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臍帯とカフェイン

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コンビニエンス・エレジー(0:0:4)

【配役】

◆ガット:

創作も、表現もしていないしがないただのコンビニで働くフリーター。毎日ガムボールを回す彼を見ていた。ガット・ノックスヒル。作中女性ですが性別不問とする。


◆エクレール:

ガットの先輩。コンビニで働くフリーター。エクレール・マゼンタ。作中女性ですが性別不問とする。


◆アクセル:

小劇団「テレサ」の俳優。アクセル・エスコバル。劇中の性別は男性ですが性別不問。


◆リック:

ホームビデオのカメラで映画を撮ろうとする男2人と女1の3人組の一人。編集担当。雑用もします。リカイン・アインスタイン。本編では男性ですが、性別不問とします。




すべての創作者と、すべての表現者へ。



ガット:はじめは、なんて不気味な人なんだろうっておもったんすよ。


エクレール:どうして?


ガット:だって、毎日っすよ?


エクレール:毎日。


ガット:そう、毎日。


エクレール:まあ、大の大人がそんな事してたら確かに不気味かもねえ。


ガット:そっすよ、子供でも見向きもしないんすよ?あれ。


エクレール:まあ、そんなに美味しいものじゃあないしね。


リック:なんの話?


ガット:ああ、リカインさん。


リック:リックでいいってば。


ガット:あれですよ、あれ。


リック:あれって、ああ、あれ?


エクレール:そうそう、あれあれ。


リック:だーれも見向きもしなかった、あの「ガムボールマシン」の話ね。


ガット:(モノローグ)

ガット:時給1030円が、高いのか安いのかで言ったら。

ガット:まあ、高くもなく、安くもなくと言ったところで。


エクレール:すごい話だよね。


リック:すごいって?


エクレール:知らないの?リック。


リック:ごめん、わからない。なんの話?


ガット:(モノローグ)

ガット:その、どっちにも付かないような生活が

ガット:自分の丁度いいところにずっと巣食っていて。


エクレール:この店に、来てたんだって。


リック:え?それって、つまり?


エクレール:「ガム絵画」のあのひと!

エクレール:ガットが超連勤してた時に会ったことあるんだって!


ガット:(モノローグ)

ガット:毎日を平和に過ごす、ただそれだけが目標だっていいでしょ?

ガット:そんな風にそれっぽく言い訳して納得させるそんな日々。


リック:えええ!ガット君、ウィンストン・パノマールに会ったことあるの!?


ガット:毎日来てましたよ、すごい顔しながら。


リック:すごい!すごいじゃない!

リック:現代アートの巨匠だよ!?

リック:なかなかお目にかかれるもんじゃないって!


エクレール:リック、そんなに興奮しないで。

エクレール:カウンターが揺れてる。


リック:ぼ、僕が興奮したってカウンターは揺れないよ!


エクレール:あ、ほら、また揺れてる、やめてやめて。


リック:ああー!もう!エクレ!君は意地悪だ!


エクレール:痩せたんじゃないの?リック、もっと食べたら?


リック:全然痩せてないよ!もう、そういうの嫌味って言うんだよ!


エクレール:あははは、リカインさんはからかいがいがあって、おっもしろっいなー


リック:君の言葉は本当にいつも稲妻のようだよ……


エクレール:ははー、お褒め頂き光栄ですー!

エクレール:……で、ガット?どうだったの?


ガット:どうだったって?


エクレール:ウィンストン・パノマール。


リック:確かに。どうだったの?


ガット:どうってなにがっすか。


エクレール:だからあ、なんかこう、あるでしょ、雰囲気がすごかったとか。


リック:そうそう、そういう奴。


ガット:ああ、そういう。

ガット:……そうっすね……。


ガット:(モノローグ)

ガット:そんな日々が、あまりにも。

ガット:そう、あまりにも。



ガット:「普通」っすよ、「普通」。



ガット:(タイトルコール)

ガット:「コンビニエンス・エレジー」


0:【場面】ある日のシフト


アクセル:もしもーし、いや、無いよやっぱ。

アクセル:ね、店員さん、ないよね?


ガット:そっすねー……、ちょっとウチじゃ置いてないっすねー。


アクセル:だってさ。どうする、他の店も探してみた方がいい?なあ、ガス、聞こえてる?もしもーし。


ガット:(気怠さそうに入口を見ながら)

ガット:いらっしゃーせー……


ガット:……あ、またガムボールやってる。


アクセル:もーしもーし!ガスー!ガスパール!

