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『スニーカーシューズ』(0:0:3)

【配役】

●アイビー・ポルトシェード → 性別不問。世界滅亡が3日後に迫った現在

               人気の無くなったカジノでギャンブルを続ける。

●RAT → 性別不問。名札には「R」「A」「T」、RATとだけ書かれている。

     人気の無いカジノで1人、ゲームを淡々と進めるディーラーである。

●リンデンバーク・コヴァルスキ → 性別不問。今やこの博士の顔を知らぬ物は居ない。

                 テレビでは博士の声明で放送が繰り返されている。

                 「3日後、世界は滅びる」と。

【用語】

赤い首 → レッドネック。アメリカ圏での「田舎者」という意味のスラング

ハイアンドロー → 場に出たカードと伏せられたカード、伏せられたカードの数は

          場に出たカードより大きいか小さいかをBETするゲーム

エクセレンテ → ポルトガル語での「素晴らしい」




■■■本編■■■

タイトル:「スニーカーシューズ」


アイビー・ポルトシェード:だから嫌いなんだよ、自分の名前がさ。

RAT:いい名前だと思うんですけどね。

アイビー・ポルトシェード:そんな事ないって、田舎の匂いしかしないチンケな名前だよ。

RAT:愛情深くてよろしいではありませんか、アイビーだなんて。

アイビー・ポルトシェード:もっとマッキントッシュとか、シュナウザーとかさ。音のいい名前のほうがよかったよ。

RAT:故郷には、お帰りにならないんですか?

アイビー・ポルトシェード:なんで?

RAT:ニュースをご覧になられていないのです?

アイビー・ポルトシェード:見てるよ、毎日。

RAT:なら・・・

アイビー・ポルトシェード:今更でしょ。

RAT:今更、ですか。

アイビー・ポルトシェード:うん、今更、だよ。

RAT:世界滅亡のカウントダウン、故郷に帰るのは今更でも何でもないと思うのですが。

アイビー・ポルトシェード:今更でしかないよ。だって、どうやってももう回避できないんだろ?その世界滅亡ってやつはさ。

RAT:そのように、ニュースでは仰られてましたね。3日後に滅びる、と。

アイビー・ポルトシェード:核ミサイルの誤発射、だろ?

RAT:ええ、そのように、ニュースでは。

アイビー・ポルトシェード:そんな事いったらあんたもなんで故郷に帰らないんだい?

RAT:私ですか?

アイビー・ポルトシェード:そりゃそうだろ、他に誰がいるって?この人気のないカジノで酒を飲みながらポーカーしているモノ好きなんて

アイビー・ポルトシェード:あんたと、この田舎者しか居ないんだから。

RAT:本当に、どなたも居なくなってしまいましたね。

アイビー・ポルトシェード:おかげさまで高い酒が飲み放題だけどね。

RAT:それは、ふふ、確かに。

アイビー・ポルトシェード:それで?あんたは何で帰らないんだ?この非常事態に。

RAT:……カジノが、好き、だからですかね。

アイビー・ポルトシェード:……はは、いいね、いかれてる。

RAT:どうせ最後を迎えるなら、自分の一番誇れる場所で迎えたいと思うじゃないですか。

アイビー・ポルトシェード:ディーラーの鏡だね、あんた。

RAT:お褒めいただき光栄です、アイビー様。

RAT:では、そろそろ次のゲームなんていかがでしょうか?

アイビー・ポルトシェード:いいね、さっきはぼろ負けだったからね、次は勝てるゲームを用意してくれよ。

RAT:そうはいきませんよ、アイビー様。カジノとはだれかの手のひらで踊る場所。

RAT:必ず勝てるゲームなんて存在しません。

アイビー・ポルトシェード:イカサマも自由だって言ってる?それ。

RAT:いえいえ、そんなことは。

リンデンバーク・コヴァルスキ:何やら楽しそうな話をしているね。

RAT:これは、コヴァルスキ様。

リンデンバーク・コヴァルスキ:やあ、久しぶり、RAT。君はまだ残っていたんだね。

RAT:ええ、特に、行く場所もありませんから。

RAT:コヴァルスキ様こそ、よろしいのですか、こんな所に居て。

リンデンバーク・コヴァルスキ:どうせあと少しの猶予だ、今更どうこうする必要も無いだろ?

アイビー・ポルトシェード:……リンデンバーク・コヴァルスキ?

アイビー・ポルトシェード:あんた、リンデンバーク・コヴァルスキだろ?

