というのは、一体全体どういうことなのでござるか。
燻之木 みるき:よくぞ聞いてくれました!それこそ、このモダン文化、和と洋の折衷、和洋折衷の極まれってことですよ。
隠岐平 伝右衛門:今同じことを2回言わなかったでござるか?
燻之木 みるき:細かいことはいいんです、伝右衛門さん、大正浪漫といえば勿論のこのカフェーですよ。
隠岐平 伝右衛門:……西洋茶屋でござろう?
燻之木 みるき:甘い!
隠岐平 伝右衛門:あ、甘い?
燻之木 みるき:そう!ただの西洋茶屋だと思ったら大間違いなんですよ。
隠岐平 伝右衛門:ど、どういうことでござる。
燻之木 みるき:茶屋とは、何を売る場所だと思いますか、伝右衛門さん。
隠岐平 伝右衛門:茶屋でござるか?
燻之木 みるき:そう、茶屋でござる。
隠岐平 伝右衛門:それはもちろん、茶屋と言うからには茶を出すのが茶屋でござろう?
燻之木 みるき:もちろん、それはその通り。
隠岐平 伝右衛門:あとは団子、蕎麦やうどんを出す茶屋もあったであろうが……。
燻之木 みるき:では、西洋茶屋、カフェーとは何を売っているのか。
隠岐平 伝右衛門:「こーしー」でござろう?
燻之木 みるき:「コーヒー」ね。
隠岐平 伝右衛門:あとは、「しやんぺんさいだあ」
燻之木 みるき:「シャンペンサイダー」ね
隠岐平 伝右衛門:そのくらいでござろう?
燻之木 みるき:「空間」、ですよ。
隠岐平 伝右衛門:……空間?
燻之木 みるき:そう。こうしてラグタイムのジャズが流れる。緩やかで軽やかな音楽を聴きながら、時間を気にせず珈琲やシャンペンサイダーの味に耽ながら、文学なんかに思いを馳せる。
隠岐平 伝右衛門:思いを……馳せる。
燻之木 みるき:モダンボーイやモダンガールの話題の中心は、最近流行りの宝塚歌劇団。
隠岐平 伝右衛門:たからづか?
燻之木 みるき:ええ。そこではね、女性が男性の振りをしたりして、歌劇を披露するんですよ。
隠岐平 伝右衛門:お、女が男の?
燻之木 みるき:ええ、それが大っぴらに認められているんです。まぁ、このあたりは歌舞伎なんかでも女形男形なんていうものがありますがねえ。
隠岐平 伝右衛門:女性が、男性のふりをして、何をするんでござるか。
燻之木 みるき:ロマンスですよ。
隠岐平 伝右衛門:ろ、ロマンス。
燻之木 みるき:ええ、熱い恋愛を歌にしたりね。ハイカラでしょ?
隠岐平 伝右衛門:な、なんと自由な……。
燻之木 みるき:そう、自由なんですよ。
隠岐平 伝右衛門:自由……。
燻之木 みるき:大正浪漫っていうのはね、伝右衛門さん、自由なんですよ。何もかもが、自由なんです。決まりや柵に囚われ続けた日本が、自分達だけじゃなく世界に目を向けて。
隠岐平 伝右衛門:世界に、目を。
燻之木 みるき:自由である事を受け入れた。そんな時代なんです。
隠岐平 伝右衛門:自由であることを、受け入れる……。
燻之木 みるき:武士道が、好きなんですよね、伝右衛門さん。
隠岐平 伝右衛門:な、なにを。
燻之木 みるき:時は大正ですよ。明治維新を越えて、時は大正です。侍なんてものはとうの昔に居なくなって、人は刀をペンに持ち替えた時代だ。
隠岐平 伝右衛門:……。
燻之木 みるき:それでも、あなたは刀を離さなかった。その懐に、刃は無くとも、刀を仕舞い続けた。それこそ、あなたの親も、祖父母も、ずっと。
隠岐平 伝右衛門:……それが、日本を護ることであると、思ったから……。
燻之木 みるき:「好きを我慢する事はできない」んですよ、伝右衛門さん。
隠岐平 伝右衛門:え……。
燻之木 みるき:私ら日本人は、ずっと嫌なことを「耐え続けてきた」。それこそ、飢饉も、戦も、侵略も、改革も、災害も。耐えて耐えて、耐え抜いてきた。
隠岐平 伝右衛門:そう、でござるな……。
燻之木 みるき:嫌な事を耐えることは出来ても、好きである事を耐えるのはとても、とても、苦痛なんですよ。
隠岐平 伝右衛門:……。
燻之木 みるき:お好きなんでしょう?その、あなたが護り続けてきた「武士道」が。昔ながらの「日本」が。
隠岐平 伝右衛門:……。
燻之木 みるき:「無くならない」ですよ。
隠岐平 伝右衛門:え……?