アクセル:……だめだ、電波悪すぎだろ。


ガット:店内のWiFiあるんでよかったら使ってもらってもー……


アクセル:ああ、いやいや、こっちじゃなくてね。

アクセル:多分向こうの電波の話。


ガット:ああ、そういう。


アクセル:ごめんね、店員さん。

アクセル:さーすがにコンビニエンスストアでも、ペンキは売ってないかー。


ガット:まぁ、売ってる所もあるかもしんないっすけど

アクセル:まぁ、なんとか探してきてくれるかな、あいつが


ガット:……ペンキなんて何に使うんすか?


アクセル:ああ、へへ、なんだと思う?


ガット:えー……なんすかねー……


アクセル:って、こんな喋ってたら仕事の邪魔?


ガット:いや、全然大丈夫っすよ、暇なんで、この店


アクセル:暇?でもなんか、こう、人の出入りはすごいけど……


ガット:(入口を見ながら)

ガット:いらっしゃーせー……

ガット:またガムボール


アクセル:ガムボール?


ガット:そ、知らないっすか?お客さん


アクセル:ガムボール……?


ガット:3億円のガム絵画


アクセル:あー!えっと、あれだ、ウィンストン・パノマール!


ガット:そ。

ガット:そのガム、うちのガムボールマシンで買っていってたんすよ。


アクセル:ウィンストン・パノマールがここで!?


ガット:そっす。


アクセル:えー!それはすごい、まじか。

アクセル:さすがホリベスの中でも栄えてる街なだけある。

アクセル:そっか、そうかあ、そうだよなあ。

アクセル:あのひとホリベス出身だもんなあ。


ガット:好きなんすか?ウィンストン・パノマール。


アクセル:いや全然知らない。


ガット:好きな人のテンションだったでしょ、絶対。


アクセル:あはは、うちの座長がね、好きなんだよ。

アクセル:現代アートってやつ。


ガット:座長……?


エクレール:ガット、あんたまたサボってるでしょ。


ガット:サボってないっす。


エクレール:午後の納品の伝票、処理した?


ガット:サボってたっす。


アクセル:ごめんごめん、俺が引き止めちゃってたから。


ガット:……劇団の道具、っすか?


アクセル:え?


ガット:ほら、ペンキ。


アクセル:ああ、そうだよ!すごい、わかったの?


ガット:座長って言ってたんで、もしかして俳優さんなのかなーって。それで。


エクレール:でた。ガットのオーマイガット。


アクセル:なにそれ?


エクレール:なんか妙に勘がいいんですよ、こいつ。だから、オーマイゴッドと掛けて、オーマイガット。

エクレール:なんか鋭い事言った時に使います。


アクセル:へえ、オーマイガット、なんかいいなそれ。


ガット:全然よくないっす。むしろ恥ずかしいっす。


エクレール:あんたサボってた?


ガット:サボってたっす。


エクレール:あ、これはもう聞いたか。


アクセル:仲がよさそうでいいな!


ガット:よくないっす。


エクレール:仲いいだろ!ふざけんな。


ガット:仲いいっす。


アクセル:本当は?


ガット:脅されてるっす。


エクレール:ガット!


アクセル:ははは!おもしろいなあんたら。


エクレール:そりゃどうも。暇なコンビニの店員にしては面白いってよく言われます。


ガット:駅前なのになんでこんな暇なんすかね。


アクセル:っと、そうだった。その話だった。

アクセル:暇って言う割には人の行き来は多い気がするけど。

アクセル:あ、ほら、また。


ガット:(入口を見ながら)

ガット:いらっしゃーせー


エクレール:ばか!ちゃんとやれ!

エクレール:いらっしゃいませー


ガット:……いらっしゃいませー


アクセル:……また、ガムボール?


ガット:そ。ウィンストン・パノマールが毎日買ってったガムボールマシン。

ガット:これやってく人ばっかっすよ。


エクレール:そろそろ無くなりそうだね。リック来る前に補充しとく?


