Blitz(0:0:2)
【配役】
◆アルフォンス: アルフォンス・レオニール 男性(性別不問)
あだ名「アル」。ヴィットーリオの元で働いていた若きマフィア構成員。
ベスタフ州マフィア「テオドーレリア」の金庫の金を盗んだ事で捕まった。
◆ヴィットーリオ:ヴィットーリオ・チョッパーズ 男性(性別不問)
あだ名「ヴィッツ」。金を持ち逃げした部下を追い回し、この廃屋にぶち込む事に成功。
「テオドーレリア」の中では若頭の位置。
憎悪と愛情と友情と情けを持ってして、拳銃を机に置く。
■場面:椅子に縛られているアルフォンス、殴りつけるヴィットーリオ。廃屋。机ひとつ。
アルフォンス:ぐ、っは
ヴィットーリオ:(アルフォンスを殴る)
アルフォンス:かはっ
ヴィットーリオ:(アルフォンスを殴る)
アルフォンス:へ、へへ…ヴィッツ、ヴィッツヴィッツヴィーーーッツ。
アルフォンス:そのまま殴り続けたら、俺、死んじまうぜ、なあ。
ヴィットーリオ:五月蠅い。(アルフォンスを殴る)
アルフォンス:がっ、はぁ……本当、加減ってもんを知らねぇんだから、うちの若頭は……
ヴィットーリオ:このままお前をチキンケバブみてぇな顔面にしたっていいんだぜ?
アルフォンス:おいおい、勘弁してくれよ兄貴。
アルフォンス:ソースは赤ちゃん味がいいですか?それとも、激辛あちち味がいいですかーって
ヴィットーリオ:(アルフォンスを殴る)
アルフォンス:くはっ……いてぇんだよ!!!
アルフォンス:無抵抗な人間を殴り続けるたぁ、いい根性してるじゃねぇか兄貴!!!
ヴィットーリオ:今度はその口をお前のグランマに頼んで祭り縫いにしてやろぉか!?ああ!?
ヴィットーリオ:それともそのムカつく顔でバーベキューでもしてやろうか!?
アルフォンス:へ、へへ、冗談じゃねえか兄貴、そんなにムキになるなよ
ヴィットーリオ:散々てめぇの御ふざけには付き合ってきたがな、アル、アルフォンス。
ヴィットーリオ:お前、それだけは、それだけはしちゃなんねぇよ。
アルフォンス:助けてくれよ、兄貴。
ヴィットーリオ:馬鹿にしてんのか?
アルフォンス:ヴィッツの兄貴を馬鹿にするなんて、そんなこと、そんなことするわけねぇじゃねえか。
アルフォンス:なあ、頼むよ、兄貴。助けてくれよ。
ヴィットーリオ:組の金庫から盗んだ金、どこに隠した。
アルフォンス:頼むよぉ、なぁ、兄貴ぃ、見逃してくれよぉ、俺と兄貴の仲だろぉ。
ヴィットーリオ:どこに、隠した。
アルフォンス:死にたくねえんだよ、なあ、兄貴。
ヴィットーリオ:なら質問に答えろアルフォンス!!!
ヴィットーリオ:俺もお前も後がねぇんだ!!!
ヴィットーリオ:いつまでも悪戯で済むと思ったら大間違いだ!!
アルフォンス:……悪戯でぇ、こんなことできねぇよ、ヴィットーリオ。
ヴィットーリオ:今、「ボス」は血眼でてめぇを探してる。
ヴィットーリオ:俺や、俺の組の事もだ。てめぇ一人の命を差し出すか、俺ら全員が細切れになって豚の餌になるかだ。
アルフォンス:あははは!
アルフォンス:豚の餌!それこそチキンケバブどころじゃねぇや!
アルフォンス:ケバブとハンバーグでお笑いコンビみてぇだな俺たち!
ヴィットーリオ:今ここで死ぬか?
アルフォンス:……やだな、兄貴。マフィアがユーモアを失くしたらただのチンピラだぜ。
ヴィットーリオ:そのただのチンピラをマフィアに育ててやったのが誰か忘れたのか。
アルフォンス:兄貴には感謝してるよ。
ヴィットーリオ:なら何で!!!こんなことを!!!
アルフォンス:……言いたくないね。
ヴィットーリオ:……なあ、アル。
ヴィットーリオ:俺はお前を家族同然に想ってきた、寝床も、友人も、旨いパンチェッタの味だって教えたのは俺だ。
ヴィットーリオ:それが、この仕打ちか?
