当サイトに掲載されている作品を使用する際は、利用規約に同意したものと見なします。

かならず使用前に利用規約の確認をよろしくお願い致します。


▼【シナリオサムネイル(表紙)】の使用について▼

事前に作者まで連絡をお願いします。

無断使用が確認出来た場合は、表紙使用料3000円のお支払いに承諾されたと見なします。


下記ツイートボタンからシナリオのツイート、サイトのフォローなども協力よろしくお願いします!

臍帯とカフェイン

サイトフォローもよろしくね!


Vision(0:0:2)


配役:

ハインスタイン:
ガブリエル・ミュージニア・ハインスタイン。とある教会で神父をしている。男性。

ウェイン:
ジャック・ウェイン・ターナー。男性。この世界線では。

※性別変更可能

ーーー
◆あらすじ◆

「おはよう、ウェイン。よく眠れたかな。」

暗い地下室、神父の声が響く。
「よく眠れたかって?冗談が上手いね、神父様も。」
縛られもせず、ただ部屋で自由を与えられている。
あったとすれば、はじめに後頭部を強く殴られた程度。
神父であるこの男が何故、こんな奇行に及んでいるのか。
生き延びる為に、私はどうするべきか。
ーーー



ハインスタイン「おはよう、ウェイン。よく眠れたかな。」
ウェイン「よく眠れたかって?冗談が上手いね、神父様も。」
ハインスタイン「冗談ではないさ、眠りとは人類にとって必要なものだ。」
ウェイン「はっ、こんな所に閉じ込めておいて、よく言えるな」
ハインスタイン「どんな状況でも、その場の最善を考えようという教訓の話さ、ウェイン。」 
ハインスタイン「……『ジャム』は好きかね?」
ウェイン「ジャム…?突然何を言ってるんだ?質問の意図がわからないな。」
ハインスタイン「君は朝食をとらないのか?」
ハインスタイン「今朝のクッキー生地が余ったのでね、スコーンを焼いてみたんだ。」
ハインスタイン「ブリティッシュ風に、ジャムを塗ってロイヤルミルクティーでもどうかね。」
ウェイン「…そういうことか。」
ウェイン「ならば頂こうか。 ……ちなみにジャムは何味なんだ?」
ハインスタイン「ストロベリー以外のジャムを、ジャムと呼ぶとでも?」
ウェイン「ただの確認だ。ストロベリー以外はあまり好きでは無いからな。」
ハインスタイン「奇遇だね、ウェイン。」
ハインスタイン「さあ、ゆっくり、焦らず食べるといい。」

 ーーーそう言ってハインスタインは、ウェインにスコーンとストロベリージャム、ロイヤルミルクティーを渡す。

ウェイン「ああ。」

 ーーーハインスタインから渡されたものを受け取る。

ウェイン「いい色だ。」
ハインスタイン「それは、ジャムが?」
ハインスタイン「それとも、スコーンが?」
ハインスタイン「いや、器の可能性もある。」
ウェイン「なぜだろうな。スコーンにかかるジャムが…そう感じさせるのか。」
ウェイン「それとも、この白い皿がより映えさせているのか。」
ハインスタイン「それで、味は?」
ハインスタイン「どうなんだい。」
ウェイン「…先に一口ずつ、『神父様』が食べてくれないか?」
ハインスタイン「……構わないよ。」