ガット:いや、ギリギリまでそのままでいいんじゃないすかね。リックさん補充生き甲斐っぽいですし。


エクレール:おっけー。じゃあ放置ね。


アクセル:……なるほど、ガムボール目当てで、他の買い物はしないんだな。


ガット:そゆことっす。

ガット:ホリベスのコンビニに行けばどこにでも、

ガット:ウィンストン・パノマールが設置したガムボールマシンがあるはずなんすけどね。


アクセル:オリジナルはここだけってことか。

アクセル:すごいね、もうほぼ聖地ってわけだ。


エクレール:静かに買って帰るだけだから、迷惑なんてこともないしね。有り難いことだよ。


アクセル:3億だもんなあ……あやかりたいよな、芸術家たちは。


ガット:……そっすねえ。


エクレール:歯切れわる。


ガット:まあ、そっすねえ。


アクセル:話は変わるんだけど、君たち演劇って興味ある?


エクレール:あるある、ありまーす。

エクレール:芸術のホリベス州に住んでて演劇興味無いなんて人いる?


ガット:興味ないっす。


エクレール:いたわ。


アクセル:そうか、残念。オーマイガットにオーマイゴッドって言われたかったんだけど。


ガット:言わないっすそもそも。


エクレール:言いなよ。


ガット:言わないっす。


エクレール:ノリわる。


ガット:ノリわるいっす。


アクセル:はは!まぁもし気が向いたらさ、来てよ、ぜひ。


エクレール:演劇?


アクセル:そう。はじめて遠征してきたんだ。こっちに。


エクレール:あ、ここらへんの人じゃないんだ。


アクセル:そう、もっともっと田舎のほう。

アクセル:フライヤー渡すよ、えっと、ほら、これ。


エクレール:ふーん。劇団テレサ。

エクレール:えっ、すごい、お客さん主役じゃないですかこれ。


アクセル:これでも?劇団テレサの花形だしね?


エクレール:すごーい。


アクセル:オーマイガットも気が向いたらでいいからさ。


ガット:オーマイガットじゃないっす。


ガット:(モノローグ)

ガット:実際、オーマイゴッドなんて叫びたくなる事なんてそうそうこの人生には無い。

ガット:いつも通りの朝を迎えて、ホットドッグをかじって、仕事に出る。

ガット:何にもない日常、なんにも無いホリベス。

ガット:表現したいことも、伝えたい事も特にない。

ガット:あんたは、すごいよなあ、ウィンストン・パノマール。

ガット:きっと表現したいことや、伝えたいことだらけだったんだろうなあ。


0:【場面】また別の日のシフト


リック:(鼻歌。もしかしたら、例のあの歌かもしれない。)


ガット:リックさん、そろそろガムボール補充必要っすよ。


リック:あー、本当だねえ。

リック:ちょっと補充してくるね。


ガット:お願いしまーす。


リック:……すごい人気だよねえ。ガムボール。


ガット:そっすねえ。


リック:ガットは?もう回した?


ガット:いやー、やってないっすね。


リック:え、そうなの?


ガット:はい


リック:なんで?


ガット:なんでって言われても。


リック:言われても?


ガット:ただのガムじゃないすか。


リック:……はへー、すごい現実主義だ。


ガット:現実主義っていうか、なんというか。


リック:なんと言うか?


ガット:「自分には関係のないもの」、というか。


リック:関係ない、かあ。


ガット:はい、別に絵も描かないですし、夢を追いかけてるわけでも無いですし。


リック:やりたいこととか、無いの?


ガット:無いっすねぇ。リックさんは?あるんですか?そういうの。


リック:……映画をね、作ってるんだ、友達と。


ガット:へえ。映画。意外っすね。好きなんですか?


リック:まあ、僕が好きって言うよりも、友達がね。

リック:撮りたいっていうから。


ガット:なーんだ。じゃあ、リックさんがやりたいわけじゃないんだ。


リック:そうだね、はじめはそうだった。


ガット:……今では違うみたいな言い方っすね。


リック:うん、今では違う。よいしょ、補充完了。


ガット:(入口を見ながら)

ガット:いらっしゃーせー


リック:いらっしゃいませー

リック:こら、またエクレに怒られるよ?


ガット:居ないからいいんすよ別に


リック:知らないよー?


ガット:暇で適当でも問題ないのが、この店のいいとこなんすから。


リック:気力が無いなあ。


ガット:そうすか?


リック:まあ、でも、それも人生か……。


ガット:……他人のやりたいことや夢を、自分のものにしていくのって、なんか虚しくないすか?


リック:そうかな?


ガット:そうっすよ。だって、自分の夢じゃあないんでしょ?