アルフォンス:……。
ヴィットーリオ:マフィアってのはな、「血の掟」がある。
ヴィットーリオ:同じ組同士、同じファミリーであるうちは絶対に「嘘」をついちゃならねぇってやつだ。
アルフォンス:古めかしい掟だよ、そんなの。
ヴィットーリオ:ああ、そうだ、だがその掟を守ってきたから俺らは家族だった。
ヴィットーリオ:なあ、アル。お前は、家族なのか?それとも、救いようのねぇただのコソ泥なのか?
アルフォンス:……それは、あんたが決めればいいだろ、ヴィットーリオ。
ヴィットーリオ:……そうか、わかった。では、こうしよう。
■場面:アルフォンスの縄を解く
アルフォンス:……なんのつもりだ?ヴィッツ。
ヴィットーリオ:何てことはない、マフィア同士でよくやる遊びの一つさ。アルフォンス。
アルフォンス:縄を解いたら、俺が逃げ出すって考えなかったのか?
ヴィットーリオ:無駄さ。もうこの廃屋の出入り口はすべて塞いでる。
ヴィットーリオ:もうお前に選択肢はない。
アルフォンス:やけに用意周到じゃねぇか、最初からこのつもりだったんだろ?
ヴィットーリオ:お前がおとなしく全て吐いてたらもっと簡単だったさ。
アルフォンス:……はっ、腐ってもマフィアはマフィアか。
ヴィットーリオ:ここの一丁の拳銃がある。
ヴィットーリオ:お子様にもわかるように伝えるなら、いわゆるこれはロシアンルーレットってやつだ。
アルフォンス:一発だけ弾丸が入ってて、それを引いたらお陀仏ってやつだな、だれでも知ってる。
ヴィットーリオ:なら話は早い、これで全てを決める。
ヴィットーリオ:ただ、普通にやるんじゃない、ここで「血の掟」に従ってもらう。
アルフォンス:どういうことだよ?
ヴィットーリオ:自分の頭に銃口を向けて、ぱぁん、空撃ち一回につき、その勇気を評して相手に質問を投げかける。
ヴィットーリオ:血の掟に従い、その質問に対して嘘をついてはならない。
アルフォンス:それで、金のありかを聞こうって?
ヴィットーリオ:その通りだ。逆に、お前は生き延びさえすればいい。俺が死んだら素直にお前をここから逃がしてやるよ。
アルフォンス:どうだか。
ヴィットーリオ:俺が血の掟を破ったことがあるか?アルフォンス。
アルフォンス:……ねえな。
ヴィットーリオ:この拳銃には弾が6発入る仕様になっている。だが、実際5回しかチャンスは無い。
ヴィットーリオ:最後の1発は、天国か地獄への切符だからな。
アルフォンス:……なら、あんたから初めてくれよ?あんたが言い出したことなんだ。
ヴィットーリオ:……いいだろう、血の掟、忘れるなよ。
■:弾丸 1発目 (かちり、外れ)
ヴィットーリオ:……ふー……。
アルフォンス:この一発がぶち当たってくれてりゃ俺の勝ちだったんだけどなぁ。
ヴィットーリオ:そう簡単に終わったら面白くないだろ?
アルフォンス:ほら、勇気あるものよ!神のおぼしめしだぁ!なんつって。
アルフォンス:聞いてこいよ、金のありか、教えてやるよ。
ヴィットーリオ:……「なぜ、こんな事をした」
アルフォンス:……は?
ヴィットーリオ:答えろ、アルフォンス、なぜこんなことをした。
アルフォンス:……金のありかじゃなくていいのかよ。
ヴィットーリオ:まだチャンスはある。どの道金のありかを話したらお前は用無しだ。
ヴィットーリオ:それまで、家族らしく、きちんと心の対話をしようじゃないか。
アルフォンス:……はははは!あんた、本当ばっかだな!!!
アルフォンス:そんなんだから、他の若頭たちに「あまちゃんのヴィットーリオ」なんて呼ばれるんだぜ?
ヴィットーリオ:血の掟。
アルフォンス:……。
ヴィットーリオ:早く答えろよ、アルフォンス。
アルフォンス:……金が、必要なんだよ。
ヴィットーリオ:それは理由になってねぇ。もっと詳しく話せ。
アルフォンス:……言っても、兄貴にはわかんねぇよ。
ヴィットーリオ:わかる、わからないの話じゃねぇんだよ。
ヴィットーリオ:わかるか、アルフォンス、俺はこの後に及んでお前を教育してんだ。
ヴィットーリオ:お前は、訊かれた事を、ただ、ゆっくりと、俺に話すんだ。
アルフォンス:……手術代が必要なんだよ。
ヴィットーリオ:足りねぇ。もっとわかるように話せ、お前は話し始めたばかりのマフィアベイビーか?
