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臍帯とカフェイン

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「ギジン屋の門を叩いて」㉑愛を振りまくなんとやら

天の川 愛之助:あまのがわ あいのすけ。男性。魔法中年。
天の川 まみこ:あまのがわ まみこ。女性。毒舌少女。
寺門 眞門:てらかど まもん。店主。男性。いわくつきの道具を売る元闇商人。
猫宮 織部:ねこみや おりべ。助手。女性。家事全般が得意です。
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 : 「ギジン屋の門を叩いて 愛を振りまくなんとやら」
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天の川 愛之助:えぇぇーい!!!!
天の川 愛之助:これで終わりよ!!怪人オタンコナース!!
天の川 愛之助:マジカルシャイニングホーリーシャワー!!!!
天の川 愛之助:地球の平和は、おじさんが守るっ!!
天の川 愛之助:(声色をかえて)きゃー!ラブマスクよー!
天の川 愛之助:(声色をかえて)ラブマスクー!ありがとー!
天の川 愛之助:(声色をかえて)今日もかわいいぞー!
天の川 愛之助:と、まあ、こういうかんじです。
猫宮 織部:わー!すごいー!本物だー!本物ですよっ!旦那様!
寺門 眞門:なるほど……。
寺門 眞門:で、こう、魔法か何かを出して戦うのが魔法少女である、と。
猫宮 織部:「魔法かなんか」じゃなくて魔法そのものですから!
猫宮 織部:愛と可愛さと髪の毛のキューティクル!
猫宮 織部:それと瞳の輝きと時折ある闇堕ち!
猫宮 織部:可愛い妖精と、ファンからの声援!
猫宮 織部:そういったもので魔法少女の魔法はできてるんですから!
寺門 眞門:な、なるほど??
天の川 愛之助:おー!流石ですね、よくわかっていらっしゃる。
猫宮 織部:当然!トーセン!ジョーダンこんちきしょーです!
寺門 眞門:それはどういう意味?
猫宮 織部:乗りと勢いは大事ってことです!
寺門 眞門:私は未だに時々猫宮さんがよくわからないよ。
猫宮 織部:ふしゃー!
寺門 眞門:ま、まあ、魔法少女というものがどういうものなのかはわかった。なんとなく。
猫宮 織部:それはよかった!熱いんですよ、魔法少女というのは、熱いのです。
猫宮 織部:世の中の女の子のほとんどが憧れたといっても過言ではない。
猫宮 織部:そういった、そういったドリームが、ドリーミングが。
猫宮 織部:魔法少女というものには詰まっている、そうですよね!
猫宮 織部:「ラブマスク」さん!
天の川 愛之助:ええ、ええ、その通り。
天の川 愛之助:夢と希望とちょっとの不思議、ラブロマンスなんてなんのその
天の川 愛之助:マカロンと勇気、ミニスカートがあれば敵なんて怖くない!
猫宮 織部:そして変身ステッキ!
天の川 愛之助:そう!魔法少女と言えば!やはりステッキ!
猫宮 織部:ピロピロと変身BGMを流しながら!
天の川 愛之助:うんうん!華麗に衣装を変えながら!
猫宮 織部:あー!わかりますー!きらきらのエフェクトと一緒に!
天の川 愛之助:そう!手袋やら靴下やらキラキラキラキラ……しゃらーん!
猫宮 織部:熱い!熱すぎ!すぎたけんしんです!
天の川 愛之助:そう!それが魔法少女の美学!
寺門 眞門:……いや、中年だろう?
猫宮 織部:え?
天の川 愛之助:え?
寺門 眞門:いや、中年だろうって。
猫宮 織部:旦那様?
寺門 眞門:どう見てもその男は髪の毛がうっすら薄くなった
寺門 眞門:うだつの上がらない風の中年じゃないか。
天の川 愛之助:ギジン屋さん。
寺門 眞門:魔法「少女」がどういうものなのかはわかった。
寺門 眞門:だが、だがしかし。
寺門 眞門:魔法「中年」というものに関しては聊か(いささか)も納得できない。
寺門 眞門:そのゴスロリの衣装はなんだ。
寺門 眞門:なぜ時折見えるスカートの中が紐パンなんだ。
猫宮 織部:旦那様! 乙女のスカートの中を覗くなんて破廉恥です!