リンデンバーク・コヴァルスキ:いかにも、私がリンデンバーク・コヴァルスキだが。君は?初めて見る顔だね。

RAT:アイビー・ポルトシェード様です。

リンデンバーク・コヴァルスキ:ポルトシェード君か、こんな非常事態にカジノに入り浸るとは君もモノ好きだね。

アイビー・ポルトシェード:アイビーでいい。

リンデンバーク・コヴァルスキ:アイビーくんね。よろしく。

アイビー・ポルトシェード:何度も見たよ、テレビのニュース番組で。

リンデンバーク・コヴァルスキ:そうかい、私も有名人だな。

アイビー・ポルトシェード:世界滅亡のカウントダウン、世に発表したのはあんたじゃないか。

アイビー・ポルトシェード:有名人じゃないわけない。

リンデンバーク・コヴァルスキ:それは、そうだね。

アイビー・ポルトシェード:実質、この世紀末を作り出したのはあんただ。

RAT:アイビー様。

リンデンバーク・コヴァルスキ:いいんだ、RAT。アイビーくん、君はそう思うんだね?

アイビー・ポルトシェード:だって、そうだろ?いつ死ぬかわからないまま、死ぬことだってできた。

アイビー・ポルトシェード:あんたが「終わり」を示したから、人類は終わりを受け入れたり、拒絶したりしてる。

リンデンバーク・コヴァルスキ:面白い考え方だね。つまり、人類はこの滅亡へのカウントダウンを知る必要はなかった、と?

アイビー・ポルトシェード:少なからず、そうすれば今も人々はふつうに生活して、ふつうにベッドで寝てたさ。

リンデンバーク・コヴァルスキ:「絶望せずに済んだ」と?

アイビー・ポルトシェード:ああ。

RAT:アイビー様、それは、あまりにも。

リンデンバーク・コヴァルスキ:それも一理あるな。

RAT:コヴァルスキ様?

リンデンバーク・コヴァルスキ:いつ死ぬかわかって生きる事はできないが、いつ死ぬかわからないまま生きる事はできる。

リンデンバーク・コヴァルスキ:それこそ、終わりを知るという事は「虚無」を知るということだ。

リンデンバーク・コヴァルスキ:巨万の富を得ようと、多くの肉体を抱こうと、その先に終わりが見えるのであればその全ては「無意味」

リンデンバーク・コヴァルスキ:それは「生きる意味」を欠く行為であり、思考であり、舞台であるわけだ。

リンデンバーク・コヴァルスキ:エンディングが看板に書いてある喜劇を誰が観に行こうと思うのか、ということだな。

アイビー・ポルトシェード:そんな難しくこねくり回されてもよくわからねえよ。

リンデンバーク・コヴァルスキ:失礼。癖のようなものでね。

リンデンバーク・コヴァルスキ:では聞くがね、アイビーくん。

アイビー・ポルトシェード:なんだ。

リンデンバーク・コヴァルスキ:君が私の立場であったなら、君はどうしたかね。

アイビー・ポルトシェード:あんたの立場……

リンデンバーク・コヴァルスキ:そう、各国の核ミサイルの管理システムに重大な欠陥がある事がわかった、

リンデンバーク・コヴァルスキ:そのシステムはどのエンジニアが修正をかけようとしても修正ができない。

リンデンバーク・コヴァルスキ:同一日、同一時間、寸分狂わずにすべての核が同じタイミングで発射される事になっていた。

リンデンバーク・コヴァルスキ:その事実を知っているのは、君だけ。

アイビー・ポルトシェード:……隠し通したさ。

リンデンバーク・コヴァルスキ:本当に?

アイビー・ポルトシェード:したさ!

リンデンバーク・コヴァルスキ:自分だけは世界の滅亡を知っている、それを本当に抱えきれるかね?

アイビー・ポルトシェード:喧嘩売ってるのか、あんた。

リンデンバーク・コヴァルスキ:見てくれだけは整えたシャツ、だがその実履いている靴は美麗さより動きやすさを選んだスニーカーシューズ。

リンデンバーク・コヴァルスキ:ポルトシェード姓から考えても、出身はそうだな、オクラホマ。

アイビー・ポルトシェード:な……

リンデンバーク・コヴァルスキ:散乱する瓶を見ると、高い酒ばかりだ。

リンデンバーク・コヴァルスキ:一攫千金を夢見て、田舎から出てきた「赤い首(レッドネック)」

リンデンバーク・コヴァルスキ:煌びやかなこのラスベガスにあてられて、もしかしたら莫大な借金なんかでその「赤い首(レッドネック)」も回らない状態かもしれないな。

アイビー・ポルトシェード:表に出ろ!!!このインテリ野郎!!!

RAT:アイビー様!!!!このカジノでは喧嘩はご法度です!!!

アイビー・ポルトシェード:ぐぬぬ……

RAT:コヴァルスキ様も、お人が悪いです。売り言葉に買い言葉、「らしく」ありませんよ。

リンデンバーク・コヴァルスキ:彼から始めた物語だよ。

RAT:ですが。

リンデンバーク・コヴァルスキ:すまなかった、私も気が立っていてね。

アイビー・ポルトシェード:……。

リンデンバーク・コヴァルスキ:(溜息)悪者はつらいね。

RAT:……ゲームをしませんか?アイビー様、コヴァルスキ様。

アイビー・ポルトシェード:……ゲーム?