 ーーーハインスタインはそのままスコーンをジャムにつけ、パクリとひとかじりする。

ハインスタイン「今日はバターが多すぎたかもしれないな。」
ハインスタイン「毒なんて入っていないさ、ウェイン。」
ハインスタイン「私がそんなことを……するはずないだろう?」
ウェイン「するはずがない?」
ウェイン「いきなり殴ってここに閉じ込めて…」
ウェイン「そんなやつの渡すものを信用できるか?」
ハインスタイン「そうさ、ウェイン。」
ハインスタイン「その通りだ。」
ハインスタイン「だが、私が君を殺したいと思っているなら」
ハインスタイン「何故、こうして生かしている?」
ハインスタイン「優雅な朝を伝え、ルームサービスのように朝食を運ぶ必要がある?」
ウェイン「だったら、ここから出してくれてもいいんじゃないのか?」
ウェイン「それとも、そういう趣味なのか?」
ハインスタイン「趣味、ははは、趣味か。」
ハインスタイン「私は君に、生きていて欲しいだけさ。」
ウェイン「は?」
ウェイン「ここに連れ込まれまた時点で私は……。」
ウェイン「生きていて欲しいなら、出せよ!ここから!今すぐに!!」
ハインスタイン「生きて、生き続けて、誰よりも苦しんで、苦しんで、苦しんで欲しいだけなんだよ、ウェイン。」
ウェイン「な、何言って…」
ハインスタイン「さあ、スコーンの味はどうだい、ウェイン。」
ハインスタイン「そうそう、そう言えばウェイン、こんな話を知っているかな。」
ハインスタイン「犯罪者のほとんどが、ストロベリージャムを食べていた。」
ウェイン「……。」
 ーーーウェインはスコーンかじり、ミルクティーで流し込む。
ウェイン「それが?」
ハインスタイン「笑える話だろう?ストロベリージャムなんて、誰しもが普通に食べるものだ。」
ハインスタイン「だが、そうだろう、ウェイン。ここは教会だ。」
ハインスタイン「神曰く、罪の無い人間など居ない。」
ウェイン「ああ……そうだな。」
ウェイン「誰しも1つや2つ、何かしらあるものだろ?」
ウェイン「神父、あんただって。」
ハインスタイン「私の、何を知っているって?」
ウェイン「私を殴ったことも罪だろ。」
ハインスタイン「ははは。神は、殴られたならもう片方も差し出せと言葉を残しているが。」
ウェイン「右をぶたれてようがなんだろうが暴力は悪だろうが!」
ハインスタイン「果たして本当にそうだろうか?」
ウェイン「ああ?」
ウェイン「そうじゃないって言うのか?」
ハインスタイン「暴力が、悪なのか。」
ハインスタイン「悪が、暴力を使うのか。」
 ーーー 一呼吸置き。
ハインスタイン「……どうだったかね?」
ウェイン「なんだよ、それ。」
ウェイン「わかるわけが…。」
ハインスタイン「ジャムの味の話だよ、ジャック・ウェイン・ターナー。」
ハインスタイン「味は、どうだったかね。」
ウェイン「そういうことか。」
ウェイン「……悪くなかったよ。」
ハインスタイン「そうか。それは良かった。」
ハインスタイン「罪とは、何を指すとおもう?ウェイン」
ウェイン「罪、罪か…。」
ウェイン「正しくない行いのことではないのか?」
ハインスタイン「そうだな、その通りだ。」
ウェイン「……当たり前だろ。」
ハインスタイン「ではウェイン、君の罪とはなんだ?」
ウェイン「……いいや、私に罪などない。」
ハインスタイン「『罪など無い。』」
ハインスタイン「なるほど、その理由を聞かせてもらえるかな?」
ウェイン「私は正しいことをした。」
ウェイン「そう。そうだ。正しい。間違ってなんかない。」
ハインスタイン「神ですら、間違いを犯すのに。」
ハインスタイン「君は、正しかったと。」
ハインスタイン「……ウェイン、ああ、ウェイン。」
ハインスタイン「それでこそ、意味がある。ああ、意味があることだ。」
ハインスタイン「こうして、君と話すことがどれだけ意味のあることなのか。」
ハインスタイン「君は救いようのない、クソ野郎だ。」
ハインスタイン「救うことすらも、赦すことすらも生ぬるい。」
ハインスタイン「君は!どうしようも無い!クソ野郎だ!ジャック!!!!!」
ウェイン「神父…!」
ウェイン「赦す…?救う?何を言ってるのかわからないな!」
ウェイン「私は……私は正しいんだ!正しいんだよ!!!」
ウェイン「正義だ、まごうことなき、正義なんだよ!!」
ハインスタイン「この世に正義なんてものはないよ、ウェイン。」
ハインスタイン「たまたま、正しいとされた事が、悪でないとされただけだ。」
ハインスタイン「正義だの、悪だの、そんな押し問答をしたいわけじゃあない。」
ハインスタイン「ウェイン、私は君に、どん底まで堕ちて欲しいだけだ。」
ウェイン「あんたは…どこまで。」
ハインスタイン「堕ちて、それを死ぬまで悔いて、悔いて悔いて、悔いて、その目の光が消えるその時まで!」
ハインスタイン「君が、私に怯えていたらいい。」
ハインスタイン「ただそれだけだ、ウェイン。」

