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だから、明日はナポリタン。(2:0:0)

【配役】
ユキ:男性 青年
サチ:男性 ユキの育ての親


 : 
 : 【だから明日はナポリタン】
 : 
ユキ:「サチさん、それ。」
サチ:「……。」
ユキ:「……ねえ、サぁチさん。」
サチ:「……。」
ユキ:「サチさんってば!それ、とってよ!」
サチ:「ユキくん。」
ユキ:「なに?」
サチ:「それじゃわかりませんよ。」
ユキ:「……粉チーズ。」
サチ:「はい、粉チーズですね。」
ユキ:「……ありがと。」
サチ:「どういたしまして。」
0:気まずい空気が流れる。
ユキ:「……。」
サチ:「……。」
ユキ:「……ごめんって。」
サチ:「なにがですか。」
ユキ:「約束、守らなくて……。」
サチ:「約束?さあ、知りません。」
ユキ:「……この家のルール。必ず夜8時には一緒に夜ご飯を食べる。」
サチ:「ああ、覚えてたんですね。」
ユキ:「……ごめんって。」
サチ:「いいですよ、別に。」
ユキ:「いや、怒ってるじゃん……。」
サチ:「怒ってません。」
ユキ:「怒ってるよ絶対。」
サチ:「何に怒るっていうんですか、一体。」
ユキ:「約束を、守らなかったこと……。」
サチ:「……ユキくんも、もう子供じゃないですから。」
ユキ:「……サチさん……。」
サチ:「……はあ、すいません、少し大人げなかったです。」
ユキ:「いや……俺の方こそ、ごめん……。」
サチ:「……今日は、なんで遅くなったんですか?約束を破ってしまうことなんて、今まで一度も無かったかから、すごく心配したんです。」
ユキ:「その……ちょっと彼女と別れ話を……。」
サチ:「ま、またですか。」
ユキ:「面目ない。」
サチ:「その、彼女さんってこの間家に連れてきていたショートカットの子ですか?」
ユキ:「あー……。」
サチ:「あー……?」
ユキ:「……その子の次……。」
サチ:「次!?」
ユキ:「の……次です。」
サチ:「つ、次の次!?も、もう、まったくユキくんは!いくらモテると言っても節操が無さすぎますよ!?」
ユキ:「……すいません。」
ユキ:「それで、別れ話が長引いちゃって。」
サチ:「そ、そうだったんですね。」
ユキ:「うん、ごめん。」
サチ:「い、いや、いいんですけどね。」
サチ:「……どうして、別れてしまったんですか?」
ユキ:「飯……。」
サチ:「飯……?」
ユキ:「残すんだよ、そいつ。」
サチ:「のこす……?」
ユキ:「うん。なんか、SNSに載せるだかで食えないもんが入ってても注文してさ。それで、食べられないからって平気で残すの。」
サチ:「はあ……最近の若い子、って感じですねえ。」
ユキ:「なんかそれが、許せなくてさ。」
サチ:「そうだったんですね、ふふ。」
ユキ:「なに?」
サチ:「いいえ、ユキくんらしいなって思っただけですよ。」
ユキ:「……なんかその、大人の余裕みたいなの。むかつく。」
サチ:「ふふ、すねないでください。」
サチ:「昔から、ユキくんは食べ物を大事にしてましたもんね。」
ユキ:「……食べられることが、当たり前じゃなかったこと、あるからさ。」
サチ:「うん。」
ユキ:「やっぱり、食べることは大事だし、食べ物も、大事に食べたいよ、俺は。」
サチ:「いいと思いますよ、そういう気持ち。」
ユキ:「そう、かな。」
サチ:「ええ、ただ余りにも取っかえ引っ変えするのは好ましくないですね。」
ユキ:「それは……すいません。」
サチ:「……ふふ。」
ユキ:「な、なんだよ。」
サチ:「昔から、ユキくんは変わりませんね。」
