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「ギジン屋の門を叩いて」⑫『蝿(はえ)』

捩治理川 弦夜:ねじりがわ げんや。のろわれました。
捩治理川 燈子:ねじりがわ とうこ。依頼人。女性。殺したい人がいた。
寺門 眞門:てらかど まもん。店主。男性。いわくつきの道具を売る元闇商人。
猫宮 織部:ねこみや おりべ。助手。女性。家事全般が得意です。
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 : 「ギジン屋の門を叩いて 蠅(はえ)」
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捩治理川 燈子:(M) 
捩治理川 燈子:虚無感(きょむかん)が襲う。
捩治理川 燈子:私の中の、なんてことは無いただの一つの感情が。
捩治理川 燈子:ついぞ、消え、爆(は)ぜた。
捩治理川 燈子:虚無感が襲う。
捩治理川 燈子:なぜそこまで、固執(こしつ)をしていたのか。
捩治理川 燈子:それが、愛なのか、恋なのか。
捩治理川 燈子:はたまた肉欲なのか。
捩治理川 燈子:全てがぼんやりと霞(かすみ)がかった、頭のまま。
 : 
 :
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捩治理川 弦夜:はは、はははははは!!!!
捩治理川 燈子:……兄さん。
寺門 眞門:弦夜、貴様…
捩治理川 弦夜:あなた達に僕の苦悩が、僕の気持ちが、わかるわけがない。
捩治理川 弦夜:僕の心は、僕のものだ。それは、燈子、お前ですら。
捩治理川 燈子:に、兄さん……
捩治理川 弦夜:何もかもが、くだらない!!くだらないんだよ!!
寺門 眞門:……くだらない、か。
寺門 眞門:それが貴様の「本心」なのか、はたまた「呪い(のろい)」を受けたからなのか
寺門 眞門:どっちなんだ?
捩治理川 弦夜:呪い…呪いね、呪いとはなんなんですか?
捩治理川 弦夜:何をもってして、何を呪いとするんですか?
捩治理川 弦夜:この家も、国も、大人たちは全部、全部、全部!!
捩治理川 弦夜:「何かに呪われたような日々を過ごしてるじゃないですか」
捩治理川 弦夜:それこそ、「子供に」「理想を押し付けるような」「そんな生き方をして」!!
捩治理川 弦夜:誰かを縛るみたいに!!誰かを思い通りにするみたいに!!!
捩治理川 弦夜:「何かになれ」「何かをしろ」「何かを成せ(なせ)」「成せる人物になれ」!!!!
捩治理川 弦夜:「DO(ドゥ)」と「Be(ビィ)」しかない、「ドゥ・ビィ」を
捩治理川 弦夜:どれだけ昇華(しょうか)し、どれだけ自身に浸透(しんとう)させ、どれだけ形成したか、しか!!
捩治理川 弦夜:評価なんてされない!!それはすでに呪われている、そうでしょう!?
 : 
捩治理川 弦夜:「寺門 眞門」!!!
 : 
 : 
 :
 : 
捩治理川 燈子:(M)
捩治理川 燈子:四肢(しし)を貪る、その空気は嫌いではなかった。
捩治理川 燈子:劣情や、履(は)いて捨てた愛情や、それにも勝る優越感。
捩治理川 燈子:『その人』を夢中にさせているという『支配感』。
捩治理川 燈子:それらが、私のすべてを浸食し、何もかもが『綺麗』で『麗しい』世界に見えてくる。
捩治理川 燈子:その体温の温かさを知ってしまった。
捩治理川 燈子:その温もりが、愛情を表せるのだと知ってしまった。
捩治理川 燈子:生きた心地がする。死んでも良いとさえ思える。
捩治理川 燈子:だから私はこの世界でも、こんな世界でも生きていられる。
捩治理川 燈子:そう錯覚できるくらいに。
捩治理川 燈子:愛というものは、罪深い。
 : 
 : 
 :
 : 
寺門 眞門:「人を愛する事もせず」「愛される事も知らない」青二才が何を言っている。
猫宮 織部:だ、旦那様
寺門 眞門:「ドゥ」だ?「ビィ」だ?それに縛られているだ?
