インタールード・オーバーミント・ハニーバター(0:0:2)
【配役】
◆メイヴ:
元・天才役者。国立劇団座長。メイヴ・ハーティ。 作中男性だが、性別は不問とする。
◆ウィンストン:
元・売れない画家。まだ、レストランの給仕。ウィンストン・パノマール。 作中男性だが、性別は不問とする。
すべての創作者と、すべての表現者へ。
メイヴ:なあー、ウィンストン、このワインもう無いのかよー
ウィンストン:まだ飲むの?
メイヴ:飲む!
ウィンストン:ははは、明日の予定大丈夫?
メイヴ:明日はオフなはず、絶対、多分、おそらく
ウィンストン:もー、できあがってるなあ、本当にオフ?
メイヴ:自信なくなってきた……
ウィンストン:スケジュール帳持ってきてる?
メイヴ:ある!鞄!鞄の中だ!
ウィンストン:はいはい、開けるよ?
メイヴ:たのむー、うー、久々に気持ちいいなあ
ウィンストン:あった、これだね。んー、うん、明日は確かにオフみたい。
メイヴ:よし。やったな。
ウィンストン:じゃあ、もう少し飲もうか。
メイヴ:そうこなくちゃ。
ウィンストン:最悪泊まってく?
メイヴ:いいのか?
ウィンストン:うん、リリィは今日はお義父さんのところだし。
メイヴ:じゃあ、甘えちゃおうかな~
ウィンストン:じゃあ、ワインとってくる
メイヴ:ナイス、ウィンストン
0:冷蔵庫をあけ、ワインを持ってくるウィンストン
ウィンストン:おいしい?これ
メイヴ:おいしい、甘くて、飲みやすくて、なんだ?これ
ウィンストン:ランブルスコってワインの、ロゼ。
メイヴ:シラフの時にもう一回教えてくれ。
ウィンストン:はは、いいよ
メイヴ:久々に酔っ払ってるよ
ウィンストン:毎回酔っ払ってはいるじゃない
メイヴ:「こんなに」って意味!さっしてくれ~
ウィンストン:はいはい、わかってるって
ウィンストン:ところでさ、メイヴ
メイヴ:なんだ~?
ウィンストン:スケジュール帳みたとき、昨日の日付に星のマーク書いてあったけど、あれってなに?
メイヴ:あー、ふふ、あー、あれね
ウィンストン:にやにやしてる
メイヴ:へ、へへ、へへへ
ウィンストン:い、いつになく嬉しそうじゃない?
メイヴ:嬉しいんだよウィンストン、聞いてくれるか
ウィンストン:もちろん、聞かせてもらいますとも
メイヴ:昨日はさ、次の公演のさ、ゲネプロだったんだよ
ウィンストン:ゲネプロってなんだい?
メイヴ:本番前のリハーサル、みたいなものかな
ウィンストン:リハーサルとは違うの?
メイヴ:止めないんだよ、ゲネプロは、本番と同じようにな、通しでやる
ウィンストン:あー、なるほど、本番と思ってやるリハーサルってこと?
メイヴ:そう、そういうこと
ウィンストン:はいはい、わかった、ごめん、話の腰を折っちゃって
メイヴ:いいよいいよ、それでな、今回はこの間の劇団内コンテストで決まった脚本を演じる事になってるんだが……
ウィンストン:うんうん
メイヴ:俺とクロードは、演出側なんだよ、今回
ウィンストン:へえ!裏方なの?
メイヴ:ああ、それでな、ふふ
ウィンストン:なんだい、もったいぶらないでよ
メイヴ:クロードがな、あの日以来はじめて、反発してきたんだよ
ウィンストン:反発?
メイヴ:そう。意見を出したって言うのが、正しいと思うんだけどさ
ウィンストン:……ほう!
メイヴ:「この配役で行くなら、メイヴさんの言う演出プランだと良さが出ません」って、面と向かってさ、言ってきたんだよ
ウィンストン:うんうん、それでそれで?
