「明日死ぬためにする、7つのこと。」(0:0:2)
【配役】
最上川:もがみがわ この話を持ち掛けた人
小読谷:こどくたに この話を持ち掛けられた人
※性別不問
:
0:夏の終わり、秋口の来る
0:涼しげな公園のベンチにて。
:
最上川:明日しにたい。
小読谷:また急な話だね。
最上川:と、したら人は何をしたくなると思う?
小読谷:あ、しにたいわけじゃないのか。
最上川:もしもの話だよ。もしもの。
小読谷:んー、しぬって例えばどんなふうに?
最上川:どうなふうに、というと?
小読谷:いやだってさ、今日(こんにち)人って簡単に死なないでしょう?
最上川:うーん。
小読谷:医療が発展、しにたくてもしねないからだ。
最上川:不老不死はないけどね?
小読谷:あるようなもんだろ。昔は50代まで生きて上々だった。
小読谷:いまじゃ70代、80代まで生きてやっと大往生(だいおうじょう)だ。
最上川:まあ、それはたしかに。
小読谷:人はお金がなくても、働いてなくても、なんとなく生きていられる。
最上川:そうかな?そんなことなくない?
小読谷:あるよ。今は生活保護だって充実してる。
小読谷:コロナ失業、なんてのもあって
小読谷:いろんな補償も受けられるようになってる。
最上川:でもそれは一握りの人だけでしょう?
小読谷:でも極論、ホームレスになったとしても生きることはできるよ。
小読谷:日本は気候も安定してる、こと東京でなら
小読谷:食料の配給も、衣服の配給も受けられる。
最上川:まあ、そうかもしれない。
小読谷:そんな「しににくい」世の中でどうやってしぬの?
最上川:それこそ、自殺とかさ。
小読谷:じさつ?
最上川:そう。
小読谷:じゃあ、今から話す内容は、
小読谷:自分でしにたいと思っている人間が
小読谷:しぬまえに何をしたいのか?を話す、ってことでいいの?
最上川:うん、まあ、そうかな。
小読谷:おーけー、いいよ、状況はわかった。
最上川:ありがとう。そしたら話していこうと思うんだけど・・・。
小読谷:あ、まって。
最上川:まだなんかあるの?
小読谷:どうやってしぬの?じさつの方法は?
最上川:やたらディテールにこだわるじゃん。
小読谷:大事でしょ。そういうのって。
最上川:んー、そういうものかなあ。
小読谷:そうだよ。さ、どういう風にじさつする?
最上川:んー、練炭自殺はなんかこう、苦しいって聞くし
最上川:そもそも部屋を目張りして、練炭を焚いてる時点で
最上川:冷静になってしまいそうだ。
小読谷:まあ、それはありそうだね。
小読谷:ドアの隙間をガムテープでべたべたにしてるときなんて
小読谷:「これ後片付けする人大変だろうな」とか
小読谷:考えちゃうかもね。
最上川:敷金だけでなんとかなるかな?とかね。
小読谷:まあ、人がしんでた時点で事故物件だから
小読谷:敷金どころじゃないけどね。
最上川:じゃあ、あれだ、かの文豪と同じで、入水自殺!
小読谷:どこで?
最上川:どこでって。どこがいいとおもう?
小読谷:確実じゃないよ?
最上川:温泉とか、ウユニ塩湖とか・・・。
小読谷:なおさらしぬきあんの?って思ってる、今。
最上川:温泉に至っては入水じゃなくて入浴だね。
小読谷:ウユニ塩湖なんて塩分濃度高いから沈まないよ。
最上川:ごめん、ふざけすぎた。
小読谷:ちょっとまじめにしんで?ほんとに。
最上川:言い方よ。んー、そうだな。
最上川:ビルの屋上から飛び降りてみるとか。
小読谷:自分の持ちビルとかある?
最上川:ない。
小読谷:じゃあほぼ無理。日本の警備力なめないで。
最上川:ぐぬぬぬ・・・。
小読谷:もっとちゃんとしたディテールを頼むよ。
最上川:・・・じゃあ、新小岩駅の3番線、快速特急が
最上川:通るホームで、電車に。
小読谷:あそこ、最近ガードついたからもう無理でしょ?
