サファイアさん(0:0:7)
【配役】
◆サファイアさん
◆コハク
◆ヤスリ平
◆ノギ
◆アクアマリオ
◆サンゴ
◆メノちゃん
ノギ:(ナレーション)
ノギ:ここは、世田谷区にある一戸建て。
ノギ:表札には『石野』と書かれていて、毎日騒がしい声が聞こえてくる。
ノギ:ほら、噂をすれば、なんとやら。うふふふ。
サファイアさん:こらーーー!!!コハクーー!!
サファイアさん:待ちなさーーーーい!!!!!!
コハク:うわあ、逃げろ逃げろサファイア姉さんがおかんむりだー!
サンゴ:ちょっとお兄ちゃん!?うるさいんだけど!?
メノちゃん:コハクお兄ちゃんまた怒られてるデース!
コハク:サンゴ!メノちゃん!たのむ!かくまってくれー!
サファイアさん:待ちなさいコハク!全部一部始終見えてるのよ!今日という今日は許さないだからー!
アクアマリオ:さ、サファイアぁ~!あんまり大股開いて走り回ると危ないよぉ~!
コハク:そーだぞ姉さん!!アクアマリオ兄さんもっと言ってあげて!!!!
アクアマリオ:え、えぇ!?ぼ、僕には無理だよぉ!
ノギ:あらあら、皆して。またお父さんに怒られますよ。
サファイアさん:母さんもアクアマリオさんも微笑んでないでコハクのやつ捕まえてよー!もー!
ヤスリ平:ばっかもん!!!!!静かにせんか!
サファイアさん:と、父さん!
ヤスリ平:そんな大声上げてドタバタドタバタと!
ヤスリ平:はしたない!
サファイアさん:ち、違うのよ父さん!
サファイアさん:コハクのやつが!
コハク:お父様、僕はしっかり石のように静かに過ごしておりました。
サファイアさん:あっ!この!調子いいんだから!
サンゴ:お父さん違うのよ、お兄ちゃんが悪いの
メノちゃん:そうデ~ス、コハクお兄ちゃんが悪いことしてたからママが追いかけていたデ~ス!
コハク:め、メノちゃん!だめだってそんな事言ったら!
メノちゃん:おじいちゃんの盆栽をネオンカラーに塗り直してたデ~ス!
コハク:はわわわわわ。
サファイアさん:悪行っていうのはね、必ず晒されるものなのよ、コハク。
コハク:ね、姉さん、悪行とか言わないでよ!
アクアマリオ:コハクくぅん、ネオンカラーに染めるのは流石に不味いよぉ。
コハク:あ、アクアマリオ兄さんまで!
コハク:か、母さん、悪気があったわけじゃないんだよう、僕には僕の考えがあってぇ~。
ノギ:ふふふ、はいはい、もうちゃんと謝ってしまいなさい、コハク
コハク:そ、そんなぁ
サンゴ:お兄ちゃん、ちゃんと謝ったほうがいいわよ
サファイアさん:さあ!コハク!お父さんに謝りなさい!
コハク:ふえーん、父さんごめんよぉ、父さんの盆栽が夜に光ったら父さんも楽しいかなって思ったんだあ
ヤスリ平:このバカモノ!!!
コハク:ひい!
ヤスリ平:……しかし、潔く謝ることができたその心意気は認めよう。
コハク:と、父さん!
サンゴ:良かったわね!お兄ちゃん!
コハク:おまえは身内を売った裏切り者だ、サンゴ、あとでおぼえとけよ
ヤスリ平:コハク!!!
コハク:ひ、ひい!ごめんなさい!
ノギ:(ナレーション)
ノギ:これは、どこにでもある普通の、でも少し騒がしい私たち『石野家』の団欒の記録。
ノギ:日曜日劇場『サファイアさん』、よろしくお願いしますね。
0:「第1話 サファイアさんサファイアさん、サファイアさんは愉快だな」
0:なんか軽快なオープニング音楽が多分流れている。
ヤスリ平:おーい
ノギ:はいはい、お茶ですね、どうぞ
ヤスリ平:うむ
ノギ:そろそろ洗濯物を取り込まないとねえ、サファイア、手伝っておくれ
ヤスリ平:おい
ノギ:はいはい、テレビのリモコンはちゃぶ台の下ですよ
ヤスリ平:うむ
サファイアさん:ねえ、母さん?
