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臍帯とカフェイン

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「ギジン屋の門を叩いて」⑱ただそこに愛があるから。

兎村 いのこ:とむら いのこ。依頼人。女性。帆柄家かわいいかわいい。
帆柄家 一亀:ほがらか かずき。結婚が決まりました。
寺門 眞門:てらかど まもん。店主。男性。いわくつきの道具を売る元闇商人。
猫宮 織部:ねこみや おりべ。助手。女性。家事全般が得意です。
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 : 「ギジン屋の門を叩いて ただそこに愛があるから。」
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兎村 いのこ:本当に、すっごく可愛いんです。
寺門 眞門:まさか奴ののろけを聞かされる事になるとはな。
猫宮 織部:ふふ、本当ですね、旦那様。
兎村 いのこ:ふふ、他にもね、例えば……デートプランとかをね、彼が考えてきてくれる事があるんです。
猫宮 織部:帆柄家さんのデートプラン!私それ、すごく気になります!
猫宮 織部:きにきにキニク学派(がくは)です!
寺門 眞門:哲学の一派かい?
猫宮 織部:違います!
寺門 眞門:失敬
兎村 いのこ:うふふ、本当に仲良しなんですね、お二人って
猫宮 織部:へへ、ありがとうございます
寺門 眞門:それで?帆柄家のデートプランとは?
兎村 いのこ:ああ!ふふ、えっとですね、私が甘いもの好きだなーって話したのを覚えてて
兎村 いのこ:「よし、じゃああんこ工場の見学に行きましょう!」って
猫宮 織部:あ、あんこ工場……!
兎村 いのこ:ふふ、そうなの。製造過程が好きなわけじゃないのにね?
寺門 眞門:帆柄家らしいと言えば、らしいな。
0:ギジン屋の扉ががらがらと開き、遅れてきた帆柄家がやってくる。
帆柄家 一亀:うひゃあ!すっごい雨ですよ、眞門さん!
帆柄家 一亀:あ、猫宮さん、洗濯ものしまったほうがいいですよ!
猫宮 織部:あらいけない!ちょっといってまいります!
寺門 眞門:遅かったな、帆柄家。
帆柄家 一亀:いやあ、すいません、仕事の方で少しトラブってしまって。
兎村 いのこ:大丈夫でしたか?
帆柄家 一亀:うん、なんとかなったよ、ありがとう、いのこさん。
兎村 いのこ:髪の毛、濡れちゃってるわ、これ、使って(ハンドタオルを渡す)
帆柄家 一亀:ありがとう!
寺門 眞門:ふふ、もう夫婦みたいじゃないか
帆柄家 一亀:えへへ、だって籍入れるんですもん、そりゃそうですよ
寺門 眞門:そうだな、違いない
帆柄家 一亀:もう結構お話されてたんですか?
寺門 眞門:ああ、ほんの10分くらいだがな。たっぷりとのろけを聞かされたよ。
帆柄家 一亀:ええ!な、何話したの、いのこさん!
兎村 いのこ:ふふ、なーんにも?貴方のかわいい所を話しただけでーす。
帆柄家 一亀:な、なんか恥ずかしいなあ!
猫宮 織部:お待たせいたしましたー!
猫宮 織部:帆柄家さん、ありがとうございます、助かりました!
帆柄家 一亀:ふふ、よかった。
帆柄家 一亀:あ、そうだ、猫宮さん、これどうぞ。
猫宮 織部:わ、なんですか?
帆柄家 一亀:へへ、寿屋のほうじ茶マカロンです
猫宮 織部:すこすこのすこ!すこてぃっしゅふぉーるどです!!
寺門 眞門:猫じゃないんだよね?
猫宮 織部:はい!猫じゃありません!
兎村 いのこ:……ぷっ、ははは!!
兎村 いのこ:ほんとに、一亀さんから聞いてた通り、お二人おもしろい!
猫宮 織部:え、ええ。なんか照れますね。
寺門 眞門:どんな説明をされてるのか少し不安になるね?
帆柄家 一亀:ふふふ!お互いさまですよー!