RAT:ええ、ここはカジノです。勝つも負けるも、正しいも間違いも、最後にチップを獲得したものが正しい。

RAT:ここは、そういう場所でしょう?

リンデンバーク・コヴァルスキ:実にシンプルでわかりやすいね。

RAT:ええ、その勝ち負けが、お二方の喧嘩の決着。そういうことにしてはいかがでしょう。

アイビー・ポルトシェード:……。

RAT:アイビー様。

アイビー・ポルトシェード:……わかった、やるよ、やればいいんだろ?

RAT:流石アイビー様、ギャンブラーの鏡です。

リンデンバーク・コヴァルスキ:鏡があるのかい?君の家には。

RAT:コヴァルスキ様!

リンデンバーク・コヴァルスキ:ほんのジョークだよ。

RAT:……ゲームは簡単に、ハイアンドローでよろしいですね?

アイビー・ポルトシェード:ハイアンドロー?

RAT:はい、場にカードを2枚出し、左側のカードを先にめくり表にします。

RAT:残された右側の裏向きのカードが先に出されたカードの数字より「上(ハイ)」か「下(ロー)」かを当てるゲームです。

リンデンバーク・コヴァルスキ:シンプルかつ、戦略性を問われるゲームだね。

アイビー・ポルトシェード:戦略性?

リンデンバーク・コヴァルスキ:そう、これはいわゆる心理戦なのだから。

リンデンバーク・コヴァルスキ:そのカードが「上(ハイ)」なのか「下(ロー)」なのか。

リンデンバーク・コヴァルスキ:ディーラーとの駆け引きと、我々お互いの「どちらを選ばせるか」という心理戦。

リンデンバーク・コヴァルスキ:単純なゲームほど、そういった思考戦が必要になる。

RAT:その通りです。

RAT:ゲームがシンプルであればあるほど、求められるのは度胸と思考。

RAT:そして口のうまさ。

RAT:この誰も居ない、閑散としてカジノで行うにはおあつらえ向きのゲームだと思いませんか?

リンデンバーク・コヴァルスキ:どれだけ大声を出そうが、迷惑だと思う客は居ない。

アイビー・ポルトシェード:それに、共謀する仲間もいないってこと、だろ。

RAT:では、早速カードをシャッフルします。

アイビー・ポルトシェード:……なあ、あんた。

リンデンバーク・コヴァルスキ:どうしたのかね、カードシャッフルに集中しなくていいのかい。

アイビー・ポルトシェード:なんで、世界は滅びるんだよ。

リンデンバーク・コヴァルスキ:聞いてなかったのか?

アイビー・ポルトシェード:聞いてたさ。

リンデンバーク・コヴァルスキ:じゃあ、理解力の無い猿なのかな?

アイビー・ポルトシェード:いちいち煽るなよ。

リンデンバーク・コヴァルスキ:失礼。どうしても、癖でね。

RAT:左側のカードをオープンします、よろしいですね。

リンデンバーク・コヴァルスキ:頼むよ。

アイビー・ポルトシェード:問題ない。

RAT:左側のカードは、ハートの3でした。右側のカードが「ハイ」なのか「ロー」なのか?

RAT:お好きなほうにBETしてください。

アイビー・ポルトシェード:簡単なBETだ、3より小さい数字は2とエースしかない。

アイビー・ポルトシェード:間違いなく、「ハイ」の方が勝ち筋だろ

リンデンバーク・コヴァルスキ:なら私は「ロー」に賭けよう

アイビー・ポルトシェード:……あんた、ギャンブルしたことないのか?

リンデンバーク・コヴァルスキ:君、ギャンブルしたことないだろう?

アイビー・ポルトシェード:なんでだよ

リンデンバーク・コヴァルスキ:誰もが選ぶ方法を選んで勝った所で、何が「賭け」なのか。ということだよ。

アイビー・ポルトシェード:なんだよそれ

リンデンバーク・コヴァルスキ:そのままの意味だよ、ギャンブルとは「誰も思っても居ない箇所」を狙う事で独り勝ちをする、そういう遊びだろう?

アイビー・ポルトシェード:……そんな風に、考えた事は、無かったな。

RAT:如何なさいますか?お二方とも、どちらにBETなさいますか?

リンデンバーク・コヴァルスキ:私は「ロー」に賭けよう。

RAT:アイビー様は、如何なさいますか?

アイビー・ポルトシェード:……「ロー」に賭ける。

リンデンバーク・コヴァルスキ:おや、どういうつもりだい?それでは、私たちの勝負にならないが。

アイビー・ポルトシェード:「誰も思っても居ない箇所」を狙うのが、ギャンブルなんだろ?

アイビー・ポルトシェード:この場合、あんたの逆に賭けるのがセオリーだ。

アイビー・ポルトシェード:なら、そのセオリーの逆で、誰も選ばない箇所を選んだ。

リンデンバーク・コヴァルスキ:ははっ、面白いじゃないか、きみ

RAT:では、アイビー様コヴァルスキ様お二方とも「ロー」にBETということでよろしいですか?

