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「ギジン屋の門を叩いて」⑮猫と門

寺門 眞門:てらかど まもん。店主。男性。いわくつきの道具を売る元闇商人。
猫宮 織部:ねこみや おりべ。助手。女性。家事全般が得意です。
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 : 「ギジン屋の門を叩いて 『猫と門』(ねこともん)」
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寺門 眞門:……怒ってるでしょ。
猫宮 織部:怒ってません。(怒ってる風に)
寺門 眞門:……絶対怒ってる。
猫宮 織部:怒ってませんったら。(怒ってる風に)
寺門 眞門:だって声怖いもん、全然目も合わせてくれないし。
猫宮 織部:……。
寺門 眞門:……悪かったよ、相談もせずに。
猫宮 織部:……本当ですよ。
寺門 眞門:……。(気まずそうに)
猫宮 織部:……『理想を現実にする指輪』、本物、あったんですね。
寺門 眞門:……ああ。
猫宮 織部:いっつも、一番大事な事は教えてくれてない。
寺門 眞門:そ、それは、危ないから。
猫宮 織部:危ないってなんですか。
寺門 眞門:それは……
猫宮 織部:私がへまをすると!?変に使って大惨事(だいさんじ)になると、そう言いたいんですか!
寺門 眞門:ち、違うよ、違うって。
猫宮 織部:じゃあなんなんですか!
寺門 眞門:……あまり、呪物に詳しくなってしまったら、戻れなくなってしまうじゃないか
猫宮 織部:……戻れなく?
寺門 眞門:……猫宮さんが、普通の生活に。知る事すらも、危険なんだよ、本当は。
猫宮 織部:……旦那様
寺門 眞門:僕にとって、猫宮さんは世界で一番大切で
寺門 眞門:何を犠牲にしてでも、守りたい、大事な、『相棒』なんだ。
猫宮 織部:……。
寺門 眞門:でも、僕は君を、ちゃんと元の生活に戻してあげたい。
寺門 眞門:火車(かしゃ)の事も、なにもかもを綺麗さっぱり、整えて
寺門 眞門:それで、猫宮さんが、普通の『世界』に戻れたらいいって…………
猫宮 織部:ばか
寺門 眞門:え?
猫宮 織部:ばーーーーーーーーーーーか!!!
寺門 眞門:な、なんだい、いきなり、馬鹿って!
猫宮 織部:ばかばかばかばかばか!ばか!!!
寺門 眞門:な、ば、馬鹿とはなんだね!!馬鹿とは!
寺門 眞門:僕は真剣に、猫宮さんのことを…!!!
猫宮 織部:そんなこと、頼んでないもん!
寺門 眞門:なっ……
猫宮 織部:頼んでないよ!普通の世界に戻りたいなんて、頼んでない!
寺門 眞門:だ、だって最初に言ってたじゃないか!出会ったときに!
寺門 眞門:「この呪いを解くことはできますか?」って!
猫宮 織部:言ったけど!その時と今とじゃ違うでしょ!
寺門 眞門:な、なにが
猫宮 織部:私の『こころ』がですよ!!!
寺門 眞門:ね、猫宮さん……
猫宮 織部:……私は、旦那様、貴方の事を一番に理解したい
猫宮 織部:一番傍(そば)にいて、一番頼れて、一番貴方を「安定」させて
猫宮 織部:……そういう、「相棒」に、なりたいんです……。
寺門 眞門:猫宮さん……
猫宮 織部:いつだって、守ってくれた。
猫宮 織部:リビングデッドさんが迫って来た時だって
猫宮 織部:本気で私の為に怒ってくれた。
寺門 眞門:……。
猫宮 織部:「好きです、旦那様。」
寺門 眞門:なっ
猫宮 織部:「好きですよ、大好きですよ、言わなくても通じるくらい」
猫宮 織部:「お慕いしてます、大好きです、わかってるでしょ、本当は。」
寺門 眞門:そ、それは……
猫宮 織部:でも、違うんです。
寺門 眞門:……。
猫宮 織部:私は、守られる「恋人」になりたいんじゃないの。
寺門 眞門:……うん。
猫宮 織部:私は、あなたと対等で居たい。
猫宮 織部:貴方の「バディ」なんだって、貴方の「相棒」なんだって
猫宮 織部:胸を張って、堂々と言いたい。本当に、最高の助手なんだ、って。
寺門 眞門:……最高の助手だよ。
猫宮 織部:……ばか。
寺門 眞門:……ごめんね、猫宮さん。
猫宮 織部:……本当に、あと一年なんですか。
寺門 眞門:……多少のずれは、あるかもしれないけれど。
猫宮 織部:……ばか。
寺門 眞門:……ごめん。
猫宮 織部:……怒ってないよ。
寺門 眞門:……。
猫宮 織部:ただ、悲しくて、つらくて、受け止めきれなくて
猫宮 織部:……顔見たら、涙がとまらなくなるのが、わかるから、見れなかっただけ。
寺門 眞門:……うん。
猫宮 織部:……旦那様
寺門 眞門:なんだい、猫宮さん。
猫宮 織部:……私は、ちゃんと貴方の「相棒」になりたい。
寺門 眞門:……ああ。
猫宮 織部:だから、もっと話して。
猫宮 織部:私は、普通なんていらない。
猫宮 織部:「あなたの相棒」としての世界でいい。
寺門 眞門:猫宮さん……
猫宮 織部:……今、私にできる精一杯の「告白」です。
寺門 眞門:……ああ。
猫宮 織部:……返事は。
寺門 眞門:……。
猫宮 織部:……返事。
寺門 眞門:……『ベルゼブブ』
猫宮 織部:……え?
