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カケヨルメソッド【1】声劇シナリオを書く前に  ⑥じゃあ、白紙の前で何を考えればいいのか?

【1】声劇シナリオを書く前に 
⑥じゃあ、白紙の前で何を考えればいいのか?


◆①物語とはどうやって考えるべき

さあ、ついに執筆のターンの瞬間に少しだけ触れはじめる。そう、触れるだけだ。

でももしかしたらもう書き始めてもいいのかもしれない。

書き始めてもいいよ、全然それでも構わない。


でも、あともうちょっとだけ待って。

だってこれは、書けない夜の脚本術、カケヨルメソッドなのだから。

書けない夜に、立ち返った時に「そういえばそんな気持ちで物語って考えてたよな」を思い出すべき場所でもあるし

なにより、これから物語を書き始めようとするあなたの為に覚えておいてほしい部分なのだ。


そう、だからここのポイントは

「技術」や「理屈」のポイントではない。


ここのポイントは「気持ち」のポイントなのだ。



◆②台詞とキャラクターがあれば、もう物語は出来上がっているも同然。


ここまでのポイントで、ライターには「パンツァー」と「プロッター」が存在する事を学んだ。

そして、物語、声劇とは台詞とキャラクターがあれば成立する事がわかった。


もっと丁寧に説明するなら、

声劇シナリオというのは、

 ①登場人物

 ②柱(はしら)

 ③ト書き

 ④台詞

の4点があれば、成立するのだ。たとえどんな物語、お話であっても。

壮大な物語であったり、短めのコメディであったり、長くても短くても

面白くても面白くなくても、上記の4点さえあればそれは「物語」として成立している。


そして、パンツァーとプロッターでは

物語の構築の仕方や、下準備の方法が違うという事だった。


だけど、「白紙」のノートの前で物語を考える時、物語の考え方は

プロッターもパンツァーも関係なく、同じだ。


そして、そのために設定やプロット、背景など考える要素が多いという話をしてきた。

でも、多くがこうなる。


「じゃあ、どうやって設定を考えればいいの?」

「どんなふうに設定を考えていたっけ?」

「物語のはじめかたってどうだった?」


でも大事な、まず一番重要なことがこれ。


◆③物語を「うまく」書こうとするな


カケヨルメソッドではこの後、「どうすれば面白い物語が書けるか」

「書けない時にどうすれば、より面白い物語が書けるか」などにフォーカスをあてて

私が培ってきた事や、経験、それに何人かの友人の協力も得た

「多くのライターがこうやって物語を紡ぐ」、そんな話をしていく。


だが、そこを完全にひっくり返しつつも

今これを読んでいる君に一番大切な事を忘れないでいてほしい。


物語を、うまく書く必要なんて、実は無い。


今から君が書こうとしているのは、論文ではない。

今から君が書こうとしているのは、解答ではない。


今から君が書こうとしている事は、間違いなく君から生まれて

君の中へ帰っていく、そういう類の「君が書きたいと思っている物語」である。


それは、君にしか書けないものだ。

それは、君が存在しなければ絶対に存在しえない、君から始まる物語である。


だから、「うまく書けなくてもいい」。


まずはその考えが大前提になると思ってほしい。


もちろん、カケヨルメソッドでは「うまく書けるように」と言う話をしていく。

だがそれは、「君が書きたい物語を書いた」上で、

更にそれをブラッシュアップするためには?という部分をひも解いているに過ぎない。


重要なのはいつだって、君がどれだけ納得して書けたか?なのである。





◆④物語をえがく事は、過酷なことだ。

なんで急にそんな、旅立つ前の母親のことを言うんだろう?

そう思った君は少し勘が良い。

嵐の前の静けさ?ギャップ?サプライズ効果?


いいや、これから少し酷な事も言わなければならない。


大前提として、物語を書くことというのは

辛く、過酷な状況がこの先待っている。ということだ。


「ええ?なんでそんな事言うの?」

「僕は楽しく書きたいだけなのに!!」

「いじわるな事を言うやつだ!」


そう思う君の気持ちも間違いじゃあない。その通り、今私はとても意地悪なのだ。


でも、これもすごく、大事で大切な事。

なぜなら「声劇はお金の為に書くジャンルでは(今のところは)無いから」だ。


そう、趣味の世界なのである。我々が今書いているこの声劇シナリオ。

はじめて君が書き始めようとしている声劇シナリオ、これは、まだマネタイズが出来る分野にはなっていないかもしれない、そういう類の趣味である。


それがどう関係するのかって?