燻之木 みるき:どこかの貧乏侍が、小さく護り続けてきた和の心ってやつぁ、消えたりしないですよ。
隠岐平 伝右衛門:消えたり、しない……?
燻之木 みるき:だって、私ら、いや、僕らはこと「受け入れること」が得意な種族じゃあないですか。ただ、「受け入れる」だけ。今あるものに、新しいものを受け入れていくだけ。
隠岐平 伝右衛門:でも、それは。
燻之木 みるき:でもそれは、古いものを捨てるってことじゃあない。
隠岐平 伝右衛門:でも……。
燻之木 みるき:僕は日本人の心の、いつまでたっても無くならない、大切で大事で中心にある心を、忘れたってぇいうんですか?貧乏侍。
隠岐平 伝右衛門:び、貧乏侍と呼ぶなでござる!
燻之木 みるき:忘れたんですか?
隠岐平 伝右衛門:……なんの、ことでござる……?
燻之木 みるき:「もったいない」!
隠岐平 伝右衛門:も、「もったいない」……?
燻之木 みるき:そう、我ら日本国民の中でどの時代でもどの文化でも消える事の無かった心は、この、「もったいない」の気持ちでしょう?
隠岐平 伝右衛門:もったいない……
燻之木 みるき:もったいないから何度も何度も直して使って、もったいないから捨てずにとっておく。壊れた建物も、だめになった道具も、土地も、山も、川も。何でもかんでも捨てずに使っていく。
隠岐平 伝右衛門:……江戸時代から続く、和の心でござるな。
燻之木 みるき:そんな心を持った僕たちが、「武士道」を捨てると思いますか?
隠岐平 伝右衛門:……。
燻之木 みるき:どうなんですか、伝右衛門さん。
隠岐平 伝右衛門:それは……。
燻之木 みるき:どうなんだ!貧乏侍!!
隠岐平 伝右衛門:ぐ……
燻之木 みるき:あんたの思う、あんたの信じる武士道は、そんな簡単に消えちまうナンパなものなのか!貧乏侍!!!
隠岐平 伝右衛門:……な、舐めるなでござる!拙者は、拙者たちが心に携える刀は!刃無くとも消えることのない、この侍道を!舐めるなでござる!!!
燻之木 みるき:……ハハ!モダンじゃないですか!
隠岐平 伝右衛門:ど、どこがでござる。
燻之木 みるき:好きな事を好きだって、大きく堂々と語る姿!
隠岐平 伝右衛門:堂々と……
燻之木 みるき:それこそがモダン的で、それこそが大正浪漫だ!少し前ならそんなこと大声で話してたらすーぐ憲兵に捕まって豚箱いきでしたよ!
隠岐平 伝右衛門:あ……
燻之木 みるき:……ハハ、悪くないでしょう?モダンというのも。
隠岐平 伝右衛門:……み、認めないでござる!
燻之木 みるき:まだそんなこと言いますかい?強情侍だなあ。
隠岐平 伝右衛門:そう簡単に心が開けるなら黒船が来た時もここまで揉めなかったでござろう!?
燻之木 みるき:ハハハ!それもそうだ、それじゃあもう少し大正浪漫を語り合うとしますか。チャーミングな伝右衛門さんのことをからかいながら、このカフェーでね。
隠岐平 伝右衛門:西洋言葉でからかうなでござる!
燻之木 みるき:さて、もう一杯なにか飲みますか。すいませーん、珈琲をブラックで一杯お願いします!伝右衛門さんは?何飲みます?
隠岐平 伝右衛門:……しやんぺんさいだあ。
おしまい
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