リンデンバーク・コヴァルスキ:ああ、それでいいよ。

アイビー・ポルトシェード:問題ない

RAT:では右側のカードをオープン致します。

アイビー・ポルトシェード:……ハートの、3だ。

リンデンバーク・コヴァルスキ:RAT?

RAT:左側のカードも右側のカードもハートの3、つまりはこの試合はドローと言う事になります。

アイビー・ポルトシェード:おい、どういうことだよ

リンデンバーク・コヴァルスキ:ははは、これはしてやられた

アイビー・ポルトシェード:どういう意味だよ

リンデンバーク・コヴァルスキ:してやられたのさ、このディーラーに。元々私たちを勝たせるつもりはなかった、そうだろ?

RAT:残念ながら今回のゲームは親である私の独り勝ちということですね。では、掛け金はすべて頂きます。

アイビー・ポルトシェード:こ、こんなのイカサマだろ!?

RAT:アイビー様、カジノとはだれかの手のひらで踊る場所。

RAT:必ず勝てるゲームなんて存在いたしません。

リンデンバーク・コヴァルスキ:仕方ない、ルールはルールだ。この喧嘩私たちお互いに悪かったという事で手打ちにしようじゃないか。

リンデンバーク・コヴァルスキ:どうだね、アイビーくん。

アイビー・ポルトシェード:……いいよ、それでいい。

リンデンバーク・コヴァルスキ:腕を上げたね、RAT。まさか同じカードを忍ばせているとは。恐れ入ったよ。

RAT:ディーラー冥利に尽きます。

アイビー・ポルトシェード:……なあ、その、博士。

リンデンバーク・コヴァルスキ:コヴァルスキでいい。

アイビー・ポルトシェード:……コヴァルスキ、なんで世界は滅亡するんだよ。

RAT:アイビー様、それは先ほどお答え頂いてたではありませんか。

アイビー・ポルトシェード:核ミサイル、それを制御していたシステムの不備、なんとなく納得してしまいそうだけど

アイビー・ポルトシェード:でもそれって、なんだか現実味がないというか・・・。

リンデンバーク・コヴァルスキ:違和感があるかね?

アイビー・ポルトシェード:ある。

リンデンバーク・コヴァルスキ:鋭いね。いい勘をしてる。

リンデンバーク・コヴァルスキ:先ほどのBETの仕方と言い、とても柔軟性に富んでいる。

リンデンバーク・コヴァルスキ:だが。

アイビー・ポルトシェード:……だが?

リンデンバーク・コヴァルスキ:知る事のリスクと知らない方がいいリターンをもっと天秤にかけたほうがいい。

アイビー・ポルトシェード:それは、そのまま、疑問に対して「正解だ」と言っているように聞こえるが。

リンデンバーク・コヴァルスキ:ゲームをしよう、アイビーくん。

アイビー・ポルトシェード:……なんでだよ。

リンデンバーク・コヴァルスキ:RAT、「ハイ&ロー」の準備をしてもらえるかい。

RAT:……畏まりました。では、カードをシャッフルさせていただきます。

アイビー・ポルトシェード:やるなんて言ってないんだけど

リンデンバーク・コヴァルスキ:ではここから出ていくほうがいい、何も知らず、何も得ず、ただそのままに

リンデンバーク・コヴァルスキ:世界の終末を憂いながら酒で頭をいかれさせる最後を迎えるべきだ。

RAT:ゲームルールは如何なさいますか?

リンデンバーク・コヴァルスキ:君に任せるよ、RAT。

RAT:では、3ゲームの実施。より多く「ハイ」と「ロー」を当てた方の勝ちということでいかがでしょう。

リンデンバーク・コヴァルスキ:それで構わない、さて、どうするね?アイビーくん

アイビー・ポルトシェード:……そのゲームに参加すれば、答えて貰えるんだな?

リンデンバーク・コヴァルスキ:それが君の掛け金だと言うなら。

アイビー・ポルトシェード:上等だ、酔いも冷めてきたところだ。勝負しようじゃないか。

RAT:ではお二方同意のもとで、ハイ&ロー、3ゲームの実施でよろしいでしょうか?

