当サイトに掲載されている作品を使用する際は、利用規約に同意したものと見なします。

かならず使用前に利用規約の確認をよろしくお願い致します。


▼【シナリオサムネイル(表紙)】の使用について▼

事前に作者まで連絡をお願いします。

無断使用が確認出来た場合は、表紙使用料3000円のお支払いに承諾されたと見なします。


下記ツイートボタンからシナリオのツイート、サイトのフォローなども協力よろしくお願いします!

臍帯とカフェイン

サイトフォローもよろしくね!


「明日死ぬためにする、7つのこと。」(0:0:2)


【配役】

最上川:もがみがわ この話を持ち掛けた人

小読谷:こどくたに この話を持ち掛けられた人

※性別不問




 : 

0:夏の終わり、秋口の来る

0:涼しげな公園のベンチにて。

 : 

最上川:明日しにたい。

小読谷:また急な話だね。

最上川:と、したら人は何をしたくなると思う?

小読谷:あ、しにたいわけじゃないのか。

最上川:もしもの話だよ。もしもの。

小読谷:んー、しぬって例えばどんなふうに?

最上川:どうなふうに、というと?

小読谷:いやだってさ、今日(こんにち)人って簡単に死なないでしょう?

最上川:うーん。

小読谷:医療が発展、しにたくてもしねないからだ。

最上川:不老不死はないけどね?

小読谷:あるようなもんだろ。昔は50代まで生きて上々だった。

小読谷:いまじゃ70代、80代まで生きてやっと大往生(だいおうじょう)だ。

最上川:まあ、それはたしかに。

小読谷:人はお金がなくても、働いてなくても、なんとなく生きていられる。

最上川:そうかな?そんなことなくない?

小読谷:あるよ。今は生活保護だって充実してる。

小読谷:コロナ失業、なんてのもあって

小読谷:いろんな補償も受けられるようになってる。

最上川:でもそれは一握りの人だけでしょう?

小読谷:でも極論、ホームレスになったとしても生きることはできるよ。

小読谷:日本は気候も安定してる、こと東京でなら

小読谷:食料の配給も、衣服の配給も受けられる。

最上川:まあ、そうかもしれない。

小読谷:そんな「しににくい」世の中でどうやってしぬの?

最上川:それこそ、自殺とかさ。

小読谷:じさつ?

最上川:そう。

小読谷:じゃあ、今から話す内容は、

小読谷:自分でしにたいと思っている人間が

小読谷:しぬまえに何をしたいのか?を話す、ってことでいいの?

最上川:うん、まあ、そうかな。

小読谷:おーけー、いいよ、状況はわかった。

最上川:ありがとう。そしたら話していこうと思うんだけど・・・。

小読谷:あ、まって。

最上川:まだなんかあるの?

小読谷:どうやってしぬの?じさつの方法は?

最上川:やたらディテールにこだわるじゃん。

小読谷:大事でしょ。そういうのって。

最上川:んー、そういうものかなあ。

小読谷:そうだよ。さ、どういう風にじさつする?

最上川:んー、練炭自殺はなんかこう、苦しいって聞くし

最上川:そもそも部屋を目張りして、練炭を焚いてる時点で

最上川:冷静になってしまいそうだ。

小読谷:まあ、それはありそうだね。

小読谷:ドアの隙間をガムテープでべたべたにしてるときなんて

小読谷:「これ後片付けする人大変だろうな」とか

小読谷:考えちゃうかもね。

最上川:敷金だけでなんとかなるかな?とかね。

小読谷:まあ、人がしんでた時点で事故物件だから

小読谷:敷金どころじゃないけどね。

最上川:じゃあ、あれだ、かの文豪と同じで、入水自殺!

小読谷:どこで?

最上川:どこでって。どこがいいとおもう?

小読谷:確実じゃないよ?

最上川:温泉とか、ウユニ塩湖とか・・・。

小読谷:なおさらしぬきあんの?って思ってる、今。

最上川:温泉に至っては入水じゃなくて入浴だね。

小読谷:ウユニ塩湖なんて塩分濃度高いから沈まないよ。

最上川:ごめん、ふざけすぎた。

小読谷:ちょっとまじめにしんで?ほんとに。

最上川:言い方よ。んー、そうだな。

最上川:ビルの屋上から飛び降りてみるとか。

小読谷:自分の持ちビルとかある?

