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臍帯とカフェイン

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Xと、多分Y(0:0:1)


このシナリオは、Xにて募集した
#リプをくれた人をイメージしたショートストーリーを書きます という企画で作成した、140文字以内のショートストーリー集です。

郵便ポストを覗くような日々を求めている。誰かからの頼りや、花束、時にはどんぐりなんかも入っているかもしれない。それと同じくらい、誰かにポストを覗かせるような日々を過ごしたいのだ。今日はなにが入っているだろう。今日は何を送ろうか。

「昨日の事は、忘れてね。」そう書かれた手紙からはあなたの泣いた跡が見える。便箋のざらざらした表紙をなでて、多分、あなたを撫でたのだろうなぁと思う私は、もしかしたらもう分かっていたのかもしれない。「忘れてないのは、あなただね」と、言ってやればよかったな。泣けやしないよ。

真実がいつも一つだなんてもう古いよな、と私の耳たぶが喋り始めた。それはそうだ、だって真実には二面性が産まれるようになってしまった。じゃあ何故私の耳たぶは喋り始めたのか。「そりゃあ、耳たぶだって2つあるからなあ。」昨日外したピアスの穴が、少しだけ痛い。

鼓動が熱を帯びていく。
オイルに塗れた、私の駆動音が正義の心を強くしていく。怒気を抑え、呼吸を細く伸ばす。声に出したそれらを、私は愛したいと思った。歓声が聞こえる。スポットライトは集束していく。私が今、主人公だ。

ペンギンっていうのはとても勇敢な生き物なんだと、彼は言った。流氷の割れ目からいつ天敵が顔を覗かせるのかわからぬ恐怖と戦いながらよちよちと歩くのだと。その大群の先頭を歩くペンギンよりも、2匹目が私はすごいと思ったんだ。だって、死を目撃しても、歩く事になるんだから。

誰かの為の歌を歌おう。誰に聞かれずとも、そこには夢が点っている。喉を震えさせる度に、火が灯るような生き方だ。朝が来なくてもいい、暗黒のままの時代でも、私たちには夢があった。目を瞑った暗闇の奥に、間違いなく夢があった。

旅に出ない人間など居ないと言う。それは心の旅であり、人生の旅であり、何かへの帰り道に違いないのだろう。振り向くと私の足跡が雨に濡れている。こうして何度も旅と帰路を繰り返し、私はどこかへと帰るのだ。いつまでも、帰るのだ。

ザ・ビートルズが響くフロアには、どう見ても勝てるわけない相手ばかりが息巻いている。どうして奴らはあんなにも巨大なのか。固く縛る拳では心許ない。でも、いいのさと腹は落ちていく。これはジャイアントキリング。私が私で、勝ち進む唯一の方程式だ。

喝采は要らないんだと、私の中の何かがらそう告げる。大層なステージは要らない。つま先を立てながら、今にも赤になる横断歩道の真ん中で踊るようなバレリーナでいい。その中心に、私の求めた財宝がある。

口元から零れたのは、紛れもなく私の野望だ。すべてを手に入れて、すべてを打ち払い、ここに残るものはどうあっても、すべて、すべてすべて、優しい誰かを救うための物にする。踵を返す。雨は止んだ。明日の為の、昨日を燃やす。

空は澄んでいた。いつだって、傘を差していたのは私の方だった。雲の流れが早い。形を変えながら、私の涙を乾かすような速度で空が流れていく。何も怖くないよ、だってこうして立っているから。右足に力を入れる、なんだ、案外軽いじゃないか。ちきゅうを蹴飛ばす。

見上げた先の宇宙の話をしよう。絶対に出会うことの無い運命の星と、その星の終わりについての話をしよう。英雄譚みたいに気取らず、あなたが永遠の眠りにつくときに一杯のワインを飲みながら、髭を濡らす日のように。愛しいような気をさせながら、宇宙の話をしよう。

波の音だけを集めたかった。そうはいかないと気づいたのは、海猫が鳴く声を美しいと思ってしまったからだ。南から風が運ぶ、私の魂と同じだけの潮のにおいだ。このままでも構わないのかも知れない。砂浜に描いた、さよならの文字が笑う。