リンデンバーク・コヴァルスキ:無論だ。

アイビー・ポルトシェード:上等だよ。

RAT:それでは、カードを配ります。

リンデンバーク・コヴァルスキ:君は、オクラホマ出身なのかね。

アイビー・ポルトシェード:なんだよ、いきなり。

リンデンバーク・コヴァルスキ:いいじゃないか、少しくらい会話を楽しんでも。

リンデンバーク・コヴァルスキ:そうそうないだろう?世界が終わるって日に、こうしてギャンブルに勤しみながら会話することなんて。

アイビー・ポルトシェード:……オクラホマであってるよ。

リンデンバーク・コヴァルスキ:やはりね。

RAT:ではカードをオープンします。左側のカードはダイヤの7。

RAT:右側のカードがこのカードより「ハイ」か「ロー」か。BETしてください。

リンデンバーク・コヴァルスキ:すこし会話を続けてもいいかな、RAT。

RAT:もちろんです、コヴァルスキ様。

リンデンバーク・コヴァルスキ:ありがとう。さて、アイビーくん、君はオクラホマは好きかね。

アイビー・ポルトシェード:大嫌いだね。

リンデンバーク・コヴァルスキ:それはまた、どうして?

アイビー・ポルトシェード:あんな田舎臭い町、いるだけで吐き気がする。

RAT:自然の多い、よい町ではないですか。

アイビー・ポルトシェード:そんなのは、その町に住んだことが無いから言えることだ。

アイビー・ポルトシェード:何もない、ちんけなところだよ、オクラホマは。

リンデンバーク・コヴァルスキ:だから、都会にあこがれた、と。

アイビー・ポルトシェード:……ありきたりだと笑うか?

リンデンバーク・コヴァルスキ:いいや、ありきたりだとしても、笑う必要は無いと思うね。

アイビー・ポルトシェード:以外だな。

リンデンバーク・コヴァルスキ:私は「ハイ」に賭ける事にするよ。

アイビー・ポルトシェード:じゃあ、「ロー」だ。

リンデンバーク・コヴァルスキ:同じ所に賭けなくていいのかね?アイビー・ポルトシェード。

アイビー・ポルトシェード:同じ所に賭け続けたら、ずっと終わらないだろ?リンデンバーク・コヴァルスキ。

RAT:一度決定すれば、BET先は変更できません。よろしいですか?

リンデンバーク・コヴァルスキ:ああ、そのままでいい。

アイビー・ポルトシェード:勿論だ。

RAT:カードをオープンします。右側のカード、スペードの8、「ハイ」に賭けられたコヴァルスキ様の勝ちです。

リンデンバーク・コヴァルスキ:幸先はいいようだね。

アイビー・ポルトシェード:くそ……。

RAT:1ゲーム目はコヴァルスキ様の勝利でした。そのままゲームを続けられますか?

アイビー・ポルトシェード:当たり前だ、このまま終われないだろ。

リンデンバーク・コヴァルスキ:目が血走り始めているが、大丈夫かね。

アイビー・ポルトシェード:言ってろ。

RAT:では、カードをシャッフル致します。

リンデンバーク・コヴァルスキ:アイビーという名前、誰が名付け親なのだね。

アイビー・ポルトシェード:今その話が必要あるか?

リンデンバーク・コヴァルスキ:人生において、最後のゲームになる。

リンデンバーク・コヴァルスキ:最期を共にする相手の事を知るというのも悪くないだろ?

アイビー・ポルトシェード:……あんたに言う義理はないだろ。

RAT:お爺さまが名付け親であると先ほどおっしゃられておりました。

アイビー・ポルトシェード:おい!!!!

RAT:失礼しました、しかし楽しそうな展開が待っていそうだったので。

アイビー・ポルトシェード:言うなよ……

リンデンバーク・コヴァルスキ:アイビーとは「ツル科」の植物の名前だろう?

アイビー・ポルトシェード:……ああ、そうだよ、花言葉は「不滅」や「永遠の愛」

アイビー・ポルトシェード:笑っちまうよな、そんな名前つけた所で、世界は滅亡するんだぜ。

RAT:シャッフルが終わりました、カードを配ります。

アイビー・ポルトシェード:爺さんは、オクラホマの小さな農場の経営者だった。

リンデンバーク・コヴァルスキ:話す気になったのかい?

アイビー・ポルトシェード:話す気になったんだよ、黙って聞いてろ。

リンデンバーク・コヴァルスキ:それはそれは。

RAT:左側のカードはクローバーの9、「ハイ」と「ロー」どちらにBETなさいますか?

アイビー・ポルトシェード:「ハイ」だ。

リンデンバーク・コヴァルスキ:私は、アイビーくんの話をもう少し聞いてからBETしよう。

アイビー・ポルトシェード:「ロー」に賭けろよ

リンデンバーク・コヴァルスキ:そう急かさずに。

アイビー・ポルトシェード:……いつも、馬の糞のにおいのする爺さんだった。

アイビー・ポルトシェード:週末には家族全員そろってバーベキュー。

アイビー・ポルトシェード:爺さんの得意料理はプルドポークで、いっつも馬鹿でかいサンドイッチに挟んで

アイビー・ポルトシェード:安い酒と一緒にかっ食らってた。

リンデンバーク・コヴァルスキ:とてもよいファームファミリーじゃないか。

アイビー・ポルトシェード:いっつも酔っ払って言ってたんだよ、爺さんが。

リンデンバーク・コヴァルスキ:ふむ、なんと?

