異セカイ法廷アルラティピア(0:0:2)
【配役】
◆グレゴリアス
→異世界「アルラティピア」の法を任される番人。大きなユニコーンのような角が生えた獣人。
◆シェド
→今回、法の裁きを受ける事になったインディゴドラゴン。飛竜種。翼が大きく、青い。火を吹く。
【あらすじ】
異世界「アルラティピア」
剣と魔法のファンタジー、魔物も魔法もあるこの世界でも
法律は存在した。
「被告人、いえ、被告竜インディゴドラゴンのシェド。あなたは赤橙月ドワーフの曜日に、王国の倉庫を燃やした罪に問われている。」
「そ、そんな事我はしておらん!」
「しかし現場には君の認識首輪と、インディゴドラゴン固有の青い鱗が落ちていた、言い逃れはできないですよ」
王国の倉庫を燃やした罪で捕まった、ドラゴンのシェド。
それの罪人、いや、罪竜の罪状と罰則を決めるグレゴリアスのドタバタファンタジー法廷ヒューマンドラマ。
※ 本作品は合作シナリオです。
合作相手 → ちょみ様
【本編】
グレゴリアス:被告人、いえ、被告竜インディゴドラゴンのシェド。あなたは赤橙月ドワーフの曜日に、王国の倉庫を燃やした罪に問われている。
シェド:そ、そんな事我はしておらん!」
グレゴリアス:しかし現場には君の認証首輪と、インディゴドラゴン固有の青い鱗が落ちていた、言い逃れはできないですよ。
グレゴリアス:これらの証拠を前にしてなお認めないというのなら、何がしかの弁明があるのでしょうか
グレゴリアス:なお、していないだけでこの状況が覆ることはない。建設的な発言をするように。
シェド:しょ、証拠なんていくらでもでっち上げられるである!我々ドラゴンの認証首輪なんて王国騎士団で管理しとるではないか!
グレゴリアス:神聖なこの法廷で、でっち上げなどと宣うその度胸は買いましょう。
グレゴリアス:では、事件当時、あなたはその首輪を騎士団に預けていたと。
シェド:お主も知らぬとは言わせぬ!王国内に入る時は首輪は必ず騎士団に預けるであろう!?
グレゴリアス:ええ、存じております。では、あなたの言い分はこうですか。
グレゴリアス:騎士団が自分に罪を擦り付けるために首輪を置いたと。王国内に入る時に首輪を預けることなど、知らぬ者はいない程に常識的な規則にも関わらず、それを証拠に据えて?
シェド:……そ、そうで、ある。
グレゴリアス:騎士団がそれほどまでに浅はかで浅慮でお粗末な計画で王国の倉庫を燃やす大罪を犯したと、あなたは言うのですね。
グレゴリアス:ところで、あくまでも首輪を預けるのはあなたの情報確認のためであり、それ程返却に時間を要さないはずですが。
シェド:そ、それは……う、うぐぐぐ。
グレゴリアス:受け取りに行かれなかったのですか?
シェド:それは、その……
グレゴリアス:その?
シェド:……行って、ないで、ある。
グレゴリアス:……それは、何故。
シェド:…………か、関係ないのである、別に。
グレゴリアス:黙秘ですか。ええ、構いません。ここは法廷、被告には黙秘の権利がありますので。その行為が心象と比例してあなたの立場を悪くすると理解しているのであれば、どうぞご随意に。
シェド:う、うぐぐ。
グレゴリアス:……よろしいのですか?これはあなたの弁明のチャンスとも言えます。
シェド:ぐ、う、うぐぐぐ。
グレゴリアス:あなたがここで持っているわけがないと、自分が首輪を現場には置けないと証明できたなら、この首輪の受け取り履歴が改竄である可能性を視野に入れられました。
グレゴリアス:しかし……ここで黙秘となりますと……
シェド:食べすぎたのだ!!!!
グレゴリアス:……。
グレゴリアス:…………………………え?
シェド:…………首輪を取りに戻る前に、少し腹ごしらえと出店で食事をしたのであるッ!!
グレゴリアス:そこで食べ過ぎて、動けなくなったと言うのですか?
シェド:…………そうで、ある。
グレゴリアス:その出店の名前を覚えていますか?
シェド:それは……その……
グレゴリアス:その?
シェド:い、いくつ言えたら、いいで……ある?
グレゴリアス:……
グレゴリアス:最後の店で構いません。確認を取らせますので。
シェド:最後……最後……最後……多分…………ポイニクス亭だったと思うである。そこで、卵の詰め合わせを持ち帰りで買った、はず、である。
グレゴリアス:わかりました。確認が取れるまで休廷とします。取れ次第、再開いたします。休廷!