最上川:ない。

小読谷:じゃあほぼ無理。日本の警備力なめないで。

最上川:ぐぬぬぬ・・・。

小読谷:もっとちゃんとしたディテールを頼むよ。

最上川:・・・じゃあ、新小岩駅の3番線、快速特急が

最上川:通るホームで、電車に。

小読谷:あそこ、最近ガードついたからもう無理でしょ?

最上川:ううん、13番目の車両以降はまだ工事が間に合ってなくて

最上川:いまだに駅員さんが紐ひいてる。

小読谷:なるほど。それなら強行突破という手をとれるね。

最上川:うん。

小読谷:おーけー。それでいこう。

最上川:気に入ってもらえてよかった。

小読谷:さあ、もういいよ、はじめて。

最上川:なんか調子狂うなあ。

最上川:んーと、じゃあ、はじめるよ。

0:「明日死ぬためにすること」①PCのハードディスクを破壊する

最上川:ハードディスクドライブはまじでぶち壊したい。

小読谷:相当見られたらやばいもん入ってるのね?

最上川:え、だっていやじゃない?ていうか、あるよね。

最上川:いかがわしいものとか、あるよね?ふつう。

小読谷:まあ、あるけど。

最上川:それがしんだあと、家族や友人や、

最上川:状況次第では警察の方々とかにも

最上川:中身をあさられて

最上川:「えっ、あっ、へえ、芋虫を?うっわ、そんな性癖あるんだ。」

最上川:とか言われるんだよ?

最上川:耐えられない。

小読谷:まって。芋虫ってなに。

最上川:・・・。

小読谷:ちょっとまって。芋虫ってなんなの。

最上川:いや、ちょっと言えない。

小読谷:なにそれこわい。

最上川:すまない、忘れてくれ。

小読谷:やめてよ!変な記憶つけないでよ!

小読谷:心のハードディスクに残っちゃったよ!!

0:「明日死ぬためにすること」②ゲテモノ料理を食べる

最上川:一度も食べたことのない、たぶんおそらく普通に生きていたら

最上川:食べることはないのであろう料理を口にしてみたい。

小読谷:例えば???

最上川:ウーパールーパーとか。

小読谷:あんなかわいいものを。

最上川:オオサンショウウオとか。

小読谷:ウーパールーパーとあんまかわらんのよ。

最上川:プラナリアとか、茶碗いっぱいに盛って

最上川:酢醤油とかかけて食べてみたい。

小読谷:咀嚼したぶんだけ細切れになって

小読谷:おなかの中で増殖しそうだね?

最上川:オカピとかどんな味するとおもう?

小読谷:世界三大珍獣を食べようとするな。

最上川:むしろ世界三大珍獣って何かしってるの?

小読谷:しってるよ。オカピだろ、パンダだろ、あと・・・

最上川:あと?

小読谷:・・・ゴリラ?

最上川:違います。

小読谷:・・・ゴリラって人の肉の味に近いのかな?

最上川:どうなんだろう。人に近しいけど、食べてるのはほぼ草でしょ?

小読谷:じゃあ、草食動物みたいな味なのかね。

最上川:人と分岐点が同じって言われてるクジラとかは

最上川:ちゃんと魚の肉の味、みたいな味するよね。

小読谷:クジラを食べるのは、いわば人肉食とおなじ?

最上川:むずかしい定義な気がする。

最上川:ところで、世界三大珍獣の最後の一匹は?

小読谷:・・・カモノハシ?

最上川:違います。正解はコビトカバ。

小読谷:なんでカバだよ。カモノハシのほうが珍獣みあるだろ。

最上川:珍獣みがある、ってはじめて聞いた言葉だよ。

小読谷:だってあいつ哺乳類なのに卵産むんだよ?

小読谷:意味わからなくない?

最上川:後ろ足には、毒針もってるしね。

小読谷:なんかモンハンの、ボツになったモンスター感あるよね。

最上川:ドラクエのボツになったモンスター感もある。

小読谷:エフエフの・・・ってもうやめよう。

最上川:そうだね、不毛だ。

0:「明日死ぬためにすること」③女装をしてみる

最上川:かわいいって言われたい。

小読谷:かわいいよ。

最上川:今じゃない。

小読谷:かわいいよ。

最上川:やめて、そうじゃないの。

小読谷:めっちゃかわいい。

最上川:やめて!!!!違うんだって!!!

小読谷:なんだよ、わがままだな。

最上川:女装をしたうえで、その女装がかわいいって言われたいの。

最上川:わかる?今この姿をかわいいって言われたいわけじゃないの。

小読谷:なんでよ、だって自分自身でしょ?