ユキ:「そ、それってどういう意味?」
サチ:「怒られたり落ち込んだりすると、今みたいに、こうやって唇がとんがります。」
ユキ:「し、してねーよ!そんなこと!」
サチ:「あれー?気づいてないんですか?」
ユキ:「絶対してない!」
サチ:「そうだ、そうでした。確かはじめて会った時もこうして口をとがらせて拗ねてたんです。」
ユキ:「ちょっとやめてよ。」
サチ:「ふふ、いいじゃないですか。」
サチ:「おもちゃが買って貰えなかったとか、なんだかそんな理由で。親戚一同が集まってる中ひとりでブスーっと拗ねてて。」
ユキ:「……ちょっと思い出してきた。」
サチ:「お子様ランチ、頼んだの覚えてますか?」
ユキ:「……赤い車のプレートのやつ。」
サチ:「そう!ふふ、よく覚えてましたね。」
ユキ:「……覚えてるよ、そりゃ。」
サチ:「あの時はユキくん、小学……。」
ユキ:「小学三年生。」
サチ:「そうでしたね。丁度こう、私の隣に座ってて。」
ユキ:「……母さんが、ずっと忙しそうにしてたからさ。」
サチ:「寂しかったんですね?」
ユキ:「ち、ちげーよ!面白くなかっただけ!」
サチ:「ふふ。そのあとそう言えば、なんかの話をして盛り上がりましたよね?」
ユキ:「シャッターマン……。」
サチ:「あー!そうそう!そうです!フラッシュ戦隊シャッターマン。」
サチ:「懐かしいですね、たまたま携帯電話のストラップにつけていて。」
サチ:「……そう言えば、その時に、ユキくんに『あーん』ってしてあげましたね。」
ユキ:「なんでそんな事は覚えてんの。」
サチ:「覚えてますよ!可愛かったですね、あの時のユキくん。ナポリタンをがぶっと頬張って。」
ユキ:「もういいってば。」
サチ:「ふふ、そうだ、してあげましょうか?」
ユキ:「え?」
サチ:「あーん、ですよ。あーん。」
ユキ:「や、やだよ、そんな。」
サチ:「ふふ、嫌なら尚更です。今日ルールを破ってしまったお仕置きですね。」
ユキ:「い、いやだってば!」
サチ:「ほら、ユキくん、あーん。」
ユキ:「ぐ……。」
サチ:「あーん。」
ユキ:「恥しいって……。」
サチ:「食べ物は大事にするんでしょう?ほら、あーん。」
ユキ:「……あーん。」
0:ユキ、サチから差し出されたナポリタンを頬張る。
サチ:「どうですか?美味しいですか?」
ユキ:「……味なんて、わかるかよ……。」
サチ:「ふふ、可愛い姿が見れました。」
ユキ:「……あの時さ。」
サチ:「ん?なんですか?」
ユキ:「なんで、構ってくれたの?俺のこと。」
サチ:「なんだか、つまらなそうにしてたのも気になりましたし。」
サチ:「なんかこう、大人達は勝手に飲み食いして、子供の事なんて見向きもしないような、そんな場だったでしょう?」
ユキ:「……うん。」
サチ:「なんだか、自分とダブったんですよ。」
ユキ:「……それは、サチさんが、男性を好きだから?」
サチ:「……ええ、そうですね。煙たがられていたと言うか、こう、腫れ物扱いと言いますかね。」
ユキ:「……。」
サチ:「理解のある家でも無かったですからね。」
サチ:「気持ち悪いとか、不潔だとかで。」
ユキ:「……そんなことないから。」
サチ:「……ありがとう、ユキくん。」
ユキ:「サチさんには、頭が上がらないよ、俺は。」
ユキ:「母さんが病気で死んで、親父はギャンブルと酒ばっか。」
ユキ:「それが出来なくなるとすぐどっかに出かけて行って、家にいる日を数える方が簡単だった。」
サチ:「……そうですね。」
ユキ:「親戚中、たらい回しにされてさ。」
サチ:「はい。」
ユキ:「いよいよ次が最後だなーって。」