グレゴリアス:──あなたが赤橙月ドワーフの曜日にポイニクス亭で卵の詰め合わせを持ち帰ったことの確認が取れました。竜種は珍しいですから、そのぽこりと膨れたお腹をよく覚えていたというのが店主の証言です。
シェド:な、なんたる屈辱……
グレゴリアス:ですが、その後に倉庫に行った可能性はまだ消えていません。
シェド:そ、そんな。
グレゴリアス:何故ならあなたは竜種、その中でも珍しいインディゴドラゴン。その鱗は貴重な品と言えます。それが、現場に落ちていたのです。
シェド:そ、それこそが陰謀である!でっち上げである!おかしいであるぅ!!!
グレゴリアス:確かに鳥の羽と違い、ドラゴンの鱗というのは無理矢理に剥がさねば剥がれないでしょう。それとも、今は生え変わりの時期なのでしょうか?
シェド:そうである、丁度我々ドラゴンは、赤橙月になると脱皮ならぬ脱鱗(だつりん)があるである……
グレゴリアス:……なら、落ちていてもおかしくないのですね?あなたが、その場にいたのなら。
シェド:く、くぬぬぬぬぬ……うう、何も言い返せないである。
グレゴリアス:あなたはどうして、自分が不利になる証言をぽろぽろとしてしまうのでしょう。
シェド:えっ。
グレゴリアス:いえ、なにも。……それで、脱皮した痕などはあるのですか?
シェド:脱皮っていうなである!我は誇り高き竜族……爬虫類と一緒にするなである!
グレゴリアス:失礼、言いにくくてつい。……で、脱鱗の痕跡は?
シェド:……竜族は、抜けたと同時に新しい鱗が生えるである。
グレゴリアス:あなたはどうして、そういう補足をしてしまうのでしょう。
シェド:えっ。
グレゴリアス:では、落ちていたものがあなたの鱗である可能性は消えませんね。
シェド:はっ!あっ!
グレゴリアス:痕がないのならあなたが落としたものではないのかと思いかけましたが……そうですか。
シェド:あわわわわわわ、確かにそうであるうううう!
シェド:落としてないである!落として!ないで!ある!
グレゴリアス:どうして火を放ったのですか?
シェド:は、放った前提で決めつけないで欲しいである!
グレゴリアス:ふむ。あなたの性格から考えると、仮に黒であればここでぽろっと自供を引き出せるかと思いましたが……まだ白い可能性はありますか。
シェド:誇り高き竜族を試すなであるううう!
グレゴリアス:それでは審理を続けましょう。
シェド:怖いである、この獣人……
グレゴリアス:あなたは火を吐けますか?
シェド:当然である!我はインディゴドラゴンの次期族長になれるかも知れないと噂された事もあるかもしれないドラゴンぞ!
グレゴリアス:放火も可能、と。
シェド:だ、だから決めつけるなである!
グレゴリアス:これは決め付けではありません。条件があまりにも合致しているのです。
グレゴリアス:けれど、決定打に欠けます。
グレゴリアス:火は吐けども嘘を吐けなさそうなこの被告竜が、ここまで頑なに否定できるのは何故なのかと……どうしても引っ掛かりを覚えてしまうのです。
シェド:……う、うぐ。
グレゴリアス:何か隠し事はありませんか?
シェド:…………ナイデアル。
グレゴリアス:あるんですね。
シェド:な、無いって言ってるである!
グレゴリアス:ご存知ですか?
シェド:な、なんである。
グレゴリアス:先程からあなたの立派な尾が、随分雄弁に語っていますよ。
シェド:えっ!えっ!?
グレゴリアス:ピンと伸びたり、丸まったり、ぱたぱたと小さく跳ねたり。
グレゴリアス:明らかに隠し事がある動きをしています。
シェド:そそそそそそ、そんな事ないである!こ、これは竜族特有の……その……はう。
グレゴリアス:特有の?
シェド:特有の……特有のぉ……
グレゴリアス:……
シェド:思いつかないである……
グレゴリアス:私は法の番人。決してあなたの敵ではない。これは正しさを追求しているに過ぎません。ポリシーに則っているに過ぎません。
グレゴリアス:ここに、あなたを貶めようだとか、とりあえず手頃でちょろそうなのを仕立て上げようだとか、そういった意図はありません。
グレゴリアス:ただ、あなたがそうして秘匿するのであれば、今ある情報で私は判決を下さなければならない。
グレゴリアス:この意味がわかりますか?