ウェイン「正義が無いだと?」
ウェイン「だいたい……悪がどうのこうの言い出したのはそっちだろ」
ウェイン「くそ…」
ウェイン「それは、恨んでるということか?私を。」
ハインスタイン「38人だ。」
ウェイン「…ああ。」
ハインスタイン「この教会の庭には、38人の遺体が埋まっている。」
ウェイン「知っている。」
ウェイン「趣味なんだろ!こうして閉じ込めて相手の反応を見るのが!」
ハインスタイン「いいや?」
ウェイン「じゃあなんなんだよ……!」
ハインスタイン「『君』に……だけだよ、ウェイン。」
ウェイン「……私にだけ…?」
ハインスタイン「私はね、恐らく逮捕される。」
ハインスタイン「38人の殺害と、1人の監禁と傷害でね。」
ウェイン「むしろよくここまで捕まらなかったものだよ」
ハインスタイン「それだけ、私の愛が必要だったというだけだ。」
ウェイン「愛…。」
ハインスタイン「ジャム、という言葉の語源を知っているか?ウェイン。」
ウェイン「ジャムの語源?」
ウェイン「また唐突に。気にした事も無かったよ、そんなこと。」
ハインスタイン「瓶に『押し込む』という意味から、ジャムという名前になったそうだ。」
ハインスタイン「詰めるんだよ、無理くりに、瓶の中に。」
ウェイン「…なるほどな。」
ハインスタイン「エマという女の子がいた。」
ウェイン「ッ!!」
ウェイン「それは、あんたが…!!」
ハインスタイン「そう、一番はじめに私が手をかけた女の子だ。」
ハインスタイン「ここのクッキーが好きでね。」
ハインスタイン「毎週、彼女は私のクッキーを楽しみに教会にきていた。」
ウェイン「そうだな。」
ウェイン「それなのに。……それなのに、なんてことをしてくれたんだ?」
ハインスタイン「ウェイン。」
ハインスタイン「いいや、」
ハインスタイン「ジャック・ウェイン・ターナー。」
ハインスタイン「『ジャム』の味はどうだった?」
ウェイン「…フッ、はは、ははは。」
ウェイン「悪くなかったよ。」
ウェイン「違うな、最高だったよ!!」
ウェイン「ああ…。」
ウェイン「あの一つ一つ潰していく感触。熟れきれてないまだ硬さの残る果実。」
ウェイン「今でも思い出せる。」
ウェイン「いつも考えてたんだ。どんな味がするのかって。」
ウェイン「……あー……ああ!あー!ああ、そういうことか。」
ウェイン「私が先に食べたから怒っているのか?」
ハインスタイン「君のような性異常者と一緒にされたくはないね」
ウェイン「ははっ、強がるなよ。何が違うって言うんだ?」
ウェイン「違うってんならなぜエマを殺した!」
ハインスタイン「それがあの子の幸せだったからだ。」
ウェイン「幸せ?」
ウェイン「それはあんたの感想だろ?」
ウェイン「本当に本当に、勿体無いことをしてくれたよ。」
ハインスタイン「生命を、冒涜するな、ウェイン。」
ウェイン「私が?冒涜…?」
ウェイン「38人の命を奪ったやつが言えることか?」
ハインスタイン「冒涜だ。」
ハインスタイン「お前のしている事は、彼らの、彼女らの、得るはずだった幸せへの冒涜だ。」
ウェイン「くははっ…」
ウェイン「たしかに、最初は驚愕と恐怖に満ちていたよ。」
ウェイン「だが」
ウェイン「最初だけだ。」
ウェイン「あの満たされた顔は間違いなく幸福を感じていただろう。」
ウェイン「私は……俺は幸せを与えたんだよ。」
ハインスタイン「幸せを与える事など、出来やしない。」
ハインスタイン「与えるものでは無いんだよ、ウェイン。」
ハインスタイン「幸せとは、芽生えていくものだ。」
ハインスタイン「我々が、与えるようなものではないんだ。」
ハインスタイン「彼らが、彼女たちが、自ら得ていく。」
ハインスタイン「烏滸(おこ)がましいよ、ウェイン。烏滸がましい。」
ウェイン「はぁ…」
ウェイン「殺してしまったら、もう幸せを自ら得ることもできなくなるだろ?」
ウェイン「充分あんたも烏滸がましいんじゃないか?神父。」
ハインスタイン「なぜ、逃げた、ウェイン。」
ウェイン「…ふっ。」
ウェイン「まだ若かった。それだけだ。」
ハインスタイン「恐れたんだろ、ウェイン」
ウェイン「あの時の俺は…」
ウェイン「ただ、その美しいと思えた「あの子」を俺のものにしたかっただけだ。」