メイヴ:俺ぁ、なんか、じーんと来ちまったね
ウィンストン:ふふ、じーんと?
メイヴ:そお!じーんと!
ウィンストン:嬉しいね
メイヴ:嬉しいよ
ウィンストン:ずっとニヤニヤしてるもんね
メイヴ:そ、そうか?
ウィンストン:そうだよ、ずっとだ
メイヴ:……うれしいもんだよな、こうやってさ、対等に意見を言ってもらえるってのは
ウィンストン:ふふ、本当だねえ、あのクロードが、ねえ
メイヴ:……やば、なんか鼻につーんときたかも
ウィンストン:泣きそうになってるじゃない、ははは
メイヴ:う、うるへー、いいだろ別に
ウィンストン:いいよ、全然、ふふ、そっか、クロード、頑張ったんだね
ウィンストン:ずっと言ってたから、憧れたら対等じゃない、って。
メイヴ:……あいつの方が凄いんだけどな
ウィンストン:君達お互いに尊敬しあってるよね、実際は
メイヴ:そりゃ、そうだろ、あいつは天才だからな
ウィンストン:ふふ、クロードもずっと君はすごいって言ってるよ
メイヴ:……ありがたすぎる言葉だよ、それは
ウィンストン:……クロードだもんね、メイヴが辞めようとした理由
メイヴ:辞めようとしたんじゃないよ
ウィンストン:ん?
メイヴ:辞めたんだよ、実際。
ウィンストン:あ、そっか!そうだったね!
メイヴ:あの時は、お前にも沢山迷惑も心配もかけたよな
ウィンストン:だね、メイヴ、あの後マグカップ割るんだもん!
メイヴ:し、仕方ないだろ、よく見えてなくて
ウィンストン:二人して泣きはらして段ボール開けて回ったもんね
メイヴ:しばらく片付けが大変だったな
ウィンストン:ね、それも懐かしい思い出だよ
メイヴ:……あの後のシルバさんの言葉が忘れられなくてな
ウィンストン:前の座長さん?
メイヴ:そ。後先考えず急に予定変更しまくる鬼の偏屈魔神。
ウィンストン:情報が多すぎてよくわかんないよ!
メイヴ:はは。すごく勝手で、言葉が足りなくて、天才の人だよ
ウィンストン:ふふ、メイヴみたいじゃない
メイヴ:あ、こいつ!
ウィンストン:あははは!師匠と弟子は似ていくって本当なんだなぁ
メイヴ:く、くそ、言い返せない
ウィンストン:君とクロードも似てきたよ
メイヴ:そ、そうか?
ウィンストン:この間のお化け屋敷なんて、ぷぷぷ、今思い出してもそっくり
メイヴ:わ、笑うなよ!
ウィンストン:笑うでしょ!普段はかっこいいって言われる君があんなに人間くさくなるんだもの
メイヴ:う、ううう
ウィンストン:ああいう所、いっぱい見せてあげなよ、皆にも
メイヴ:……善処、する。
ウィンストン:うん、そうした方が良い、きっとね
メイヴ:……似て、きてるか?
ウィンストン:そうだよ、似てきてる。怖がりな所は最初からなんだろうけどさ。
メイヴ:それは関係ないだろ!
ウィンストン:あははは、話も脱線しちゃった、前の座長さんの残した言葉って?
メイヴ:あ、ああ、そうだった。
メイヴ:……他人を舐めるな、ってさ。
ウィンストン:他人を舐めるな?
メイヴ:そう。驕ってたんだよな、俺は、ずっと。
ウィンストン:驕ってた?
メイヴ:ああ、自分には演技の才能がある、国立劇団の花形なんだ、ってさ。
ウィンストン:……そっか。
メイヴ:「才能があるか無いか」なんてさ、実は「スタートラインがどこなのか」ってだけの問題なんだよ。
ウィンストン:スタートラインかあ。
メイヴ:うん。頂上を目指すとき、どこから始まるのか。ただそれだけ。
メイヴ:才能があるからって、努力しなくていいなんてことにはならない。
メイヴ:抜かれたり、抜かしたり、真似たり、真似られたり。
メイヴ:それを、繰り返してさ、俺らは高みを目指していくのに。
ウィンストン:……踏みにじられたって、駄々をこねる。
メイヴ:そういうこと。
メイヴ:……見抜かれてたんだよな、あの人には。
ウィンストン:……でも、君がやめたくなっちゃったのは、誤算だったんじゃない?