最上川:ううん、13番目の車両以降はまだ工事が間に合ってなくて
最上川:いまだに駅員さんが紐ひいてる。
小読谷:なるほど。それなら強行突破という手をとれるね。
最上川:うん。
小読谷:おーけー。それでいこう。
最上川:気に入ってもらえてよかった。
小読谷:さあ、もういいよ、はじめて。
最上川:なんか調子狂うなあ。
最上川:んーと、じゃあ、はじめるよ。
0:「明日死ぬためにすること」①PCのハードディスクを破壊する
最上川:ハードディスクドライブはまじでぶち壊したい。
小読谷:相当見られたらやばいもん入ってるのね?
最上川:え、だっていやじゃない?ていうか、あるよね。
最上川:いかがわしいものとか、あるよね?ふつう。
小読谷:まあ、あるけど。
最上川:それがしんだあと、家族や友人や、
最上川:状況次第では警察の方々とかにも
最上川:中身をあさられて
最上川:「えっ、あっ、へえ、芋虫を?うっわ、そんな性癖あるんだ。」
最上川:とか言われるんだよ?
最上川:耐えられない。
小読谷:まって。芋虫ってなに。
最上川:・・・。
小読谷:ちょっとまって。芋虫ってなんなの。
最上川:いや、ちょっと言えない。
小読谷:なにそれこわい。
最上川:すまない、忘れてくれ。
小読谷:やめてよ!変な記憶つけないでよ!
小読谷:心のハードディスクに残っちゃったよ!!
0:「明日死ぬためにすること」②ゲテモノ料理を食べる
最上川:一度も食べたことのない、たぶんおそらく普通に生きていたら
最上川:食べることはないのであろう料理を口にしてみたい。
小読谷:例えば???
最上川:ウーパールーパーとか。
小読谷:あんなかわいいものを。
最上川:オオサンショウウオとか。
小読谷:ウーパールーパーとあんまかわらんのよ。
最上川:プラナリアとか、茶碗いっぱいに盛って
最上川:酢醤油とかかけて食べてみたい。
小読谷:咀嚼したぶんだけ細切れになって
小読谷:おなかの中で増殖しそうだね?
最上川:オカピとかどんな味するとおもう?
小読谷:世界三大珍獣を食べようとするな。
最上川:むしろ世界三大珍獣って何かしってるの?
小読谷:しってるよ。オカピだろ、パンダだろ、あと・・・
最上川:あと?
小読谷:・・・ゴリラ?
最上川:違います。
小読谷:・・・ゴリラって人の肉の味に近いのかな?
最上川:どうなんだろう。人に近しいけど、食べてるのはほぼ草でしょ?
小読谷:じゃあ、草食動物みたいな味なのかね。
最上川:人と分岐点が同じって言われてるクジラとかは
最上川:ちゃんと魚の肉の味、みたいな味するよね。
小読谷:クジラを食べるのは、いわば人肉食とおなじ?
最上川:むずかしい定義な気がする。
最上川:ところで、世界三大珍獣の最後の一匹は?
小読谷:・・・カモノハシ?
最上川:違います。正解はコビトカバ。
小読谷:なんでカバだよ。カモノハシのほうが珍獣みあるだろ。
最上川:珍獣みがある、ってはじめて聞いた言葉だよ。
小読谷:だってあいつ哺乳類なのに卵産むんだよ?
小読谷:意味わからなくない?
最上川:後ろ足には、毒針もってるしね。
小読谷:なんかモンハンの、ボツになったモンスター感あるよね。
最上川:ドラクエのボツになったモンスター感もある。
小読谷:エフエフの・・・ってもうやめよう。
最上川:そうだね、不毛だ。
0:「明日死ぬためにすること」③女装をしてみる
最上川:かわいいって言われたい。
小読谷:かわいいよ。
最上川:今じゃない。
小読谷:かわいいよ。
最上川:やめて、そうじゃないの。
小読谷:めっちゃかわいい。
最上川:やめて!!!!違うんだって!!!
小読谷:なんだよ、わがままだな。
最上川:女装をしたうえで、その女装がかわいいって言われたいの。
最上川:わかる?今この姿をかわいいって言われたいわけじゃないの。
小読谷:なんでよ、だって自分自身でしょ?
小読谷:かわいい女の子になりたい、じゃなくて
小読谷:あくまで「女装したい」なんでしょ?
小読谷:女装したうえで、芋虫とほにゃららしたいんでしょ?