寺門 眞門:それが呪いだ?
寺門 眞門:笑わせるな!!!!弦夜!!!
寺門 眞門:「何かをしろ」「何かになれ」その縛りに不服を唱えるならば
寺門 眞門:まずは何かを「成し遂げてみせろ」「何かになってみせろ」
寺門 眞門:何物でもない、貴様自身を愛して欲しいのなら
寺門 眞門:まず貴様が「貴様」になってみせろ!
寺門 眞門:それすらも出来ず、ぐずぐずに駄々を捏ねた(こねた)、貴様の「子供じみた」感性で
寺門 眞門:「世の中すべてがそうであると語るな!」
捩治理川 弦夜:うるさい…うるさいうるさいうるさい!!!!!
捩治理川 弦夜:俺は、やってきた!すべてを、自分のすべてをこの家のために!
捩治理川 弦夜:家族のために!周囲のために!なにもかもを!理想に添えるように!
捩治理川 弦夜:「合わせてきてやったんだ!」
捩治理川 弦夜:完璧な!求められる人間になってやった!!
寺門 眞門:それが報われないからと、それが理解されないからと!
寺門 眞門:貴様は家族を殺すのか、弦夜!
猫宮 織部:だ、旦那様落ち着いて!ぜ、絶対暴力はだめです!だめですからね!
寺門 眞門:わ、わかっているよ、猫宮さん
猫宮 織部:……弦夜さん、もう少し話を聞かせてください。お願いします。
猫宮 織部:私は、私たちは、あなたと、燈子さん、二人の為にここに来たんです。
捩治理川 弦夜:……俺らのため?
猫宮 織部:そうです。
捩治理川 弦夜:はっ、何のために。
猫宮 織部:……わかりません。
 : 
 : 
 : 
捩治理川 燈子:(M)
捩治理川 燈子:毒を喰らったようなものだ。
捩治理川 燈子:おそらくこれは、解除すらままならない最上級の毒なのだ。
捩治理川 燈子:胃にたまる「むかむか」と、どんよりとした感情がそれを物語る。
捩治理川 燈子:君がすべて、私の物だったらいいのに。
捩治理川 燈子:その手も、その肌も、その髪も、その声も。
捩治理川 燈子:全て、私だけのものだったらよかったのに。
 : 
 : 
 : 
捩治理川 燈子:……。
捩治理川 弦夜:わからない!?はははは!!わからないのに来たのかよ、なんなんだそれは?
猫宮 織部:わかりませんよ、そんなの、「何のために」とか一々考えません
捩治理川 弦夜:は?
猫宮 織部:「考えて」動くだけが、人間ですか?
捩治理川 燈子:猫宮さん…
猫宮 織部:頭で、脳みそで「こうだ」って決めて動く事だけが、人間なんでしょうか
猫宮 織部:私は、そうは思わないんです。
猫宮 織部:「なぜ、そうしてるかわからない」
猫宮 織部:「なぜ、そうしたいのかわからない」
猫宮 織部:「なぜそうなりたいのか」
猫宮 織部:「なぜそれを求めるのか」
猫宮 織部:わからない。
捩治理川 弦夜:……。
猫宮 織部:でもそれでも、人間は「動く」んです。
猫宮 織部:それでも、動いてしまうんです。
猫宮 織部:それは多分私が、
猫宮 織部:燈子さん、
捩治理川 燈子:えっ…?
猫宮 織部:あなたのこと、好きになってしまったからなんですよね
捩治理川 燈子:猫宮さん…
猫宮 織部:旦那様は、あなたの事を「屑(くず)」だとか「人でなし」だとか
猫宮 織部:言っていたと思います。私も最初はすこし、思っていたかも。
捩治理川 燈子:…実際、その通りですから。
猫宮 織部:でも、きっとあなたは普通の、恋に悩める、ごく普通の女の子なんです。
捩治理川 燈子:…猫宮さん…。
捩治理川 弦夜:それが俺にどう関係する、関係のない話だ。
猫宮 織部:ありますよ
捩治理川 弦夜:は?
