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臍帯とカフェイン

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朗読「ロストチルドレン」

「タイガーリリーの谷を抜けたら、今度こそは終わらないネバーランドだ。」
ネオン文字に彩られた僕の町はいつの間にか髑髏島のように、無法者が闊歩する。
知っていたはずの街頭は、知らないような顔をして、いつの日かの思い出を養分にぎりぎり辛うじて懐かしさを醸し出している。
タイムカプセルをしようなんて言ったのは誰だったのか。
いくら過去と未来を繋げても、現代の僕は何も変わらない。タイムリープの先には、孤独と孤独の庭を繋げただけの大人になり切れない僕の夢がそこにあるだけだ。
「妖精の粉を振りかけたら、あとは信じて飛び立つだけ。」
そう手紙には記されていた。
幾分かの希望と、正直少し芽生えている嫉妬心を胸に、飛んできてみただけだ。
「あとは信じて飛び立つだけ。」
言葉や、声や、表情でようやく伝わる類の愛情を、きっとどこかに置き去りにしてきた。
それは、この街の隅っこかもしれないし、それは、誰かの心の中かもしれない。
寂しさを感じる度に、他人の心の内を覗いてみても、そこに自分が居なかったらという恐怖や諦めにも似た感情が、僕を僕に閉じ込めていく。
ネバーランドは終わらない。
いつかの約束を叶えない限り、
いくつかの嘘を見破らない限り、
僕は寂しい僕を忘れて、ロストチルドレンの輪の中で陽気に的当てを楽しむだけだ。
ネバーランドはわかってる。
約束は既に違えていて、
その嘘もその本当も既に虹の彼方へと消えていて、
そうして僕らは大人になっていることも。
その為に、思うこの寂しさが
より濃くなるにつれて、
これが大人になっているのだと
明確に、わかっている。
空を飛びたいと思っただけ、
空は飛べないと思っただけ、
思ったぶん、大人になって、
ネバーランドは無くなっていく。
「あとは信じて飛び立つだけ。」
掘り起こしたばかりの僕も、
ピーターパンを忘れた僕も、
同じように泥だらけでタイガーリリーの谷を目指していた。
そこに何も無くても、
そこに誰もいなくても、
僕らは文字をつむぎ、
声を荒らげ、
その表情を目に焼き付けていく。
そうでしか、得られない愛情の事を忘れないように。
ようやく。
ようやく伝わる程度の愛情が、
ネバーランドの僕にも、
そうじゃない僕にも、
必要なのだ。
「あとは信じて飛び立つだけ。」
あとは信じて、飛び立つだけ。
かつてのネバーランドも、
これから得るかもしれない魔法の日々も、
吐き出しては、
苦しみと生きる髑髏島も、
何もかもが、
この胸にやどるのだから。
あとは信じて、飛び立つだけ。
そうして夜間飛行の先に、
ようやく伝わる程度の愛情が、
この胸にやどるのだから。
あとは信じて飛び立つだけ。
あとは信じて、飛び立つだけ。

この朗読文は、Vtuber「鈴乃」様の応援の為に作成されました。
がんぱれ!すずのさん!

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