アイビー・ポルトシェード:「大きく育つんじゃない、広く育て」って。

アイビー・ポルトシェード:このオクラホマの大地みたいに、この農場みたいに。

アイビー・ポルトシェード:大きく育つのではなく、広く育て、って。

アイビー・ポルトシェード:酔っ払った赤い顔で「赤い首(レッドネック)」が言うんだ。

アイビー・ポルトシェード:大きく育ったじゃがいもは安定しない、どこに転ぶかわからない。

アイビー・ポルトシェード:だが、広く育つ土地には良いじゃがいもが育つ、多くの動物が集まる、そこには人が集まる、ってさ。

RAT:素敵なお爺さまじゃないですか。

アイビー・ポルトシェード:嫌いだったんだよ、そんな、のんきな爺さんも、オクラホマも、じゃがいも農場も。

アイビー・ポルトシェード:その穏やかな風が、和やかな大地が、自分の時間をゆるく遅くさせてく。

アイビー・ポルトシェード:そんなの、耐えられなかった。嫌いだったんだ。

リンデンバーク・コヴァルスキ:「ロー」に賭けよう。

RAT:よろしいのですか?

リンデンバーク・コヴァルスキ:ああ、問題ない。

リンデンバーク・コヴァルスキ:アイビーくん、君はどうやらギャンブラーに向いていないように思うよ。

アイビー・ポルトシェード:なんでだよ。

リンデンバーク・コヴァルスキ:RAT、BETは終了した、進めてくれ。

RAT:かしこまりました。それではカードをオープン致します。

アイビー・ポルトシェード:……クローバーの8。

RAT:コヴァルスキ様の勝利です。

アイビー・ポルトシェード:……くそ!!!!!!

リンデンバーク・コヴァルスキ:この「ハイ&ロー」というゲーム、実にシンプルで小手先の技術が通用しない、完全なる「賭け(ギャンブル)」のゲーム。

リンデンバーク・コヴァルスキ:すべてが運次第、心理戦であり戦術線であるとは話したが結局の所運がつかめるかどうかというシンプルな作りだ。

アイビー・ポルトシェード:……能書き垂れてくれるなよ

リンデンバーク・コヴァルスキ:向いていないのだよ、君は、こういったきらびやかな心の高揚が。

リンデンバーク・コヴァルスキ:それを使った遊びが。嘘をつくことも。何もかも。

RAT:……3ゲーム中、2ゲームをコヴァルスキ様が勝利していることでゲームとしては勝敗が決まっています。次のゲーム、如何なさいますか?

リンデンバーク・コヴァルスキ:さあ、どうする?「赤い首(レッドネック)」くん。

アイビー・ポルトシェード:……それでも、やるだろ、ギャンブルをしに来たんだ、この街に。

リンデンバーク・コヴァルスキ:ほう?

アイビー・ポルトシェード:負けるためじゃない、勝つ為に。負けたまま終われるわけないだろ、人生にも、世界にも、ギャンブルにも。

リンデンバーク・コヴァルスキ:素晴らしい!エクセレンテ!!!

リンデンバーク・コヴァルスキ:ではこうしよう!!最後のゲームで勝てたのなら、君の勝ちということでいい!

RAT:コヴァルスキ様、よろしいので……?

リンデンバーク・コヴァルスキ:世界最後の日に、まだ勝ちを諦めないギャンブラーに出会えるなんてことあるかい?

リンデンバーク・コヴァルスキ:いいや、これは奇跡だ、間違いなく、奇跡の類いだ。

リンデンバーク・コヴァルスキ:殆どの人類が、世界が終わるとわかった途端強奪に走った、欲望に走った、諦めに走った。

リンデンバーク・コヴァルスキ:見てみろ、このカジノの外を。

リンデンバーク・コヴァルスキ:刺激を求める為のこのカジノよりも、何倍も、幾分も、刺激的な惨劇が繰り広げられている。

リンデンバーク・コヴァルスキ:そんな中!見ろ、この孤高のギャンブラーを!

リンデンバーク・コヴァルスキ:ただ求めるは、己の矜持だけ。ギャンブラーとしての勝ちだけだ!

リンデンバーク・コヴァルスキ:何を求めるでもなく、ただ!勝利を求める!

リンデンバーク・コヴァルスキ:なあ、RAT、こんな興奮がまだこの世界には残っていた。

リンデンバーク・コヴァルスキ:さあ、アイビーくん、勝負を続けよう。

RAT:……よろしいですか、アイビー様。

アイビー・ポルトシェード:……構わない、好都合だよ。宜しく頼む。

RAT:では、シャッフル致します。

リンデンバーク・コヴァルスキ:アイビー・ポルトシェード。一つ、チップとは別のものを賭けよう。

アイビー・ポルトシェード:……なんだって?