アルフォンス:俺の、命の恩人の、手術代が必要なんだよ。
アルフォンス:俺は、その子の命を、助けてぇんだ。
ヴィットーリオ:次。お前の番だ。アルフォンス。
アルフォンス:……リアクションもねぇのかよ。
アルフォンス:……おお、神よ。
■:弾丸 2発目 (かちり、外れ)
アルフォンス:……っふぅーー。
ヴィットーリオ:まだ神には見放されてないらしいな、「末っ子アルフォンス」。
アルフォンス:末っ子って言うな、ヴィッツ。そうやっていつまでも子ども扱いして。
ヴィットーリオ:なんだ?子ども扱いされたからこんな馬鹿なことをしでかしたとでも?
アルフォンス:違う、俺もマフィアの一人だ。
ヴィットーリオ:いいや、お前はマフィアベイビー、末っ子アルフォンス。いつもいつも苦労ばかりかける俺たちのベイビーだよ。
アルフォンス:……気味の悪い物言いするなよ。
ヴィットーリオ:早く質問をしろ、アル。
アルフォンス:……あんたさっき、「俺もお前も後がねぇ」って言ってたな。
ヴィットーリオ:ああ。言ったな。
アルフォンス:それはどういう意味だよ、俺が追われてるだけだろ?
ヴィットーリオ:これだからベイビーなんだよてめぇは。
ヴィットーリオ:お前ひとりの責任でどうにかなるとでも思ったのか?
ヴィットーリオ:最悪、お前ひとつの命で贖罪できるとでも?
ヴィットーリオ:甘い、甘く見過ぎなんだよてめぇは。
アルフォンス:……どういう事だよ。
ヴィットーリオ:「ボス」のお達しはな、てめぇを目の前で輪切りにして差し出すか
ヴィットーリオ:俺のケツにチェーンソーをぶっこんでミキサーパーティーにして見せろと、そう仰ってんだよ
アルフォンス:あ……
ヴィットーリオ:俺か、お前。もしくは両方の首を差し出さねぇとボスの気はすまねぇ。
ヴィットーリオ:いいか、アル、金額の問題じゃあねえんだよ、金額じゃねぇ。
ヴィットーリオ:ボスは、てめぇに舐められた事にご立腹なんだよ。
ヴィットーリオ:てめぇにつけられた顔の泥を、てめぇか、俺に、拭えと、そう仰られてんだ。
アルフォンス:それは……ヴィッツ、俺……
ヴィットーリオ:謝ってくれるなよ、アルフォンス。
ヴィットーリオ:そんな言葉じゃ、もう何も動かねぇんだよ、この道はよぉ。
■:弾丸 3発目 (かちり、外れ)
ヴィットーリオ:……そろそろ、天国のマンマの顔が瞼に浮かんでくるよなぁ?
アルフォンス:……しらねえよ、俺もあんたも孤児だろ。
ヴィットーリオ:いっちょ前に凛々しい顔になってんじゃねえか、腹でも下したか?ベイビーアルフォンス。
アルフォンス:腹ぁ決めたんだよ、いつまでも子供扱いしてんじゃねえ。
アルフォンス:さっきの話で俺がびびったと思うなよ、ヴィットーリオ。
アルフォンス:ようは、ここであんたに引導を渡せば俺にはまだ未来がある。
アルフォンス:そういう事だろ?「兄貴」。
ヴィットーリオ:本質がわかってきたようだな、アル。
ヴィットーリオ:どちらが生き残るか、それだけの話なんだよ。
アルフォンス:能書き垂れてねぇで早く質問してこいよ、「あまちゃん」
ヴィットーリオ:……「その恩人ってのは、誰だ」
アルフォンス:……金のありかは?
ヴィットーリオ:まだ、お互い1発ずつチャンスがある。
アルフォンス:……あんた死ぬのがこわくねぇのかよ。
ヴィットーリオ:早く答えろよ。
アルフォンス:……「ルーシー・チャンバー」。
ヴィットーリオ:……ははは!ルーシー・チャンバー?
ヴィットーリオ:思ったよりビッグネームでびっくりしたよ。
ヴィットーリオ:お前、ルーシー・チャンバーが、どこの、だれで、何者なのかわかっててそれを言ってんだな?
アルフォンス:わかってる。敵対する組織のボスの娘だ。
ヴィットーリオ:アルフォンス、アルフォンスアルフォンス!!!!!
ヴィットーリオ:てめぇはとにかくどうしようもねぇ、末っ子だと思っていたがこいつぁ救いようのないポップコーン野郎だ。
ヴィットーリオ:よりにもよって!チャンバーの所の娘だ!?
アルフォンス:あの子は俺の、心の奥を開いてくれた!!!
アルフォンス:俺が、俺があの子を助けねぇと!!!