ユキ:「これでダメならもう俺、生きてる意味なんて無いよなーって思って、この家に来たんだ。」
サチ:「……はい。」
ユキ:「……ありがとね、サチさん。」
サチ:「そんな、御礼だなんて。」
ユキ:「サチさんが俺を受け入れてくれたから、俺、いまこうして美味しくナポリタン食べられてんだもん。」
ユキ:「感謝しても、しきれないよ。」
サチ:「……ユキくん。」
ユキ:「……なんかさ、懐かしい気持ちにもなったし、いま、だから、聞けるかなって思ってるん、だけどさ。」
サチ:「……なんですか?」
ユキ:「……どうして、サチさんは、恋人を作らないの?」
サチ:「……え?」
ユキ:「わかるよ、ずっと俺の為に仕事して、家事もしてくれて、誰かと出掛ける事なんて見たこと無いくらいだ。恋人が、居ないことくらい。」
サチ:「……も、モテないんですよわたしは。ユキくんと違って。」
ユキ:「そんなわけないよ。」
サチ:「ありますよ。」
ユキ:「ない。」
サチ:「ゆ、ユキくん、なんで近づいてくるんですか。」
ユキ:「サチさんがモテ無いわけないよ。」
サチ:「ゆ、ユキくん?」
ユキ:「こんなに綺麗な顔して。年齢だって、言われても信じられないくらいだ。」
サチ:「ユキくん、近いですって。」
ユキ:「……ねえ、俺の為に、恋人作ってないの?サチさん。」
サチ:「……ち、違います。」
ユキ:「わかんないよ。」
サチ:「近いってば。どうしたんですか今日は。」
サチ:「ナポリタン、さ、冷めちゃいますよ。」
ユキ:「ちゃんとあとで食べる。」
サチ:「ゆ、ユキくん、離れてくださいって。」
ユキ:「ねえ、サチさん。」
サチ:「な、なんですか。」
ユキ:「なんで、引き取ってくれたの、俺の事。」
サチ:「そ、それは。ユキくんが、大変な目にあって……それを……こう……助けてあげたくて。」
ユキ:「ねえ。」
サチ:「な、なんですか。」
ユキ:「違うでしょ、サチさん。」
サチ:「なにが……ですか。」
ユキ:「……本当の事、言ってよ、サチさん。」
サチ:「だ、だから近いですって、ユキくん。」
ユキ:「サチさん。引き取ってくれた日にさ、俺に話してくれたでしょ。」
ユキ:「自分の恋愛対象が同性であること。」
サチ:「……言いました。」
ユキ:「それってさ。」
サチ:「……はい。」
ユキ:「俺への警告や、説明じゃなく。」
ユキ:「自分に、言い聞かせてたんじゃないの?」
サチ:「……。」
ユキ:「自分は、同性愛者だ。」
ユキ:「でも、この子は子供だから手を出しちゃいけない。」
ユキ:「だから、俺が距離を置くように、自分の事を伝えなきゃいけないって。」
サチ:「……。」
ユキ:「ねえ。」
サチ:「……は……はは……。」
サチ:「……ユキくんは、思っていたより最初から……ちゃんと大人だったんですね……。」
ユキ:「……サチさん。」
サチ:「……一目惚れ、だったん、です。」
ユキ:「一目惚れ?」
サチ:「……こんなに綺麗な男の子になってるなんて、思わなくて、一目で、可愛いと、思ってしまって。」
サチ:「……この子が、どう育っていくのか、すべてを、見たいと……思ってしまったんです。」
ユキ:「俺が、どう育つか?」
サチ:「……独占欲みたいな、もの、です。」
サチ:「……ごめんなさい、ユキくん、私は、ユキくんに感謝されるような人間じゃないんですきっと。」
サチ:「ただ、大好きだと思ってしまったものを……手の届く所に置いておきたくて……。」
サチ:「でも、だから、壊したらいけないって。」
サチ:「ユキくんの人生を、私が変えてしまったらいけないって、わかってたから。」
サチ:「手を出したりしたら、いけないって、わかってたから、だから。」
ユキ:「……うん。」
