「ギジン屋の門を叩いて」⑨ココろノヤマイ
沖田 望:おきた のぞみ。精神科医。夜な夜な怪しく開業しているらしい。
寺門 眞門:てらかど まもん。店主。男性。いわくつきの道具を売る元闇商人。
猫宮 織部:ねこみや おりべ。助手。女性。家事全般が得意です。
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: 「ギジン屋の門を叩いて ココろノヤマイ」
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寺門 眞門:だから!!!要らないと言っているだろうが!!
沖田 望:そこをなんとかーーーーー!!!そこをなんとかお願いしますよーーーー!!!
寺門 眞門:いーーーらーーーーーんーーーーー!!!持って帰れ!!!
沖田 望:同じ商店街のよしみじゃないですかーーーー!!!ギジン屋さんーーーー!!!!!
寺門 眞門:知らん!!!お前なんて知らん!!!!!
寺門 眞門:早く持って帰れ!!!!買い取れん!!!
沖田 望:買い取らなくていいんですよ!!!ただ!!引き取ってもらえればぁ!!
寺門 眞門:だからそれが無理だと言っているんだ!!
寺門 眞門:うちは雑貨屋だぞ!そんなわけのわからないものを持ってこられても
寺門 眞門:どうにもできん!!はやく帰れ!!!やぶ医者!!
沖田 望:やぶでもなんでもいいから!お願いしますよぉぉぉ!!ギジン屋さんーーーー!
寺門 眞門:ああもう!!!鬱陶しい!!!猫宮さん!塩もってきて、塩!!
猫宮 織部:お、お塩がちょうど切れていて……お砂糖ならあるんですが……
寺門 眞門:それでもいい!貸して!
猫宮 織部:は、はい、どうぞ
寺門 眞門:おりゃ、おりゃ!帰れ帰れ!
沖田 望:あまっ、あまいっ、粒子が甘い!!体にぶつかる粒子があまい!もう!!いいじゃないですか!
沖田 望:呪いのアイテムとか、なんかそんなのの専門家なんでしょ!?
沖田 望:患者さんから聞きましたよ!!裏で危ない商売してるって!
寺門 眞門:なんでこう、この町の住民は全員、裏の情報に詳しいんだ!
寺門 眞門:隠してる意味がまったくないじゃないか!
猫宮 織部:小さな町ですからね、うわさが回るのも早いのかもしれないですね、旦那様
寺門 眞門:はーあ……。
沖田 望:お願いしますよぉ、ギジン屋さんーーーーー。
沖田 望:もうなんなら、見るだけ、見るだけでもいいから……ね?
寺門 眞門:はあ、もういい、わかった、わかったよ、根負けした。
寺門 眞門:というよりもこの押し問答が面倒になった。
沖田 望:見てくれるんですね!?やったぁーーーー!!!
猫宮 織部:あ、あのう、ところで、どなたですか?
寺門 眞門:ああ、そうか、猫宮さんは会ったことなかったよね。
猫宮 織部:はい、初めて……だと思います。
寺門 眞門:反対側の方にさ、よく爆発する病院あるじゃない?
猫宮 織部:ああ!!あのしょっちゅう爆発してて、近づかないほうがいいって言われてるメンタルクリニック!!
沖田 望:そんな風に言われてるの!?ちょ、ちょっとショック
猫宮 織部:あ、言っちゃだめなやつでした……?失敬
沖田 望:ご、ごほん。初めまして、私が「沖田メンタルクリニック」院長の、沖田と申します。
猫宮 織部:これはこれはどうもどうも、ご丁寧に。
猫宮 織部:私は猫宮。猫宮織部と申します。ここ、ギジン屋で旦那様の助手と家政婦をさせていただいており・・・
沖田 望:(被せるように)あんたが例の助手かぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!
猫宮 織部:ひえっ
寺門 眞門:大声を出すなうるさいな!!お前の言葉にはいつもエクスクラメーションマークが多すぎる!
沖田 望:ギジン屋ぁ……こんな、こんな麗しい子を住み込みで働かせているだとぉ……ギジン屋ぁ……
寺門 眞門:家政婦兼助手だからな。
猫宮 織部:お家賃もかからなくてありがたいです!
沖田 望:猫宮さん
猫宮 織部:は、はい?
沖田 望:その旦那様とやらが言葉の通じないエジプトの神様の熱光線を浴びそうになって死にかけたり
沖田 望:嫉妬深い女神に追い掛け回されて死にそうになったりしたとき、どうします?