シェド:……わかるで、ある。
グレゴリアス:それで、構いませんか?
シェド:あ……う……うう……
グレゴリアス:被告竜、シェド。
シェド:……はい、である。
グレゴリアス:私は、正直は美徳と考えます。
グレゴリアス:隠さなければならない理由があるのですか?
シェド:……これを説明して、信じて貰えるとは、思わないのである。
グレゴリアス:あなたの言葉はしょうもないものばかりでしたね。
シェド:うっ……
グレゴリアス:けれどそこに嘘はひとつもないと感じています。
シェド:……本当であるか?
グレゴリアス:ええ、尾は口程にものを言いますから。
シェド:こ、この!バカ正直なしっぽめ!
グレゴリアス:バカ正直な方が信用に値することもあるのです。
グレゴリアス:語ってみてはくれませんか?もし、信じられるかどうかだけが問題なのだとしたら。
グレゴリアス:言うだけタダでしょう?信じられなかったとて、現状に変わりはないのだから。
シェド:……わかったのである。
グレゴリアス:それでは被告竜、証言を。
シェド:……我は、火を吹いたのである。
グレゴリアス:ええ、それで?
シェド:……卵を、温めて、食べようとしただけなのである。そしたら、
グレゴリアス:……そうしたら?
シェド:倉庫の壁にも、火があたっていて……で、でも!
グレゴリアス:ええ、続けてください。
シェド:でも、でも!我はちゃんと、ちゃんとその火を消したのである!少し、壁は焦がしてしまったけれど……でも!我は、きちんと消したのである!
グレゴリアス:そうですか、……そうですか。ありがとうございます。あなたの罪は燃やしたことではなく、焦がしたことだったのですね。
シェド:うう……焦がしたのは、事実であるから……後ろめたくて……
グレゴリアス:その現場を見ていた方はいましたか?
シェド:わからないのである……焦ってて……出店で買った卵も置いてきてしまうくらいであったから……
グレゴリアス:……現場に卵はありませんでしたね。
シェド:……え?
グレゴリアス:現場で見つかったのは首輪と鱗だけ。勿論、燃えてしまったという可能性もありますが。
シェド:なるほど、である。
グレゴリアス:ちなみに、……何の卵を?
シェド:わからないである。ただ店主におすすめと言われて買っただけで……
グレゴリアス:それは食用ですか?
シェド:食用……ではない卵も売ることがあるのである……?
グレゴリアス:広い意味では食用でしょうが……なにせここには様々な種族が暮らしています。加工されたものを好むものもいれば、生き餌を好む種もいる。卵のまま食べるもよし、産声をあげたあとを食べるもよし。そういう卵があってもおかしくはありません。
シェド:……でも、その卵が、どうだって言うのである?
グレゴリアス:竜はいつから火を吹けるのですか?
シェド:個体差にもよるであろうが……産まれた時から火を吹く種もいるであろうな……
グレゴリアス:……仮にあなたが忘れた卵が竜の卵だったとしたら。
グレゴリアス:あなたは、卵を温めたのですね?
シェド:……そ、そんなはずは。りゅ、竜族の卵は、売買が禁止されているはずである!
グレゴリアス:そうですね、ええ。もしかしたらあなたが食べすぎでぽんぽこなのを見て、すぐには食べないだろうと一時的に預けるつもりだったのかもしれません。
グレゴリアス:仮にあなたが持っているのがバレたとして、ドラゴンがドラゴンの卵を持っていてもおかしな話ではありません。
シェド:あ、預ける……なんのために!
グレゴリアス:売買が禁止されているのですから、検閲を免れるため、とか。
シェド:……じゃあ、なんでその卵が、無くなってるのである?
グレゴリアス:店主とどんな話をしたか、覚えていますか?
シェド:えっと……なんだったかな、である……会話はしたである。
グレゴリアス:覚えていませんか?
シェド:う、ううーん……あ。
グレゴリアス:……なにかありますか。
シェド:やたら種族を聞かれたのである、最初。
グレゴリアス:これは、どうやら。あなたよりも話を聞くべき相手がいるようです。
シェド:我よりも……?
グレゴリアス:ええ、その店主です。先程話を聞かせに行きましたが、それから姿をくらませていないといいのですが……
シェド:我は、何かに利用されたのである?