「趣味こそ、ストップをかけるのは自分である」という事なのだ。


誰かに、金にならないから止めろ、とも

もっとこうしたほうが上手く書ける、とも

あなたの物語が最高だ、とも

言われる事のない。

自分一人で書き始め、自分一人で比べ、自分一人で評価をし

自分一人で満足させ、自分一人で書き続けるかどうかを決める。

趣味であるが故に、筆を置くのも、筆を取り続けるのも


あなたが一人で決めなければいけない。


何も考えず、楽しんで物語を書き続ける事ができる人がいたら

それは、物語を書く才能がそこにあるということだ。

楽しく書き続ける事が出来る人っていうのは、それだけで「書く才能」というのを持ち合わせているのだ。

だからこそ希少で、だからこそそういうライターこそこの趣味の世界でどんどんと評価を受けて行く。


でも、多くのライターはそうはいかない。


どうすれば面白くなるのか、悩んで書けなくなる夜を知っている。


どうすれば多くの人の手にとって貰えて、上演回数が伸びるのか悩んで眠れなくなる夜を知っている。


どうすれば主人公たちが自由に動き回って、重厚なストーリーを織り交ぜる事ができるかわからなくなる夜に泣けてくる日を知っている。


その時、ライターは孤独だ。


物語を書いている最中、ライターは「独り」なのである。


だからこそ、「うまく書く」必要は無いという事をここで思い出して欲しいのだ。


シナリオを書くということ、物語を紡ぐということ。

それはどんなジャンルにおいてもまず第一に「大変な作業」なのだ。

人は生きていて、当たり前のように物語を描く、なんてことはない。

普通の生活をしていたら、そんな事しないなんて思わないんじゃない?だって

自分の人生を描き続けることで、精一杯だもの。


我々ライターが行なうのは、いつだって「自分じゃない他人の人生を想像して、それを書く作業」なんだ。


それが「大変じゃない」わけがない!


だから、「うまく書けなくても」いいのだ。

大事なのは、初めての君も、書けなくて悩んでいる君も、長く書き続けた君も、

原点は絶対的に変わらない。


「君自身が、何を書きたいか」を思い、「それが書けたかどうか」なのだ。


それ以上でも、以下でもない。

大事なのは、君の中にある悩みだ、君の中にある答えだ。

それらを、描くことができたら、それだけで「花丸満点」なのだ。




◆⑤君や僕に絶対的に必要な才能、そして、努力とは?


「面白い物語を書く発想力」、確かにあれば最高だけど無くてもいい。


「魅力的なキャラクターを生み出す想像力」、あれば幾分か楽かもしれない、でも無くてもいい。


じゃあ、どんな才能があればいいの?

それに、何を努力すればいいのさ?


間違いなく、その答えはこれ。

「書き続けられる才能」と「書き続ける為の努力」


自分の物語を、自分の書いたシナリオを、自分の生み出したキャラクターを。

誰よりも自分が一番好きになってほしい。


そして、その好きになった君から生まれたものたちを

もっと好きになる努力をしていってほしい。


その為には、「バカ」になっても構わない。

「自分はすごい物語が書ける人なのかも!?」と調子に乗っても構わない。

「ダニングクルーガー効果」というものが存在する。

この「poteto gratins」という話でも触れている通り、認知バイアスに関わる話だ。


ダニングクルーガー効果、ダニングクルーガー曲線と呼ばれるグラフは、

能力の低い人が自身の知識やスキルを過大評価し、実際よりも自分を優秀だと勘違いする認知バイアスであるとされている。


それは「バカの壁」と呼ばれ、能力が伴っていないのに自分はできると調子に乗ってしまう。

そして、その後「絶望の谷」と呼ばれる「何をやってもうまくいかない」期間を経て

段々と能力と認知があわさっていくことで「啓蒙の坂」をのぼり「継続の台地」と呼ばれる、真の意味で能力と認知が合わさった達人の領域に達する。という話。


この「ダニングクルーガー効果」、よく創作の界隈で「警鐘」として用いられる事が多い。

能力が低い時に調子に乗る事は、滑稽な事であると。


でも、そうじゃあ、無いんだよなあ、と私は思う。


一番最初の、「創作の楽しみ」「執筆の楽しみ」というのは

絶対的に「バカの壁」の中にしか存在しない。


調子に乗れるほど、自身のえがく物を好きになれた瞬間にこそ

「創作の楽しみの第一歩」がある。


バカになっていいのだ。だって、物語を書くということは簡単な事では無いのだから。


何度だって、この「壁」に戻ってきて良い。


好きになって、でも才能ないかもなんて悩んだりして

また好きになって、また壁に戻ってきて。


その繰り返しでもいい。


そうやって君が書き続ける事に意味がある。

そうでないといけないのだ。


だって、「書き続けた先にしか、答えは無い」のだから。

嘘でも、きれいごとでもない。書き続けた先にしか、いつだって答えは無いのだ。


それだけが、いつだって、どんなライターだって

同じ原点なのだ。


「書き続けること」、ただ、それだけだ。




ここまでイントロダクションにお付き合いいただき、ありがとう。

長々と「シナリオを書く為には?」という事前準備の話を続けてきた。


この回で話した事は、はじめて書く人も、書けない夜を知っている人も

忘れないでいてほしい。


君たちが今からやろうとしていること、そしてやりつづけていることは

とても大変で、だからこそそれを続けている今君のその筆を持つ手こそが

一番の大切な原点なのだ。


うまく書かなくていい、書き続ける、そして「書き終える」。


次回からは、実際のライティングに関しての話をしていこう。




◆次回 「実際に物語を作るには?」

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