帆柄家 一亀:改めて、ご紹介しますね。僕の婚約者の、「兎村 いのこ」さんです。
兎村 いのこ:よろしくお願いします。いつも一亀さんがお世話になってるようで。
寺門 眞門:「兎と亀」、不思議な縁だな。
猫宮 織部:ふふ、でもなんかどことなくお二人の雰囲気が似ていて、すごくお似合いです!
兎村 いのこ:ありがとうございます、ふふ
帆柄家 一亀:眞門さんと、猫宮さんみたいな「2人」になりたいんです、僕
猫宮 織部:私たちみたいな?
帆柄家 一亀:ええ。2人は僕の恩人で、憧れで、だからどうしてもいのこさんに
帆柄家 一亀:お二人と話してみてほしくって。
兎村 いのこ:ふふ、もうすごいんですよ。事あるごとに「あのスイーツもしかしたら眞門さん好きかもしれない!」って
兎村 いのこ:いっつも眞門さんの事ばっかり話すんですもん
帆柄家 一亀:そ、そんなに話してないよ?
兎村 いのこ:一日3回は聞いてます
帆柄家 一亀:う、うそだあ
兎村 いのこ:本当です
猫宮 織部:ふふ、そんなの、妬いちゃいますね?
兎村 いのこ:ええ、本当ですよもう!ふふ
寺門 眞門:ふふ、そんな風に言ってもらえると嬉しいよ、帆柄家。
兎村 いのこ:他にもすごいんですよ、猫宮さんに求愛して眞門さんに怒られた話とか
兎村 いのこ:全然女の人に話しかけにいけなかった話とか!
帆柄家 一亀:へへへ、結構話しちゃってるかも
兎村 いのこ:ふふふ、その分私もなんでも話しちゃうんですけどね
兎村 いのこ:今どんな気持ちなのか、何が好きなのか、元彼とのなれそめだって
猫宮 織部:そ、そこまで話しちゃうんですか?
帆柄家 一亀:ええ、裏表がなくて、なんでもハッキリ言ってくれて
帆柄家 一亀:僕としてはすっごく助かってます
寺門 眞門:ふむ、そうか。女性との交際経験が無いと言っていたものな、帆柄家。
寺門 眞門:良いも悪いも、ストレートに言われたほうが帆柄家には合うのかもしれんな。
帆柄家 一亀:ええ、本当に。
兎村 いのこ:なんでも思った事すぐクチに出しちゃうの、悪い癖かなとも思ってるんですけどね
猫宮 織部:でも、素直ってことですよね、それ。
兎村 いのこ:そう言ってもらえると嬉しいわ
猫宮 織部:ふふ、素敵です、そういうの。あ!マカロンの為に!お茶淹れてきますね!
寺門 眞門:あ、猫宮さん僕……
猫宮 織部:はい、ホットミルクですね
寺門 眞門:その通り
猫宮 織部:帆柄家さんもホットミルクでいいですか?
帆柄家 一亀:はい!ありがとうございます!
猫宮 織部:兎村さんは?
兎村 いのこ:あ、じゃあおなじもので
猫宮 織部:はーい!淹れてまいりますね!
寺門 眞門:ありがとう、猫宮さん
兎村 いのこ:素敵ですね
寺門 眞門:え?
兎村 いのこ:「ありがとう」って伝えてたから
寺門 眞門:ああ…そうだね、彼女のおかげで私は生活できているから。
兎村 いのこ:彼女のおかげ?