リンデンバーク・コヴァルスキ:このゲーム、チップ以外のも賭けようと言っている。

アイビー・ポルトシェード:何を賭けるって言うんだよ、もう手持ちはすっからかん。

アイビー・ポルトシェード:何を賭けたって、意味なんてないだろ?

リンデンバーク・コヴァルスキ:あるさ。

アイビー・ポルトシェード:なんだよ。

リンデンバーク・コヴァルスキ:君は負けたら、オクラホマに帰りたまえ。

アイビー・ポルトシェード:……は?

RAT:カードを配ります。

リンデンバーク・コヴァルスキ:この運命のゲーム、最高の場面で負けるようであれば君にはやはりギャンブラーとしての才能は無かったということだ。

リンデンバーク・コヴァルスキ:大人しく、自身の事を認め、オクラホマに帰り、愛情深い君のお爺さまと一緒に最後の時を過ごすと良い。

アイビー・ポルトシェード:だから!俺はそんな爺さんが嫌いなんだって何度も!!!

リンデンバーク・コヴァルスキ:ではなぜ、君は「普遍」を望んだ。

アイビー・ポルトシェード:え……?

リンデンバーク・コヴァルスキ:望んだだろう。私に問うたはずだ、君は。

リンデンバーク・コヴァルスキ:「なぜ、世界最後の日を皆に教えたのか」と。

アイビー・ポルトシェード:それは……。

リンデンバーク・コヴァルスキ:刺激を求め、この街まで来た君が求めたのは「平和で何もない日常を続けること」だった。

リンデンバーク・コヴァルスキ:それは、君の為の心か?君の為の気持ちか?君が望むことか?

リンデンバーク・コヴァルスキ:いいや、違う。それは、君の思う、「家族の為」の言葉だ。

RAT:左側のカードは、ダイヤの2。「上(ハイ)」か「下(ロー)」か、どちらにBETなさいますか。

RAT:これが最後のゲームです、どうか、BETは慎重に。

アイビー・ポルトシェード:それは……違う……

リンデンバーク・コヴァルスキ:大切なのだろう、その、自身の欲望と真逆の人生を歩む、君の家族が。

アイビー・ポルトシェード:そんな、はずは。

リンデンバーク・コヴァルスキ:愛しているのだろう?きっと、どんなに薄汚れても君を受け入れてくれるだろう、広い心を持つ祖父のことを。

アイビー・ポルトシェード:違う!!

リンデンバーク・コヴァルスキ:ではなぜ君はスニーカーシューズを履いている。

アイビー・ポルトシェード:それ、は……。

リンデンバーク・コヴァルスキ:オクラホマのその農場での、畑仕事の名残だ。

リンデンバーク・コヴァルスキ:きっと、動きやすいように、働きやすいように、家族が手配したものだ。

リンデンバーク・コヴァルスキ:違うか?

アイビー・ポルトシェード:ぐ……

リンデンバーク・コヴァルスキ:君は、この破滅的な状況で怒りが沸いた、私にだ。

リンデンバーク・コヴァルスキ:なぜ、世界の終わりを示唆したのか。恐怖を感じながら、死なせるなど言語道断だと。

アイビー・ポルトシェード:……。

リンデンバーク・コヴァルスキ:愛すべく家族が、愛に溢れた農風景が、諦めることで、終わりを迎える事で

リンデンバーク・コヴァルスキ:変わってしまうことに怒った、違うかね。

アイビー・ポルトシェード:それは……いや、違う、それは………

リンデンバーク・コヴァルスキ:君は、「期限」を知った。「終わり」を知った。

リンデンバーク・コヴァルスキ:だから気づいたのだ、本当に大切なものとは何なのかを。

アイビー・ポルトシェード:そんな、ことは、そんな……

リンデンバーク・コヴァルスキ:選びたまえ、「ロー」を。

アイビー・ポルトシェード:…………え。

リンデンバーク・コヴァルスキ:帰るべきだ、君は。この、残りの時間を、家族と使う為に。

アイビー・ポルトシェード:……そんな、こと。

リンデンバーク・コヴァルスキ:君が賭けるのは、ギャンブラーであることそのもの。

リンデンバーク・コヴァルスキ:私が賭けるのは、この世界の滅亡の真相だ。

アイビー・ポルトシェード:……。

リンデンバーク・コヴァルスキ:だがもう君は理解したはずだ、君がBETし、得るべきものが何なのか。

アイビー・ポルトシェード:BETし……得るべき、もの……

RAT:……お決まりに、なりましたか?