サチ:「夜ご飯を、一緒に食べるくらいの幸せだけは……許してほしくて……。」
ユキ:「だから、そのルールがあったんだね、サチさん。」
サチ:「……ごめんなさい、ユキくん、出来た大人じゃなくて……。」
0:ユキ、おもむろにナポリタンを持つ。
ユキ:「……サチさん、ほら、あーん。」
サチ:「……え?」
ユキ:「あーん。」
サチ:「な、なんですか?」
ユキ:「あーんだよ、あーん。」
サチ:「ふ、ふざけてるんですか?」
ユキ:「ふざけてねえよ。」
サチ:「……ユキくん。」
ユキ:「食べさせてやるって、サチさんにも。」
ユキ:「ほら、早く、口、開けなよ。」
サチ:「な、なんか怖いよ、ユキくん。」
ユキ:「怖くない。」
サチ:「で、でも。」
ユキ:「サチ。」
サチ:「えっ……。」
ユキ:「もう俺、子供じゃないよ。」
ユキ:「自分の食事は自分で作れる。」
ユキ:「女性の口説き方も、」
ユキ:「朝イチのコーヒーの淹れ方も知ってる。」
サチ:「……うん。」
ユキ:「でもそれ以上に、サチさん。」
ユキ:「あんたの事を一番に知ってるのは、俺だとも思ってる。」
サチ:「ユキくん……。」
ユキ:「口、開けて。」
サチ:「……は、はい。」
0:サチ、ゆっくりと口を開ける。
ユキ:「あーん。」
サチ:「ん……。」
ユキ:「おいしい?」
サチ:「……おい、しい、です。」
ユキ:「こうやって、大好きな人に、ナポリタンを食べさせる事だってできるようになった。」
サチ:「……ゆ、ユキ……くん?」
ユキ:「俺じゃ、ダメなの?サチさん。」
サチ:「……え。」
ユキ:「目の前にいる、俺だって、男なんだよ、サチさん。」
サチ:「な、何言って。」
ユキ:「目、逸らさないでよ、まじめに話してんの、今。」
サチ:「……ユキくん。」
ユキ:「一目惚れは、サチさんだけじゃないよ。」
ユキ:「……最も、俺の方が先だったけど。」
サチ:「……だって、そんな。」
サチ:「そんな、だ、だめでしょ……。」
サチ:「こんなに、年も離れてる、し……。」
サチ:「私は、いい大人なんか、じゃ、ないし……。」
ユキ:「でもこうして、育ててくれた、俺の事。」
サチ:「……うん。」
ユキ:「それは、変わらない事実だよ。サチさん。」
サチ:「……独占欲、強いよ。」
ユキ:「いいよ。」
サチ:「すぐ、ヨボヨボになっちゃうかも。」
ユキ:「うん、可愛い。」
サチ:「周りから、腫れ物扱いされちゃうよ。」
ユキ:「慣れてるよ、そんなの。」
サチ:「……困るよ。」
ユキ:「いいよ、たくさん困って。」
サチ:「だって、そんな。」
ユキ:「好きなんだよ、サチ。」
サチ:「う……。」
ユキ:「ずっと、大好きだったんだ。」
サチ:「そんなこと、だって、いきなり。」
ユキ:「……好きなんだ。」
サチ:「……今すぐ、答えは、出せないよ、ユキくん。」
ユキ:「いいよ。」
サチ:「……ごめん。」
ユキ:「でも、俺も、せっかちだからね。」
サチ:「……うん。」
ユキ:「……明日の、さ。」
サチ:「……明日の……?」
ユキ:「夜8時、またこの食卓でさ。」
サチ:「うん。」
ユキ:「ご飯を一緒に食べる時に、聞かせてよ、サチさんの、気持ち。」
サチ:「……明日。」
ユキ:「うん、明日。」
サチ:「……わかった。」
ユキ:「うん、ありがと。」
サチ:「……明日の、夜は。」
ユキ:「……明日の夜は?」
サチ:「ナポリタンを、作ります。」
ユキ:「ナポリタン?また?なんで?」
サチ:「……君が、ナポリタンを美味しく食べるのを見るのが、好きだから。」

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