頬に絵の具がついてるよ、と指をさされても私にとってそれは名誉な事だった。狭い部屋はすでに描きたい事や創り出したい何かで埋まっている。それを自分にぶら下げてしまえることが、私が私たりえる何かである事は間違いないのだ。もっと見てよ、もっと綺麗になるんだ。

私の中には巨大な怪獣がいる。その怪獣は、お隣さんの換気扇から匂ってくる焼肉のにおいに反応して巨大化したりするし、眠くなったらソファで眠る。そうして私と共に育った怪獣は明日のあさ、私の大好きなあの人と旅に出るのだそうだ。さみしくなる、さみしくなるなあ。

満足げに、鏡の中の私は笑う。
「まだ未練があったの?」そんなことない。
「全く、変わってなかったね、彼。」
まるで昨日別れたみたいに、鮮明に
真っ直ぐな気持ちが私に戻ってくる。
まだ、笑えたんだね、私。
「まだ、笑うことしかできてないよ」
真夜中の、
マーダーミステリー。

フォークについたトマトソースが物語る事件は、いつだってあの日私に芽生えた愛の残像と同じだ。声に出して読むほどに、街の喧騒は濃くなっていく。なんてことは無い、今日も静かに囁くだけ。誰に聞かれずともいい。スパゲッティを啜るのと何ら変わりない。それでいいのだから。

全部全部全部、マシュマロにしてしまう為の魔法だ。触れるものすべてを、柔らかくて甘く、喉に残るような物語にするための。私の処世術だ。契約書を踏み潰す。ファックユー、お生憎様。私は、この色で生きていく。

涙の数だけ溜まったバスタブの湯に、私の顔と月が映る。この光景を誰かに見せてあげたかった。揺らめいた水面と、私の顔は、きっとあの日以上に夜に駆けた事が無いはずなのだ。その日の事を、忘れられないまま、こうして舞台に立つ。あのスポットライトは、その日の月光なのだ。

虹の産まれた日を、私の産まれた日にするのだ。こぽこぽと流れ落ちる珈琲の雫と、店内のビリージョエルを私の故郷にして。踵を鳴らして、明日の事を胸に秘めるのだ。何も怖くない、だってそうじゃん、神様なんかより、わたし、生きることを信じてる。

置いた筆に蟻が集っていた。そうか、そうして甘くゆるやかな地獄が私を取り巻いていたのだ。遠い日の放課後のような、あの日の面影を私はその筆で絡めとっていたのだ。熱く、熱されたそれは綿あめのように吹き上がり、指先で這い回るこの蟻をいつの日か大事に想うのだろう。

幸せなら手をたたこう、歌が聴こえる。街頭演説、踊るティックトック。好きなことで、生きていく。心に響かないキャッチフレーズよりも簡単に、手拍子が私に入り込む。人間の鼓動とおなじだ。幸せなら手を叩くのだ。私のための、スタンディングオベーションであるのだから。

誰も私を知らない。世界征服を企む私を知らない。今日募金をした私を知らない。昨日悔しさに枕を濡らした私を知らない。誰も私を知らない。あなたを想う私を知らない。世界征服を企む、私のほんの些細な恋心も、誰も知るわけがない。

深海と火星の調査進度は同じなのだと今朝のニュースで討論されていた。そんな事よりも何故置いておいたビールは汗をかくのかの方が不思議だし、悲しくなくても涙が出る謎の方が大切だ。布団に包まりながら、鯨の夢を見る。なにがひとりだ。私はここにいるじゃないか。

シリカゲルみたいな恋を飲み干した。涙を零してはならないそれは、私を乾かしつづけ、段々と私に薄い膜を張るのだ。だってそれが、私を守ったのだ。そうして幸せを何枚にも重ねて、今ではこの口から愛情がこぼれ始めた。

交差しない交差点は存在しない。信号は赤赤と光り、私の歩みを止めた罰を考える必要がある。数台の車が通る度に、その車窓の中に幼い私が笑っている。そうして交差しない人生を、私たちはまるで交通事故みたいにぶつかりあって、傷ついては愛を知るわけだ。