寺門 眞門:乙女じゃあないだろう!?
寺門 眞門:どの角度から見ても乙女である要素がどこにも見えない!
天の川 愛之助:ひどい!見た目は中年でも心の中は乙女だもん!!
寺門 眞門:世の中はなぁ!ゴスロリはげだるまの事を乙女とは認めんぞ!
猫宮 織部:旦那様! それは昨今の「えるじーびーてぃー」情勢に反してますっ!
寺門 眞門:じゃあ訂正するけどね!「私は」認めんよ!「私は」!
天の川 愛之助:とはいえですね、ギジン屋さん。
寺門 眞門:なんだ。はげだるま。
天の川 愛之助:はげだるまは止めて。ゴスロリはせめてつけなさいよ。
寺門 眞門:なんだゴスロリはげだるま。
天の川 愛之助:ま、まあいいです。
天の川 愛之助:何を隠そう、こんな奇抜な恰好でも世間は認めてくれた。
天の川 愛之助:だから私はこの街で正々堂々「魔法少女 ラブマスク」として活動ができているわけです。
猫宮 織部:よく朝のニュースで見てますよ!
猫宮 織部:「ラブマスク、今日も交差点の渋滞を緩和!」
猫宮 織部:「愛の戦士、本日のコーデは甘ロリ系!」とかって!
寺門 眞門:警察で十分だし、なんなら2個目は魔法少女関係ないじゃないか。
天の川 愛之助:私のファッションセンスが癖になってる視聴者もいるんですよ。
寺門 眞門:碌でもないな。
猫宮 織部:旦那様!
寺門 眞門:失敬。
天の川 愛之助:まあ、でもですね、「禄でもない」それは事実なのかもしれません。
猫宮 織部:事実……?
天の川 愛之助:ええ。ギジン屋さん、今日お伺いしたのは他でもない……
天の川 愛之助:禄でもない私の悩みを聞いて欲しくてお伺いしたのです。
寺門 眞門:いやだ。帰れ。
猫宮 織部:旦那様!
寺門 眞門:いやだ!
猫宮 織部:なんでですか!聞いてあげたらいいじゃないですか!
猫宮 織部:どうせお暇でしょう? 今日も雑貨屋は閑古鳥なんですから。
寺門 眞門:ね、猫宮さん……。
寺門 眞門:そもそも!私は相談役でもなんでもない!
寺門 眞門:何故一々みな、私に相談に来る!?
天の川 愛之助:だって……一番暇そうですし……。
寺門 眞門:ぐぬぬ……暇では……ない……。
猫宮 織部:でも全然お客さん来てないのは事実です。
寺門 眞門:ぐぬぬぬぬ!
天の川 愛之助:お願いしますよ、ギジン屋さん。
寺門 眞門:……「禄でもない」男の、「禄でもない」悩みだぞ?
寺門 眞門:碌でもない悪魔の私に解決などできるものか。
猫宮 織部:あら。旦那様、珍しい。ナイーブになっておられます?
寺門 眞門:そりゃぁナイーブにもなるだろう? 猫宮さん。
猫宮 織部:私は平気ですよ、ぜーんぜん。
天の川 愛之助:何か、あったんですか?
寺門 眞門:ん、まあ、内輪揉めのような、ね。
天の川 愛之助:内輪揉め、ですかあ。
天の川 愛之助:……すみません、なんだかタイミングの悪い時に来てしまったようだ。
天の川 愛之助:今日はやめておきます、沖田先生のところにでも行って話を聞いてもらって帰ろうかな。
寺門 眞門:ああ、そうしてくれ……って沖田!?
天の川 愛之助:え、ええ。
寺門 眞門:なんでアイツなんだ!? あの痴れ者に何ができる!?
天の川 愛之助:な、なんでって精神科医ですよ? あの方。
猫宮 織部:そういえばそうでした。
寺門 眞門:だめだだめだ! アイツに話すくらいなら私が聞く。
天の川 愛之助:聞いてくれるんですか!!
寺門 眞門:よ、寄るな寄るな! ゴスロリ服のまま近づいてくるな!
天の川 愛之助:あら、照れてるのかしらぁ?
寺門 眞門:断じて無い。
天の川 愛之助:案外かわいいところあるのね、ギジン屋さん。
寺門 眞門:猫宮さん、15番の棚の包丁もってきて。
猫宮 織部:だめです!