猫宮 織部:私たちは大人で、あなた達は「子供」。
猫宮 織部:そしてあなたはそんな中で、私の「大事にしてあげたいな」と思った
猫宮 織部:燈子さんのお兄さん。それだけでお節介を焼く理由なんて十分でしょう?
捩治理川 弦夜:エゴだろそれは、自己満足の塊だ、頼んでいない、お願いしてすらいない!
捩治理川 弦夜:勝手に!土足で!入り込んでくるな!
猫宮 織部:なら貴方も!!燈子さんの心に土足で入らないで!!!
捩治理川 弦夜:なっ…
寺門 眞門:猫宮さん
猫宮 織部:どうあったって、どんな形だって、「愛」は「愛」なのです!!
猫宮 織部:「恋」は「恋」なのです!どんなに許されなくても、どんなに禁じられていても
猫宮 織部:弦夜さん、あなたはそんな燈子さんの「心」を
猫宮 織部:土足で踏みにじって、あげく、それを棄て去ろうとまでしている!
捩治理川 弦夜:……。
猫宮 織部:どれだけ貴方の事を、燈子さんが「想って」いたかわかりますか!?
猫宮 織部:それは「ドゥ」や「ビィ」そんな呪いの欠片も一切ない、
猫宮 織部:ただ「あなたがあなただから」あなたを受け入れたかった!
猫宮 織部:あなたを「愛してしまった」、それが簡単な事じゃないことくらい、わかるでしょう!
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捩治理川 燈子:(M)
捩治理川 燈子:呪詛(じゅそ)のように繰り返し吐き出した『愛してる』が、君に届いたのかどうかはわからない。
捩治理川 燈子:君が、どこを向いて、どこを向いて、どこを向いて私のことを抱くのかさえわからないまま。
捩治理川 燈子:わからない、を、わからないのままにして。
捩治理川 燈子:きっと私は、怖気付(おじけ)いたのだ。
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 : 
捩治理川 弦夜:……じゃあ、俺はどうすればよかったって言うんだ。
捩治理川 弦夜:「求められている」。
捩治理川 弦夜:「理想の自分」を、いや、違う「そいつにとっての理想の俺」を。
捩治理川 弦夜:求められている、そうせざるを得ない。
捩治理川 弦夜:この捩治理川という家を背負っていく、当主として。
捩治理川 弦夜:なんでもできる、文武両道の、兄として。
捩治理川 弦夜:全員の悩みを解決する、生徒会長として。
捩治理川 弦夜:何を聞かれても、答える事のできる、優等生として。
捩治理川 弦夜:「求められている」。
寺門 眞門:そうかもしれない。
寺門 眞門:周囲は、そう、自分自身には甘く、周りに対しては厳しい。
寺門 眞門:それもそうだ、「誰だって、自分の心地よい環境が欲しい」
寺門 眞門:自身が楽をできて、物語の主役になれて、気持ちよくいられる環境が欲しい。
猫宮 織部:…そう、ですね
寺門 眞門:だから「理想」を掲げるだけではなく、それを「相手に擦り付ける(なすりつける)」。
捩治理川 弦夜:…そうだ、だから僕は
寺門 眞門:「ぶっ殺したい」!!!!!!!!
捩治理川 弦夜:…そうだ、なにもかもを、なにもかもを無きものにしてやる
捩治理川 弦夜:俺の環境を、周囲を、すべてを、消し去ってやる
寺門 眞門:そのために、まずは
捩治理川 弦夜:……「燈子を殺そう」
捩治理川 燈子:兄さん……
捩治理川 弦夜:…羨ましかった
猫宮 織部:羨ましかった…?
