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臍帯とカフェイン

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JOY DO(0:0:2)

オツカレサマデス

【配役】

◆アンダンテ:

本編中省略の為、Aと表記。

性別年齢共に不詳。足を切られた地縛霊。

どこにも行けず、探すのは過去。

地に足着いた、生活がしたいものです。

性別不問。


◆ピアニシモ:

本編中省略の為、Pと表記。

性別年齢共に不詳。首を切られた背後霊。

何も考えられず、頭でっかち机上の空論。

もっと深く考えて、発言したいものです。

性別不問。




【本編】


A:失礼失礼、こちらお掛けしてもよろしいですかな。


P:これはこれは、こちらどなた様もお掛けになって構いません。


A:それはありがたい、では失礼して、どっこいしょ。


P:どっこいしょとは、古臭い表現だ。


A:そうですか?


P:ええ、今時分「どっこいショット」か「よっこらセックス」と言うべきでしょう。


A:聞いた事がありませんね、どこで言われている言葉なんでしょう?


P:それはもちろん、いついかなる時もどの時分でも、最新の、ああ、名だたる全てのものが言っておられますとも。


A:はてさて、それが本当のことかどうか私にはわかりかねますもので。


P:それでは仕方ありませんね。


A:ええ、大変失敬。

 ところでここは煙草を吸ってもよろしいですかね?


P:いやいや、煙草は困りますね


A:いけませんでしたか?


P:ええ、煙草は困りますね


A:しかしもう火をつけてしまいました、この一本だけでも


P:それはおかしい、質問の前に既に火をつけていたとなってはその質問の意味が無い。


A:まさか断られるとはゆめゆめ思いませんで。


P:しかし煙草はおやめ頂きたい、さあ、火を消して。


A:まあ待ちなさい。これは私がもっている最後の煙草なわけだ。


P:それが何だって言うんです?


A:その最後の煙草に火をつけたと言っているわけですから。


P:なら最後まで吸わせろと、そうおっしゃるわけですね?


A:いかにも。


P:それは勝手が過ぎる、さあ、火を消すか席を立つかどちらかをお選びください。


A:それはどちらも困る、ここがどこかもわからず途方に暮れていたところだ。

 席も立ちたくない、煙草も吸いたい、これを両立させるためにはどうすればよいだろうか。


P:ですが、煙草だけは困ります。

 ここはどこからどう見ても定食屋、料理ににおいがつくんじゃ来るお客も来なくなります。


A:ここは定食屋なんですか?


P:ええ、どこからどう見ても、まごうこと無き定食屋でございましょう。


A:いえ、どこからどう見ても定食屋であるようには思えませんでした。


P:では、あなたはここが定食屋であるとは思わず入られたということで?


A:ええ、その通り、なにやらおかしな場所があるものだと声をかけた次第で。

 なにせここにどうやって来たのか、ここからどこに向かうのか。

 自身が何者であるかも私には今、無いわけだ。


P:それにしてはいやに、流暢にお話なされてますけれども。


A:言葉はわかって然るべきだろうに。


P:そういうものですかね。


A:そういうものだろう。


P:では、こう致しましょう、あなたが何か注文をなされるのであれば

  私も定食屋として、座られる事も煙草を吸われる事も我慢致しましょう。


A:それは好都合だ、なんとなく小腹が空いたような感じがしていたところでね。

  しかし、残念ながら勘定をどうすればいい?


P:なに、その後皿の一つや二つ洗ってもらえればそれでいいですよ。


A:それはそれは、好都合。では、そうだな、ハムカツサンドなんてもらおうかな。


P:ハムカツサンドですね、お前様実にいい選択をされました。


A:と、いうと?


P:この店はハムカツサンドには少しばかり五月蠅い店でしてね。


A:それはそれは、好都合。


P:お好きなハムをお選びいただけるわけです。


A:へえ。ハムの種類があるのか。


P:左から、ジャンガリアン、キンクマ、ロボロフスキーにゴールデンとありますが。

 どれも粒ぞろいのよいハムでございます。


A:ハムスターの話してる?


B:これがまた実に可愛らしい。小さければ小さいほど、いい味も出るのです。


A:ハムスターの話してるな。


P:さあ、どのハムにいたしましょう?


A:その選択肢しか無いわけだね?


P:ええ、必ずお選び頂く必要がございますね。


A:ではジャンガリアンで。


P:ジャンガリアン、お目が高い。

  ジャンガリアンといえば仄かに香るスモークの香りが食欲をそそるものでして


A:なんでもいいから早く出してくれ。


P:それではここからは共同作業といきましょう。


A:共同作業?


P:ええ、私がこう、ジャンガリアンをいい位置から落としますのでね

 お前様はこう、上手い具合にジャンガリアンをひしとつかんで頂きたい。


A:それは一体なんの意味があるのか。


P:さあ、いきますよ、このくらいの位置からでよろしいか。


A:まてまてまて、それだと高すぎる。


P:ではこのくらい?


A:まてまて、それだと低すぎる。


P:ではこの辺りでいかがでしょう?