天の川 愛之助:結構血の気多いですよね、ギジン屋さんって。
猫宮 織部:最近はこれでも落ち着いたほうなんですよ、ね? 旦那様。
寺門 眞門:ノーコメントでお願いしたい。
寺門 眞門:さっさと話を聞かせろ、この、えーっと?
天の川 愛之助:……私の名前忘れてます? もしかして。
寺門 眞門:……ゴスロリはげだるましか印象にない。
天の川 愛之助:仕方ありません、もう一度名乗らせていただきましょう。
猫宮 織部:わ、やった!生口上が聞けますね!
天の川 愛之助:キュゥートでポップ!夢かわいい魔法少女!
天の川 愛之助:ラブリーミルキー!可憐なちからで!
天の川 愛之助:はびこる悪をやっつける!
天の川 愛之助:魔法少女戦士! ラブマスクっ!
天の川 愛之助:ここに見参!!
天の川 愛之助:(セルフ効果音)どんどん、ぱふぱふー。
猫宮 織部:きゃー!!すごい!生口上ですよ!
寺門 眞門:ラブマスク、と呼べと。
天の川 愛之助:ええ、ぜひそう呼んで欲しいわ、ギジン屋さん。
天の川 まみこ:ふっざけんな、ゴスロリはげだるま。
寺門 眞門:なっ!? だ、誰だ。
猫宮 織部:け、気配を感じなかったです!
天の川 愛之助:ま、まみこ!?
天の川 まみこ:こんな所で何やってるわけ?
天の川 まみこ:まじでありえない。しかもまた変身してゴスロリ着てるし。
天の川 まみこ:まじでキッモい。ありえない。
天の川 愛之助:ま、まみこ、これは違くて、その、自己紹介の為にというか
天の川 まみこ:自己紹介も何もないでしょ、普通に名刺渡して「私、天の川 愛之助ですー、折り畳み傘の営業販売してますぅー」って言えばいいじゃん。
猫宮 織部:折り畳み傘の営業販売ってすごいニッチですね……
天の川 愛之助:だめだって!まみこ!個人情報流出は魔法少女に一番よくないって!
天の川 まみこ:魔法少女じゃないから。
天の川 愛之助:え。
天の川 まみこ:魔法「中年」だからあんた。
天の川 愛之助:ぴえんっ!!!!
寺門 眞門:どうやらまともな感覚な人間なようだ。
猫宮 織部:旦那様それ、私の事もまともじゃないっておっしゃってます?
寺門 眞門:そ、そんなことないよ!? 断じて! ないない!
天の川 まみこ:本当、私のパパがご迷惑おかけしてごめんなさい。
天の川 まみこ:私、「天の川 まみこ」っていいます。
天の川 まみこ:御覧の通り、この……ゴスロリはげだるまの形した魔法中年の娘をしてます。
寺門 眞門:よくできた娘さんじゃないか。
天の川 愛之助:本当、自慢の娘なんですよ、うふふ。
天の川 まみこ:パパその笑い方きもいやめて。
天の川 愛之助:えんっ……
天の川 まみこ:ほら、気持ち悪い泣き方してないで、帰るよ、準備してほら。
天の川 愛之助:や、やだ!帰らないもん!パパ帰らない!
天の川 まみこ:もうその感じも全部気持ち悪い。
天の川 まみこ:醜態をこれ以上晒すわけにいかないって言ってるの。
天の川 まみこ:はやく準備して。
天の川 愛之助:やだ!絶対絶対絶対帰らない!
天の川 愛之助:まだギジン屋さんに話聞いてもらってないもん!
天の川 まみこ:子供みたいな駄々こねないで。
天の川 愛之助:やだー!聞いてもらうんだからー!
猫宮 織部:ま、まあまあ、まみこさん、せっかくいらした事ですし
猫宮 織部:ゆっくりしていってください。
猫宮 織部:今、お茶をお淹れしますので。
天の川 まみこ:あ、そんな、悪いです……
猫宮 織部:いいんです、私たちが飲みたくなったところなので。
猫宮 織部:ね? 旦那様。
寺門 眞門:(小声で)帰って貰えるなら別にいいんじゃ……
猫宮 織部:旦那様?