最上川:芋虫の話今しないで。
小読谷:ちがうの?
最上川:違くはないけど。
小読谷:ほら。
最上川:違うんだよ。自分自身をほめてほしいんじゃないの。
最上川:だって、明日しのうとしてるやつだよ?
最上川:自分自身のことなんてすきなわけないんだよ。
最上川:そんな嫌になった自分自身を
最上川:ほめてほしいわけじゃないの。
小読谷:わかんねえよ。
最上川:そんな嫌いな自分自身から生まれいでた
最上川:「美しいウソ」を「かわいいかわいい」って
最上川:愛でてほしいんだよ。
最上川:そんな、狂おしくて
最上川:まっしろなウソに包まれたいんだよ。
小読谷:で、求められたい?
最上川:願わくば。求められてもみたい。
小読谷:それは、「どっちで?」
最上川:わからない。でも、求められてみたい。
小読谷:「どっちに?」
最上川:わからない。
小読谷:屈折してるんだな。
最上川:そう、屈折してる。でも、しぬまえだよ?
小読谷:うん。
最上川:心残りは、いやだからね。
小読谷:芋虫に求められたいんだな。
最上川:やめて!芋虫のはなししないで!
最上川:そこナイーブだから!
0:「明日死ぬためにすること」④交換日記をしてみる
最上川:交換日記ってものをしてみたい。
小読谷:誰と?
最上川:誰でもいい。
小読谷:なんで?
最上川:今まで生きてきて、交換日記ってしたことないんだよね。
小読谷:まあ、日記自体をあまり書かないもんな。
最上川:うん、いざやってみても日記って
最上川:三日坊主で終わっちゃうんだよね。
小読谷:俺も、夏休みの絵日記とか毎日続かなかった。
最上川:日記って難しいよね。自分に宛てて書くんでしょ。
小読谷:いや、少し違うんじゃないか?
最上川:しんだあとの遺族とかに向けて書くの?
小読谷:いや、「未来の自分」のために、書くもんじゃないのか。多分。
最上川:未来の自分。
小読谷:そう、未来の自分。
最上川:どういうこと?
小読谷:なんらかでつまずいたり、後悔したり
小読谷:苦しくなったり、いやになったり
小読谷:しんどいってなったときに
小読谷:「あの頃はこう考えてた」
小読谷:「自分ってこういう人間だった」
小読谷:「こういうことが好きだった」
小読谷:そういう「自身のヒント」や「ピース」を
小読谷:そこに残すのが日記なんじゃない?
最上川:じゃあ、その日記を書いてなかった人たちは
最上川:立ち止まったときに、それを振り返ることが
最上川:できなくなってしまうのかな。
小読谷:そういうわけではないだろうな。
小読谷:ただ、それをインストールしやすくするため。
小読谷:そういうものなんじゃないか。
最上川:なるほどね。
最上川:じゃあ、それだと、あれだよね。
最上川:一人で書く日記もある意味交換日記なのかな。
小読谷:「過去の自分」との、交換日記?
最上川:そう。
小読谷:まあ、そうかもしれないな。
最上川:でも、残しておくことがすべて正義なのかな。
小読谷:そうではないだろうな。
最上川:きっと、その書き記された自身の過去のほうが
最上川:まぶしすぎたり、煌びやかで
最上川:羨ましくなったりすることもあるよね。
小読谷:ああ、あるだろうな。
最上川:しかもそれは、もう二度と手に入らないものばかり。
最上川:人間はさ、「タイムマシン」は持ってるって
最上川:聞いたことがあるんだ。
小読谷:タイムマシン?
最上川:そう。未来に行くためのタイムマシン。
小読谷:なるほど?
最上川:でも、過去に行くためのタイムマシンは持ってない。
最上川:絶対前にしか進めない。
最上川:後悔しても、苦しんでも、失ったものを
最上川:ふたたび手に入れることは絶対にできないんだ。
小読谷:人も物も、ずっと同じってことはないものな。
最上川:そう。それが、ちょっと苦しいよね。
小読谷:変わらないものも、あるだろ。
最上川:例えば?
小読谷:「時間。」
最上川:「時間?」
小読谷:時間の流れだけは、絶対に変わらない。
小読谷:秒針の進み方は、何があっても、いつだって平等で
小読谷:ずっと不変なものだろう?