小読谷:かわいい女の子になりたい、じゃなくて

小読谷:あくまで「女装したい」なんでしょ?

小読谷:女装したうえで、芋虫とほにゃららしたいんでしょ?

最上川:芋虫の話今しないで。

小読谷:ちがうの?

最上川:違くはないけど。

小読谷:ほら。

最上川:違うんだよ。自分自身をほめてほしいんじゃないの。

最上川:だって、明日しのうとしてるやつだよ?

最上川:自分自身のことなんてすきなわけないんだよ。

最上川:そんな嫌になった自分自身を

最上川:ほめてほしいわけじゃないの。

小読谷:わかんねえよ。

最上川:そんな嫌いな自分自身から生まれいでた

最上川:「美しいウソ」を「かわいいかわいい」って

最上川:愛でてほしいんだよ。

最上川:そんな、狂おしくて

最上川:まっしろなウソに包まれたいんだよ。

小読谷:で、求められたい?

最上川:願わくば。求められてもみたい。

小読谷:それは、「どっちで?」

最上川:わからない。でも、求められてみたい。

小読谷:「どっちに?」

最上川:わからない。

小読谷:屈折してるんだな。

最上川:そう、屈折してる。でも、しぬまえだよ?

小読谷:うん。

最上川:心残りは、いやだからね。

小読谷:芋虫に求められたいんだな。

最上川:やめて!芋虫のはなししないで!

最上川:そこナイーブだから!

0:「明日死ぬためにすること」④交換日記をしてみる

最上川:交換日記ってものをしてみたい。

小読谷:誰と?

最上川:誰でもいい。

小読谷:なんで?

最上川:今まで生きてきて、交換日記ってしたことないんだよね。

小読谷:まあ、日記自体をあまり書かないもんな。

最上川:うん、いざやってみても日記って

最上川:三日坊主で終わっちゃうんだよね。

小読谷:俺も、夏休みの絵日記とか毎日続かなかった。

最上川:日記って難しいよね。自分に宛てて書くんでしょ。

小読谷:いや、少し違うんじゃないか?

最上川:しんだあとの遺族とかに向けて書くの?

小読谷:いや、「未来の自分」のために、書くもんじゃないのか。多分。

最上川:未来の自分。

小読谷:そう、未来の自分。

最上川:どういうこと?

小読谷:なんらかでつまずいたり、後悔したり

小読谷:苦しくなったり、いやになったり

小読谷:しんどいってなったときに

小読谷:「あの頃はこう考えてた」

小読谷:「自分ってこういう人間だった」

小読谷:「こういうことが好きだった」

小読谷:そういう「自身のヒント」や「ピース」を

小読谷:そこに残すのが日記なんじゃない?

最上川:じゃあ、その日記を書いてなかった人たちは

最上川:立ち止まったときに、それを振り返ることが

最上川:できなくなってしまうのかな。

小読谷:そういうわけではないだろうな。

小読谷:ただ、それをインストールしやすくするため。

小読谷:そういうものなんじゃないか。

最上川:なるほどね。

最上川:じゃあ、それだと、あれだよね。

最上川:一人で書く日記もある意味交換日記なのかな。

小読谷:「過去の自分」との、交換日記?

最上川:そう。

小読谷:まあ、そうかもしれないな。

最上川:でも、残しておくことがすべて正義なのかな。

小読谷:そうではないだろうな。

最上川:きっと、その書き記された自身の過去のほうが

最上川:まぶしすぎたり、煌びやかで

最上川:羨ましくなったりすることもあるよね。

小読谷:ああ、あるだろうな。

最上川:しかもそれは、もう二度と手に入らないものばかり。

最上川:人間はさ、「タイムマシン」は持ってるって

最上川:聞いたことがあるんだ。

小読谷:タイムマシン?

最上川:そう。未来に行くためのタイムマシン。

小読谷:なるほど?

最上川:でも、過去に行くためのタイムマシンは持ってない。

最上川:絶対前にしか進めない。

最上川:後悔しても、苦しんでも、失ったものを

最上川:ふたたび手に入れることは絶対にできないんだ。

小読谷:人も物も、ずっと同じってことはないものな。

最上川:そう。それが、ちょっと苦しいよね。

小読谷:変わらないものも、あるだろ。

最上川:例えば?