リック:そうだね、あくまで友達のやりたいことだった。


ガット:じゃあそれって、意味ないじゃないすか。ただ、そこに乗っかってるだけというか。


リック:まあ、うん、そうだねえ。でも。


ガット:でも?


リック:思っちゃったんだよね。


ガット:……なにを?


リック:そいつの夢を、叶えてやりたいなって。


ガット:……そんなの、なんか、脇役みたいじゃないすか。


リック:ガットは、主役になりたいの?


ガット:……どうせなら。


リック:主役じゃない人生は、意味がない?


ガット:……無くないですか?それこそ、映画なんて正しくそうじゃないすか。

ガット:スポットライトが当たるのはいつだって主役でしょ?


リック:そうかな。


ガット:そうですよ。


リック:実は、結構目立ちたがり屋なんだ?


ガット:違いますよ。


リック:若いなあ。


ガット:若いとか関係ないっす。


リック:……ふふ、ガットもいつかわかるといいね。


ガット:なにがっすか?


リック:「主役なんて、居ないんだよ。」ガット。


ガット:……はい?


0:【場面】また別の日のシフト


エクレール:あんたすごいよ!アクセル!もうなんか惚れ惚れしちゃった!


アクセル:ま・あ・ねー、言ったろ?花形だって。


エクレール:ちょっと今のうちにサイン貰っておこうかな。


アクセル:いいぜ、書いてやるよ、背中でいい?


エクレール:ばーか。制服に書いたら怒られるでしょ。


ガット:どうしたんすか?


エクレール:行ってきたのよ!劇団テレサ!アクセルの舞台!


アクセル:いい話だったろ?


エクレール:めちゃくちゃいい話だったー……

エクレール:もう最高、めっちゃくちゃ泣ける。

エクレール:夢を追いかけて、諦めて、でも諦めきれなくて。

エクレール:わかるなー、主人公の気持ち、すごくわかる。


アクセル:あの脚本、すげえんだぜ。


エクレール:なになに。どうすごいの。


アクセル:「国立劇団」に所属してるお偉い先生に、書いて貰ったんだ。


エクレール:こここここ、国立劇団ー!?

エクレール:なんで!?なんでなんで!?

エクレール:すごくない!?そんなツテあるの!?


アクセル:あっるんだなーこれが!


エクレール:その割にお客さん入ってなかったけどね。


アクセル:ぐえー、振り向きざまに脳天かち割られた気分ー。


ガット:……その劇団って、なんか、あれなんですか?お仕事としてやってる、みたいな?


アクセル:いんや、趣味かな。


ガット:趣味……本気じゃないってことです?


アクセル:いや、全員本気だよ、まじの感じでやってる。


ガット:……ふうん。


アクセル:……オーマイガットは、なんか悩んでる?


ガット:……え?


アクセル:いや、なんかそんな感じがするから。


ガット:どんな感じですか。


アクセル:敏感なんだよ、俺、そういうの。


ガット:……意味あります?趣味の、演劇なんて。


エクレール:ガット。


アクセル:大丈夫、エクレ。


エクレール:すごい失礼なこと言ってる。


アクセル:いいんだよ。

アクセル:……そうだなあ、ガット、わかるぜ、そういうの。


ガット:……なにがです?


アクセル:趣味なのに、そこの先になにかがあるわけじゃないのに、頑張る意味はあるのか?


ガット:……。


アクセル:そう、思うよな。


ガット:正直、そうですね。


アクセル:誰に見られる訳でもない、沢山のスポットライトがあたる訳でもない。

アクセル:巨万の富を得られるわけでも、何かに名前を残す訳でもない。

アクセル:なら、やる意味なんてあるのか?って。


ガット:……はい。


アクセル:意味なんて、無いよ、多分。


ガット:……え?


アクセル:意味なんてないんだよ。

アクセル:「やりたいから」やってる。

アクセル:「楽しいから」やってる。

アクセル:「好きだから」やってる。


ガット:……でも、その好きな事ややりたいことで、悩んだりもするんじゃないすか?


アクセル:するね。


ガット:金にもならない、名声が手に入るわけでもない。

ガット:やらなければ、悩むこともない。

ガット:無意味な悩みじゃないすか?それって。


エクレール:ガット、それは……


アクセル:そう、無意味な悩みだよ、オーマイガット。


ガット:じゃあ、なんで?


アクセル:その無意味なことで、俺らは誰かの背中を押すし、誰かに背中を押されるからだ。


ガット:背中を……


アクセル:どういうことだ、って顔、してるな?