寺門 眞門:……弦夜(げんや)は、『ベルゼブブ』だったのかな。
猫宮 織部:……旦那様?
寺門 眞門:違う気がするんだ。あいつは、ベルゼブブそのものじゃない。
猫宮 織部:え……?
寺門 眞門:……なぜ、猫宮さんを攫って(さらって)から、すぐに自身の欲望に従わなかったんだろう。
寺門 眞門:「何かを待っていた」それは、チャンスや機会をうかがっていたのかと思った。
寺門 眞門:でもそれは純粋に「誰かを待っていた」んじゃないだろうか。
猫宮 織部:それは、確かに……。
寺門 眞門:そして気になるのは、「獄門(ごくもん)」の「聞かないという事象」の力だ。
寺門 眞門:あいつは、それを、「売ってもらった」と言っていた。
猫宮 織部:あ……
寺門 眞門:……もし、「獄門」から弦夜が直接、その力を得たのなら
寺門 眞門:「売ってもらった」等という言い方になるだろうか。
寺門 眞門:もし私が同じ立場なら、こういう……
猫宮 織部:「獄門から買った」もしくは「奪った」……。
寺門 眞門:そう、そうなんだよ。つまり、
猫宮 織部:……燈子さんが会っていた「蠅(はえ)」と、獄門先生が会っていた「蠅」は、別人……。
寺門 眞門:……そういうことになる。
猫宮 織部:……蠅は、二人居たって、ことですか。
寺門 眞門:そう仮定するのが、妥当だと思っている。
猫宮 織部:……じゃあ、まだ、終わってないってことなんですね。
寺門 眞門:……そうだ。
猫宮 織部:……
寺門 眞門:猫宮さん、いや、「織部(おりべ)」。
猫宮 織部:……はい、旦那様。
寺門 眞門:「好きだよ、織部。」
猫宮 織部:あっ……
寺門 眞門:「好きだよ、大好きだよ、言わなくても通じるくらい」
寺門 眞門:「大事だと思っている、大好きだ、わかってるだろう、本当は。」
猫宮 織部:……旦那様
寺門 眞門:だけど、違うんだ。
寺門 眞門:私は、君が思う以上にたくさんの「闇」に触れてきた。
寺門 眞門:それこそ、沢山の命だって奪ってきた。
寺門 眞門:その、私に回ってきた「ツケ」を、君に知られたくなかった。
寺門 眞門:君に、その「ツケ」の一旦を払わせたくなかった。
猫宮 織部:……。
寺門 眞門:でも、一つだけ、我儘(わがまま)を聞いて欲しい。
猫宮 織部:……はい。
寺門 眞門:「僕の、背中を頼む。」
寺門 眞門:残りの時間は、多くない。
寺門 眞門:……でも、やるべきこと、為(な)さなければならない事が多すぎる。
寺門 眞門:……それは、僕ひとりの力ではどうしようもない。
寺門 眞門:君の事は、今だって「守りたい」と思っている。
猫宮 織部:旦那様……
寺門 眞門:思わせてくれ、それは、その、私だって男だ。かっこつけたい時だってある。
猫宮 織部:……
寺門 眞門:でも、それ以上に。
寺門 眞門:「君の助けが必要だ、猫宮さん。」
猫宮 織部:……はい。
寺門 眞門:猫宮さん、僕の残りの一年、君の世界を「僕にくれないか。」
猫宮 織部:……いやです。
寺門 眞門:ええっ!?
猫宮 織部:一年なんかじゃない!!!!もっと、もっとです!!!
