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沖田メンタるクリニック②(ガネーシャ編)(1:0:1)

【配役】

沖田:男性

ガネーシャ:男性

※演じる方の性別は不問といたします。



沖田:皆様、お久しぶりです。当院へようこそおいでくださいました。前回の診察から、少し日が空いてしまいましたが……当院の説明を今一度させていただこうかと……

ガネーシャ:すいません!!!すいません!!!!!開けてください!!!!

沖田:おやおや。どうやら新しい患者さんがおいでになったみたいです。(少し声を張り)鍵は開いてますよ!どうぞー!

ガネーシャ:(慌てて扉をあけて入室してくる、息を少し切らしながら)先生!!先生はいますか!!

沖田:は、はい、私が当院の医院長、沖田です。おそらく初診の方……ですよね?どちらの神話出身の方ですかね…?あ、待って、当てたい。当てたいです。首が無いから……あれだ!デュラハンさんでしょ!神話といっていいのかわからないですけど!

ガネーシャ:ち、ちがいます!!わ、私はガネーシャ!ガネーシャです!前にも母のことで、受診させていただきました!診察券も、ほら!

沖田:ええ!?ガネーシャさんって、あの、ゾウの頭のガネーシャさん!?

ガネーシャ:そうです!ゾウのガネーシャです!

沖田:え、えー……本当ですか?だってトレードマークのゾウの頭、無いじゃないですか?

ガネーシャ:盗られたんですよ!!!!なんかすごい形相のお爺さんに!!!!!

沖田:……えーと……。

ガネーシャ:執拗(しつよう)に僕の鼻を切り取ろうと!ものすごい勢いで追いかけてきて!もみくちゃされてるウチにもぎ取られちゃったんですよ!!!

沖田:な、なるほど……そ、それは……それは……。で、でもですね、ほ、本人かどうか確認しなきゃならないので……一応保険証とか確認させていただいても……?

ガネーシャ:あ、ああ、はい、どうぞ。

沖田:……ディーバナーガリー文字で読めない……あ、ありがとうございます。お返ししますね。

ガネーシャ:はい、ありがとうございます。

沖田:(大袈裟な咳払いをしたあと小声で)切り替えよう、集中集中……。

ガネーシャ:なにか言いましたか?

沖田:いえいえ!ところで!本日は如何なさいましたか?やはり頭が無くなったことによる何か……ですかね?

ガネーシャ:いえ、頭の事はいいんです。元々お父さんにはね飛ばされたものですから、僕の頭ではないですし。

沖田:なるほど。ところでどこから声でてるんですか?これ

ガネーシャ:相談したいことは、父と母のことなんです。

沖田:スルーだよ。

ガネーシャ:僕は元々、母であるパールバティの身体の垢を集めて作られた子です。だから、父さんとは血の繋がりがありません。

沖田:ふむふむ

ガネーシャ:多分父さんは僕の首を跳ねてしまったことも、未だに罪悪感として抱えている。わかるんです、僕に向けられる目に、哀れみが混じっていて、そして壁があることも。

沖田:なるほど?

ガネーシャ:そんな父さんが……そんな父さんが……可愛くて可愛くてしょうがないんです!!!!!!!!

沖田:……ん!??!

ガネーシャ:だってあの父さんですよ!!!鬼神シヴァと恐れられたあの父さんが!!!たかだか首をはねてゾウにしてしまった程度の事で息子の僕に「お、おう、ガネーシャ。今度の日曜日、チャパティでも食べに行くか?」って恐る恐る聞いてくるんですよ!!

沖田:ふ、ふむ……

ガネーシャ:いま世間ではタピオカとかいう黒いビンディみたいなのあるじゃないですか?

沖田:インドの人が額につけてるあのポッチみたいなやつね!?これ説明しなきゃ誰がわかるんだ……

ガネーシャ:その黒いビンディが入った、

沖田:タピオカね。

ガネーシャ:そのタピオカが入ったチャイとかを飲みながら「案外流行のものも悪くないな」とか言うんですよ!!!はあ、しゅき。シヴァ父様、ちゅき。ちゅきみ。ちゅきみが深い。

沖田:あ、こいつ俗世に毒されまくった系だな。

ガネーシャ:ちなみに声は念話で貴方の頭に直接語りかけてます。

沖田:今言うそれ!?……(咳払い)ガネーシャさんが如何にお父様のことをお慕いしているのかはよくわかりました。典型的な?ファザーコンプレックスというものですね。でも現時点でそこに何か問題が発生していますか?