寺門 眞門:ああ。私はまったく家事ができなくてね。
寺門 眞門:洗濯をすれば泡だらけにするし、料理は生か焦げかのどちらか。
寺門 眞門:苦手なのだよ、生きるという事が。
帆柄家 一亀:意外な一面ですね、そういうのもこなしちゃう人なのかと思ってました。
寺門 眞門:そんなことないよ、私はできない事のほうが多い。
兎村 いのこ:じゃあ、本当に公私ともにパートナーなんですね、猫宮さんが
寺門 眞門:そうだな、その通りだと思うよ
兎村 いのこ:やっぱり素敵だなぁなんか。
兎村 いのこ:一亀さん、私も一亀さんとそういう夫婦になりたいです。
帆柄家 一亀:いのこさん……ええ、なりましょう、二人で
寺門 眞門:ふふ、見せつけてくるじゃないか
帆柄家 一亀:す、すいません
寺門 眞門:なあに、うれしいのだよ
寺門 眞門:努力を惜しまなかったお前が、自身で幸せを掴んだ証拠なのだから
寺門 眞門:存分に見せつけてくれ。
帆柄家 一亀:へへ、ありがとうございます。
0:帆柄家の携帯が鳴り、メールの通知が入る。
帆柄家 一亀:……げ、会社からだ。
帆柄家 一亀:うわー……だめだったか……
兎村 いのこ:どうしたの?
帆柄家 一亀:さっき解決したトラブルが、やっぱり解消してなかったみたい。
帆柄家 一亀:ごめんなさい、眞門さん、ちょっと僕もう一度戻って対応してきます。
寺門 眞門:それはいいが、大丈夫か?
帆柄家 一亀:はい、僕じゃないと対応できないと思うので。ちょっと行ってきます。
帆柄家 一亀:ごめんね、いのこさん、すぐ戻るから。
兎村 いのこ:私は大丈夫、気を付けてね、一亀さん。
0:帆柄家、退場。
兎村 いのこ:雨、すごいですねえ。
寺門 眞門:ああ、こんな日は髪の毛がうねってしかたない。
兎村 いのこ:でも私、雨って嫌いじゃないんですよ。
寺門 眞門:奇遇だな、私もだ。
寺門 眞門:ところで、帆柄家はなんの仕事をしているんだ?
兎村 いのこ:あら、一亀さん言ってなかったですか?
兎村 いのこ:システムエンジニアをしてるんですよ。
寺門 眞門:ほう、大変な仕事だな。
兎村 いのこ:ええ、いつも頑張ってます、そこがまたかっこいいし、支えたくなるんですけど。
寺門 眞門:素敵じゃないか。兎村さん、あなたはどんなお仕事を?
兎村 いのこ:私ですか?私は、『家庭教師』をしてます。
寺門 眞門:……家庭教師……?
0:兎村、唐突に眞門の首をおさえ、壁に叩きつける。
兎村 いのこ:(豹変し、低音の声で)『そう、家庭教師』
兎村 いのこ:『久しぶりだなぁ、マモン』
寺門 眞門:ぐっ……はっ……。
兎村 いのこ:『忘れもしない1565年、フランス北西部の都市、ラン』
兎村 いのこ:『覚えてるか?マモン。あの日は我々の記念すべき日だったな。』
寺門 眞門:かはっ……
兎村 いのこ:『多くの人間の心のうちを暴いてやった、それによって起きた暴動はまさしく煉獄と呼ぶにふさわしかった。』
寺門 眞門:ぐ……ぅ……
兎村 いのこ:『そう、ご名答。きっと薄々わかってはいただろう?』
兎村 いのこ:『なあ、マモン。』
兎村 いのこ:『どうだった?私からのプレゼントは。』
兎村 いのこ:『弦夜は、悪役にふさわしい駒になっていたかね?』
兎村 いのこ:『それとも物足りなかったか?』
兎村 いのこ:『小物っぽさが出てしまったのは少し計算外だったな。』
猫宮 織部:だ、旦那様!?
兎村 いのこ:『やあ、火車憑き。初めまして。』
猫宮 織部:と、兎村さん……?
兎村 いのこ:『それは、この身体の持主。私は君たちが今一番追い求め、欲し、暴きたいと思う存在。』
猫宮 織部:そ、そんな……え……だって……
兎村 いのこ:『新約聖書、「マタイによる福音書」より』
兎村 いのこ:『糞(ふん)の王』
兎村 いのこ:『そして、「蠅の王」と呼ばれる……』
兎村 いのこ:『私の名はベルゼブブ、以後お見知りおきを。』
猫宮 織部:そ、そんな……
0:兎村、押さえつけていた眞門を開放する
寺門 眞門:ぐ……はぁ…ごほ……ごほ……
猫宮 織部:だ、旦那様!!