寺門 眞門:なんだその設定は。
沖田 望:ギジン屋さんは黙ってて。
猫宮 織部:そ、そうですね……そういった経験は無いので想像でしかお話できませんが
猫宮 織部:身を挺してでも、お助けする……と思います。
沖田 望:この差だよなああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
猫宮 織部:ひっ
沖田 望:この差よ!!この差!!!うちの助手と大違いなんですよ!!!
沖田 望:なんかこう、旦那様と?助手との?信頼みたいなのが?
沖田 望:なんかこう、ぐーっと、ぐーっと感じ取れるというかぁ?
沖田 望:そう、「尊敬」、「尊敬」っていうものが目に見えて感じ取れるというかぁ!?
沖田 望:こう、どうせあれでしょ、どんなにシリアスな事になったりしても
沖田 望:最後にはのほほーーーーーんと、一緒にホットコーヒーとか飲んで
沖田 望:いいかんじの雰囲気で終わるんでしょ、絶対そうだ、絶対そう!!
猫宮 織部:旦那様はホットミルクがお好きなので、いつもホットミルクですよ
沖田 望:ホォォォォットミルク!!!!!!ホットミルク!!!!!
沖田 望:あっま!!!!!あぁぁぁぁぁぁっま!!!!なにその激アマ対応ずるすぎる!!ずるすぎるよ!!!
寺門 眞門:貴様やっぱりもう帰れ!!!うるさくてかなわん!!
沖田 望:ごめんってぇぇぇ!!ちょっと日頃のうっぷんがさあぁ!!!
寺門 眞門:はぁ……まったく。いいから、ほら、出せ。
沖田 望:あ、そ、そうでしたね、すいません、取り乱しました。
沖田 望:えーっと、まずコレなんですけど。
0:沖田、机にゴロンっと「目玉のたくさん入ったビニール袋」を無造作に置く。
寺門 眞門:こここここここーここここ、この大バカ者!!!!!!!!!!!!!!!!!!
寺門 眞門:今すぐそれをしまえ!!!!!!!!!!!!!!!
猫宮 織部:だ、旦那様!?に、鶏ですか?
寺門 眞門:ち、違います!!!!!お、お前なんちゅーもんを持ってきている!?
寺門 眞門:そ、即死級の呪物だぞそれは!!!!!
寺門 眞門:バロールの目玉、メドゥーサの目玉、カトブレパスの目玉
寺門 眞門:コカトリスの目玉、バジリスクの目玉、サリエルの目玉……!
寺門 眞門:どこからこんな飛んでもないアーティファクト入手してきた!!!
猫宮 織部:旦那様が珍しく慌てている……こ、これはレア中のレア、レアルマドリード……!
寺門 眞門:猫宮さん
猫宮 織部:失敬
沖田 望:わかりますか、ギジン屋さん。そうなんですよ、もはやオーバーキルを起こしかねない、
沖田 望:「見つめあうと素直に即死できない」、そんなレベルで即死を凌駕するレベルの
沖田 望:目があったら死んじゃうよシリーズが全部僕の手の中にあるんですよ。
寺門 眞門:しまえ、一旦しまえ、危なすぎる。私はまだいいとして、猫宮さん!
寺門 眞門:絶対見ないで!これ絶対見ないでね!?
猫宮 織部:は、はい、大丈夫です、見てませんっ
沖田 望:しまいました。
寺門 眞門:ふう……貴様……害のなさそうな顔してとんでもないものを持ち込んでくれたな。
沖田 望:えへへ
寺門 眞門:褒めとらん
沖田 望:他にも、ヘラクレスさんの腰布とか、あーあとドンドン増え続ける金の腕輪「ドラウプニル」とか
沖田 望:そういうのもいっぱいありますよ。
寺門 眞門:き、貴様、本当に何者だ?それは、すべて神話レベルの至宝(しほう)だぞ……。
沖田 望:……絶対言いません?誰にも
猫宮 織部:はい!絶対言いません…っ
沖田 望:絶対?
猫宮 織部:ぜったいっ!
沖田 望:僕、夜中に「世界の神様」のためのカウンセリングを行って(おこなって)るんですよ
寺門 眞門:世界の神様、だと?
沖田 望:ええ。北欧神話に日本神話、ギリシャ神話、インド神話、はたまたクトゥルフ神話。
沖田 望:ありとあらゆる「神様」を相手に、「心の病(やまい)」の治療を行ってるんです。
沖田 望:さながら本当の意味での『精「神」科医』ってやつですね。
寺門 眞門:き、貴様、飄々(ひょうひょう)としていてうるさいだけの男かと思ったが、なかなかどうして豪胆な事をしているな。
沖田 望:えへへへ
寺門 眞門:ほ、褒めてはいないぞ
沖田 望:えー!褒めてたでしょ!今のは!絶対!
