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藍色鳩羽の皮算用 【自殺椅子】

藍色 鳩羽:あいいろ はとば。助手。少年。家事全般練習中です。
寺門 眞門:てらかど まもん。店主。男性。いわくつきの道具を入荷する闇商人。
 : 
 : 
 : 「藍色鳩羽の皮算用 自殺椅子」
 : (あいいろはとば の かわざんよう じさついす)
 : 
 : 
0:とある雑貨屋店内。
0:一人の少年が、黒電話の受話器を耳に当て
0:誰かと話している。
 : 
藍色 鳩羽:だー-かー-ら、そんな金額じゃひとつもお売りできませんってば。
藍色 鳩羽:前にも言いましたよね?
藍色 鳩羽:いいですか、呪物とは、貴方の欲望を。貴方の闇を。
藍色 鳩羽:誰にも知られないうちに、すべてひっくるめて
藍色 鳩羽:無かったことにできる夢の代物です。
藍色 鳩羽:あなたの人生に世界をひっくり返す程の価値があります?
藍色 鳩羽:無いですよね?こんな小さな町で」政治家やってる貴方程度じゃ。
藍色 鳩羽:はい、そういうことです、では、10億円、きっちと耳をそろえてご用意ください。
藍色 鳩羽:
藍色 鳩羽:はい、はい、それでは失敬。
寺門 眞門:誰からだ?
藍色 鳩羽:ああ、旦那様。
藍色 鳩羽:ほら、例のあれですよ、あれ。
寺門 眞門:例の、あれ?
藍色 鳩羽:やだな、覚えてないんですか?この間また「呪物を売ってくれー」って
藍色 鳩羽:殴りこんできた、政治家の。
寺門 眞門:ああ、鑢沼(やすりぬま)のところの。
藍色 鳩羽:それですそれです。
藍色 鳩羽:まったく、この期に及んで「10億円なんて金払えんー!まけてくれー!」とか言ってきたんですよ。
寺門 眞門:けしからんな。
藍色 鳩羽:ほんっとですよ。失敬なやつです、失敬失敬!
寺門 眞門:鳩羽。お前それ、失敬の使い方間違ってるだろう。
藍色 鳩羽:おや、これはこれは、失敬いたしました。
寺門 眞門:うむ、それでいい。
藍色 鳩羽:ところで旦那様、今日はお早いお目覚めですね。
寺門 眞門:ああ、なんとなく眠りが浅くてな。
藍色 鳩羽:おっと、それはいけない。
藍色 鳩羽:雑貨屋も闇商人も身体が資本であると教えてくれたのは旦那様ではないですか。
寺門 眞門:うむ、そうなんだがな。
藍色 鳩羽:なにかあったんですか?
寺門 眞門:「絶対に座ってはならない椅子」というものを知っているか、鳩羽。
藍色 鳩羽:「絶対に座ってはならない椅子」?
藍色 鳩羽:なぞなぞですかね、うーん、そうだなぁ、「スイス」とかそういうやつですかね。
藍色 鳩羽:ほら、お国の情勢的に座ったら二度と立ち上がれないみたいな。
寺門 眞門:発想としては嫌いじゃあないが、そうではないな。
藍色 鳩羽:うーん、そうしたら、あれですかね。
藍色 鳩羽:電気椅子とか。
寺門 眞門:確かに、電気椅子は座ってはならない椅子に違いはないだろう。
寺門 眞門:だが、不思議とそういった電気椅子に「いわく」が付く事は聞かないな。
藍色 鳩羽:いわく……もしかして、呪物の話してますか?旦那様。
寺門 眞門:ああ、その通りだ。
藍色 鳩羽:また変な呪物購入しようとしてません!?
藍色 鳩羽:だめですよ!旦那様!ちゃんとどういう風に使っていく呪物なのか
藍色 鳩羽:考えてから仕入れていただかないと!!
寺門 眞門:まあまあまあ、鳩羽くん、落ち着き給え。
藍色 鳩羽:落ち着け!?
藍色 鳩羽:旦那様、先日仕入れた「なんでも切ってしまう包丁」
藍色 鳩羽:何に使うために仕入れました?