猫宮 織部:ずっと、永遠に、貴方が「もう勘弁勘弁、かんべんのすけー!」って悲鳴を
猫宮 織部:あげるまで!私は一生、貴方の「相棒」です!!!
寺門 眞門:……猫宮さん
猫宮 織部:わかりましたね!!!「旦那様」!!!!
寺門 眞門:……ふふ、ははは……。
猫宮 織部:な、なんで笑うんですか
寺門 眞門:…はは……敵わないなぁ、猫宮さんには。
猫宮 織部:……当然です、私はあの「大悪魔」(だいあくま)、「マモン」の弱点を知る女ですから!
寺門 眞門:弱点?
猫宮 織部:そうですよ!!
寺門 眞門:そんなのあったかな?
猫宮 織部:ありますよ、特大のやつ。
寺門 眞門:なんだい?それは。
猫宮 織部:「私のホットミルクが飲めなくなること」!!!!
寺門 眞門:……ぷっ、はははは!確かに!違いない!!!
寺門 眞門:それは僕の最大の弱点だ!!!!
猫宮 織部:ふふーん、そうでしょう、そうでしょう!!
猫宮 織部:なにせ手は込んでるし、愛も込めてますし、どこに行っても飲めない
猫宮 織部:最強のホットミルクですから!
寺門 眞門:ふふ、その通りだよ、猫宮さん
猫宮 織部:……ふふ、私、諦めません
寺門 眞門:え?
猫宮 織部:きっと、貴方の寿命を元に戻す方法だってあるはず。
寺門 眞門:猫宮さん
猫宮 織部:貴方「も」ちゃんと幸せになれる方法を、私、諦めません。
猫宮 織部:だから、旦那様
寺門 眞門:うん
猫宮 織部:貴方もあきらめないで。
寺門 眞門:……ああ。
猫宮 織部:やり残したこと、やらなきゃいけないこと
猫宮 織部:……私と、二人で。
寺門 眞門:……宜しく頼むよ、「相棒」
猫宮 織部:ふふ、合点承知の助!!!!
寺門 眞門:……ひとつ、先に調べなければならない事もある。
猫宮 織部:調べなければならないこと?
寺門 眞門:ああ、猫宮さん、君の『火車』のことだ。
猫宮 織部:私の……
寺門 眞門:ああ。尻子玉(しりこだま)を持たせていたにも関わらず、君の『火車』の力は
寺門 眞門:能力を発揮してしまった。
猫宮 織部:あ……
寺門 眞門:いや、いいんだ、猫宮さん、君が悪いわけではない。
寺門 眞門:でも、これはまずい事になっているのも、事実ではある。
猫宮 織部:はい……
寺門 眞門:尻子玉の呪力(じゅりょく)が落ちたのか?とも思った。
寺門 眞門:だが、どうやらそんなことはないらしい。
猫宮 織部:それじゃあ……
寺門 眞門:『猫宮さんの火車の力が大きくなっている』と仮定している。
猫宮 織部:力が、大きく
寺門 眞門:ああ。
寺門 眞門:ベルゼブブがまだ、いるとして。それが、本物のベルゼブブが
寺門 眞門:弦夜の「待ち人」であったとしたら、ベルゼブブは「猫宮さん、君を狙っていた可能性がある」
寺門 眞門:となると、まずなんとかしなければならないのは
猫宮 織部:私の呪いを、解く。
寺門 眞門:そうだ。
猫宮 織部:……。
寺門 眞門:そのために、猫宮さん、君の過去の事を少し聞かせて欲しいんだ。
猫宮 織部:私の、過去。
寺門 眞門:そう。いつからこの火車の呪いにかかっていたのか。
寺門 眞門:どんな幼少期を過ごしたのか、どんなに些細なことでもいい。
猫宮 織部:……それは
寺門 眞門:……言いづらい?
猫宮 織部:そんな、言いづらいなんてことはないです。ただ……
寺門 眞門:ん……?
猫宮 織部:「覚えてない」んです、あまり。
寺門 眞門:覚えて、ない?
猫宮 織部:はい……幼少期の記憶っていうのが、あんまりなくって。
寺門 眞門:ふむ……記憶障害か、何かだろうか。
猫宮 織部:どうなんでしょう……でも、一つだけ覚えてる映像というか、記憶というか
猫宮 織部:そういうのがあって。
寺門 眞門:ふむ、どんな記憶なんだい?
猫宮 織部:えっと、すごく抽象的なんですけど
寺門 眞門:うん?