捩治理川 弦夜:「当主(とうしゅ)」となる重みも、責任もない。
捩治理川 弦夜:眠る時間を削ってまで、帝王学(ていおうがく)や、経営学を学び
捩治理川 弦夜:父さんの機嫌を損ねないようにする必要もない。
捩治理川 燈子:兄さん……
捩治理川 弦夜:いつでも一番でいなくてもいい、いつでも完璧じゃなくてもいい
捩治理川 燈子:兄さん、ごめんなさい、ごめんなさい…
捩治理川 弦夜:失敗を恐れなくてもいい、「普通」で居てもいい
捩治理川 弦夜:何かになってもいいし、ならなくてもいい
捩治理川 弦夜:「人生」というレールが、「敷かれていない」
捩治理川 弦夜:どこにでもいける、何にでもなれる。
捩治理川 燈子:兄さん、私は、兄さんのこと
捩治理川 弦夜:苦しかった、その瞳が、俺を見るその「尊敬」が痛かった
捩治理川 弦夜:俺はそんなんじゃない、そんなできた人間じゃない
捩治理川 弦夜:燈子、お前が「愛した」兄は、そんなできた人間じゃない
捩治理川 燈子:ちがうの、いいの、兄さん!いいの!
捩治理川 燈子:好きだよ、大好き、そんな優しくて、かっこよくて、なんでもできる兄さんが大好き
捩治理川 燈子:でも違う、違うの、私が兄さんを追いかけたのはそんな事が理由じゃない
捩治理川 燈子:私の事を、私のことを見てくれるから、何もできない私を
捩治理川 燈子:それでも妹として、傍(かたわら)に置いてくれるから
猫宮 織部:燈子さん…
 : 
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捩治理川 燈子:(M)
捩治理川 燈子:呪詛(じゅそ)のように繰り返し吐き出した『愛してる』が、君に届いたのかどうかはわからない。
捩治理川 燈子:君が、どこを向いて、どこを向いて、どこを向いて私のことを抱くのかさえわからないまま。
捩治理川 燈子:わからない、を、わからないのままにして。
捩治理川 燈子:きっと私は、怖気付(おじけ)いたのだ。
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 : 
寺門 眞門:弦夜。
捩治理川 弦夜:……なんだよ
寺門 眞門:「ならなくてもいい」
捩治理川 弦夜:え?
寺門 眞門:「しなくてもいい」
捩治理川 弦夜:……
寺門 眞門:そういう「しない」という選択ができる人間に
寺門 眞門:「ビィ」なれ。
寺門 眞門:「しなくてもいい」を
寺門 眞門:「ドゥ」しろ。
寺門 眞門:そういった選択をすることだって、できるんだよ、弦夜。
捩治理川 弦夜:……そんなの、そんなの屁理屈だ
寺門 眞門:そうだ、屁理屈だ
捩治理川 弦夜:なっ…
寺門 眞門:だが、それでいい。屁理屈をいくらでも捏(こ)ねたらいい
寺門 眞門:「周りが貴様に好きなように言う分、貴様も貴様自身に「好きな自分」を求めろ」
捩治理川 弦夜:…自分自身に、好きな自分を…
捩治理川 弦夜:だめだ、そんなことできない
寺門 眞門:なぜだ?
捩治理川 弦夜:…それは
捩治理川 燈子:……「周りのがっかりする顔を、見たくないから」
捩治理川 弦夜:燈子、お前…
捩治理川 燈子:わかるよ、それくらいはわかる。
捩治理川 燈子:だって、そんな、心底優しくて、他人の事ばっかり考えて
捩治理川 燈子:……そんな兄さんの、底抜けのやさしさに、私は甘えていたんだから…
捩治理川 弦夜:燈子…
捩治理川 燈子:兄さん…私、変わるって決めたの
捩治理川 燈子:恋人じゃなくていい、愛してくれなくてもいい
捩治理川 燈子:でも、私は兄さんの「妹」として、胸を張れる人間になりたいって
捩治理川 燈子:そうして、兄さんの苦しさも、つらさも、半分を持てる人間になるんだって
捩治理川 燈子:そう思ったんだ。
捩治理川 弦夜:……
捩治理川 燈子:だから、もし、もし兄さんがあの『蠅(はえ)』みたいなやつから、何か呪物を受け取ってるなら
捩治理川 燈子:…一緒に、それを返しにいこう…?