猫宮 織部:で、でも、そんな神様のカウンセリングをしていて、なんでこんな神話レベルの呪物を沖田先生が……?
沖田 望:みんな置いていっちゃうんですよねー。
寺門 眞門:置いていっちゃうって、そんな可愛いレベルの話ではないだろう
寺門 眞門:目を合わせたら即死するんだぞ、その目玉は。
沖田 望:そうなんですよねえ、どうしたらいいですかね、これ
寺門 眞門:持って帰れ
沖田 望:えーーーーー!!!!引き取ってくださいよぉぉぉぉ!!!
寺門 眞門:絶対にひきとらん!そんなリスキーでピーキーな呪物引き取れるか!!
沖田 望:いいじゃないですかぁ!呪物商なんでしょ!?絶対高く売れますよ!?
沖田 望:目を合わせるだけで死んじゃうんですから!!!
寺門 眞門:いらん!!!猫宮さんがそれで目を合わせてしまったらどうする!!!
猫宮 織部:旦那様…
沖田 望:あーでたでた、これね?この空気感ね?このちょっとなんかこう、いい感じの雰囲気
沖田 望:はー、うちの助手にもほしい、欲しいわー、こういう空気
猫宮 織部:お、沖田先生……あなたと言う人は……。
寺門 眞門:……おい、精神科医
沖田 望:ん?なんですか?
寺門 眞門:……貴様、この目玉、どうやってそのビニール袋に入れたんだ?
沖田 望:え?どうやってって、こう、がしーっと掴んで、がばーっと入れて
寺門 眞門:……貴様、この目玉が何なのかわかってるんだよな?
沖田 望:ええ!そりゃもちろん!僕はあのデラゴスティーニが出版している
沖田 望:「週刊!僕と私の神話シリーズ」の定期購読者ですよ?30年契約してるんですから!
沖田 望:この「僕と私の神話シリーズ」を読めばね、大体の神話関係の事はわかっちゃうんですから!
猫宮 織部:そんな週刊誌あるんですね……
寺門 眞門:…ちょっと欲しいと思ってしまった自分が悔しいよ
沖田 望:すんごく面白いんですよ
寺門 眞門:……で、貴様はそれを読んで、これが何なのか知ったわけだな?
沖田 望:ええ、その通りです!
寺門 眞門:なぜ死なん。
沖田 望:さあ!?僕もさっぱりわからないんですよね!ははは!
寺門 眞門:……貴様、案外とんでもない存在なのかもしれんな。
沖田 望:どうなんですかね……ほら、言うじゃないですか、どんなバトル漫画の主人公よりも
沖田 望:ギャグマンガの主人公がなんだかんだで最強だーって。
沖田 望:そういう奴だと思うんですよね、ほら、僕多分カテゴリ的にコメディですし。
寺門 眞門:猫宮さん、こいつは何を言っているんだね?
猫宮 織部:ちょっと私もよくわかりませんが、恐らく何かのメタ的発言をしているんだと思います…
寺門 眞門:よくわからんな……
沖田 望:引き取ってください、ギジン屋さん。
寺門 眞門:いらん。
沖田 望:なんでよぉ……引き取ってよぉ……
沖田 望:持って帰ったらまた助手に怒られるんだよぉ……
寺門 眞門:知らん。
沖田 望:鬼!!!けち!!!悪魔!!!
寺門 眞門:悪魔だからな。
沖田 望:えっ、悪魔なの……?
寺門 眞門:そうだ。
猫宮 織部:だ、旦那様、そんな簡単に言ってしまっていいんですか?
寺門 眞門:うるさくて、厚かましくて、情緒が定まらない頭のおかしい奴だが
寺門 眞門:おそらくこいつは悪い奴ではないよ。
寺門 眞門:何より自身の秘密であろう「神とのカウンセリング」を打ち明けられている以上
寺門 眞門:こちらも身を明かさないと、フェアではないからね。
猫宮 織部:ふふ、旦那様……そうですね
沖田 望:え……なんか急なデレに、心がトゥンクしちゃう……ずっきゅんケラウノスしちゃう……
寺門 眞門:ずっきゅんケラ…なんだって?
沖田 望:いや、忘れて、なんでもない
寺門 眞門:……精神科医
沖田 望:はい?