最上川:・・・そうだね。
小読谷:でもさ。
最上川:ん?
小読谷:最愛の、めちゃくちゃ好きな女の子とさ
最上川:うん。
小読谷:一緒に過ごすカフェでの時間はあっという間なのにさ。
最上川:うん。
小読谷:新小岩駅から市川駅までの約10分間はものすごく長く感じる。
最上川:・・・うん。
小読谷:おなじ10分間でも、はやさが変わるのはさ。
小読谷:お前自身の過去の積み重ねが
小読谷:「その時間さえも振り返ったからなんじゃないの?」
最上川:・・・難しいこというね?
小読谷:よく言われる。
0:「明日死ぬためにすること」⑤ホイップクリームたっぷりのパンケーキをほおばる。
最上川:カロリーを気にせずに、がっつりと生クリームにおぼれたい。
小読谷:食べることばっかりだな。
最上川:三大欲求のひとつだもの!
小読谷:三大なんちゃらって好きだね。
最上川:三大珍味言える?
小読谷:キャビア、フォアグラ、めんたいこ。
最上川:めんたいこは違う。
小読谷:いいや、違くない。
最上川:博多とかでだけだよそれ。
小読谷:ふざけんな。
最上川:キャビア、フォアグラ、鮭とば。
最上川:これが三大珍味だよ。
小読谷:絶対ちがう。めんたいこより違う。
最上川:なんでよ、鮭とばおいしいよ?
小読谷:おいしいかどうかじゃないんだよ。
小読谷:それならめんたいこのほうがおいしいだろ。
最上川:まって。今ホイップクリームの話。
小読谷:お前がしはじめたんだよ?
最上川:ホイップクリームはさ、すべてが優しいよね。
最上川:口に入れた瞬間に、やさしさしかない。
小読谷:人ってさ、一番最初に感じる味覚は「甘味」なんだってな。
最上川:そう。母乳は甘いからね。
最上川:ほかの物と間違えないように、甘くするんだって。
最上川:もともとは血液だよ?
最上川:血液の、人間のからだの甘味なんだよね、母乳って。
小読谷:甘いのが大好きな人間ってのは、
小読谷:実はものすごくマザコンで、甘えん坊っていう説が
小読谷:提唱されていたな。
最上川:そう、甘味は直結した「愛のカタチ」だからね。
小読谷:一概にそうと言い切れるわけじゃないけどな。
最上川:でも、甘味にあまえていたいな。
最上川:やわらかくて、あまくて、誰も傷つけない
最上川:甘くて、甘くて、甘い、そんなクリームに。
小読谷:で、健康診断でD判定でて、体に傷つけられるんだぜ。
最上川:やめて!!!!
0:「明日死ぬためにすること」⑥気の合う友人と話す。
最上川:恋人がいる人は、恋人っていうかもだけどね。
小読谷:明日死ぬって中でなかなかにハードなスケジュールだよな。
小読谷:ハードディスクぶっ壊して、
小読谷:ウーパールーパー食べて、
小読谷:女装して、
小読谷:交換日記書いて、
小読谷:ホイップクリームにまみれたパンケーキを食う、
小読谷:で、友達に会うって。
最上川:一日を通してみたらリア充だよね。
小読谷:いや、リア充は芋虫性癖じゃないから。
最上川:いるかもしれないでしょ!!!!!
小読谷:ここまでいろいろ充実した一日を過ごしたらさ
小読谷:案外、しにたいなんて気持ちは吹っ飛んじゃうかもな。
最上川:そう簡単にいかないでしょー。
小読谷:そうか?
最上川:そうだよ、例えばさ。
最上川:頑張って頑張って、信じぬいてやってきた
最上川:仕事や特技や趣味に裏切られたり
最上川:大切にしてきたはずのものが
最上川:実はただの錆の塊だって気が付いて
最上川:手放そうにも、手に錆が付きすぎて
最上川:赤く、なってしまって、とれなかったり。
最上川:夜眠れなかったり。
最上川:楽しいと思ってたことも、なぜか空虚に感じて。
最上川:過去を振り返ることも、苦痛になったら
最上川:一日、そんな楽しい時間を過ごしたくらいじゃ
小読谷:そんな気持ちは晴れないって?
最上川:うん、たぶんね。
小読谷:なあ、最上川。
最上川:なに?小読谷。
小読谷:お前、今日の昼、何食べた?