捩治理川 弦夜:……
捩治理川 燈子:呪物なんかの力に頼らなくても、
捩治理川 燈子:そんなまがい物の力に頼らなくても、きっと
捩治理川 燈子:きっと兄さんを苦しませない、そんな環境を、そんな周囲を
捩治理川 燈子:私が作る、私が支えるから
捩治理川 弦夜:燈子…
寺門 眞門:どうするかは、弦夜。貴様が決めろ。
寺門 眞門:だが、そうだな、私のとある「友人」が言っていた。
寺門 眞門:「どんなに凸凹の獣道でも、その歩んできた道を『人生』と呼ぶ」
寺門 眞門:お前の前に敷かれたレールは、人生でもなんでもない。
寺門 眞門:ただのグーグルストリートビュアーみたいなものだ。
猫宮 織部:そんなもの、自分でググれカーーーーース!ってぽいってしてしまいましょう!!
寺門 眞門:ああ、まさに、その通りだね、猫宮さん
猫宮 織部:えへへへ、褒められてしまいました。てれてれボーズです!
寺門 眞門:なんだいそれは?
猫宮 織部:私もよくわかりません!
捩治理川 燈子:兄さん……
捩治理川 弦夜:……わかったよ、そうか、この目の前に敷かれたものは「俺の人生」ではないんだな。
捩治理川 燈子:そうだよ、兄さん、ね
捩治理川 弦夜:…燈子、渡すよ、呪物。こっちに来てくれ
捩治理川 燈子:…はい、兄さん
 : 
0:呼ばれ、弦夜に近づく燈子
 : 
捩治理川 弦夜:これだよ、燈子。
捩治理川 燈子:……え?
 : 
 : 
 : 
 : 
捩治理川 燈子:(M)
捩治理川 燈子:呪詛(じゅそ)のように繰り返し吐き出した『愛してる』が、君に届いたのかどうかはわからない。
捩治理川 燈子:君が、どこを向いて、どこを向いて、どこを向いて私のことを抱くのかさえわからないまま。
捩治理川 燈子:わからない、を、わからないのままにして。
捩治理川 燈子:きっと私は、怖気付(おじけ)いたのだ。
 : 
 : 
 : 
 : 
 : 
捩治理川 燈子:うっ…ぐっ……げはっ………
猫宮 織部:………え?
寺門 眞門:な、なんだ………?
捩治理川 燈子:に、い……ざ…………ん………
捩治理川 弦夜:おー、すごいな、本当に死んだ。
猫宮 織部:……え?……え??
捩治理川 弦夜:はははは!!!!!すごいな!!!すごいなこれは!!!
捩治理川 弦夜:テープに録音した『音』でも、聞いたらちゃんと死ぬのか!!はははは!!
捩治理川 弦夜:これは確かに危険な呪物だ!はははははは!!!!
寺門 眞門:き、貴様……何を、している……?燈子……?
捩治理川 弦夜:死にましたよ、燈子なら、今
猫宮 織部:し、死んだって……え?
捩治理川 弦夜:これは本当にすごい!すごいや!いいものを手に入れた!ははは!!
寺門 眞門:……「オルフェウスの笛」……。
猫宮 織部:そ、それって
寺門 眞門:……私が、燈子に渡した笛だ。弦夜、なぜ、お前がそれを持っている……
猫宮 織部:『蠅』……『蠅』なんですか、『蠅』があなたに、あなたをそそのかしてそれを……
捩治理川 弦夜:やだなぁ、違いますよ、『ギジン屋さん』
0:ごそごそと、自身の机から『ガスマスク』を取り付けて、顔に嵌める
 : 
0:(※SE・環境演出について ガスマスクをつけたような声への変更、または声をくぐもらせるような効果をつけると臨場感が増えます。通常通り演技を続けていただいても構いません。)
 : 
捩治理川 弦夜:僕が『蠅』なんですよ
 : 
寺門 眞門:弦夜……!貴様……!!!