ノギ:なんだい?サファイア
サファイアさん:どうして母さんは、父さんが『おい』って言っただけで全部わかるの?
ノギ:ええ?どうしてって、ふふ、長く一緒にいたら嫌でもわかりますよ。
サファイアさん:そっかあ、それが夫婦の絆ってやつなのねー!
0:【場面転換】夜、夕食の場
サファイアさん:それでね、父さんが『おい』って一言言うだけで母さんはすーぐなんの事なのかわかるのよ。
アクアマリオ:へえ~、流石ですねえ、お義母さん
ノギ:やめとくれよ、ただの慣れなんだから
ヤスリ平:左様
サンゴ:でもでも、なんだか素敵だわ、そういうのって憧れちゃう
コハク:サンゴには絶対無理だろうね!
サンゴ:なんでそんな酷いこと言うのお兄ちゃん!
コハク:だってわがままですぐ泣きべそかくサンゴにはまず旦那様ができないだろ~?
メノちゃん:コハクお兄ちゃんひどいデス!最低デス!
サンゴ:そんなことないもん、きっと素敵な王子様が私の前にも現れるんだわ
ノギ:ふふふ、サンゴは優しいからきっともっと優しい王子様が現れるだろうねえ
メノちゃん:羨ましいデース!
コハク:ちぇー。でもさ、母さんは嫌じゃないの?
ノギ:おや、どうしてだい?
コハク:だってさ、なんかそれって女性を軽く見てるというか、女性蔑視の延長線上にある女性軽視の一つだと思わない?
サファイアさん:コハク!
コハク:でもそうじゃないか!おい、しか言わないなんて。僕なら懇切丁寧に「すまないけど、お茶を持ってきてくれるかな?」って紳士的にだねー
アクアマリオ:コハクくんは、近代的な思想を持ってるんだなぁ。偉いよぉ、そういう観点も大事だもんねえ。
サファイアさん:あはやだ!アクアマリオさんったらまたそうやってコハクを甘やかして!
アクアマリオ:え、えぇ!?なんだってぇ?あ、甘やかしてるわけじゃあないよサファイア~
サファイアさん:どうだか
ヤスリ平:コハクの言うことも一理ある。
サファイアさん:父さんまで!
ヤスリ平:しかしだ、コハク。私は何も本当に『おい』だけで母さんをこき使ってるわけではない。
サファイアさん:ええ?
コハク:どういうこと?
メノちゃん:どういうことデース?
ノギ:ふふ、お父さんったら、もう話してしまうんですか?
ヤスリ平:なあに、母さん、いずれは話さなければならぬこと。
アクアマリオ:ど、どういうことですか?お義父さん
ヤスリ平:ふむ、アクアマリオくん、きみは気づいているように私は思っていたがねえ。
アクアマリオ:……やだなぁ、お義父さん、それじゃ僕がまるで能ある鷹は爪を隠す、ならぬ、能あるアクアマリンは研磨を怠らない、みたいじゃないですか。
コハク:な、なに、なんの話をしているの?
サファイアさん:アクアマリオさんも、どういうこと?
アクアマリオ:短縮言語法さ。
サファイアさん:た、短縮言語法?
ヤスリ平:左様。やはり優秀だな、きみは。
アクアマリオ:いえいえ、お義父さんには敵いませんよ。はははは。
メノちゃん:パパとおじいちゃんなんだか意味深デース!
サンゴ:どういうこと?愛の力で気持ちがわかるとかそういう話じゃなかったの?ねえ、母さん
ノギ:……サンゴには気の毒だけれど、お父さんが話してしまったなら仕方ないですねえ。
サファイアさん:ちょ、ちょっとまってよ。
サファイアさん:なんか不穏な感じになってきてすごく嫌なんだけど!
ヤスリ平:『大日本帝国 機密第四部隊』、通称『石野隊』と呼ばれたのも、もう何10年も昔のことだ。
アクアマリオ:はは!ビンゴ!やっぱりそうだったんですね、お義父さん!
ヤスリ平:左様。
コハク:き、機密第四部隊……っ!?な、なんなんだよそれって!