最上川:・・・富士そばの、肉そば天丼セット。
小読谷:嘘つくなよ。口元にクリームすこしついてんぞ。
最上川:えっ!?うそ、ちゃんと拭いたのに。
小読谷:うそだよ。ついてない。
最上川:・・・。
小読谷:交換日記は、できたのか?
最上川:・・・できるほど、友達いなかった。
小読谷:女装は、どうだった?かわいいって言われたか?
最上川:ツイッターに裏垢女子として投稿してみたけど、だめだった。
小読谷:そりゃそうだろうな。かわいいは一日では作れない。
最上川:ね。女の子ってすごいな。いつも努力してるんだ。
小読谷:お前よりはな。
最上川:いうねえ。
小読谷:ウーパールーパーなんてどこで食べたんだよ?
最上川:新小岩にあるんだよ。ゲテモノ料理出す居酒屋さん。
小読谷:呼べよ。普通に。
最上川:ごめん。
小読谷:ハードディスク、壊すの大変だったろ?
最上川:難しかったから、一式燃やしてきた。
小読谷:あれ、燃やしたくらいじゃ、すぐ復旧できるぞ?
最上川:え、うそ。
小読谷:うそ。
最上川:ちょっとやめてよ!!!
小読谷:ごめんごめん。
最上川:明日しにたい。
小読谷:また、急な話だね。
最上川:急なのかな、どうなんだろう。
最上川:ずいぶん前から、実際には思ってたのかもしれない。
最上川:ただ、それが、きっかけが無かっただけで。
小読谷:うん。
最上川:小読谷はさ、しにたいって思ったこと、ある?
小読谷:何度も。
最上川:そういう時、どうしたらいいのかな。
最上川:どうやってさ、小読谷は今を生きてるの?
最上川:わかんないんだ、もう。
小読谷:俺にもわからないし、たぶん誰にもわからないと思うよ。
小読谷:生きたいと思う理由も、死にたいと思う理由も。
小読谷:すべてをわかった状態で歩んでいけたら
小読谷:それこそ、幸せかもしれないけど。
最上川:うん・・・。
小読谷:お前のしたいこと、7個目、あててやろうか?
最上川:・・・うん。
小読谷:「明日死ぬためにすること」⑦たばこを吸ってみる。
最上川:・・・すごいね。
小読谷:あってたろ?
最上川:うん。正解。
小読谷:はじめて正解したわ。
最上川:なにが?
小読谷:世界三大珍獣も、世界三大珍味も
小読谷:当てられなかったけど。
最上川:そういうこと。
小読谷:で、明日新小岩駅のホームにいくって?
最上川:・・・。
小読谷:とめねえよ、俺は。
最上川:ありがとう。
小読谷:ありがとう、はおかしいけどな。
最上川:でも、ありがとう。
最上川:たぶん俺、一番の友達、小読谷だと思ってるから。
小読谷:ほんとう友達いねえよな、おまえ。
最上川:うん。
小読谷:友達はいないわ、仕事は無くすわ、
小読谷:恋人には逃げられるわ、あとなんだっけ、バイク盗まれたって?
最上川:いや、スクーターだけどね・・・。
小読谷:で、ほかには?
最上川:そんな、深い理由が他にあるわけじゃないんだけどさ。
小読谷:うん。
最上川:履歴書に、自分の人生を書いてるときに、
最上川:あまりにも真っ白で、なんだか
小読谷:意味のないものに感じたって?
最上川:・・・。
小読谷:なんも持ってない人間は、性癖に「芋虫」とか言わないとおもうぜ?
最上川:もう芋虫の話はやめてよ!
小読谷:俺は、とめねえよ。
最上川:・・・。
小読谷:お前がどれだけ頑張ってきたかわかってる。
小読谷:お前がどんな裏切りを受けたのかも、
小読谷:想像にたやすい。
小読谷:お前が頑張ってたのがわかるから、
小読谷:お前にがんばれなんて言葉はかけない。
小読谷:だから、俺は、とめないよ。お前のこと。
最上川:・・・ありがとう。
小読谷:だが。
最上川:・・・だが?
小読谷:最後に俺の話を聞いてから、明日を迎えろ。
最上川:え・・・?
小読谷:「明日死のうとしている友人のためにしたいこと」そのいち・・・・
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