寺門 眞門:ハイ、オチャノミタイデス
猫宮 織部:そうですよね! 旦那様はホットミルクで、まみこさんと愛之助さんはいかがなさいますか?
天の川 まみこ:あ……じゃあ、紅茶とかでもいいですか?
猫宮 織部:はい!大丈夫ですよ!愛之助さんは?
天の川 愛之助:私も同じもので……
猫宮 織部:はい、では淹れて参りますね!
天の川 まみこ:……本当、すみません。
寺門 眞門:あ、いや。そんな、なんてことはない。
寺門 眞門:猫宮さんの淹れる紅茶は格別だよ、彼女はお茶を淹れるのが
寺門 眞門:趣味でもあるしね。
天の川 まみこ:いえ、そちらではなく……父がご迷惑をおかけして。
寺門 眞門:あー……まあ、それはおおいに反省していただきたい。本人に。
天の川 愛之助:まだ何も話してないじゃないですか!
天の川 まみこ:まったく……。
天の川 愛之助:そんな生ごみを見るような目で見ないで!
天の川 まみこ:……私まだ怒ってるんだからね、パパ。
天の川 愛之助:う……ぐ……。
寺門 眞門:なんだ。喧嘩でもしているのか。
天の川 まみこ:はい。
寺門 眞門:ははーん、読めてきたぞ。天の川、貴様その事で相談しにきたのか。
天の川 愛之助:……ソウデス。
天の川 まみこ:はあ……もうやめてよほんと。
天の川 まみこ:他人様に家庭の問題聞かせるとか恥ずかしくてもう。
天の川 愛之助:だ、だって誰に相談していいかわからなかったから!
寺門 眞門:まあ、こと家庭の問題というのは第三者に客観的に見てもらうほうが上手くいくこともある。
天の川 愛之助:そうですよね!? ほら、そうですって、まみこ。
天の川 まみこ:……好きにすれば。
寺門 眞門:一体何が原因で喧嘩になったっていうんだ。
天の川 愛之助:……ギジン屋さん。
寺門 眞門:な、なんだ。
天の川 愛之助:私、「変」ですよね。
寺門 眞門:は?
天の川 愛之助:私、どう考えても、一般的な目線から見て「変」ですよね?
寺門 眞門:まあ、歯に衣きせぬ物言いをするなら超然「変」だな。
天の川 愛之助:そうですよね!? ほーら、まみこ、だから言っただろう?
天の川 愛之助:うちは「変」なんだよ。
天の川 まみこ:変じゃない。
天の川 愛之助:変! 変ですう! 普通じゃないんですう!
天の川 愛之助:だって、パパは魔法少女。
天の川 まみこ:中年。
天の川 愛之助:きー!魔法少女だってば!
天の川 愛之助:家には謎の妖精「プリン」がいて
天の川 愛之助:毎日ゴスロリに変身して怪人を倒してる。
寺門 眞門:おいまて
天の川 愛之助:なんですか?
寺門 眞門:貴様今なんていった?
天の川 愛之助:ゴスロリで怪人倒してる
寺門 眞門:そこの前だ
天の川 愛之助:妖精「プリン」?
寺門 眞門:妖精がいるのか!?
天の川 まみこ:います、一匹
寺門 眞門:妖精って存在するんだな!?
猫宮 織部:そりゃあ居るでしょー、魔法少女ですもん。
寺門 眞門:わ、びっくりした
猫宮 織部:猫宮最終奥義、抜き足差し足です!
寺門 眞門:猫だけにね。
猫宮 織部:ふふ、その通り!さあ、皆さんどうぞ。ホットミルクと紅茶です。
天の川 まみこ:ありがとうございます、わ、すごくいい香り。
猫宮 織部:ふふ、熱いから気を付けてくださいね。
天の川 愛之助:落ち着く香りですねえ。
寺門 眞門:猫宮さんの淹れるお茶は世界一、いや、銀河一だからな。
猫宮 織部:旦那様ったら……。
寺門 眞門:……で、妖精って……なんなんだ?