寺門 眞門:一つ聞きたいことがあるんだが。
沖田 望:なんでしょう?あ、それ聞いたら引き取ってくれます?
猫宮 織部:抜け目ないですね…
寺門 眞門:引き取りはしないと言っているだろう。
寺門 眞門:貴様、全世界の神様のカウンセリングをしていると言っていたな?
沖田 望:ええ、してますよ!
寺門 眞門:それは、この町に全世界の神が集まってきている、ということか?
沖田 望:あー・・・ちょっと違うかもしれないです、それは。
寺門 眞門:違う?
沖田 望:はい、神様たちはこの「鹿骨町(ししぼねちょう)」の事はよくわかってないと思います。
沖田 望:直接神様たちの世界と、僕のクリニックが繋がっているだけなので。
寺門 眞門:なるほど……
寺門 眞門:貴様のクリニックに来るのは、「神様」だけ、なのか?
猫宮 織部:旦那様……?
沖田 望:神様だけ……ん?どういうことです?
寺門 眞門:「悪魔」や「邪神」「魔王」といった類(たぐい)は来ないのか?という意味だ。
沖田 望:ああ、そういう。んー、今のところカウンセリングした経験は無いですね。
寺門 眞門:……そうか。
沖田 望:何かあったんですか?
猫宮 織部:それは、ちょっと色々と……
寺門 眞門:うむ……なあ、精神科医
沖田 望:はい
寺門 眞門:もし、「ベルゼブブ」という名前、もしくはそれに近しい名前の
寺門 眞門:何かが来た時は教えてくれないか。
沖田 望:「ベルゼブブ」、ですね。いいですよ。この際、守秘義務は置いておきましょう、相手神様ですし。
寺門 眞門:助かる。
猫宮 織部:ありがとうございます、沖田先生。
沖田 望:いえいえ!同じ商店街、同じ町に住む仲間じゃないですか!僕たち!
猫宮 織部:ふふっ、ほんと、うるさいかもですけどいい人ですね!
沖田 望:ほめてます?
猫宮 織部:ほめてます!
沖田 望:えへへー!!!じゃあ、この目玉は引き取ってもらうってことで……
寺門 眞門:それはいらん
沖田 望:なんでよーーーーー!!!!同じ商店街のよしみじゃないですかーーーーー!!!!!!!
沖田 望:いまちょっといい雰囲気だったじゃないですかーーーーー!!!!!
寺門 眞門:関係ない、いらんもんは、いらん
沖田 望:もー……わかりましたよ、ちぇっ
猫宮 織部:……でも、すごいですね、沖田先生
沖田 望:んー?何がですか?
猫宮 織部:普通の人間のカウンセリングをするだけでも、大変じゃないですか
沖田 望:ああ、ええ、そうですね
猫宮 織部:心の病って、どこにも「テンプレート通り」の正解なんて無くって
猫宮 織部:その人それぞれの人生を考えながら、お話しなければいけないって聞いたことがあります。
沖田 望:そうですね、その通りだと思います。
沖田 望:僕たち精神科医は、患者さんの「人生」を作るんじゃない。
沖田 望:今まで患者さんが歩んできた獣道が、どんなに凸凹で、どんなに険しかったとしても
沖田 望:それが、その人が歩んだ道なのであれば、その歩んだ道そのものが
沖田 望:「貴方の人生である」。そういった気づきを、一緒に見つけていく。
沖田 望:そういうものだと思ってます。
寺門 眞門:ふむ、なるほどな。
沖田 望:その点は、人間も、神様も、同じですよ。
猫宮 織部:同じ?
沖田 望:ええ。
沖田 望:なんでもできて、なんでもありで、ちょっと困ったらすーぐ死んで転生して
沖田 望:男になってみたり、女になってみたり、裏切って、裏切られて
沖田 望:はたまた全員で合体してみたり、分裂してみたり。
沖田 望:とにかくハチャメチャで、とにかくおかしくて、とにかくずるくて
沖田 望:でも、そんな破天荒な生き方や、物語でも、「何も思わずに歩んできた」神様なんて
沖田 望:一人も居ないんですよ。
寺門 眞門:……ふふ
沖田 望:「思考」することは「心」が動く事。心が動く限り、人も神様も。
沖田 望:なんてことはない、同じ「精神」の持ち主で、おなじように「悩んで」「苦しんで」
沖田 望:時に笑って。そうやってきっと、「いのち」を過ごしてきたんだと思うんです。
猫宮 織部:なんか、素敵な考え方ですね。
沖田 望:えへへ、ありがとうございます。
沖田 望:だから別に、きっと、僕は全然すごくなんかないんですよ。
沖田 望:みんな同じ。ただ、そこにより添えたらいい。
沖田 望:大変なことが多くて、大変な世の中だけど、その道の中でほんの少しでも「笑顔」が多ければいい。
沖田 望:……だから、どんなにめちゃくちゃでも、僕はこの仕事が好きなんだと思います。
寺門 眞門:おい、「沖田」。
沖田 望:え?あ、はい、なんですか?