寺門 眞門:そ、そりゃぁ……南瓜とかを切れなくて困ってる主婦とかに売るために。
藍色 鳩羽:まな板ごと切れてたら世話ありませんよ。
寺門 眞門:いや、その、それは誤算というか、ねえ。
藍色 鳩羽:しかもですよ、旦那様。
寺門 眞門:なんだ。
藍色 鳩羽:66番の棚。
寺門 眞門:……あー……。
藍色 鳩羽:66番。
寺門 眞門:鳩羽。
藍色 鳩羽:66番の棚にある「脇差(わきざし)」。
寺門 眞門:鳩羽。
藍色 鳩羽:「今日日、こんな脇差持って歩いてたら銃刀法違反なんですし誰も買いませんよ、旦那様。」
寺門 眞門:は、鳩羽。
藍色 鳩羽:「(眞門の真似をしながら)鳩羽、お前は何もわかっちゃいない。外に持ち出さなければいいんだ。そうだな、この呪われた脇差の切れすぎる性能で「包丁」として売り出したらいい。ああ、そうだ、そうしよう。きっと血に飢えているだろうから、シャトーブリアンとか切らせてやったらいい、そうだ、そうしよう。」
寺門 眞門:こ、今回のはすごいんだって、鳩羽。すごいんだよ、本当に。
藍色 鳩羽:商売の基本は!!需要と供給を見極めて!!
藍色 鳩羽:不良在庫を抱えないことでしょうが!!!
寺門 眞門:すまん……。
藍色 鳩羽:ほんっとにもう……で、どんな呪物なんですか。
寺門 眞門:……聞いてくれるのか?
藍色 鳩羽:聞きますよ、そりゃ、今までだって旦那様の話を聞かなかったことが一度でもありますか。
寺門 眞門:……ない!
藍色 鳩羽:ええ、ええ、そうでしょうとも。
藍色 鳩羽:僕は旦那様に「きゅんです」ですから、ええ、結局は断れないですしね。
寺門 眞門:きゅ、きゅんです?
藍色 鳩羽:ほら、いいから、なんなんですか、その「椅子」とやらは。
寺門 眞門:おお、そ、そうだな。
寺門 眞門:「ヴィクトリア&アルバート博物館」という博物館に、宙に吊るされた椅子が存在するのを知っているか? 鳩羽。
藍色 鳩羽:宙に吊るされた椅子、ですか。
寺門 眞門:ああ、そうだ。
藍色 鳩羽:いえ、聞いたことないですね。
藍色 鳩羽:あ、まさか吊るされてるから「座ってはいけない」、座れない椅子~……なんてオチじゃないですよね?
寺門 眞門:そうだったら幾分かよかったんだがな、違う。
寺門 眞門:「誰も座らせない為に」、宙に吊るしているんだ。
藍色 鳩羽:物理的に、座らせないようにしてるってことですか?
寺門 眞門:その通りだ。
藍色 鳩羽:なんでそんなこと。
寺門 眞門:「死ぬ」んだよ。
藍色 鳩羽:……え?
寺門 眞門:その椅子に座ったものは、必ず死ぬんだ。
藍色 鳩羽:し、死ぬ? 椅子に座っただけで?
寺門 眞門:そうだ。
藍色 鳩羽:そんなまさか。
藍色 鳩羽:だって椅子ですよ?
藍色 鳩羽:例えば先ほどの「脇差」や「包丁」のようなわかりやすく「殺意」等を
藍色 鳩羽:集めやすい道具なら、死に直結するのは理解できます。
藍色 鳩羽:でも、椅子ですよね?
寺門 眞門:ああ、椅子だ。
藍色 鳩羽:あ、それこそあれだ、死刑囚とかの死刑に使った椅子なんでしょ?
寺門 眞門:いいや。それこそ先ほども言ったが、不思議とそういった死刑に使われる道具が呪物になったという話は聞かない。
藍色 鳩羽:と、いうことは、本当に本当に、ごくごく普通の椅子なんですか?
寺門 眞門:ああ、ご名答。その通りだ。
藍色 鳩羽:呪物とは、人の「意識」や「心」、それこそ「殺意」や「恨み」によって
藍色 鳩羽:「いわく」や「のろい」がついてしまう、そうですよね、旦那様。
寺門 眞門:そう。つまり、どの呪物にも「なんらかの人と人との寓話」が存在する。
藍色 鳩羽:その椅子には、一体どんな話が……?
寺門 眞門:その椅子の名は「バズビーズ・チェア」、のちに「デッドマンズチェア」と呼ばれる椅子だ。
藍色 鳩羽:「デッドマンズ・チェア」……。
寺門 眞門:椅子の持主、「バズビー」という男は贋金(にせがね)作りを生業としていた大酒のみの、まあ、今でいう……
藍色 鳩羽:屑男(くずおとこ)?