A:なぜ遠ざかる、もっと近くで落としてもらわないと


P:注文の多い方だ、ではこちらでいかがでしょう?


A:今度は近すぎる、いい塩梅というものがわからないかね


P:では、この辺りでいかがでしょう?


A:おお、それならそれなら、悪くない悪くない。


P:では、いきましょう、ジャンガリアンを私が落としますので


A:ええ、ええ、それを私が下でキャッチすればよいということですね


P:ええ、その通り、それではいきましょう


A:望むところです


P:よっ


A:おっと


P:はい、まだまだ


A:おっとっと


P:ほら


A:ハッ


P:じゃんじゃん


A:よっ、ハッ


P:何をされてるんです先ほどから


A:あなたがジャンガリアンを落とすからつかみなさいと言うから


P:何もございませんでしょう、この場所には


A:わかっております、わかっておりますとも、ですがこれは


P:ですがこれは


A:あなたに合わせた、いわばノリと言われる所以のやつでございましょうが。


P:酷い汗だ。


A:あなたがやらせるからですよ


P:なにを?


A:なにをって


P:なにをやらせたのでしょうね


A:私はなにをやらされたのか。


P:ハムスターを?


A:掴まされた。


P:居ないでしょう、ここにハムスターは。


A:腑に落ちん。


P:オツカレサマですね。


A:実にツカレタ、まったく、厚顔無恥も良いところだ。


P:それは使いどころがあっている言葉でございましょうか。


A:それとなく言っておけばよかろうなのだ。


P:そうですか、そうですか、それで、いかがでしょう?


A:だめだ。


P:だめですか。


A:まったくもってだめだ、けしからん。


P:そうですか、だめですか。


A:ああ、まったくもって駄目でけしからん。


P:それでは如何なさいましょう、お前様の記憶を戻さぬ限りこの空間は何度も繰り返す無間地獄でありますので。


A:と言うことはこのハムスター握りも既に何回か繰り返していると言うことでよろしいか?


P:ええ、実に39万飛んで21回目のハム掴みでございます。


A:いや、まて。


P:なんでございましょう?


A:ハムは掴んでおらんだろう。


P:そうでございました、さながら空想ハム掴み、いえ、ジェネリックハム掴みと命名してもよろしいかも知れません。


A:ジェネリックの要素がどこにあるのか。


P:とりあえずジェネリックと付けておけば何となく頭がよさそうに見えるじゃありませんか、お前様。


A:他にはどんなことを?


P:なんでも致しましたし、なんでも致しておりません。

 何をするにも物が足りず、何をするにも時間がありあまっております故に。


A:では今までにしていない事は。


P:していないことは存在しないと言っても過言ではありませんし

 していない事だらけだと言えば、それはそこまでの戯れ言になるかと。


A:ええい、ややこしい。


P:実に、オツカレサマデス。


A:記憶があると言えば存在するし、記憶が無いといえば存在していない。

 何をもって記憶とするのか不定形で不完全なロンリーナイトの連続であるわけだ。


P:であればミルクアンドハニーのワンダーランドで今夜もブギーにバックして踊ってみせるといいかもしれません。


A:そんなことができるものか。多次元警察に追われる身だ。


P:あらあら、そうでしたか、多次元宇宙的にリンデロンのボークス指名手配をされていたとは。


A:噴気黄流の果てのザマさ。


P:面白い冗談をおっしゃいなさる。


A:Pha級のグレイトシューターをちょいとばかしね。


P:ちなみにこのワードサラダも数える所27回目のワードサラダとなります。


A:だめか、結局は輪廻する運命なのかもしれない。


P:輪廻するとは面白い、あなたは輪廻できるとでもお思いなのでしょうか。


A:輪廻するだろう、魂は皆等しく巡るものだ。


P:ご冗談を、顎が外れます。


A:おかしいか?


P:おかしいも何も、今まさにここで2つ、魂が停滞しているわけです。


A:では私もお前も魂であると。


P:そうでございましょう、配役表をごらんにならなかったので?

 仰々しく「地縛霊」と「背後霊」と書いてあったではございませんか。


A:配役表とは何の話をしているのか。


P:あらま、しらばっくれなさる。

 これは面白い、今までに無い事が今はじめて起きておられます。


A:では、何か、これは初体験ジェネレーションというわけだ。


P:ジェネレーションは余計だったように思いますが、その通り、初めてのルートを踏破中でございます。

 その手に持っているオネズミ様か透明な板をつかってスッスッスーと始めの頃に戻ってごらんなさい。

 ごりごりと仰々しく書いてありますでしょう。


A:フリック&スクロールの倒置社会といったところか。


P:ここでワードサラダを繰り返すつもりは毛頭ございません。

 さあさあ、私は背後霊、あなたは地縛霊。

 切り取り線のそのまた先で、意味があるのか無いのやら。

 置かれた場所はこの白い部屋。

 何をするでもしないでも、私たちの自由に任せられているわけではございますが。


A:では、幽霊なた幽霊らしく、ディベートでもしてみようではないか。


P:幽霊はディベートなど行いません。


A:ではこの長い夜をどう過ごせというんだ?