ハインスタイン「なっていない。お前は、怖かったんだ、ウェイン。」
ハインスタイン「本当に、あの子が、お前のした事で幸せになっていたのなら!」
ハインスタイン「なぜ最後まであの子を見なかった。」
ハインスタイン「なぜ、その場から逃げた。」
ハインスタイン「わかっていたのだろう?」
ハインスタイン「わかっていたから!逃げた!その場から!」
ハインスタイン「ジャック・ウェイン・ターナー!」
ハインスタイン「おまえは!!!逃げたんだ!!!」
ウェイン「ああ、懐かしい…。」
ウェイン「美しかった、欲しかった、俺は、俺をあの子にぶち込みたかっただけだ。」
ウェイン「未熟な身体を、未熟な心を、俺に向けさせたかっただけ。」
ウェイン「したいと思ったことをしただけだ!!」
ウェイン「そうさせたんだ。あの子が。」
ウェイン「吸い寄せられただけなんだよ。」
ハインスタイン「……決めてたんだ。最初から。」
ウェイン「あ?見かける度に目を惹かれたよ。それは事実だ。」
ハインスタイン「お前の話だよ、ウェイン。」
ハインスタイン「お前を『最後にする』と、決めてたんだ。」
ウェイン「…なに?」
ハインスタイン「お前には、生きていて欲しい、そう言っただろう?」
ウェイン「……言っていたな。」
ハインスタイン「私はこの後、逮捕され、死刑になる。」
ハインスタイン「『何度も。』」
ウェイン「何度も?」
ウェイン「殺しすぎてイカれたか?」
ウェイン「違うか、イカれてるから平気でこんな事もできるのか」
ハインスタイン「『屈強な男』に『麻痺毒』を仕込み、組み敷いた夢を見たことは?」
ウェイン「!?」
ウェイン「なぜ、それを…」
ウェイン「神父、あんたはいったい……。」
ハインスタイン「君はその夢の中で、幾度となくヒーローと呼ばれる存在を殺してきた。」
ウェイン「……あれは夢でしかないだろ」
ウェイン「けど…そうだな」
ウェイン「面白い事も言っていた気がする」
ウェイン「コンビを組むみたいな事を…。」
ウェイン「38人も殺して今まで捕まって来ていないあんたと、ここまで捕まることの無かった俺が組んだらなんでもできるんじゃないか」
ウェイン「そうだな、チーム名は『ハイウェイン』なんて名前はどうだろうか?」
ウェイン「まるで、スピード出しても許されるような、いや、これでは、俺が目立ち過ぎた名前だな」
ウェイン「ははっ」
ウェイン「…。」
ウェイン「ここは笑う所だろ。神父。」
ハインスタイン「それは、間違いだな、ウェイン。」
ハインスタイン「ジャック?」
ハインスタイン「ウェイン?」
ハインスタイン「ターナー?」
ハインスタイン「そんな、何処にでもありえるような、正に偽名という名前があってたまるか。」
ハインスタイン「違う、違うだろう?ウェイン。」
ハインスタイン「いいや。」
ハインスタイン「こう呼ぶ方が、正しいかな。」
ハインスタイン「『ビー・ドレイク』」
ウェイン「本当になんでも知っているんだな。」
ウェイン「そうだ」
ウェイン「俺の名前はビー・ドレイク。」
ウェイン「火竜に成れだなんて笑ってしまうだろ?」
ハインスタイン「この世界線では、君は、いいや、お前は」
ハインスタイン「どうしようも無く、愛に飢えた獣(けだもの)で。」
ハインスタイン「だが、それが愛なのか、性欲なのかも分からない、未熟な『ヴィランもどき』でしかない。」
ハインスタイン「私たちは、何度も、何度も何度も繰り返している。」
ハインスタイン「君が、エマを穢し、私が、エマを愛し。」
ハインスタイン「何度も、君を監禁しては、こうして説き伏せている。」
ハインスタイン「ビー・ドレイク。」
ハインスタイン「それは夢では無い。いくつかの可能性で、真実のひとつ。」
ウェイン「夢じゃない?世界線?獣?」
ウェイン「真実のひとつ…?」
ウェイン「あんなセリフ夢の中だけで、お前に言われなきゃ言う事もなかったよ。」
ウェイン「俺は俺だ。」
ハインスタイン「そう。お前はお前だ。」
ハインスタイン「お前は、お前として、一度足りとも幸せになどなれない。」
ウェイン「俺が?」
ウェイン「何をバカな事を」
ウェイン「あれ以来、俺は俺のしたいことを、やりたいことをやり続けている」