兎村 いのこ:『ああ、マモン。すまないね、久々の再会でどうにも血が騒いでしまった。』
寺門 眞門:く……ベルゼブブ……貴様なのか。
兎村 いのこ:『その通り。信じられないかね?では一つ、信じられるような話をしてあげよう。』
兎村 いのこ:『お前が大事に大事に育てていた元助手の魂は、あの後私が美味しく頂いたよ。』
兎村 いのこ:『身体は7つに裂き、毛と皮は並べて、火の海で炙りながら』
兎村 いのこ:『丁寧に、丁寧に、命を感じながら、美味しく頂いたよ。』
寺門 眞門:貴様……
猫宮 織部:前の……助手……?
寺門 眞門:……ああ。
兎村 いのこ:『なあんだ、話していなかったのか、マモン。』
兎村 いのこ:『お前の助手が、呪物の力に堕ち、私と契約を結ぼうとしたことを。』
兎村 いのこ:『かわいそうに、かわいそうに。これだから強欲はよくない。』
兎村 いのこ:『すべてが欲しいが為に、なんでもかんでも秘密にしてしまう。』
猫宮 織部:……なんでもかんでもペラペラと話すのが、正しい事だとは限りません。
兎村 いのこ:『へえ、私を否定するのかな。』
猫宮 織部:ええ。
兎村 いのこ:『しかし、現に、この身体の女は私の力によってすべてを話している。』
兎村 いのこ:『どうだね?あの婚活男との関係、悪い物だったかね?』
猫宮 織部:それは……
寺門 眞門:お前の目的はなんだ、ベルゼブブ。
兎村 いのこ:『目的?』
寺門 眞門:何のために、また現世に顕現しようとしている。
兎村 いのこ:『それを、お前が言うか?マモン』
寺門 眞門:……
兎村 いのこ:『お前とて、何も変わらんだろう。お前こそなぜいつまでも人間界などと言うものに縛られている。』
兎村 いのこ:『私はただ、悪魔として、悪魔らしく、人間の真意を暴きたい。ただそれだけだ。』
寺門 眞門:……その為に、弦夜をそそのかしたのか。
兎村 いのこ:『それはただのフレーバー。ちょっとしたお前へのメッセージだよ。』
兎村 いのこ:『何も私は人を絶滅させたいんじゃない。』
兎村 いのこ:『ただ、死を目の前に出てくる真意を、私のものとしたいだけだよ。』
猫宮 織部:……兎村さんは……
兎村 いのこ:『この女かね?私が中に居る事など覚えていないし、感じ取ってもいないよ。』
兎村 いのこ:『私が出ている間の記憶は一切ない。』
寺門 眞門:……
兎村 いのこ:『そう、だからマモン。お前にとってはなんてことないイージーゲームだ。』
猫宮 織部:イージー……ゲーム……?