天の川 まみこ:使い魔というか、魔法少女が魔法少女たる所以(ゆえん)といいますか。
天の川 まみこ:魔法少女といえば、ある日急に妖精や精霊に不思議な力を授かるのがセオリーなので……。
寺門 眞門:なるほど。大抵がそうして魔法少女になるわけだな。
天の川 愛之助:妖精がいる、変身ステッキがある、ゴスロリ服。
天の川 愛之助:魔法少女三種の神器がそろってるんだもの、私だって立派な魔法少女でしょ。
天の川 まみこ:そこに余計な要素の「はげ」と「だるま」が入ってるから中年なんだっての。
天の川 愛之助:ひんっ!!!
猫宮 織部:でもでもでもですよ?
猫宮 織部:冷静に考えてみてほしいんです。
寺門 眞門:冷静に?
猫宮 織部:中年でも、少女でも、青年でも、少年でも。
猫宮 織部:それこそ関係なく、みんなの心に「魔法少女」はいるじゃないですか。
寺門 眞門:ごめん、私の中には居ない。
猫宮 織部:います!旦那様の中にも旦那様なりの魔法少女がいます!
寺門 眞門:いるの……?
猫宮 織部:います。いますよね?
天の川 愛之助:当然ですね。
天の川 まみこ:いません。
寺門 眞門:いないよね……?
猫宮 織部:いーまーすー!
寺門 眞門:いないとまずいのかな、それは。
猫宮 織部:居てください。そのほうがこう、グッときます。
寺門 眞門:そ、そうか。
天の川 まみこ:ちょ、ちょっと、懐柔されないでください!
天の川 愛之助:まみこ、懐柔なんて難しい言葉覚えてるんだね……! パパなんかうれしい……!
天の川 まみこ:パパはだまってて。
天の川 愛之助:ひんっっ
猫宮 織部:とーにーかーくー!話を戻しますが!
猫宮 織部:変わりたい、世界を平和にしたい、かわいくなりたい。
猫宮 織部:この気持ちが「魔法少女」なわけで、その気持ちこそすべての人類に備わっていて
猫宮 織部:その気持ちがあるから人は人として人なわけで
猫宮 織部:そう考えたら「魔法少女」はすべての人の心の中にいるっていうのはあながち間違いじゃないんです!
猫宮 織部:よって!「魔法中年」も「魔法少女」そうですよね!!!ラブマスクさん!!!
天の川 愛之助:500点満点よー!!!猫宮ちゃん!
猫宮 織部:やったー!!!!!
寺門 眞門:……それで。
天の川 愛之助:ん?
寺門 眞門:いや、それで、結局話が見えないんだが。
猫宮 織部:え?
寺門 眞門:「魔法少女とはなんなのか」の話をするために
寺門 眞門:こうして茶をすすっているわけではなかっただろう?
天の川 愛之助:あ。
猫宮 織部:そーでした……。
寺門 眞門:「自分の家は変だ」そういった意味の事を話していたと思ったが。
天の川 愛之助:……そうです。
天の川 愛之助:私は、魔法少女を生業としていますし
天の川 愛之助:シングルファーザーでこの「天の川家」を守ってきました。
天の川 愛之助:家には妖精プリンという謎の生き物がいて
天の川 愛之助:娘のまみこには、何一つ「普通の家庭」を作ってやることができなかった。
寺門 眞門:……ふむ。
天の川 愛之助:だから私は、せめてまみこには良い学校に行って
天の川 愛之助:いい環境、いい物、いい教養を与えてあげたい。
天の川 愛之助:何不自由なく、お小遣いだって。
天の川 愛之助:他の子が得られないような幸せをたくさん与えてあげたいんです。
天の川 まみこ:……。
寺門 眞門:なるほどな、それで。なぜ喧嘩になったんだ?
天の川 愛之助:それは……。
天の川 まみこ:要らないって言ってんじゃん。
天の川 愛之助:まみこ。
天の川 まみこ:しつこいんだよ、パパは。
天の川 愛之助:しつこいって……しつこくもなるだろう!
天の川 まみこ:うるさい。
天の川 愛之助:まみこ!!!
天の川 まみこ:……。
天の川 愛之助:パパはこの鹿骨町を守ってる。
天の川 愛之助:怪人や、事故や、事件から、市民の安全を守るのがパパだ。
天の川 愛之助:でも、それ以上にまみこの幸せを守るのがパパだ。
天の川 まみこ:……別に幸せを守ってもらわなくていい。
天の川 愛之助:まみこ!!
寺門 眞門:少し黙れゴスロリはげだるま。
天の川 愛之助:なっ、ギジン屋さん……!