小読谷:「時間。」

最上川:「時間?」

小読谷:時間の流れだけは、絶対に変わらない。

小読谷:秒針の進み方は、何があっても、いつだって平等で

小読谷:ずっと不変なものだろう?

最上川:・・・そうだね。

小読谷:でもさ。

最上川:ん?

小読谷:最愛の、めちゃくちゃ好きな女の子とさ

最上川:うん。

小読谷:一緒に過ごすカフェでの時間はあっという間なのにさ。

最上川:うん。

小読谷:新小岩駅から市川駅までの約10分間はものすごく長く感じる。

最上川:・・・うん。

小読谷:おなじ10分間でも、はやさが変わるのはさ。

小読谷:お前自身の過去の積み重ねが

小読谷:「その時間さえも振り返ったからなんじゃないの?」

最上川:・・・難しいこというね?

小読谷:よく言われる。

0:「明日死ぬためにすること」⑤ホイップクリームたっぷりのパンケーキをほおばる。

最上川:カロリーを気にせずに、がっつりと生クリームにおぼれたい。

小読谷:食べることばっかりだな。

最上川:三大欲求のひとつだもの!

小読谷:三大なんちゃらって好きだね。

最上川:三大珍味言える?

小読谷:キャビア、フォアグラ、めんたいこ。

最上川:めんたいこは違う。

小読谷:いいや、違くない。

最上川:博多とかでだけだよそれ。

小読谷:ふざけんな。

最上川:キャビア、フォアグラ、鮭とば。

最上川:これが三大珍味だよ。

小読谷:絶対ちがう。めんたいこより違う。

最上川:なんでよ、鮭とばおいしいよ?

小読谷:おいしいかどうかじゃないんだよ。

小読谷:それならめんたいこのほうがおいしいだろ。

最上川:まって。今ホイップクリームの話。

小読谷:お前がしはじめたんだよ?

最上川:ホイップクリームはさ、すべてが優しいよね。

最上川:口に入れた瞬間に、やさしさしかない。

小読谷:人ってさ、一番最初に感じる味覚は「甘味」なんだってな。

最上川:そう。母乳は甘いからね。

最上川:ほかの物と間違えないように、甘くするんだって。

最上川:もともとは血液だよ?

最上川:血液の、人間のからだの甘味なんだよね、母乳って。

小読谷:甘いのが大好きな人間ってのは、

小読谷:実はものすごくマザコンで、甘えん坊っていう説が

小読谷:提唱されていたな。

最上川:そう、甘味は直結した「愛のカタチ」だからね。

小読谷:一概にそうと言い切れるわけじゃないけどな。

最上川:でも、甘味にあまえていたいな。

最上川:やわらかくて、あまくて、誰も傷つけない

最上川:甘くて、甘くて、甘い、そんなクリームに。

小読谷:で、健康診断でD判定でて、体に傷つけられるんだぜ。

最上川:やめて!!!!

0:「明日死ぬためにすること」⑥気の合う友人と話す。

最上川:恋人がいる人は、恋人っていうかもだけどね。

小読谷:明日死ぬって中でなかなかにハードなスケジュールだよな。

小読谷:ハードディスクぶっ壊して、

小読谷:ウーパールーパー食べて、

小読谷:女装して、

小読谷:交換日記書いて、

小読谷:ホイップクリームにまみれたパンケーキを食う、

小読谷:で、友達に会うって。

最上川:一日を通してみたらリア充だよね。

小読谷:いや、リア充は芋虫性癖じゃないから。

最上川:いるかもしれないでしょ!!!!!

小読谷:ここまでいろいろ充実した一日を過ごしたらさ

小読谷:案外、しにたいなんて気持ちは吹っ飛んじゃうかもな。

最上川:そう簡単にいかないでしょー。

小読谷:そうか?

最上川:そうだよ、例えばさ。

最上川:頑張って頑張って、信じぬいてやってきた

最上川:仕事や特技や趣味に裏切られたり

最上川:大切にしてきたはずのものが

最上川:実はただの錆の塊だって気が付いて

最上川:手放そうにも、手に錆が付きすぎて

最上川:赤く、なってしまって、とれなかったり。

最上川:夜眠れなかったり。

最上川:楽しいと思ってたことも、なぜか空虚に感じて。

最上川:過去を振り返ることも、苦痛になったら

最上川:一日、そんな楽しい時間を過ごしたくらいじゃ

小読谷:そんな気持ちは晴れないって?