私の隣にいるあたたかさは、きっと恐らく誰もが羨むようなあたたかさで。「ねえ、だから君は特別なんだよ」って、空気が震えている。ゆっくりとソファな沈む、私はこのあたたかさをどうにか、どうにか言葉にしたいのだ。

ずぶ濡れになった靴下と、昨日の夜の出来事は多分80%ほど同じ成分で出来てる。肩を落とす音は、思ったより軽くてポップで、暖かいココアくらいじゃどうしようも無い。だから、今日も窓を開けよう。どんな時でも、窓を開けていよう。

遮光カーテンを買うべきだったと後悔したのは、この街ではじめて悔しさに涙をした時だ。朝日が顔に差す。痛みすらも感じそうな陽射しがいつか私の心を照らすかもしれない。朝食にトマトを切る。明日のために、ひと口噛んだ。太陽の味がした。

だから演技がしたいのだ。心がそう叫んでいた。炊きすぎた風呂場でお湯が溢れようが関係なく、この心が求めるのはただひたすらに私を私のまま誰かと混ざり合うような演技であった。夜空に星が見えない。だから、だから演技がしたいのだ。

太陽に名前をつけた。忘れたくない日の、大切な一言を名前にした。登っては、落ちるその私のテーマは恐らく追っても届かない、本当の願いになるのだろうけれど。見下ろすよりも、見上げる方がいい。それが、私の哲学を守ったのだ。

冷蔵庫を私のセーブポイントにした。夜中の三時の事だ。繰り返しその夜を過ごしてから気づくんだ。どんな夜も、どんな平凡も、どんな私も、同じ私なんて一秒も存在してなかったんだって。冷蔵庫を開ける。レモンサワーを取り出す。私の物語がはじまる。

雨の日の、苔むした柔らかさが私の傷ついた日々を癒していく。ベランダから放り出した足は、昨日まで誰かの為に歩き続けた足だ。傍らの缶ビールが言う。「こんな日もあるさ」同感だね。飲み干しながら、見えた空は相も変わらず雨雲だった。

大きな穴を埋める方法を知りたいかい?と言う魔法使いに出会った。その魔法使いは、酷く疲れた目をしてこちらを睨んでいる。だから言ってやったのさ、穴を埋めるより先に、穴に潜ってみないか?ってね。そうして二人で飲み明かしたのさ。それが自尊心だったなんて、思わなかったけどね。

「馬頭琴の話をしよう」と息巻いたあなたの瞳が好きだ。夜空の向こう側で、あたかもあなたが見てきたみたいに話すその空気だけを吸い込んでわたしはあなたで呼吸をするのだ。それが、未来永劫のわたしの道標なのだ。

夏なんて二度と来ないで、と拗ねた唇を震わせて。三百円ちょっとで手に入った幸せを命綱に、アイスクリンは今日も幸福を代価に溶けていく。舐めとった指にもその幸せは付いて回ったから、私はあの人と小指で約束をしたのだ。嘘をついたら、二度とこの夏は戻らない。

声にならない声を聴いた。それは、夏の日の暑さが溶けだした音や、冬の日の恋人たちの手を握る温度の音だ。誰も聴いたことのない、でも確かにそこにあった声は、この私の口からも出てくる音なのだ。息を吸い込むと、それを吐いた。

ポケットを叩くとビスケットが増える。そんな魔法が大昔に本当にあったのなら、宗教なんて無かったし天使も産まれなかった。ビスケットが増えたらポケットを叩かれたのだ。誰でもない、私がそうして誰かを満たしたいからだ。

掌は強く、厚い皮を纏った。生きるという意味がそこに刻まれているように、皺は深くなり爪の先に付いた泥すらも生命であると物語っていた。安い軍手が所々破けている。だがそれでいい。それでいいのだと、その掌で今日も何かを掴んだ。

ほんの数ミリの隙間だった。押しつぶされそうな部屋の隅に出来たほんの数ミリの隙間から見える青い空だけが私の心を揺さぶる。そこには上も下もなく、ただ光をじりじりと浴びる私の額と、その隣にある冷えたレモン水がからりと音を鳴らす。そんな明日を迎えたいと願うだけだ。

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