天の川 まみこ:……パパは何もわかってない。
寺門 眞門:まみこさん。
天の川 まみこ:……はい。
寺門 眞門:このド阿呆は、おそらく私が今まであって来たド阿呆の中でも
寺門 眞門:超ド級にド阿呆だ。
寺門 眞門:それこそ、その言葉にまったくの嘘がなく
寺門 眞門:本気だとわかるからこそ。
天の川 まみこ:……わかります。
寺門 眞門:猫宮さん。
猫宮 織部:はい、なんですか。旦那様。
寺門 眞門:「変わりたい」という気持ちがあれば、すべての人類は「魔法少女」なんだよね。
猫宮 織部:はい!その通りです!
寺門 眞門:「変わりたい」と願う事が、人々を進化させ、社会を作り
寺門 眞門:そして、愛を育ててきた。きっとその根源のすべてに「愛」があるのだよね。
猫宮 織部:っ!!その通りだと思います、旦那様。
寺門 眞門:でも。
猫宮 織部:……でも?
寺門 眞門:「このままでいい」という気持ちも、愛だと思うんだ。
猫宮 織部:……このままでも、いい……?
寺門 眞門:そうだよね、まみこさん。
天の川 まみこ:……はい。
天の川 愛之助:どういうこと……?
寺門 眞門:ド阿呆が。
天の川 愛之助:な……。
寺門 眞門:言葉のまま。そのままの意味だ。天の川。
寺門 眞門:いい環境も、多額の小遣いも、「そんな大層なもの」要らないのだよ。
天の川 愛之助:要らないって……だってそんなの
天の川 まみこ:「そんなの、まみこが可哀そうだ」って?
天の川 愛之助:まみこ……。
天の川 まみこ:馬鹿にしないでよ。
天の川 愛之助:馬鹿になんて……
天の川 まみこ:してるよ。馬鹿にしてる。
天の川 まみこ:パパが他のパパと違ってキモくてうるさくてしつこくて
天の川 まみこ:枕は抜け毛だらけ。浴槽にはいつも油が浮いてる。
天の川 まみこ:靴下はそこらへんにぽいぽい投げてるし。
天の川 まみこ:週末はいっつもお酒臭い。
天の川 まみこ:「魔法少女のパパはいや」だよ。
天の川 まみこ:でも、「だからって幸せじゃない」なんて決めつけないで。
猫宮 織部:まみこさん……。
寺門 眞門:……最初から、「私」なんかに相談する必要はなかったんだよ、ド阿呆。
天の川 愛之助:……でも、だって。
天の川 まみこ:でもとか!だってとか!きもすぎるっての!
天の川 まみこ:しゃんとしろよ!私のパパなんでしょ!
天の川 まみこ:「魔法少女」なんでしょ!
天の川 まみこ:そのゴスロリも似合ってないし、友達に紹介するのも心底嫌だし
天の川 まみこ:隣なんて一生一緒に歩きたくないって思ってるけど
猫宮 織部:思ってるんですね……。
寺門 眞門:猫宮さん。
猫宮 織部:失敬……。
天の川 まみこ:でも、家には妖精がいて。
天の川 まみこ:怪人が出たらすぐに飛んで行って倒しちゃう最強の魔法少女がいて。
天の川 まみこ:それが「私の普通」なんだ。
天の川 愛之助:……まみこ。
寺門 眞門:きちんと守ってるんじゃないか。
天の川 愛之助:……え?
寺門 眞門:この街も、自分の娘も。
天の川 愛之助:……。
猫宮 織部:ふふ、「かっこいい」魔法少女、ですね。ラブマスクさん。
天の川 愛之助:……はい。
寺門 眞門:ゴスロリはげだるま一人、妖精一匹、毒舌少女一人でも、きちんと家族なんだな。
天の川 まみこ:な、毒舌少女って私のことですか!?
寺門 眞門:その通りだが。
天の川 まみこ:もう!
天の川 愛之助:はっはっは!そんな所もかわいいんだけどね!
天の川 まみこ:パパは黙ってて。
天の川 愛之助:もう。照れちゃってかわいいんだから。
天の川 まみこ:照れてない。そういうのじゃないから。
天の川 愛之助:まみこがそんな風に思っててくれたなんて、パパ、うれしいな……。
天の川 愛之助:あ!じゃあ、じゃあ、授業参観も行っていいよね!