最上川:うん、たぶんね。

小読谷:なあ、最上川。

最上川:なに?小読谷。

小読谷:お前、今日の昼、何食べた?

最上川:・・・富士そばの、肉そば天丼セット。

小読谷:嘘つくなよ。口元にクリームすこしついてんぞ。

最上川:えっ!?うそ、ちゃんと拭いたのに。

小読谷:うそだよ。ついてない。

最上川:・・・。

小読谷:交換日記は、できたのか?

最上川:・・・できるほど、友達いなかった。

小読谷:女装は、どうだった?かわいいって言われたか?

最上川:ツイッターに裏垢女子として投稿してみたけど、だめだった。

小読谷:そりゃそうだろうな。かわいいは一日では作れない。

最上川:ね。女の子ってすごいな。いつも努力してるんだ。

小読谷:お前よりはな。

最上川:いうねえ。

小読谷:ウーパールーパーなんてどこで食べたんだよ?

最上川:新小岩にあるんだよ。ゲテモノ料理出す居酒屋さん。

小読谷:呼べよ。普通に。

最上川:ごめん。

小読谷:ハードディスク、壊すの大変だったろ?

最上川:難しかったから、一式燃やしてきた。

小読谷:あれ、燃やしたくらいじゃ、すぐ復旧できるぞ?

最上川:え、うそ。

小読谷:うそ。

最上川:ちょっとやめてよ!!!

小読谷:ごめんごめん。

最上川:明日しにたい。

小読谷:また、急な話だね。

最上川:急なのかな、どうなんだろう。

最上川:ずいぶん前から、実際には思ってたのかもしれない。

最上川:ただ、それが、きっかけが無かっただけで。

小読谷:うん。

最上川:小読谷はさ、しにたいって思ったこと、ある?

小読谷:何度も。

最上川:そういう時、どうしたらいいのかな。

最上川:どうやってさ、小読谷は今を生きてるの?

最上川:わかんないんだ、もう。

小読谷:俺にもわからないし、たぶん誰にもわからないと思うよ。

小読谷:生きたいと思う理由も、死にたいと思う理由も。

小読谷:すべてをわかった状態で歩んでいけたら

小読谷:それこそ、幸せかもしれないけど。

最上川:うん・・・。

小読谷:お前のしたいこと、7個目、あててやろうか?

最上川:・・・うん。

小読谷:「明日死ぬためにすること」⑦たばこを吸ってみる。

最上川:・・・すごいね。

小読谷:あってたろ?

最上川:うん。正解。

小読谷:はじめて正解したわ。

最上川:なにが?

小読谷:世界三大珍獣も、世界三大珍味も

小読谷:当てられなかったけど。

最上川:そういうこと。

小読谷:で、明日新小岩駅のホームにいくって?

最上川:・・・。

小読谷:とめねえよ、俺は。

最上川:ありがとう。

小読谷:ありがとう、はおかしいけどな。

最上川:でも、ありがとう。

最上川:たぶん俺、一番の友達、小読谷だと思ってるから。

小読谷:ほんとう友達いねえよな、おまえ。

最上川:うん。

小読谷:友達はいないわ、仕事は無くすわ、

小読谷:恋人には逃げられるわ、あとなんだっけ、バイク盗まれたって?

最上川:いや、スクーターだけどね・・・。

小読谷:で、ほかには?

最上川:そんな、深い理由が他にあるわけじゃないんだけどさ。

小読谷:うん。

最上川:履歴書に、自分の人生を書いてるときに、

最上川:あまりにも真っ白で、なんだか

小読谷:意味のないものに感じたって?

最上川:・・・。

小読谷:なんも持ってない人間は、性癖に「芋虫」とか言わないとおもうぜ?

最上川:もう芋虫の話はやめてよ!

小読谷:俺は、とめねえよ。

最上川:・・・。

小読谷:お前がどれだけ頑張ってきたかわかってる。

小読谷:お前がどんな裏切りを受けたのかも、

小読谷:想像にたやすい。

小読谷:お前が頑張ってたのがわかるから、

小読谷:お前にがんばれなんて言葉はかけない。

小読谷:だから、俺は、とめないよ。お前のこと。

最上川:・・・ありがとう。

小読谷:だが。

最上川:・・・だが?

小読谷:最後に俺の話を聞いてから、明日を迎えろ。

最上川:え・・・?

小読谷:「明日死のうとしている友人のためにしたいこと」そのいち・・・・

0コメント

  • 1000 / 1000