捩治理川 弦夜:いやあ、ここまで来るのに、相当時間をかけましたし、労力もかかりました
捩治理川 弦夜:あなたの手の内にこの「笛」があることはわかっていた!
捩治理川 弦夜:でも、それをどうにかして手に入れなければならなかった!
猫宮 織部:あ…ああ……燈子さん……燈子さん……っ
捩治理川 弦夜:おっと、それ以上燈子に近づかないでください、「猫宮 織部」さん
捩治理川 弦夜:あなたが近づいたら、せっかく殺した燈子が生き返ってしまうかもしれない
寺門 眞門:貴様は……貴様は……
捩治理川 弦夜:あはははは!!この高揚感(こうようかん)!!すごいですね!呪物って!!
捩治理川 弦夜:こんな気持ちにさせてくれる!!!どうしてみんなもっと使わないんだろう!こんなすごいもの!
寺門 眞門:弦夜ぁぁぁぁぁぁ!!!!!
捩治理川 弦夜:おーーーっと、貴方も近づかないでください、「寺門 眞門」。
捩治理川 弦夜:元呪物商、どんな呪物を隠し持ってるのかわかったもんじゃない
捩治理川 弦夜:「何もしないでくださいね、眞門さん」
寺門 眞門:貴様…っ
猫宮 織部:燈子さん…燈子さんっ……
捩治理川 弦夜:猫宮さん、燈子には近づかずに僕の傍(そば)にきてもらいましょう
猫宮 織部:な……
寺門 眞門:猫宮さん、だめだ!行ってはいけない!
捩治理川 弦夜:なら殺すまでですよ、眞門さん。
捩治理川 弦夜:「精霊の踊り」をね、録音してあるんですよ、この「カセットテープ」にね。
捩治理川 弦夜:いいでしょ、カセットテープ。俺、こういうちょっとレトロな雰囲気の小物が好きなんですよね。
捩治理川 弦夜:ははは!多分燈子はそんなことも知らなかったと思うけど!
寺門 眞門:くっ……
猫宮 織部:……旦那様、大丈夫です
寺門 眞門:猫宮さん……
猫宮 織部:私がそっちに行ったら、絶対旦那様には危害を加えないでください、弦夜さん
捩治理川 弦夜:えー、どうしようかなあ
猫宮 織部:お願いします
捩治理川 弦夜:……くくくくっ、そんなに怖い顔しないでくださいよ、わかりました、約束しますよ
 : 
0:猫宮、弦夜へと近づく。猫宮の耳元にカセットテープを向ける弦夜。その指は「再生」ボタンにかかっている。
 : 
猫宮 織部:……その「オルフェウスの笛」は、「その音を聞いたら、殺す」そういう理屈だったはずです。
捩治理川 弦夜:ああ、そうらしいね。
猫宮 織部:あなたが吹いたんですか、「精霊の踊り」を。
捩治理川 弦夜:そうだよ、当然じゃないか。僕はなんでもできる、なんでもできるように生きてきたからね。
捩治理川 弦夜:笛なんて簡単なもんさ。
寺門 眞門:……なぜ、死んでいない。
捩治理川 弦夜:んー?
寺門 眞門:一番最初に、それを聞くのは、弦夜。貴様のはずだ。
寺門 眞門:なぜ、貴様は生きている。
捩治理川 弦夜:……ふふ、知りたいですか?
捩治理川 弦夜:仕方ないですね、今の僕はなーんでも話してしまいますから
捩治理川 弦夜:教えてあげますよ!ははは!
