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臍帯とカフェイン

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恋人は味噌汁職人(1:1:0)

【配役】
汐里:しおり

真守:まもる

ーーーーーー


汐里:もー、なーんも無いじゃん。
真守:うん、全然自炊とかしてなかったから……。
汐里:ダメだって言ったじゃん、ちゃんと自炊はしないと。
真守:難しいんだよ、一人分作るのって。
汐里:別に二人分作ればいいでしょ。
真守:作ってどうすんのさ。
汐里:タッパーに入れて冷凍すればいいじゃん。
真守:いや、それはそうかもだけどさ。
汐里:はぎれわるーい。
真守:……なんか、嫌じゃん。
汐里:はいはい、言い訳言い訳。
汐里:あ、野菜室に茄子ときゅうり発見。
真守:ああ、うん、一応。
汐里:偉いじゃん、よろしい宜しい。
真守:なんか、偉そ。
汐里:実際偉いんです。
真守:なんで。
汐里:わざわざ?まーくんの為に?味噌汁作りに来てあげたわけだし?
真守:……確かに。
汐里:ほら、えらいでしょ。あがめたてまつれー。
真守:ははーっ
汐里:ふふ、うむうむ、よろしい。
汐里:じゃあ、そうだなー、時間もあんまないし。
汐里:今日は茄子の味噌汁にしちゃおっか。
真守:きゅうりは?
汐里:却下。
真守:ダメ?きゅうりの味噌汁。
汐里:ダメでしょ。
真守:でも、冬瓜とか味噌汁にするじゃん。
汐里:まあ、そう、だけど。
真守:あるんじゃない?きゅうりの味噌汁。
汐里:うーん、あるのかなぁ。
真守:ちょっと調べてみる、スマホスマホ……あれ、スマホどこいった。
汐里:トイレの棚。
真守:うそ、見てくる。
汐里:絶対あるから。
真守:……ありました。
汐里:もー。トイレにスマホ持ってくのやめなって言ったじゃん。
真守:いや、なんかこう。暇じゃん、気張ってるとき。
汐里:不潔。
真守:すんません。
汐里:で?あったの?
真守:え?
汐里:きゅうりの味噌汁。
真守:あ、まって、うん、まって、調べてる。あ、ほら、あるってよ。
汐里:どれどれ。
真守:ほら、富山県の一部地域にはあるって。
汐里:ほんとだー。まぁ、でも、そっか、味噌と合わないわけがないか。
真守:そうだよ、ほら、冷や汁とかにも入れるわけだしさ。
汐里:うん、確かに。
真守:入れる?
汐里:入れない。
真守:なぁんで!
汐里:入れたこと無いから。
真守:あー。
汐里:味噌汁職人として、未知の物を作っては行けない。
真守:そうでした。
汐里:覚えるんでしょ?作り方。
真守:まあ、うん、そう、ね。
汐里:歯切れ悪い。
真守:……また、作りに来てくれればいいじゃん、しおがさ。
汐里:……できないってわかってるっしょ。
真守:……そうでした。
汐里:……ほら!しょんもりしない、しょんもり。
真守:しょんもーり。
汐里:何その顔。
真守:しょんもりの顔。
汐里:ぷっ……
真守:あ、笑った。ひっでーんだ。
汐里:笑わせにきたのまーくんじゃんか!もー!
真守:好きだよ、しおの笑った顔。
汐里:やめてって。
真守:好きだもん。
汐里:今日はそういうんじゃないじゃん。
真守:だめなの?好きでいたら。
汐里:だめだよ。
真守:そっか。
汐里:そうだよ。
真守:そういうもん?
汐里:そうだよ?
真守:……そっか。
汐里:うん。そういうもんだよ。
真守:……わかった。
汐里:物分かりがよくてよろしい。
真守:ん。
汐里:……さ、茄子を切ろうかね。
真守:俺やるよ。
汐里:当たり前です。
真守:うん。これ、どのあたりから切ったらいいの。
汐里:まあ、ぶっちゃけ好みではあるけど。ヘタの部分は切り落として。
真守:了解。
汐里:……うまくなったね。
真守:なにが?
汐里:包丁。
真守:そんな事ないよ、全然してなかったし。
汐里:そうかな。結構うまい気がする。
真守:あんがと。
汐里:ヘタ、落とせた?
真守:うん、おっけー。
汐里:生ごみの日、いつだっけ。
真守:え、わかんない。気にしてなかった。カレンダー見てみて。
汐里:もー。えーっと、今日は8月の……
真守:16日。
汐里:おっけ。うん、火曜日だから、明日ちょうど生ごみの日じゃん。
真守:よかった。
汐里:いつもどうしてたの、ゴミ。
真守:……。
汐里:……適当に出してた?