メノちゃん:胸熱展開デース!
サファイアさん:なんのことやらチンプンカンプンよ!どういうことなの!?
ノギ:私とお父さんはね、その部隊の部隊長と側近だったのさ。
サンゴ:え、素敵。職場恋愛ね!
ノギ:ふふ、そんな生易しいものではなかったわ。
ヤスリ平:そうさな。母さん。あの日々は正しく生き地獄だった。
アクアマリオ:『石野隊』のヤスリ平と言えば、当時GHQも恐れる程の精鋭部隊……秘密裏にミッションをこなし粉一つ残さない仕事っぷりから『透明な石』って呼ばれてたんだ。
コハク:く、詳しいね、アクアマリオ兄さん
アクアマリオ:生ける伝説だよ、君のお父さんは!
ヤスリ平:任務が終わればまた任務、そんな地獄の日々の中で母さんとの時間だけが私の心の支えだった。
ノギ:やですよ。お父さんったら。
ヤスリ平:なあに、いいであろう。
サンゴ:素敵だわ。
ヤスリ平:しかし、私たちは秘密部隊、恋愛などと言う甘いものとは無縁であった。
ノギ:全ての任務が終われば、私たちは消えなければ行けない。そんな責任がありましたからねえ。
コハク:そうか!だから短縮言語法なんだ!
サファイアさん:どういうことよコハク!
コハク:『おい』の言葉の中に、一定の周波数の乱れを起こして、その乱れで会話をしている、そういうことでしょう!?
ヤスリ平:左様。さすがはコハクだ。
コハク:へへん!
サンゴ:すごいわ!お兄ちゃん!
メノちゃん:すごいでーす!
ヤスリ平:そうして短縮言語法で会話をする術を身につけた結果ということであるな
サファイアさん:なーんだ、じゃあ別に愛の力ってわけじゃないのかー。
メノちゃん:でもママ、その短縮言語法を身につける為には想像も絶する訓練が必要だったはずだよ。だからね、きっとこれは愛の話に間違いはないのさ。
サファイアさん:そうね、メノちゃんはさすが頭がいいわね!
メノちゃん:えっへんデース!
アクアマリオ:お、おい、サファイア
サファイアさん:あらなあに?アクアマリオさん
アクアマリオ:だ、だめかぁ、今僕もやってみたつもりだったんだけど
ヤスリ平:はっは、そんな簡単に物にできる技術ではぁない!
ノギ:ふふ、あなた達夫婦も努力と愛があれば出来るようになるかもしれませんねぇ
サファイアさん:ちなみにアクアマリオさん、どういう意味をその『おい』には込めたのかしら?
アクアマリオ:え、ええ!?それを聞くのかいぃ~、サファイアぁ~
サファイアさん:あっ、なんか怪しいわね!?
メノちゃん:パパ怪しいデース!
サンゴ:きっと特別な愛の言葉を織り交ぜたのよー!
コハク:いや、これは違うね!伝わらないことを加味して普段言えないことを言ったに違いない!
アクアマリオ:や、やめてよコハクくぅん!
サファイアさん:あらやだもう!どんな意味があったのか益々気になるわ!?
アクアマリオ:え、ええー!勘弁しておくれよー!
一同:(あはははは、と笑い声でフェードアウト)
サファイアさん:さーて、来週のサファイアさんはー?
ヤスリ平:ヤスリ平です。
ヤスリ平:ようやく春が来たと思えば冷たい雨の降りしきるこんな夜更け。
ヤスリ平:昔の上司からそろそろ現場に戻ってこないか?なんて連絡が桜吹雪に隠されたメッセージで届きました。
ヤスリ平:私は今の生活が一番の現場だよと返すと、
ヤスリ平:母さんが優しく笑ってくれたそんな夜です。
ヤスリ平:来週のお話は、
ヤスリ平:「コハク、ついにあの場所へ」
ヤスリ平:「石野家道中ロード・オブ・ザ・リング」
ヤスリ平:「サファイアさん、明日の夕刊はおやすみですよ」
ヤスリ平:の3本です。
サファイアさん:来週も、また見てくださいねー!
サファイアさん:それじゃ、あっちむいてー……ほい!
サファイアさん:……うふふふふふ!
おわり。
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