寺門 眞門:「悪魔」も同じだと思うか?
沖田 望:……ええ、同じですよ、悪魔も、神様も、人間も。
沖田 望:そこにきっと大きな違いなんてない、「心」という物はきっと、同じです。
寺門 眞門:そうか。……ふふ、お前と話せて、ほんの少しだけ、よかったよ。
沖田 望:……それ、褒めてます?
寺門 眞門:ああ、褒めてるよ
沖田 望:えへへへへへへへ、照れるなぁ!!
寺門 眞門:……沖田、お前というやつは。
沖田 望:あ、すいません、電話だ。
猫宮 織部:あ、どうぞ、出てあげてください。
沖田 望:すいませんね、……げ。ブリさん……。僕の助手からです……。
沖田 望:はい、もしもし、沖田です……わーーーー!ごめんなさい!ごめんなさいって!
沖田 望:いや、だから、別に逃げ出したわけじゃなくて……ざ、残業手当?だ、出しますよ
沖田 望:出しますから!あ、油なんて売ってないですよ!!ちょっと野暮用で!!
沖田 望:わ、わかったって、わかりましたよ、帰りに買っていきますから!!そんな怒らないで!!
沖田 望:や、いや、だ、だから死んでお詫びはしないですって!転生すればいいとか怖い事言わないで!
寺門 眞門:……強そうな助手だな。
猫宮 織部:つ、強そうな助手さんですね。
沖田 望:はい、はい、すぐ帰ります、はい、すいませんでした、はい、申し訳ございませんでした。
沖田 望:(電話を切り)……帰ります。助手がとんでもなく怒ってて、なんか超必殺技の詠唱はじめてたので。
寺門 眞門:あ、ああ、気を付けて帰れ
沖田 望:今度はゆっくり、雑貨でも買いに来ますね、ギジン屋さん。
猫宮 織部:へへっ、ぜひ!助手さんと二人でいらしてくださいね!!
:
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:
: 間
:
:
:
寺門 眞門:猫宮さん
猫宮 織部:はい、なんですか?旦那様
寺門 眞門:ホットミルクが飲みたくなってきたよ
猫宮 織部:ふふ、どうしたんですか?すぐお入れしますね
寺門 眞門:いやね、僕はしあわせものだなーって
猫宮 織部:えー?変な旦那様っ
寺門 眞門:ふふ、なに、ね。
寺門 眞門:……「心」、か。
猫宮 織部:ものすごく熱く語ってましたね、沖田先生。
寺門 眞門:ああ。「心」が「門」を潜ると……
猫宮 織部:「悶(もん)」、もだえるという意味ですね
寺門 眞門:ああ、きっと「悶えたことのない」人間も、神も居ないのだよね。
猫宮 織部:……そうですね。
寺門 眞門:「心」か。この心という漢字、象形文字から成り立っているのだけれどね
猫宮 織部:ああ、「心臓」の形から、ですよね
寺門 眞門:そうそう。でも、それをなぜ「こころ」と読むようになったか知ってる?
猫宮 織部:え……考えたことなかったですね
寺門 眞門:所説あるのだけれどね。「ころころ移り変わるもの」だから「こころ」というようになったそうだよ。
猫宮 織部:移り変わるもの……
寺門 眞門:そう。きっと「悪」の心も、「善」の心も。
寺門 眞門:ずうっとそのままというわけではないんだ。
寺門 眞門:悪にも、善にも、喜びにも、悲しみにも、転々と移り変わっていく。
寺門 眞門:それがきっと、「心」というものなのだよね。
猫宮 織部:…そうですね、きっと。
寺門 眞門:少しでも、その「心」がいつも穏やかで、軽やかなものに転じていけたらいいね。
猫宮 織部:ええ、本当に。って、あら?
寺門 眞門:どうしたんだい?猫宮さん
猫宮 織部:だ、旦那様!カウンターの下!下!なにかあります!
寺門 眞門:え?……なっ!目玉!!!!!????
寺門 眞門:お、沖田ぁぁぁぁぁ!!!お前というやつは!!!!!!!!!
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