天の川 まみこ:一生来ないで。それとこれとは話が別だから。消えてほんと、やめて。
天の川 愛之助:えんっ!!!!!!まみこのばかー!!!!!!
0:ラブマスク泣きながらギジン屋を飛び出す。
天の川 まみこ:……あーあ、また飛び出してっちゃった。
寺門 眞門:いいのか?放っておいて。
天の川 まみこ:大丈夫です、ちゃんと帰ってきますから。
猫宮 織部:ふふ。いいお父さん、ですね。
天の川 まみこ:きもいですけどね。
寺門 眞門:ド阿呆だしな。
天の川 まみこ:はい。
寺門 眞門:……いい、家族だと思うぞ。
天の川 まみこ:ふふ、信じられます?
天の川 まみこ:こんな家族が、町の平和を守ってるってこと。
 : 
 : 
 : 
 : 
寺門 眞門:猫宮さん、これ、ありがとね。
猫宮 織部:ふふ、旦那様はいつも飲み終わったあとお礼を言いに来てくれますよね。
寺門 眞門:そうした方が嬉しいかな、って思うから、さ。
猫宮 織部:……ふふ、はい、うれしいです。
寺門 眞門:猫宮さんが嬉しいと、私も嬉しいよ。
猫宮 織部:じゃあ、二人で倍うれしい、ですね。
寺門 眞門:ああ、ふふ、そうだね。
猫宮 織部:ね、旦那様。
寺門 眞門:ん?
猫宮 織部:旦那様も、私の中では「魔法少女」ですよ。
寺門 眞門:ええ? いや、私はゴスロリ服なんて着ないぞ。
猫宮 織部:ちがいますー! 私は、変わる事も変わらない事も、どちらも幸せです。
猫宮 織部:旦那様。
寺門 眞門:……そうだね。私もそうだよ。
寺門 眞門:ねえ、猫宮さん。
猫宮 織部:なんですか?
寺門 眞門:この街には、「困った」人がたくさん居る。
猫宮 織部:ふふ、そうですね? 旦那様。
寺門 眞門:ま、まあ、私も人の事は言えないのかもしれないが。
寺門 眞門:「困る」という漢字が門を通ると、何になると思う。
猫宮 織部:困る……ですか。んんん、難しい、ですね。
寺門 眞門:「閫(コン)」という字になるんだ。
猫宮 織部:「閫(コン)」ですか。
寺門 眞門:そう。「しきみ」と言って、そうだな、古い時代の門の扉なんかに使われる止め木のことなんだ。
猫宮 織部:あ、わかります。がこーんって入れるやつですね。
寺門 眞門:そうそう。門の扉というのは人を守る為に作られた。
寺門 眞門:人は何かを守るときや、人を守りたい時。
寺門 眞門:「どうすればいいのか」と、悩み、困るときやはりどうしても扉を閉ざしてしまうのだよね。
猫宮 織部:そう、ですね。囲ってしまうほうが、安心できますもんね……。
寺門 眞門:ああ。でもさ、扉の外に居ようと中に居ようと、そこに「愛」がある事には変わらない。
寺門 眞門:だから、人間というのは前に進み続けるのだよね。「扉をあけて、外へと。」
猫宮 織部:……旦那様……?
寺門 眞門:君には、反対されるかも知れないけれど。
寺門 眞門:僕もね。君の事も、この街の事も、守りたいと思ったんだ。
猫宮 織部:……。
寺門 眞門:……聞いてくれるかい。
猫宮 織部:当たり前です。
寺門 眞門:ありがとう。猫宮さん。
猫宮 織部:……旦那様。
寺門 眞門:ん……なんだい?
猫宮 織部:ホットミルクが飲みたいです。
寺門 眞門:……え?
猫宮 織部:旦那様の淹れた、ホットミルクが飲みたいです。
寺門 眞門:……わかった、淹れてこよう!
猫宮 織部:へへ、私の審査は厳しいですよ?
寺門 眞門:ふふ、望むところだ。
猫宮 織部:おいしかったら、そうですね、こう言ってあげます!
寺門 眞門:ん、なんだい?
猫宮 織部:すこすこのすこ!すこてぃっしゅふぉーるどです!!!

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