真守:……はい。
汐里:ダメじゃん、怒られるよ、大家さんに。
真守:怒られないよ、最近。
汐里:そうなの?
真守:うん。「元気出してね」ってなんか優しい。
汐里:なるほど?
真守:だから好き勝手やってる。
汐里:いや、大家さんの優しさを利用すな。
真守:すんません。ねえ、
汐里:ん?
真守:次は?
汐里:あ、そうだった、ごめんごめん。そしたら茄子は斜め切りして。
真守:斜め切り、了解。
汐里:こう、ずばーって。
真守:ずばー。
汐里:じゃきじゃきーんって。
真守:じゃきじゃきーん。
汐里:じゃきじゃきーんはないか。
真守:うん。
汐里:突っ込めよ。
真守:うん。
汐里:いや突っ込めって。
真守:かわいいなーって思って聞いてた。
汐里:か、かわいいってなに。
真守:そーゆーとこ、なんか、こう、奔放というか。
汐里:ほ、奔放ってなに。
真守:好きだよ。
汐里:ねえ。
真守:しょうがないじゃん、好きなんだもん。
汐里:……しょうがなくない。
真守:生姜入れる?
汐里:その生姜じゃない。
真守:切れたよ、茄子。
汐里:おっけー。じゃあ、水にさらして、5分くらい。
真守:なんで?
汐里:なんでも。
真守:理由が知りたい。
汐里:アクを抜く為だよ。
真守:違う。
汐里:え?なにが。
真守:好きでいちゃいけない理由。
汐里:……だめでしょ、だって、そんなの。
真守:だめじゃないじゃん。
汐里:だめ。
真守:誰が決めたの、そんなの。
汐里:ダメなの。普通ダメなんだよ。
真守:しらにゃい。
汐里:そんな言い方してもダメ。
真守:にゃい。
汐里:まーくん。
真守:やだ。
汐里:……だめだからね。
真守:……やだ。
汐里:……聞き分けないなあ。
真守:そうだよ、俺、聞き分けないの。
汐里:ダメなもんはダメなんだよ。
汐里:世の中はそうやってできてる。
真守:……できてないよ。
汐里:できてるよ。
真守:それは、しおの言う世の中じゃん。
汐里:……。
真守:俺の知ってる世の中では、駄目じゃない。
汐里:……。
真守:ダメじゃないから、好きでいてもいいはずだ。
汐里:あんまり、
真守:なに?
汐里:あんまり、困らせないでよ……。
真守:……ごめん。
汐里:……今のうちに、お湯、用意して。
真守:わかった。お湯。
汐里:ちがうよ、ポットにじゃないからね。
真守:あ、違うか。
汐里:もう。茄子の味噌汁って言ってるじゃん。お鍋に用意するんだよ。
真守:どれくらい?
汐里:どれくらいって?
真守:水の量。
汐里:ああ……200mlくらい。
真守:それで、2人分?
汐里:……1人分。
真守:そっか。じゃあ、400ml。
汐里:ねえ。
真守:2人分作る。
汐里:ねえってば。
真守:これからも、ずっと、二人分作る。
真守:ずっと400ml。
汐里:……そういうところ、嫌い、ほんと。
真守:……ごめん。
汐里:……沸騰したら、出汁、いれて。
真守:うん。どれくらい。
汐里:……一人前、小さじ1ぱい。
真守:じゃあ、2杯だ。
汐里:……。
真守:茄子、もういいんじゃない?
汐里:そう、だね。入れていいよ。
真守:うん。味噌は?
汐里:味噌まだ。
真守:じゃなくて、量。
汐里:小さじ2杯。
真守:わかった。
汐里:……4杯入れるつもりじゃん。
真守:入れるよ、そりゃ。水も400だし。
汐里:余っちゃうよ。
真守:冷凍すればいいって言ったの誰。
汐里:味噌汁冷凍するとかありえないから。
真守:なんで。
汐里:味噌汁職人として許せない。
真守:……っぷ。
汐里:なんで笑ったの?今。
真守:いや、ふふ、ホラ、前にもさ、味噌汁で喧嘩した時に
真守:「味噌汁職人としては許せない!」って怒ってたなって、思い出して。
汐里:そ、そんな事あったっけ。
真守:うん、あったあった。
汐里:えー、いつ?
真守:同棲して、2年目の記念日のとき。
汐里:えー……あー!あったね、あったかも。
真守:でしょ?ふふ、めっちゃ怒ってた。
汐里:怒るでしょ、そりゃ。
真守:いやそれにしたってさ「味噌汁職人」はないじゃん、ふふ。
汐里:あー、笑った、また笑った。馬鹿にしてるでしょ。
真守:ふふ、してない。
汐里:してる。
真守:しお。
汐里:絶対馬鹿にしてるよなー
真守:汐里。
汐里:だめ。
真守:汐里。
汐里:キスしようとしないで。
真守:汐里。
汐里:だめだってば。
真守:……汐里。
汐里:だめだって言ってんじゃん!!!