兎村 いのこ:『この女、兎村いのこを殺せ。』
猫宮 織部:なっ……
兎村 いのこ:『そうすれば、私もろともこの女は死に、お前の大好きな人間どもは助かるぞ。』
寺門 眞門:貴様……
兎村 いのこ:『な?楽しい楽しいイージーゲームだろう?』
兎村 いのこ:『なあに、簡単じゃないか。燈子に笛を売ったみたいに、この女も「同様に」「悪魔的に」殺せ。それだけで済むんだ。』
寺門 眞門:……外道が。
兎村 いのこ:『……ぷ……くくくく……ははははは!!!』
兎村 いのこ:『当たり前だろう、我々は悪魔なんだから。』
猫宮 織部:出て行って……兎村さんのからだから……
兎村 いのこ:『はい、わかりました、なんて悪役が言っているのを見たことがあるかい?火車憑き。』
猫宮 織部:く……
兎村 いのこ:『ほら、私が邪魔だろう?君でもいい火車憑き、さあ、今すぐ台所に戻って』
兎村 いのこ:『昨日夕飯を作るのに使ったであろう包丁を持ってきたまえ。』
兎村 いのこ:『そして、この小さな心臓に一突き、するだけでいい。』
兎村 いのこ:『たったそれだけで、簡単にこの女は死ぬんだ。ほおら、簡単すぎてあくびが出てくる。』
猫宮 織部:そんなこと……できるわけ……
兎村 いのこ:『できるわけないよなぁあああああああああああああああ!!!!!』
寺門 眞門:くそが……
兎村 いのこ:『あははははははははははははは!!!!』
兎村 いのこ:『今日は少し話をしにきただけなんだ、マモン』
兎村 いのこ:『お前たちが、どうしたら苦しんで、苦しんで、苦しんで』
兎村 いのこ:『「絶望」する事ができるか、沢山考えたんだ。』
猫宮 織部:……
兎村 いのこ:『だから、出てきてやったんだよ、マモン。』
兎村 いのこ:『そのままだんまりを決め込んで、お前たちの知らぬ場所で好き勝手やることだってできた。』
兎村 いのこ:『だが、私はそうはしなかった、なんでかわかるか?マモン。』
寺門 眞門:……
兎村 いのこ:『お前の事を』
兎村 いのこ:『愛してるからだよ』
兎村 いのこ:『マモン。』
兎村 いのこ:『「煉獄」からは、逃げられない。』
兎村 いのこ:『はは……あははははは!!!!!!!』(徐々に兎村に戻る)
兎村 いのこ:ははは……はは……あれ?なんのお話してましたっけ?
寺門 眞門:……
猫宮 織部:……
兎村 いのこ:あ、あれ?えっと……あれ?ご、ごめんなさい、私たまにボケーっとしちゃって
兎村 いのこ:お話、頭から抜けちゃう事があって。本当ごめんなさい。
寺門 眞門:……いや、いいんだ……。
兎村 いのこ:よかった、あ、お仕事の話でしたよね!えっと、私元々家庭教師やってたんです
猫宮 織部:家庭教師……捩治理川家(ねじりがわけ)……
兎村 いのこ:え!なんで知ってるんですか!私話しましたっけ
猫宮 織部:あ…いえ……
兎村 いのこ:でも、今その担当してた子が行方不明みたいで。
兎村 いのこ:だから今は、実質無職みたいなものなんです、お恥ずかしい……
0:帆柄家、戻る
帆柄家 一亀:お待たせしてすいませーん!ちょっとこれから客先にも向かわないといけなくなっちゃって
帆柄家 一亀:いのこさん、ご迷惑になっちゃうから、僕と一緒に帰りましょ、迎えにきました!
兎村 いのこ:あ、一亀さん!大変……わかりました
帆柄家 一亀:帰りに、かまぼこ工場の見学にいきましょ!
兎村 いのこ:ふふ、かまぼこですか?
帆柄家 一亀:ええ、かまぼこ!
兎村 いのこ:もう、工場ばっかりなんだから!
帆柄家 一亀:へへへ!眞門さん、時間作っていただいたのにドタバタですいません
寺門 眞門:いや……いいんだ
帆柄家 一亀:ほうじ茶マカロン、猫宮さんと食べてくださいねっ
寺門 眞門:あ、ああ
猫宮 織部:あ………えっと、帆柄家さん、外、雨、大丈夫ですか
帆柄家 一亀:ああ、雨ですか?通り雨だったみたいです。
帆柄家 一亀:今なんて、雲ひとつなく「燦燦(さんさん)と太陽が照ってますよ!」
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寺門 眞門:(モノローグ)
寺門 眞門:「門」を「豚」、いや「亥(ぶた)」が通る時。
寺門 眞門:「閡(がい)」、「妨害する」という意味になる。
寺門 眞門:燦燦と照る太陽が、私と猫宮さんを焼いていく。
寺門 眞門:髪のうねりは、とうに落ち着き、そして、ギジン屋の門を出ていく
寺門 眞門:帆柄家の背中を、見送る事しかできない。
寺門 眞門:私は、本当に、なんて無力なんだと自身を呪い続けた。

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