新訳版ふとももと明太子(0:0:2)
【配役】
◆大将:性別不問。なんか前回より変な人になってる。
◆弟子:性別不問。男性がやるときはちょっとオカマっぽくやると気持ち良いと思う。
弟子:責任、とってください。
大将:なにが、だ。
弟子:しらばっくれないで。何度も私、言ったじゃ無い。
弟子:生はやめてって。
大将:お、お前だって喜んでたじゃないか!
弟子:喜ぶわよ!嬉しいにきまってる!
弟子:でも、それとこれとは別問題じゃない!
大将:なにが問題だっていうんだ、責任って、お前、まさか
弟子:そうよ、できたの。
大将:できたのか。
弟子:ええ、できたわ。・・・軍艦巻き。
大将:やるじゃねえか!なんていい軍艦巻きだ!
弟子:大将が言うとおり、炙りにしてみたら最高の出来になりやした。
大将:ほうら、だから言っただろう?生のマグロは炙りに限るって。
弟子:海苔の巻き方もみてくだせえ、大将、ほら、こーんなに黒く光ってる。
大将:ああ、もっと近くで見せてくれ、なんて香りだ、ああ、香ばしい。
弟子:でも、大将、みてください、どうしても
大将:ああ、皆まで言うな、ぜーんぶわかってる
大将:しゃり、だろ?
弟子:ああっ、どうして、どうしてわかるんですか大将
大将:ほら、見てみろ、この海苔の隙間から、こ~んなに乱れた銀シャリが
弟子:あ、ああ!見ないで
大将:白くて、つやつやで、もっちりとした、甘くて、ああ、こーんなにはみ出ている
弟子:いや、やめて、はずかしい
大将:シャリの握りが甘いのだ。
弟子:くそう、大将みたいにできねえや。
大将:よく見てろ、弟子ぃ、シャリはな。こうやって、握るんだよ。
弟子:あ……すごい、そんな、そんなにいっぱい一度に掴むの・・・?
大将:見えるか、ほら、こうやって包み込むように……
弟子:ずるい、私でもそんな風に包み込まれたことないのに
大将:すぐそうやって拗ねやがる
弟子:拗ねるよ、羨ましいもん
大将:……拗ねる必要もねえだろ?
弟子:言ってもらってない。
大将:なにがだよ
弟子:私、こんなに握られてるのに、まだ一回も言ってもらってない
大将:だから何がだって
弟子:「すし」って。
大将:……それは、言わねぇ約束だったろ。
弟子:我慢できないよ、そんなの。
弟子:弟子はいつだって、言われたいんだよ?大将に、「おめぇのことがすしだ」って。
弟子:「おめぇが、だいすしだ」って。
大将:いいから、ちゃんと見て覚えろ。
大将:そんなんじゃ、いつまで経っても独り立ちできねえぞ。
弟子:……どうせ、二番目、だもんね。
大将:おい。
弟子:いいの、わかってた、最初から私は2番目。
大将:そんなことない
弟子:嘘。嘘よ、そんなの。
大将:嘘じゃねえ。
弟子:テレビ番組でどうみてもワサビがこんもり入ってるのが見えてるのに
弟子:「わ、どれがサビ入りだろー」って知らない振りしてサビ入り寿司を手に取るお笑い芸人くらい嘘よ!!
大将:ばかやろう!
弟子:いたい!
大将:おめぇに何がわかる、あの罰ゲームに使われたマグロ寿司の何がわかるってえんだ。
弟子:……大将
大将:矜持も、伝統も、へったくれも無い、あんな、あんな風に扱われて……俺ぁ……俺ぁ……
弟子:……(奥さんのイントネーションで)国産、だったんですね。
大将:……ぐすっ、ぐす
弟子:あのワサビ入りのマグロの寿司、国産、だったんでしょ。
大将:……もう、昔の話だ。
弟子:そうやっていつまでもいつまでも国産の事忘れらんなくて、ずっと引きずってるんでしょ!
大将:……ああ、そうだよ!女々しいか?笑えよ
弟子:……国産、いいマグロだったの?
大将:……ああ、い~い…………マグロだったぁ……。
弟子:……そう、だよね、どう見ても国産のクロマグロ。
弟子:私なんかじゃ、代わりにも成らない、か。
大将:……いいから、早い所、握れ、弟子
弟子:……合点
大将:……いいか、弟子。
弟子:なんですか、大将。
大将:明太子ってぇ、あるだろ
弟子:はい、鱈の卵巣をつけた珍味、明太子
大将:俺ぁ、あの明太子ってやつが、でぇすきだ
弟子:でぇすき
大将:ああ、でぇすきだ
弟子:でぇすき
大将:……でぇすしだ
弟子:はい
大将:明太子はいい、あれがあれば他におかずはいらねぇ
大将:明太子さえあれば、白飯がいくらでも食えちまう
弟子:おいしい、ですもんね、明太子
大将:ああ、そして、弟子
弟子:……はい
大将:一回しかいわねぇぞ
弟子:言ってください、自分、大将の話絶対に忘れません
大将:俺ぁふとももも好きだ
弟子:なんて?
大将:俺は明太子が好きだ、同じくれぇふとももも好きだ。
弟子:なんの話してます?
大将:それで、いいじゃねえか。ふとももがある、明太子がある。
大将:そんな風に俺はすしを握りてえ。
弟子:ふとももで?
大将:そんな風に、人生っていうのは寿司で回ってるんだ。
弟子:ずっと何言ってるんです?
大将:すしだよ、お前のこと。
弟子:……たい、しょう!!
大将:来る日も来る日も考えるのはお前と寿司のことばかり。
大将:忘れなきゃならねえ、俺も、あの国産のことを。
弟子:……でも、愛してたんでしょ、国産のこと。
大将:ああ、愛してたさ。毎日一緒に寝てた。
弟子:……クロマグロと?