ヴィットーリオ:そんなんだからてめぇはいつまで経っても末っ子扱い、鉄砲玉くらいにしか思われねぇんだよ!!!!
ヴィットーリオ:救世主にでもなったつもりか!?ついに盛り始めたかこの野良犬が!!!
アルフォンス:あんたは俺にマフィアとしての生き方しか教えてくれなかっただろ!!
アルフォンス:あの子は違う!!俺に、それ以外の生き方を教えてくれたんだよ!!!
■:弾丸 4発目 (かちり、外れ)
アルフォンス:……はぁ、はぁ、はぁ。
ヴィットーリオ:悪運が尽きないな、アル。
アルフォンス:五月蠅い、黙ってろよ、「あまちゃん」
アルフォンス:答えろよ、ヴィットーリオ、「この拳銃には、しっかりと弾丸が入ってるんだろうな!!」
ヴィットーリオ:当然、答えはイエスだ。今更怖くなったのか?ベイビーアルフォンス。
アルフォンス:怖くなった?いいや、ちがうね!!
アルフォンス:益々生きる気力に満ち溢れてきたって言ってんだよ、この勝負どうあがいても俺の勝ちだ!!!!
ヴィットーリオ:言ってろ、末っ子。
■:弾丸 5発目 (かちり、外れ)
アルフォンス:…………。
ヴィットーリオ:残るは1発、俺の勝ちだ、アルフォンス。
アルフォンス:…………。
ヴィットーリオ:最後の質問だ、アルフォンス。
ヴィットーリオ:「金はどこに隠した」
アルフォンス:……あんたのベッドの下だよ、ヴィットーリオ。
アルフォンス:俺が子供のころから決まって何かを隠す時はそこだろ。
ヴィットーリオ:そうか。ご苦労だったな。
アルフォンス:…………それは、お前が、だろ?「あまちゃん」
■動作:アルフォンス、銃口をヴィットーリオに向ける。
アルフォンス:こうすれば、死ぬのはお前だろ、ヴィットーリオ。
アルフォンス:このゲーム、破綻してると思わないか?「あまちゃん」。
ヴィットーリオ:……そう来たか。
アルフォンス:これで俺もあんたも、もうファミリーじゃない。
アルフォンス:今まで世話になったな、ヴィットーリオ。
アルフォンス:恨む事のほうが多いけどよ、あんたには感謝もしてるんだぜ。
ヴィットーリオ:…………そうか。
アルフォンス:最後に言いたい事は? 兄貴。
ヴィットーリオ:お前が、言ったんだぜ、ファミリーじゃないって。
アルフォンス:……?
アルフォンス:じゃあな、兄貴。
■:弾丸 6発目 (かちり、外れ)
アルフォンス:……おい、なんだよ、おい。
アルフォンス:入ってねぇ、入ってねぇじゃねえかよ!!!
ヴィットーリオ:アルフォンス。だからお前は「ベイビー」なんだよ。
アルフォンス:血の掟は!!!嘘はつかない!!!そうだろ!???
ヴィットーリオ:「ファミリーには」、な。
アルフォンス:あ……。
ヴィットーリオ:そもそもなぁ、アルフォンス、親の金ぇ、パクるやつが、子供でいられるわけねぇだろ?
アルフォンス:じゃあ、なんで、なんでこんなまどろっこしい真似したんだよ……おい!!!ヴィッツ!!!
ヴィットーリオ:うちのボスはな、なーんも言わなかったよ、あんな金くれてやれってな。
ヴィットーリオ:でもなぁ、アルフォンス、「あいてさんのボスは、そうはいかなかった」
アルフォンス:え……
ヴィットーリオ:全部知ってんだよ、こっちは。お前の輪切りを欲しがってたのはなぁ、あいてさんの方さ。
アルフォンス:あ、兄貴、うそだろ、なあ。
ヴィットーリオ:最後の最後で、てめぇが言ったんだぜ、アルフォンス。
ヴィットーリオ:俺も、お前も、もう、家族じゃぁ、ねぇってさあ。
アルフォンス:ちがう、兄貴、ごめん、ごめんなさい、嫌だ
ヴィットーリオ:そろそろお着きになるよ、チャンバーファミリーの「お義父さん」がよぉ。
アルフォンス:やだ、いやだ、兄貴!!いやだ!!助けてくれ!!俺たち、俺たち家族だろ!!!
ヴィットーリオ:あいてさんの大事な愛娘に手だして、無事でいられるわけねぇだろ、末っ子。
ヴィットーリオ:家族ごっこは、もう御しまいなんだよ、ベイビー。
ヴィットーリオ:なにか、言いたい事はあるか?
ヴィットーリオ:いや、「ベイビー」が話すわけ、無いよな。
ーfinー
0コメント