グレゴリアス:まだ確たる証拠は出ていません。無いことの証明というのは難しいのです。
グレゴリアス:あなたが無罪であるかは現状わかりません。ただ、他に有罪の誰かがいたのなら、話は違います。
シェド:……我は、どうなってしまうのである。
グレゴリアス:あなたがただ利用されたのだと証明されれば無罪。
グレゴリアス:そうでなければ、他に候補がいない以上あなたは残された証拠を元に有罪とされるでしょう。
グレゴリアス:しかし、今それを判じることはできません。この判決は、先送りといたします。
シェド:……卵は、どうなったである?
グレゴリアス:あなたが卵を温めたことで孵化をした。生まれた命が産声代わりの火を吹いたとしたら、消すなんて考えには至れなかったでしょう。
シェド:……でも、それじゃあひとつ、納得のいかない事があるである。
シェド:卵が孵化をした、新たな小竜が産まれそれが火を吹いた、そこまではわかるである。
シェド:……なんで、我の認証首輪がそこにあったのである?
グレゴリアス:ふむ、それは確かに疑問点ですね。あなたは首輪を取りに行かなかった。騎士団が所持していなければおかしい。容易く複製できるものでもありません。
シェド:そうである。鱗は……我のものかも知れないが……首輪は、首輪はおかしいである!
グレゴリアス:その店主への聴取にて、あなたがその時点で首輪をしていなかったことは確認しました。あなたが首輪を取りに行く前だったのは大前提として、確証を得たかったので。
グレゴリアス:候補は二つ。騎士団の誰か、あるいは他の誰かがあなたを騙る、もしくは代理を装い受け取った。
シェド:そんな、そんなの、一体なんのために……
グレゴリアス:あなたのような素直で無防備なカモ、濡れ衣を着せるには確かに丁度いいのでしょうが。
グレゴリアス:それこそあなたが最初に言ったように、お粗末すぎる。
シェド:が、がふっ。
グレゴリアス:……あなたが裁かれずとも良かった。
シェド:偉大なるインディゴドラゴン族の、恥になってしまうである……うう……
グレゴリアス:そう、あなたの種のネームバリューは素晴らしいものです。そしてその鱗は価値が高いと言いましたね。
グレゴリアス:この裁判が始まる前の留置所で、あなた幾つの鱗を落としました?
シェド:えっ、う、うーん、多分5つほど……?一々数えてないである……。
グレゴリアス:その5枚の価値が分かりますか?
シェド:ど、どれくらいなのである?
グレゴリアス:その鮮やかなインディゴブルーは装飾、縁起物として様々な需要があり、魔法も打撃も弾く竜の鱗自体の価値が高い。そしてインディゴドラゴン自体の数が少ない。つまり、貴重な素材なのです。
グレゴリアス:1枚100万は下らない。
シェド:ひゃ、ひゃくまん!!!???
シェド:我の価値って、そ、そんなに高いのである……!?
グレゴリアス:ええ。自覚がないのですか?種族のプライドはあるのに。
シェド:お、お主は獣人であろう?
グレゴリアス:ええ、そうですね。
シェド:さすればお主にも換毛期があるであろう!?
グレゴリアス:毛は鱗ほど一本の価値はありません。それに、毛よりも需要があるのは毛皮。となると皮から剥がれますから私は死ななければなりません。
シェド:あ、ぬぬぬ、そういう話がしたかったわけじゃないであるが、くぬぬ。結果的に我のこと浅はかって言っている気がするである……。
グレゴリアス:強いて言うならこの角ですか。伸びすぎると折って研磨しますから、それは様々な需要がありますね。
シェド:うう……自分の身体の価値をちゃんと把握していなかったの、我の落ち度……?
グレゴリアス:あなたがこうして問答を続けるさなかにも、鱗は生え変わる。掃除を担当される方は大儲けというわけですね。
シェド:う、うう、自分が馬鹿みたいであるぅ……!
グレゴリアス:騎士団内でも持ち物検査をする必要がありそうですね、これは。
シェド:我は、我はどうなるのである~……もう恥ずかしくて里に帰れないである~
グレゴリアス:様々な可能性が浮上した以上、あなたを現時点で裁くことはできませんので留置所に帰っていただきます。二審にて、またお会いしましょう。
シェド:に、二審~?!?
グレゴリアス:安心してください、それまでにあなたの無実が確定している可能性は非常に高い。
グレゴリアス:……あ、落ちた鱗はちゃんと回収することをオススメしますね。
シェド:き、気をつけるである!
グレゴリアス:では、現時点、証拠不十分につき、被告竜インディゴドラゴンのシェドは無罪とする。
グレゴリアス:これにて閉廷!
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