大将:どこに行くのも一緒、メバチマグロなんて比べものにもならない、国産のクロマグロだ。
弟子:クロマグロと、寝てたんだ、この人。
大将:でも、ネタラレちまった。
弟子:ネトラレみたいに言ってる。
大将:俺の国産は、ネタラレて、もう、あいつらの腹の中だ。
弟子:ネタにされてるって意味なら二つの意味でネタにされてますよね。
大将:怖かった!!
弟子:私はあなたがちょっと怖くなってきた。
大将:同じように、おまえを、お前をすしだって認めちまったら
大将:同じように、また、苦しくなる日が来るんじゃないか、って。
弟子:……大将、私のこと、そんなに。
大将:でぇすしだ、弟子
弟子:きゅん。
大将:他の誰でも無い、おまえが、お前だけが、俺のでぇすしだ。
弟子:きゅんきゅーん。
大将:握って、くれるか?
弟子:いい、の?
大将:ああ、俺の用意したネタで、好きなだけ握ってくれ、俺の寿司を。
弟子:たい、しょう。
大将:お前の寿司がいいんだ、でぇすしな、お前の寿司が。
弟子:握る、握りたい、私、大将のネタ、握りたい。
大将:ネタラレて、くれるか?
弟子:いいよ、私、大将のネタで、ネタラレて、立派な寿司になる。
大将:ああ、弟子
弟子:大将っ、ああっ
大将:というわけで本日のネタはマグロです。
弟子:ひゅーう!やっぱり寿司と言えばマグロですよねぇ大将!
大将:赤くて、ぬらぬらして、ほら、みてごらん
弟子:あ、あ、すごい、これって、もしかして
大将:そうだ、言ってごらん、この、背側と腹側の身の部分だぁ
弟子:あ、だめ、そんな
大将:言えるだろ、言ってごらん、ほうら
弟子:い、言えない、あたし、そんな、言えない
大将:言わないならお預けだな、こんなにおいしそうなのになあ
弟子:やだ、お預けいや、ほしい
大将:じゃあ、言えるね、弟子
弟子:あ、あ、言う、言います
大将:これは、なんだ?うん?
弟子:……と、とろ
大将:ああっ、なんていやらしい
弟子:とろ、とろが、脂身がすごくて、ああ、大将の手の熱であぶらがとろっとろに
大将:立派だろ?なあ、よくみるんだ
弟子:立派、ああ、すごく、すごくご立派……
大将:ここはわかるか?弟子
弟子:こ、ここ?
大将:そうだ、この、間のところだ………
弟子:あ、や、やだ、そんなに、そんなに見せつけないで、中トロを見せつけないで!!
大将:そーうだー、これが中トロ、こっちがトロ、なぁんておいしそうになってるんだろうなあ
弟子:やだ、はずか、しい
大将:で、こっちが赤身ね。今日はこっち使うから。
弟子:そろそろ自分にもトロ握らせてくださいよ!
大将:赤身もきちんと握れねぇやつがトロ握ろうとすんじゃねえ!
弟子:ひん、すいません。
大将:今日は、これも使うんだ
弟子:大将、これは……?
大将:見て、わかるだろ?
弟子:すっごく、すっごく大きい
大将:そう、マグロの……中骨だ。
弟子:そ、その銀色で怪しく光るそれは……
大将:なあに、今日はこれで遊んでやろうとおもってな
弟子:や、やだ、私、怖い
大将:大丈夫、怖いのは最初だけだ、ほら、握りなさい
弟子:は、恥ずかしい
大将:握るんだ
弟子:すっごく、スプーン……
大将:いい、いいぞ、弟子、そうだ、そのまま中骨のところにスプーンをあてがって
弟子:こ、こうですか
大将:あ、ああ!ば、馬鹿野郎!そんなにおっ立てるやつがあるか!
弟子:だ、だって、やったことなくて
大将:もっと、優しく、ソフトに、そうだ、立たせるんじゃない、いいか「立たせるんじゃないぞ」
弟子:こう、ですか
大将:ああっ
弟子:た、大将
大将:ああっ、いいっ!そう、そうだ、あっ!!
弟子:こう、ですか!
大将:いい!ああ!上手いぞ、ああ、上手い、弟子、うまいぞ!
弟子:こう!ですか!!!
大将:しゅ、しゅごい!いっぱい、いっぱい出てる、中落ちいっぱい取れてるぅ!
弟子:ねえ、寿司?寿司ですか?大将、私のこと寿司?
大将:あ、ああ!寿司だ、でぇ寿司だ!こ、こんな時に言わせるなんて卑怯だっ
弟子:もっと?もっと取って欲しいの?中落ち、もっと欲しい?
大将:欲しいっ、こそいでくれ、ああ!こそいでくれ!
弟子:ほうら、こんなにこそげてる
大将:あああああ!
弟子:国産ともぉ、こうやってぇ、ネタラレてたんだ?
大将:ち、ちがう、そんなことは!
弟子:そうやって色んな人に、お前は寿司だ、お前だけが寿司だぁって言ってぇ
弟子:握らせてるんでしょ、た・い・しょ・う
大将:は、はあん、違う、そんなことない、俺はお前だけがでぇ寿司で………
弟子:ふふ、可愛い
大将:で、弟子
弟子:……ねえ、キス
大将:えっ
弟子:キス、欲しい?
大将:ほ、欲しい、キス、キス欲しい
弟子:じゃあ、どうしたらいいか、わかるよね?
大将:する、なんでもする、なんでもするからっ
弟子:じゃあ、キスの天ぷらの作り方教えてください大将!
大将:しかたねえなあ、まったく!
おわり。
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