猫宮 織部:なんか、水の音と、横たわる幼い私と、その横で泣いてる幼馴染……。
寺門 眞門:水の音と……。
猫宮 織部:はい……
寺門 眞門:……その、幼馴染というのは?
猫宮 織部:……私、この呪いの力で気味悪がられていて、友達とかも全然いなくて
寺門 眞門:……うん
猫宮 織部:でも、唯一、いつも一緒に遊んでくれてた子がいるんです。それが、幼馴染。
寺門 眞門:その子とは、今でも連絡は取れるのかい?
猫宮 織部:連絡は、無理かもしれないです。もう何十年も会ってない……
寺門 眞門:そうか……
猫宮 織部:でも、家は覚えてます!私が昔住んでたところの、近くだから……
寺門 眞門:なら、その幼馴染の家を探すところから始めないとだね
猫宮 織部:はい!えっと、他に旦那様がしなければならないことって……?
寺門 眞門:……ひとつは、ベルゼブブとの「対峙(たいじ)」。
猫宮 織部:……はい
寺門 眞門:……勝てるかな
猫宮 織部:……勝ちましょう?絶対に。
寺門 眞門:……ああ、そうだね
猫宮 織部:……他には?
寺門 眞門:この世界にある「呪物」をすべて回収して、破壊すること。
猫宮 織部:……できるんですか?そんなこと
寺門 眞門:わからない。でも、少なからず、僕が売ってしまった呪物は、なんとかしなければならないね。
寺門 眞門:なにより、目下(もっか)、一番まずいのはあの「オルフェウスの笛」のオリジナルが
寺門 眞門:いまだ消失している、ということだ。
猫宮 織部:……弦夜さんが持っていたはずの、あの笛。
寺門 眞門:ああ。あの時は確かに弦夜が持っていた。それに間違いはない。
寺門 眞門:でも、それが無くなっているということは
猫宮 織部:……捩治理川家に、出入りしている人が、持っていってしまっている。
寺門 眞門:……すべて、仮定だけれどね。
猫宮 織部:仮定でもいい、今は。動いていくことがきっと、大事。そうですよね、旦那様。
寺門 眞門:ああ、僕もそう思う。
猫宮 織部:……旦那様
寺門 眞門:ん……?どうしたんだい・
猫宮 織部:このタイミングで言うの、どうかと思うのですが……
寺門 眞門:う、うん
猫宮 織部:なんか、すこーしだけ安心したら、お腹すいちゃいました!!!
寺門 眞門:……ぷっ、そうだね、ははは、確かに、帰ってからずっと
寺門 眞門:険悪な感じだったから、何も食べてなかった!
猫宮 織部:へへへ……すいません
寺門 眞門:ちょうど帆柄家(ほがらか)からもらったロールケーキがある!お茶の時間にしようか、猫宮さん
猫宮 織部:へへ、了解しました!
猫宮 織部:帆柄家さん、いらっしゃってたんですね?
寺門 眞門:ああ、そうそうそうそう!すっかり言うの忘れてた!
猫宮 織部:え?
寺門 眞門:あいつ、結婚が決まったそうだよ!!
猫宮 織部:ええええええ!!!!!すごい!!!!
猫宮 織部:婚活、うまくいったんですね!?
寺門 眞門:ああ!あいつはすごい奴だよ、さすが、甘党同志だ。
猫宮 織部:ふふふ、すっかり仲良しですね
寺門 眞門:そうだな、友と呼んでも過言ではないかもしれん!
猫宮 織部:ふふふ、リビングデッドさんは違うんですか?
寺門 眞門:あいつは無いだろぉ!
猫宮 織部:えー?でも、助けに来てくれたんですよね?
寺門 眞門:それはほら、猫宮さんだったからでしょ……
猫宮 織部:ふふ、でも、いいコンビだと思うんですけどね
寺門 眞門:やめてくれ猫宮さん
猫宮 織部:ふふ、失敬?
寺門 眞門:さ!食べよう食べよう!和三盆(わさんぼん)っ、和三盆だよ、猫宮さん
猫宮 織部:ふふふ、はい、旦那様。
猫宮 織部:おいしいホットミルク、淹れてきますね。
寺門 眞門:あ、猫宮さん、外。
猫宮 織部:え?
寺門 眞門:ふふ、『雨』降って来た。
猫宮 織部:……ふふ。「合羽(かっぱ)」が必要ですね?旦那様
寺門 眞門:「門」を「合羽」が通ったら……って、それはいいか。
猫宮 織部:ええ、ふふ、もう知ってますから。
寺門 眞門:髪、うねってきてるよ、猫宮さん。
猫宮 織部:ふふ、旦那様も。

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