真守:……。
汐里:ダメなんだよ。もう、駄目なの、そういうことしたら、駄目なの。
真守:なんで、駄目なの。
汐里:もうまーくんは、私にそういう感情持ってちゃだめなんだよ。
真守:ダメじゃないよ。
汐里:だめなの!!!!!
真守:ずっと、ずっと好きだって!
真守:これからも、この先も、今も、今までも、一秒だって、忘れたことなんてない!
汐里:だめだってば。
真守:これからだって、ずっと、ずっと好きなままだ。
汐里:ダメなんだよ……わかってよ……。
真守:わかんない。
汐里:つらいじゃん、そんなの。
真守:つらくない。
汐里:つらいよ。
真守:勝手に決めつけんなよ。
汐里:決めつけじゃないよ、わかるもん
真守:それを決めつけって言うんだよ。
汐里:決めつけじゃない、絶対そうなる。つらくなる。さびしくなる。
真守:だから!それが決めつけだろって!
汐里:だって私死んでるんだよ!!!!!
真守:……。
汐里:……死んでるんだよ。
真守:いるじゃん、目の前に。
汐里:今だけだよ。
真守:見えなくたって……いるだろ。
汐里:触れられないんだよ。
真守:……。
汐里:まーくんのために、ゴミ出しもしてあげらんない、スマホトイレにあったよって持って行ってあげることも
真守:しお。
汐里:お味噌汁だって、お味噌汁だって作ってあげらんないんだよ。
真守:汐里。
汐里:忘れなきゃダメなんだよ、まーくんは、私の事、忘れなきゃダメ。
真守:無理だよ。
汐里:無理じゃない。
真守:忘れらんない。
汐里:だめ。忘れて。
真守:忘れたくないんだよ!!
汐里:……。
真守:汐里の、はにかむ顔も、俺がだらしなくて、何度も母親みたいに怒るときの顔も
真守:少し気の抜けた言葉遣いも、味噌汁にこだわりが強すぎるところも、ぜんぶ、
真守:ぜんぶ、忘れたくなんか、ないんだよ……
汐里:……泣かないで
真守:好きなんだよ、まだ、ずっと、今も、ずっとずっと
汐里:泣かないで、まーくん
真守:抱きしめたいんだよ、キスだってしたい、その髪に触れて
真守:にへらって笑う顔を!何度だって撫でたいのに
真守:思わない事なんてなかった、思わなかった事なんて、なかった。
真守:毎日、毎秒、何をするときも、何もしないときも
真守:ずっと、ずっと、ずっと!汐里の事ばっかりだ。
真守:ずっと。
汐里:泣かないでよ、まーくん、泣かないでよ
真守:ずっと、汐里のことばっかりだ。
汐里:ふいて、あげらんないの。まーくんの涙、ふいてあげらんないんだよ。
汐里:私、もう、抱きしめてもらうことも、抱きしめてあげることもできないんだよ。
真守:やだ
汐里:さびしくなっちゃうよ、まーくん
真守:やだ……
汐里:絶対、さみしくなっちゃう。その時、私、何もしてあげらんない。
汐里:だから、忘れて?もう、私のこと、好きでいちゃだめ。
真守:やだ。
汐里:……まーくん。
真守:……やだぁ。
汐里:……もう、真守……。
真守:うっ……ぐす……
汐里:……もー、しょうがない人だなぁ……ほんとに。
真守:しお……好きなんだよ……まだ……
汐里:……うん。
真守:汐里……
汐里:いつもはクールぶってたり、気だるさそうにしてるのにさ。
汐里:私の前でだけ、甘えん坊の君が、大好きだった。
真守:……。
汐里:外ではちゃんとしてるのにさ、なんか、ふふ、子供みたいでさ、かわいくて。
汐里:しょうがない人だなーって、あなたの、ぐす、あなたのね、頭をなでるのが、大好きだった……。
真守:うん……俺も……撫でられるの、好きだった……
汐里:よしよし。
真守:……。
汐里:しょうがない人。まーくん、よしよし。
真守:……ずっと、好きだから。
汐里:……うん。
真守:ずっと、変わらないから、それは。
汐里:わかったよ、うん、わかった。
真守:……大好きだよ、しお。
汐里:……しょうがない人。
汐里:……お味噌汁、煮えちゃったよ。
真守:……うん。
汐里:お味噌、いれて。
真守:うん。小さじ
汐里:……4杯。
真守:……うん。
汐里:……大好きだよ、まーくん。
真守:だいすきだ。
0:ふっ、と何事も無かったかのように。
0:汐里の姿は消えた。
真守:……汐里。
真守:……味噌汁、毎日作るから。
真守:毎日。
0:日付は、8月17日になっていた。

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