寺門 眞門:まあ、そんなところだ。
寺門 眞門:そんな屑男がどんな所以(ゆえん)か、町で一番の美女であり、大富豪の娘「エリザベス」と結婚することが決まった。
藍色 鳩羽:そんな屑男がなんで、町一番の美女と結婚なんかできるんですか。
寺門 眞門:どの時代も「危険な香りのする男」はモテるのだよ、鳩羽。
藍色 鳩羽:旦那様は、危険な香りしかしないのに全然モテませんよね。
寺門 眞門:鳩羽?
藍色 鳩羽:全然モテませんよね。
寺門 眞門:わ、わからないだろう? 今後もしかしたらモテモテになるかもしれないじゃないか。
藍色 鳩羽:はっはっは、そんな事絶対にないですよ。
寺門 眞門:貴様。
藍色 鳩羽:もしそれが本当になったら旦那様の代わりに地獄にでも落ちてあげますよ。
寺門 眞門:なっ、貴様それは私が地獄に落ちるみたいな言い方じゃないか。
藍色 鳩羽:落ちるでしょー!旦那様は絶対落ちる。まじ確定ワロスです。
寺門 眞門:覚えてろよ……。
藍色 鳩羽:まあ、万に一つありえませんけど!モテるなんて!
寺門 眞門:貴様本当にいい性格になったな。
藍色 鳩羽:旦那様のおかげです。
寺門 眞門:ぐぬぬ……まあ、いい。
寺門 眞門:その美女との逆玉の輿に成功したバズビーだが、
藍色 鳩羽:はい。
寺門 眞門:エリザベスの父親からは、結婚を反対されていた。
藍色 鳩羽:よかった、お父様はまともな感覚の持ち主だったんですね。
寺門 眞門:ああ。恐らくだが、エリザベスという女は相当の好き者だったんだろう。
藍色 鳩羽:まあ、恋は盲目と言いますし、なによりバズビーが相当なイケメンだった可能性もありますもんね。
寺門 眞門:そうだな。そして、ある日バズビーが仕事から自宅に戻ると、その結婚を反対していたエリザベスの父親がバズビーのお気に入りの椅子に座っていた。
藍色 鳩羽:なるほど?
寺門 眞門:父親は、未だ帰らぬ娘エリザベスをそのまま待つと言ってきかない。
寺門 眞門:しかし、バズビーはこれを拒否した。
藍色 鳩羽:まあ、仲がいい感じには見えないですもんね、この二人。
寺門 眞門:そして、その夜、バズビーは父親をベッドで絞殺した。
藍色 鳩羽:え……。
寺門 眞門:そうして、このバズビーの所持していた椅子は見事「死刑囚の所持していた椅子」という立派な箔をつけて、呪物となった。
藍色 鳩羽:ちょ、ちょっと待ってください。旦那様。
寺門 眞門:なんだ? 鳩羽。
藍色 鳩羽:なんかそれって、変じゃないですか。
寺門 眞門:おお、気づいたか。
藍色 鳩羽:気づきますよ。いくらお気に入りとはいえ、「その椅子では誰も死んでない」。
藍色 鳩羽:そんなにお気に入りの椅子だったとしても、そのくらいの話で椅子が呪物になるなら
藍色 鳩羽:バズビーズ・ブーツやらバズビーズ・ジョッキが産まれてもおかしくない。
寺門 眞門:そう、その通り。
寺門 眞門:だが、「それが、この呪いの起源(ルーツ)」なのは間違いないんだ。
藍色 鳩羽:そんな椅子が、一体何人殺したっていうんですか。
寺門 眞門:ざっと「65人」だ。
藍色 鳩羽:ろ、65人!?
寺門 眞門:そう、65人だ。所説あるが、世界最大の殺人が「マウンテン・メドウの大虐殺」だとしてその人数が149人だとされている。
寺門 眞門:たかが椅子が殺した人数にしては「65」という数字は「呪物足りえる数字」だと思わないか?
藍色 鳩羽:……それは、確かに……。
藍色 鳩羽:で、でもですよ、旦那様。
藍色 鳩羽:どう考えても、「いわく」がつくには「エピソード」との関連があまりにもこじつけすぎて……ん?
