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臍帯とカフェイン

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朗読詩「山田くんの」

山田くん家の猫は、いつも くーすか寝ている。

山田くんが帰ってくる タイミングが

彼には お見通しらしくて

山田くんが帰ってくる十分前になると

ごはん (ほら、あのカリカリしたやつ) の前で

一回だけ、「みゃあ」と 鳴く

山田くんが帰ってきた後には

いつもの ひざの上で

ごろごろと 喉を鳴らしながら

二回ほど、「みゃあ」と 鳴く

一度だけ 家出をしたことが

あるらしいけれど

山田くんが 名前を呼ぶと

どこからともなく 甘えた声で

一回だけ、「みゃあ」と鳴いたらしい

三回鳴く姿を 誰もみたことが

ないのだけれど

山田くんいわく

「乙女にしか、わからない」との

ことなのだが

乙女の私でも わからないのだ

なあ、みーちゃん

きみ、私のこときらいなのかい?

「みゃあ。」



山田くん家の猫が 一度だけ

家出をしたことがあるという

猫である以上 それはきっと「さが」ってやつ

なんだろうけど

山田くんは とても おろおろしていた

「すぐに帰ってくるよ」と

私が声をかけるたびに

うん、うんと 頷きは するのだけど

やっぱり

こころ、ここにあらず というのか

猫の声がきこえるたびに 肩をすこし

ぴくんっと させる

でも、みーちゃんじゃないとわかると

またすぐに おろおろとしはじめる

「大丈夫、すぐに帰ってくるよ」

私が言うたびに

やはり、うん、うんと 頷きはするのだけど

ねぇ、山田くん

あたしとみーちゃん

どっちが好きなのよ?

「うん、うん。」


山田くん家の猫が 一度だけ

家出をしたことがあるという

「うちのみーちゃんは、とってもいいこなんだ!」

と笑っていた山田くんの顔は すごくひきつっていて

大丈夫、大丈夫と なだめる

あの子の声は 耳に入っていないみたいで

「うん、うん。」と

続けるばかり

ああ、もう、ほら

泣きそうになってるじゃないか

ねえ、山田くん

あの子おだいどころまで かけてっちゃったけど

大丈夫なの?

「うん、うん。」

ああもう!こら、山田!

そして僕は山田くんの手を引っ張って

りりり、と鳴る夜へ 駆け出していって

山田くんが、靴を履いていないのに

気づいたのは

その後、みーちゃんが

見つかったあとだった

よかったね、山田君

「みゃあ。」


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