寺門 眞門:……
捩治理川 弦夜:「売ってもらったんですよ、『聞かない力』をね」
猫宮 織部:聞かない…力…?
寺門 眞門:やはり……貴様か……弦夜、いや、『蠅』
寺門 眞門:猫宮さん、こいつは「獄門 京太郎(ごくもん きょうたろう)」の
寺門 眞門:「聞こえない耳」を持っている
猫宮 織部:獄門…先生の……?
寺門 眞門:獄門が代価(だいか)として支払ったのは、「愛する者へのきもち」だけではない
寺門 眞門:買ったものは「聞く力」しかし、それと同時に「聞かない」「聞こえない」という事象を
寺門 眞門:奪われたんだ……!
猫宮 織部:聞かない……事象……
捩治理川 弦夜:よくわかってるじゃない!そう、俺は選択できる、「聞く」ことも「聞かない」ことも
捩治理川 弦夜:「聞こえなければ、俺にはこの笛の音色は意味を成さない」
猫宮 織部:あなたが…あなたが……獄門先生を……先野橋さんを……
捩治理川 弦夜:なんだい、猫宮さん、怒ってるの?
猫宮 織部:あなたが、あなたがあの二人に近づきさえしなければ……二人は…二人は……!
捩治理川 弦夜:やだな、俺のせいにしないでよ、あんたたちも闇で商売をするものだってこと忘れてない?
捩治理川 弦夜:そもそも、軽率に燈子に「笛」を渡したのもあんたらでしょ
寺門 眞門:く……
捩治理川 弦夜:あー!気持ちいいな!すごく気持ちいい!自分の好きな通りにしていいって
捩治理川 弦夜:こんなにハレバレとした気持ちなんだ!
寺門 眞門:……なにが、目的だ、弦夜
捩治理川 弦夜:「ぶっ殺したい」!!!!!!!!
寺門 眞門:……。
捩治理川 弦夜:何もかもを、ぶっ殺したい!ただそれだけだよ、理由なんてないよ、もう何もかも消したいだけ
捩治理川 弦夜:ね?猫宮さん。頭で考えてなくてもいいんだもんね?
猫宮 織部:そ、それは……
捩治理川 弦夜:いやぁ、染みたなぁ、心に染みた。そうだよ、そうだよね。
捩治理川 弦夜:全肯定された気がしたよ!心の赴くままに、でいいんだって!
寺門 眞門:く……。
捩治理川 弦夜:近づくなって言ってるだろ、この女ぶっ殺すぞ
寺門 眞門:やめろ…
捩治理川 弦夜:てめぇは何もするな、近づくな、そう言ってんだよギジン屋
寺門 眞門:……わかった
捩治理川 弦夜:それでいい、ふふ、そういえば、お前、あれだったよな、なんだっけ
捩治理川 弦夜:何かが、門を通ったら、どうなる?とかなんかそんなこと言ってんだよな
寺門 眞門:……。
捩治理川 弦夜:俺はさ!!「王」なんだよ!!!さながら「蠅」の王だ!!!
捩治理川 弦夜:そんなさ、王様の俺が門を通ったら、猫宮さぁん、なんになると思うぅ~?
猫宮 織部:……「閏(うるう)」
捩治理川 弦夜:そう!!!「閏」!!!
捩治理川 弦夜:知ってるか!?閏って、世界のずれを整えるんだよ!!
捩治理川 弦夜:ずれを整えるためだけに存在する、俺はそういう存在、故に「蠅の王」だ!!
寺門 眞門:蠅の王……『ベルゼブブ』……。
捩治理川 弦夜:いいね!!!『ベルゼブブ』!
捩治理川 弦夜:こんな狂った世界を、俺に優しくない世界を、正しい形に直してやるよ、この『蠅の王』が!!
捩治理川 弦夜:ははははは!!!
捩治理川 弦夜:なにもかも「ぶっ殺してやる」!!!!!!!
 : 
 : 
 : 
0:ー続ー

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