アイビー・ポルトシェード:自分、自分は……

リンデンバーク・コヴァルスキ:君から、決めたまえ。

アイビー・ポルトシェード:あ……あ……

RAT:アイビー・ポルトシェード様。最期のBETを、どうぞ。

アイビー・ポルトシェード:自分は……

RAT:はい。

アイビー・ポルトシェード:…………「ロー」に、賭ける。

RAT:……………かしこまりました。

リンデンバーク・コヴァルスキ:よく選択したね、アイビー・ポルトシェード。

リンデンバーク・コヴァルスキ:私は。「ハイ」に賭けよう。

RAT:かしこまりました。お二方、BETが完了したところで、ゲームの結果を確認いたします。

リンデンバーク・コヴァルスキ:アイビー・ポルトシェード、ありがとう、楽しかったよ。お爺さまに宜しく伝えてくれ。

アイビー・ポルトシェード:あんた……。

RAT:右側のカードは、ダイヤの1。アイビー様の勝利です。

アイビー・ポルトシェード:………………え?

リンデンバーク・コヴァルスキ:…………ぷ、くくく、ぷくくくく(笑いを堪えている)

RAT:コヴァルスキ様、笑ってしまったら可哀想ですよ。

アイビー・ポルトシェード:は?……え?……は?

リンデンバーク・コヴァルスキ:く、はは、ははははは!!!!ダメだ、耐えられない、ははははは!!!!!

アイビー・ポルトシェード:は、いや、え?

RAT:コヴァルスキ様、初勝利、おめでとうございます。

RAT:ルールに乗っ取り、このゲームの勝者はアイビー・ポルトシェード様となります。

リンデンバーク・コヴァルスキ:RAT!よく笑わずに居られるな!まさしくポーカーフェイスと言うやつか!!!!

RAT:ダメですよ、そんな事言われたら私でも笑みがこぼれてしまいそうです。

リンデンバーク・コヴァルスキ:見てみろ、アイビー・ポルトシェードの顔を!「赤い首(レッドネック)」どころか「赤い顔(レッドフェイス)」だ。

RAT:ええ、とても綺麗に真っ赤な顔になっています。

アイビー・ポルトシェード:なんだよ、あんたら、何がしたいんだよ。

RAT:お伝えしたはずですよ、アイビー様。必ず勝てるゲームなんて存在しないと。

RAT:それは、必ず負けるゲームというものも存在しないということです。

アイビー・ポルトシェード:お、おまえ……イカサマだ、こんなの、イカサマだろ!!!

RAT:一切のイカサマはしておりません、掴んだのはあなた様です。

RAT:あなた様が、自らの手で、掴んだのですよ、その、「下(ロー)」の勝利を。

リンデンバーク・コヴァルスキ:では、アイビーくん、私が賭けたこの世界の滅亡の真実を教えようではないか。

アイビー・ポルトシェード:何だって、言うんだよ……

リンデンバーク・コヴァルスキ:核は数分前に既に発射された、という話さ。

アイビー・ポルトシェード:……は?

リンデンバーク・コヴァルスキ:どうだい、今、気分は。

アイビー・ポルトシェード:……3日後に、発射される、そう、あんた、ニュースで言ってたじゃないか。

リンデンバーク・コヴァルスキ:家族に会いたくて、仕方ないのではないかい?

アイビー・ポルトシェード:答えろよ!!!あんた、核の発射は3日後だって!!!

リンデンバーク・コヴァルスキ:その名前に、愛を感じ始めていたのではないかね?

アイビー・ポルトシェード:答えろっての!!!

リンデンバーク・コヴァルスキ:もう遅い。すべて遅いのだよ。遅すぎるまである。

リンデンバーク・コヴァルスキ:今更なのだよ、だが、希望を、愛を、再認識したな?どうだね、今、気分は、どうなんだね?

アイビー・ポルトシェード:なんで、なにが、なにが目的なんだよ、こんなの。

リンデンバーク・コヴァルスキ:私は、抱えきれなかった。事実を知った時に、抱えきれなかったのだよ。

リンデンバーク・コヴァルスキ:だから、より多くの同じ感情と共に、最期を迎えたくなった。

アイビー・ポルトシェード:あんた……何なんだよ………

アイビー・ポルトシェード:あんたは、なあ、ディーラーさんよ、あんたは知ってて協力してんのか、こんな、こんなこと。

RAT:ええ。

アイビー・ポルトシェード:なんで……なんでだよ……

RAT:……カジノが、好き、だからですかね。

アイビー・ポルトシェード:……はは、いかれてる。

RAT:どうせ最後を迎えるなら、自分の一番誇れる場所で迎えたいと思うじゃないですか。

RAT:とても刺激的じゃないですか、カジノとは誰かの手のひらの上で踊る場所。

RAT:もう抗えない終わりなんて、最高の「ギャンブル」、でしょ。

リンデンバーク・コヴァルスキ:ギャンブルとは「誰も思っても居ない箇所」を狙う事で独り勝ちをする、そういう遊びだろう?

アイビー・ポルトシェード:いかれてるよ、あんたら、いかれてる。

リンデンバーク・コヴァルスキ:いかれてても、いいのさ、もう全てが終わるのだから。

リンデンバーク・コヴァルスキ:最期に、もう一度聞かせてくれ、アイビー・ポルトシェード。

リンデンバーク・コヴァルスキ:「どうだい、今、気分は。」

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