ガット:……してます。


アクセル:なあ、ガット。

アクセル:あのガムボールマシン、みんなが回していくんだろ?


ガット:ええ、そうですね。


アクセル:それこそ、色んな人達が、何人も、何度も。


ガット:一日中ですよ。


アクセル:なんでだと思う?


ガット:ウィンストン・パノマールが、回してたからっすよね?


アクセル:そう。ガムが欲しいわけじゃないんだよ。


ガット:……。


アクセル:そこに意味があるんだ。ガムや、お金や、名声じゃない。

アクセル:「それに触れた」って言う事実。

アクセル:それこそが、あのガムボールマシンが毎日回っていく意味だろ?


ガット:……でもそこには、ウィンストン・パノマールっていう現代アートの価値がついてるじゃないですか。


アクセル:ウィンストン・パノマールが、現代アートの巨匠だから、価値があるんじゃない。


ガット:……ええ?


エクレール:知らないの?ガット。


ガット:どういうことっすか?


エクレール:ウィンストン・パノマールは、ただのレストランの給仕だったんだよ。


ガット:……。


エクレール:意味があったんじゃないとおもう。

エクレール:……あとから、「意味になった」んじゃない?


ガット:「意味に、なった」。


アクセル:偉そうな事言ってるけどさ、まだ俺もこの先にどんな意味があるかなんてわかんないんだ。


ガット:……。


アクセル:多分、ウィンストン・パノマールだってそうだろ。


ガット:どういうことですか?


アクセル:表現に、芸術に、創作に意味があるんじゃない。

アクセル:「俺たちに」意味ができていくんだよ。

アクセル:だから、ガムボールを回すんだ。

アクセル:何度だって、いつだってな。


0:【場面】エクレールと2人


エクレール:……納得できた?


ガット:……正直、まだあんまり。


エクレール:主役じゃないと、いや?


ガット:……リックさんですか?


エクレール:はは、ごめんごめん、内緒にしてって言われてたんだった。


ガット:……ウィンストン・パノマールは、ガムを噛んだんでしょ?


エクレール:そうだね。


ガット:味の無くなったガムを、壁に貼り付けていった。


エクレール:そうだね。


ガット:ウィンストン・パノマールがガムを毎日噛んだのは、そのガムに味があったからじゃないすか?


エクレール:でも、噛んでみないと、ガムに味があるかは分かんないよ。


ガット:……怖いじゃないすか、噛んだガムに味が無かったら。


エクレール:そうかな?


ガット:そうですよ、そんな事に気づいたら、立ち直れないでしょ。


エクレール:でもきっと、味が無くてもあのガム絵画は完成してたんじゃない?


ガット:……。


エクレール:それに、味が無くても私はガムを噛むけどなー。


ガット:なんで?


エクレール:フーセンみたいに膨らませて潰すのが楽しいから!


ガット:……なんですかそれ。


エクレール:……リックさんが、映画撮ってる理由、聞いた?


ガット:……詳しくは、知らないっす。


エクレール:そっか、今度もっかい聞いてみなよ。


ガット:……なんで?


エクレール:主役なんて居ないって、言われたでしょ?


ガット:言われました。


エクレール:……脇役も、居ないんだよ、ガット。


ガット:はい?


エクレール:スポットライトがあたる人がいる。


ガット:……ええ。


エクレール:そのスポットライトを、あてる人もいる。


ガット:……。


エクレール:誰かが背中を押して、誰かに背中を押されてるんだってさ。


ガット:詭弁ですよそんなの。


エクレール:そうかもねー。でもさ。


ガット:でも?


エクレール:そうであるって、信じてもいいんじゃない?


ガット:なんですか、それ。


エクレール:ってことでさ、行ってこいよ、ガット。


ガット:は?何が?


エクレール:ガムボール、回してきな。


ガット:はい?


エクレール:回してみて、味がなかったら、また回せばいい。


エクレール:人生も、意味も。

エクレール:1回で終わるものじゃないと思うよ。

エクレール:何度だって回せばいい。

エクレール:何度だって噛めばいい。

エクレール:ほら、行っておいで。

エクレール:オーマイガット。


ガット:だから、オーマイガットじゃないってば。


エクレール:オーマイゴッドって、叫びたくなることが、起きるかもよ。


ガット:……そんな馬鹿な。


エクレール:そんな馬鹿な、かもね。

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