ガネーシャ:はい……かなり困っていて……

沖田:おっと、急に深刻そうだ、ぜひ話を聞かせてください。

ガネーシャ:父とは結婚できないじゃないですか。

沖田:ほんともう神々の悩みってぶっ飛んでてやだ。

ガネーシャ:父さんを僕のものにしてしまいたいんですよ!なんなら父さんの子供だって産みたいですし、父さんのために毎日キーマカレーだってマンゴーラッシーだって作りたいんですよ!!休日には父さんの耳垢をほじくって、集めた耳垢で可愛いベイビーを作りたいし、父さんの髪の毛の一つ一つを丁寧に1本ずつ聖なる水で清めながら洗いたいし、なんなら世の中のカレーというカレーを父さんって名前にして食べ尽くしたいんです!

沖田:もう好きにしたらいいですわ!ほんまに!えせ関西弁もでやがるでしかし!

ガネーシャ:でもダメなんです……。

沖田:おほん……どうしてです?神々の方々なら性転換なんてあっという間でしょ?貴方の頭持っていったゼウスさんなんか自分が女になったり相手を性転換させたりやりたい放題……

ガネーシャ:(食い気味に)え???なんで沖田先生が僕の頭をとって言った人がゼウスさんだって知ってるんですか?

沖田:え!!!??あ!!!いや!!!ほら!!あの人ならそうしそうだなーーーーって!!!やだな!!ははは!!!

ガネーシャ:(怪しむような)ふむ……?(もの悲しげに)でも、ダメなんです。僕の故郷では、浮気は死罪なので……2人はどちらにしろ結ばれないんです……

沖田:ん?でもそれって女の人の場合じゃないですか??

ガネーシャ:(かなり強めに)僕が父と結ばれるってことはどちらかが女の人になってるでしょうが!!!!!!!

沖田:神々の浮き沈みが読めないほんと……違いますよ、ガネーシャさん、日本の文化にはBLというものがあるんですよ。

ガネーシャ:びー……える……?なんですかそれは。

沖田:いわゆる男色と言いますか。かの侍や武士達もほとんどが小さな男の子と関係を持っていたといいますし。なにも男性と女性だけが愛のカタチでは無いと思いますよ。

ガネーシャ:この、ありのままの姿で、僕は父さんと愛し合ってもいいと言うことですか?

沖田:ええ。あ、ただお父様がどう受け止めるかですけどね!?!大前提でね!?

ガネーシャ:びーえる……ああ、わざわざ日本の病院に来てよかった……びーえる!ジャパニーズカルチャーは最高だ!!ありがとう沖田先生!!!またきます!!!

沖田:あ……ちょ……ガネーシャさん!?……行ってしまった……。

沖田:いけない沼にはめてしまった気もするが……ま、まぁ、いいか。皆様、ながらくお待たせしました。私が当院の医院長の沖田と申します。見ての通り、当院は普通の患者さんだけでなく、

沖田:少し特殊な患者さん……いや、お客様をお招きしております。そう、お客様は「神様」、ですからね。

沖田:あ、外線だ、ちょっと失礼……はい、こちら沖田メンタルクリニックです。

沖田:あら、ゼウスさん!?お元気そうで何よりです!あ、ガネーシャさんの頭とっちゃったらしいじゃないですか!

沖田:え?そのことで?ガネーシャさんが家に来て?BLの話で盛り上がっている……?

沖田:ははは……そういえばオリュンポス系の方々ってそういう系統の沼の方多かったですもんね……

沖田:はは、はい、またお薬が切れたら受診お願いしますね。

沖田:神様も本質的には我々人間となんら変わりのない、愛すべき人達なのかもしれませんね。

沖田:ふふ、ここは「沖田メンタルクリニック」またいつでもご来院ください。神様ですら、受け入れますからね。

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