ウェイン「好きな事を繰り返す。これのどこが!幸せじゃないっていうんだ!?あぁ!?」
ハインスタイン「そうして繰り返した先に、安寧は無い。」
ハインスタイン「私も、そうだ。」
ハインスタイン「ある時は、神父ではなくシスターだったこともある。」
ハインスタイン「またある時は、年齢さえも違った。」
ハインスタイン「では、『ドレイク』、君は果たして、『終わり』を見ることはできたのか。」
ウェイン「『終わり』なんてないだろ。」
ウェイン「いつも唐突に『始まり』そして止まるだけだ。」
ウェイン「これも今回もただの『始まり』に過ぎない。」
ウェイン「いや、それとも途中なのか?」
ウェイン「俺は俺達はいつもそうだろ。」
ウェイン「それとも、あんたは見る事ができたのか?『終わり』ってやつを」
ハインスタイン「無いさ。私にも。」
ハインスタイン「だからこそ……。」
 ーーーサイレンの音が遠くから聞こえる。
ウェイン「くくくっ…」
ウェイン「はははははははっ」
ウェイン「ようやく来たか」
ハインスタイン「……そうか、こうして私は『終わる』のだな。」
ハインスタイン「『ドレイク』、何をした?」
ウェイン「そうだな、これも1つの『終わり』なのかもしれないな」
ウェイン「事前にとある新聞社に送っておいたのさ。」
ウェイン「"もし私からの手紙が再度、3日以内に届かなければクエンティン州にある、とある教会に警察を寄越してくれ"」
ウェイン「とな」
ハインスタイン「……はは、ははは!」
ハインスタイン「どの世界でもお前は、頭のキレる奴に違いはないようだ。」
ハインスタイン「そうして、『終わり』も『始まり』も、永遠に続いていくのだな。」
ハインスタイン「……『ドレイク』」
ウェイン「…なんだ?」
ハインスタイン「未来永劫、死にもせず、生き続けてくれ。」
ハインスタイン「幸せになれずに。」
ウェイン「そういうことか…。」
ウェイン「それは、お前も同じだろ?神父、いや、ハインスタイン。」
ウェイン「それとも別の…。」
ウェイン「観てきた通り、わかっている通りの」
ウェイン「また繰り返しが『始まる』」
 ーーーサイレンの音が近づき、止まる。
ハインスタイン「私が『観てきた』事が、『幻』であればいいな。」
ハインスタイン「最後に、聞いておこうか、『ドレイク』」
ウェイン「最後、か。」
ハインスタイン「ああ。」
ウェイン「何が聞きたい?」
ハインスタイン「聞かせてもらおうか、『夢の中での、おまえの最後の捨てセリフを』。」
ウェイン「なんだ、そんな事か。」
ウェイン「高らかに叫べばいいか?」
ウェイン「私の名はビー・ドレイク、『火竜に成れ』だなんて笑ってしまうな」
ウェイン「とでも?」
ウェイン「本当に本当に笑ってしまうよ。違う。違うよなぁ」
ウェイン「本物の竜になるのさ。緋だけじゃない。全てを観て総てを識る。そんな竜に。」
ウェイン「フッ…」
ウェイン「最高の味を繰り返してくれよ。神父。」
ウェイン「間もなく終焉の時間だ。」
ハインスタイン「……また会う日まで、おやすみ、『ウェイン』」
ウェイン「…フフッ」
ウェイン「ははははははっ」
ウェイン「今回『も』私の勝-----」
【 暗 転 】




◆ウェインの独白◆

「やっちまった、やっちまった、やっちまった。」
流れる汗は、手に滲み、浴びた鮮血を溶かしていく。
その滴るものが、もはや誰のものなのか分からない。
俺は、呼吸を荒らげたまま、その教会を立ち去る。
右手には食べかけのクッキー、ポケットには「あの子」が大事に抱えていた「賛美歌」の歌集。
もう後戻りはできない。
俺はただ、その美しいと思えた「あの子」を俺のものにしたかっただけだ。
美しかった、欲しかった、俺は、俺を「あの子にぶち込みたかっただけだ。」
未熟な身体を、未熟な心を、俺に向けさせたかっただけ。
神はそれを許す、赦すだろ、赦されてくれ。
だって、だって俺はただ。
「したいと思ったことを、しただけだ。」



本作品はもじであそぶdiscordサーバー「のべるぶ」内にて、シナリオライター「かぬれ」様と作成した合作シナリオです。

▼かぬれ様のシナリオ置き場
▼かぬれ様Twitterページ


0コメント

  • 1000 / 1000