寺門 眞門:どうした? 鳩羽。
藍色 鳩羽:いや、ちょっと待ってください……?
藍色 鳩羽:……旦那様。
寺門 眞門:なんだい?
藍色 鳩羽:本当にこの椅子は「呪物」だったんでしょうか?
寺門 眞門:「呪物」だろうね、「今は」
藍色 鳩羽:旦那様。
藍色 鳩羽:この椅子が「呪物」になったこと、そして「バズビー」という人物に関して。
藍色 鳩羽:「思いつき」を話しても、いいですか?
寺門 眞門:ああ、好きにしたまえ。
藍色 鳩羽:いくらバズビーという人物がイケメンでも、危険な香りがする男でも、美女のエリザベスが結婚する理由が今の話を聞くかぎりでは見当たりません。
藍色 鳩羽:と、すれば「エリザベス」には「この結婚自体に」なんらかの目的があった。
藍色 鳩羽:そう、考えられますよね?
寺門 眞門:ああ、そう考えられるね。
藍色 鳩羽:「エリザベス」が「結婚」した理由は、「バズビー」に「父親」を殺させる為だったのではないですか?
寺門 眞門:お前ならそう考えるだろうと思っていたよ、鳩羽。
藍色 鳩羽:そうして、父親を殺させて、遺産を総取りしたエリザベスにとって、「バズビー」という男の「評判」は使い勝手がよかった。
寺門 眞門:鳩羽。
藍色 鳩羽:はい。
寺門 眞門:もしお前が、このエリザベスの立場だったら、次にどう動く?
藍色 鳩羽:……そうですね。
藍色 鳩羽:もし僕がエリザベスの立場なら「遺産狙いの殺人」が目立たないように
藍色 鳩羽:この殺人の「根本」をずらして見せると思います。
寺門 眞門:私は優秀な助手を「持てて」幸せだよ、鳩羽。
藍色 鳩羽:じゃあ、「モテなくても」いいですよね? 旦那様。
寺門 眞門:それとこれとは話が別だろう。
寺門 眞門:しかし、鳩羽、お前の読みは「筋」を得ていると私は思うよ。
寺門 眞門:この後、エリザベスは「家財道具をほとんどそのままにし」、殺人事件があったその家を「誰かに売った」。そしてその宿は「バズビー・ストゥープ・イン」という名前になり
寺門 眞門:とある「うたい文句」で商売を始めた。
藍色 鳩羽:……「有名な死刑囚の椅子がある店」。
寺門 眞門:ご明察。
寺門 眞門:そして、その宿にあった椅子に「座った人々」が次々に死んでしまうという事件が起こった。
藍色 鳩羽:……そうして、呪物になっていった……でも、待ってください。
寺門 眞門:ん?
藍色 鳩羽:それでもやはり、まだ「いわく」として薄すぎます。
藍色 鳩羽:死刑囚の使っていた椅子に座ったからってそんな簡単に
藍色 鳩羽:人を殺すような呪力を持ちますか?
寺門 眞門:鳩羽。
藍色 鳩羽:はい、旦那様。
寺門 眞門:まさしく、私が悩んでいたのはそこだよ。
藍色 鳩羽:……はい。
寺門 眞門:はじめはもしかすると、死刑囚の椅子という物珍しさに遊び半分で座ったというのが最初だったかもしれない。
藍色 鳩羽:その遊び半分で座った人間が「たまたま」「調子に乗って酒をかっくらい」「千鳥足で帰路についた」
寺門 眞門:そうして「たまたま」「泥酔したその人間が」
藍色 鳩羽:「たまたま」「橋から落ちて」「溺死した」
藍色 鳩羽:そこからは簡単にこじ付けが始まる、「もしかするとこの椅子に座るとバズビーの呪いで死んでしまうのではないか」と。
寺門 眞門:そう。そうして、噂が噂を呼んだ。その「たまたま」が「言霊」となり「伝聞され」「呪いを強めていった」
藍色 鳩羽:旦那様。
寺門 眞門:ん?
藍色 鳩羽:……違いますよ、多分。
寺門 眞門:何……?