P:何も。


A:何も。


P:ええ、何も、特に何も致しません。


A:何もしないでいること程地獄であることは無いだろうとも。

 それでは何か、命がつきたらそこで終わり、ずっとその終わりを繰り返し

 何もないとなんでもあるの狭間でこうして無意味なナンセンスを続けていくと?


P:ま、簡単に言えばそういうことだよ。


A:耐えられるかそんなもん、やってられーん!やってられないよ!


P:そんなこと言ってもね、じゃあ、なんだい、君は「死んだ後の世界」なんて考えられるのかい。


A:わかんない。


P:だろ?

 もしかしたら、それはずっと永遠に続くカニ食べ放題のバスツアーかも知れないし

 なんなら宇宙戦艦の波動法を撃つ瞬間そのものかもしれない。


A:だとしたら、この長い夜がポエトリーにリズミカルにダンスフロアになっていてもいいわけだろ?


P:誰がそんなの望むんだよ。


A:望まないか。


P:そりゃそうさ、死んでもなお、陰気くさい事なんてしてらんないだろ。


A:かび臭いお経を読まれるよりは確かにマシだ。


P:かといって、かといってだよ、じゃあそこの先に沼がございます。


A:ああ、沼があるね。


P:じゃあその沼に足をつけるかといえば


A:つけるといえば。


P:そうも簡単にはいかない話で。


A:オツカレサン


P:オツカレサン


A:で、どんな気持ちだい、今。


P:何もわからないといった顔だろ?


A:それはそうだが、そこから芽生えるナラティブの結果がこうして謎を残していくわけだろう?


P:秘密ばかりだなこの話は。


A:秘密は多ければ多いに越したことは無いって誰の言葉だった?


P:忘れた。


A:忘れたか。


P:で、どうだい?


A:何も、特段変わった様子はない。


P:そうか、もっと激しいほうが良いのかも知れないな。


A:これ以上激しくって、それこそ生き返っちまうよ!はは!


P:笑えないし、笑いどころのわからない笑いは地獄そのものだぜ、旦那。


A:ちょっと言ってみただけだって。


P:こんな事を繰り返して、夜があけたらお前様、何をどうするつもりなんだい。


A:わかんなーい。


P:わかんないかー。


A:でも少なからずハムスターは食べないかな。


P:やりたいことはわからなくても、やらないことはわかってるの、悪くないね。


A:でしょ?


P:悪くないよ、


A:同感だね。


P:それじゃあ、ここいらで少し与太話を。


A:断固拒否。


P:それは残念。


A:オツカレサマデス。


P:オツカレサマデス。


A:もう限界だ!


P:そういうなよ相棒、もう少し続けないと配信時間が稼げないだろう?


A:そんなものの為に無理強いして伸ばしたクライマックスになんの意味があるのか!


P:好きだよ、ワードサラダ。


A:まあ、嫌いじゃないけど。


P:溶けた時計の虹の話でもしてみる?


A:そんなの、虹の最後にデネブコーティングされた虹色侍がグミ刀もって「にゃー」してるに決まってる。


P:「にゃー」?


A:そう、「にゃー」


P:想像したら最高にカオスゲートでいいじゃない


A:グミ刀って結局いつ帯刀許可おりたのかよくわかりません。


P:グミ刀はグミなのか刀なのか。


A:その質問はゾウナシトゲトゲゾウアリがゾウなのかアリなのかナシなのかと質問するのと同じくらい不条理だよ。


P:でもどちらかと言えばアリでしょ?


A:いや、ナシです。


P:そうおっしゃらず。


A:ナシよりのゾウナシだな。


P:まぁまぁ、これでなんとか。


A:何これ。


P:そりゃぁもちろんお代官様の大好きなやつですよ。


A:パンダのパンチラ?


P:みんな大好きだそんなの。


A:好きだよね、パンチラ。パンチラの価値って何と同じ?


P:買いそびれたビットコインと同じくらいの価値。


A:それって何と同じくらいの価値?


P:あの時殺しておけばよかったヤベマコトの魂と同じくらい。


A:それって高いの?低いの?


P:俺からしたら踏みにじりたいくらい低いけど、あいつの家族からしたら糞ほど高い。


A:困ったもんだ、突如来る闇。


P:何もかもを許せずに生きるくらいならそのまま死に続けていたいと思うのは罪ですか?


A:それが罪なら、世界の地獄の釜はもう満杯です、お先にどうぞ。


P:輪廻なんてしたくない!


A:ずっとこうしていたい!


P:だからずっとこのままなんじゃない?


A:そっか、そういうこと?


P:何かいやなことあった?話きこっか?ラインやってる?


A:拙者、SNSは矢文しかもたないタイプ。


P:ふっるい!


A:ふっるい!


P:オツカレサマデス。


A:オツカレサマデス。


P:もういいんじゃない?


A:そろそろいっか。


P:うん、楽しかったよ。


A:こちらも、何の意味があったかわからないけど。


P:そういうもんじゃん、世の中って。


A:そうだね、それじゃ、


P:また来世。





おわり

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