藍色 鳩羽:「椅子に座った人が死んでいった」んじゃない。
藍色 鳩羽:「死にたい人達が椅子に座っていった」んですよ……。
寺門 眞門:……鳩羽、お前……。
藍色 鳩羽:あの死刑囚の椅子に座ったら「死ぬ」事ができる。
藍色 鳩羽:噂が噂を呼び、「死ぬ」事ができなかった人たちがこの椅子に群がったんだ……。
藍色 鳩羽:そして、「椅子」に座れたその人達は「私は椅子に座れたんだから」「死ぬはずだ」
藍色 鳩羽:それが「死を呼び寄せた」、違いますか?
寺門 眞門:……確かに、記録に残る1990年からの「被害者」のほとんどは……自殺したともとれる死因になっているな。
藍色 鳩羽:そうして、「死んでしまう椅子」ではなく「死ぬ事ができる椅子」としてこの椅子は死にたがりの間で有名になった。
藍色 鳩羽:だから「誰も座れないように」なんてパフォーマンスで、椅子に座る事のできないよう「宙づり」にして「この椅子は座ることができない」と思わせたかった。
藍色 鳩羽:そんな風に、感じます。
寺門 眞門:鳩羽。
藍色 鳩羽:……はい。
寺門 眞門:おそらく、お前の推察通りだよ。
寺門 眞門:その「死にたがり」の「意思」が、こうして呪いを強固なものにしていった。
寺門 眞門:「殺意」や「恨み」だけじゃない。
寺門 眞門:「望み」から、呪いというものが産まれる事もある。
藍色 鳩羽:でもそんなの、じゃあ、人間はどう生きていけっていうんですか。
藍色 鳩羽:死にたいと願うことも、生きたいと願うことも、大本を辿ればそこは同じ。
藍色 鳩羽:何かを「願う」ことすらも、呪いとなってしまうなら、じゃあ
藍色 鳩羽:「人間」はどうやって生きろっていうんですか。
寺門 眞門:鳩羽。
寺門 眞門:それは、きっと、永遠に解けない。
藍色 鳩羽:……。
寺門 眞門:解けないからこそ、人は文学を作り、学びを広め、「人と生きよう」と社会を作ったんじゃないかね。
藍色 鳩羽:……。
寺門 眞門:そして、その社会があるからこそ、我々呪物商はその「呪い」というものを正しく扱い、ただしく「収める」必要がある。
藍色 鳩羽:旦那様。
寺門 眞門:「闇稼業」、だからね。我々は。
藍色 鳩羽:……人間の欲望を。人間の闇を。
藍色 鳩羽:誰にも知られないうちに、すべてひっくるめて
藍色 鳩羽:無かったことにできる夢の代物。
藍色 鳩羽:だからこそ、呪物を買うには「人生をかけるだけ」の金額をかけさせる……。
藍色 鳩羽:……ところで、旦那様はなんで悩んでいたんです?
寺門 眞門:ああ、そんな複雑な心の流れからできた呪物をどこに置こうかなー……と。
藍色 鳩羽:最初から買う気満々だったんじゃないですか!!もう!
藍色 鳩羽:だめ!だめですよ!この呪物は取り扱い禁止です!
寺門 眞門:なっ、いいじゃないか!
寺門 眞門:天井から椅子が吊るされてるんだぞ!インテリアとしても面白いだろう!
藍色 鳩羽:だーめーでーすー!!!
藍色 鳩羽:呪物的にもセンスないですけど、雑貨屋としてもセンス無さすぎますよそれは。
寺門 眞門:なっ、貴様言わせておけば!雑貨屋としてもセンスありまくりだろうが!
藍色 鳩羽:どーこがですか!どこの民族のかわからない置物とか!
藍色 鳩羽:カエルの置物、うさぎの尻尾やら、統一感なさすぎなんですよ!
寺門 眞門:い、いーいだろうが!色々ごちゃごちゃしてるほうが雑貨屋と言う雰囲気が出るだろう!?
藍色 鳩羽:売れてればですけどねーー--。
藍色 鳩羽:きちんと入荷したやつが売れてれば言える事なんですけどねー---。
寺門 眞門:う、売れてるし。
藍色 鳩羽:いくつ? いくつ売れました?
寺門 眞門:……1こ。
藍色 鳩羽:旦那様はもう仕入れには携わらないでください。呪物も。雑貨も。
寺門 眞門:んなっ!!!鳩羽!!!
藍色 鳩羽:金輪際だめです。
寺門 眞門:き、貴様!!!わ、私が雇い主なんだぞ!!なんだその言い方は!!!
藍色 鳩羽:はいはい、失敬失敬。
寺門 眞門:鳩羽ぁ!!!

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