メイヴ:……どうだろうな、誤算って思ってくれてたらいいけど。
ウィンストン:けど?
メイヴ:あの人俺が戻ってくるの、分かってたんじゃないかな。
ウィンストン:なんで?
メイヴ:俺の退団届け、破り捨ててあった。
ウィンストン:……じゃあ、そうなのかもね。
メイヴ:そうなのかも、な。
ウィンストン:ねえ、素朴な質問、してもいい?
メイヴ:なんだ?
ウィンストン:そうだな、もし、もしもね。
ウィンストン:クロードが、退団したいって言ったら、どうする?
メイヴ:……座長として?
ウィンストン:そう、座長として。
メイヴ:理由にもよるだろ。
ウィンストン:ああ、そっか。じゃあ、君と同じ理由だとして。
メイヴ:……止めないかな。
ウィンストン:止めないんだ?
メイヴ:……くそ、シルバさんと同じだなこれじゃ。
ウィンストン:ふふ、そうだね、確かに。
ウィンストン:退団届けは?
メイヴ:……破り捨ててるな。
ウィンストン:あはは、同じじゃない。
メイヴ:……ちょっともう一杯。
ウィンストン:ちょっとー?座長さーん?
メイヴ:いや本当に、本当にうまいんだ、これ。
ウィンストン:気に入ったみたいで良かったよ。
メイヴ:……はー、酒の勢いだから言うんだけどさ。
ウィンストン:いいよー、なんでも聞くよー。
メイヴ:……「他人を舐めるな」って、「他人を信じろ」って意味でも、あるんだよな、きっと。
ウィンストン:……いい解釈だね、それは。
メイヴ:……信じたい、の方がちかいのかな。
ウィンストン:そうかも。
メイヴ:……俺は、皆のこと、信じたいんだな。
ウィンストン:いい気付きじゃないか。
メイヴ:……エコーって、居るだろ?
ウィンストン:ああ、あのピアニストの子かい?
メイヴ:そう、あけすけでさ、破天荒で、物言いも悪いあいつ。
ウィンストン:リリィと仲良しになってたね、この間の飲み会で。
メイヴ:なってたな、そういやあ
ウィンストン:物怖じしなくて、人によって言葉を変えられて、でも芯の通ったいいこだよね。
メイヴ:生意気だけどな。
ウィンストン:そこが可愛いとこだって、思ってるくせに。
メイヴ:……まあな。
ウィンストン:その子が、どうしたの?
メイヴ:……顔、腫れてたろ。
ウィンストン:……腫れてたね。
メイヴ:言わないんだよ、あいつら。
メイヴ:「ワークショップ」で何があったのか。
ウィンストン:……頑なに?
メイヴ:頑なに。
ウィンストン:そっか、じゃあきっと、何かあったんだね。
メイヴ:……多分な。
ウィンストン:……どうにか、したいの?
メイヴ:……した方がいいかな、って、思ったんだよ。
ウィンストン:うん。
メイヴ:……でも、やめた。
ウィンストン:……ふふ、そっか、なんで?って聞こうか?
メイヴ:……あいつらを信じてやりたくてな。
ウィンストン:……座長らしく、なってきたねえ!メイヴ
メイヴ:なれてるかな、座長らしく。
ウィンストン:なれてるさ。新生国立劇団、座長!
メイヴ:……今でもたまに迷うんだよ。
ウィンストン:……体制を、変えたこと?
メイヴ:そう。
ウィンストン:迷うけど、後悔はしてないだろ?
メイヴ:……そう、だな。
ウィンストン:じゃあそれは、問題じゃないよ。
ウィンストン:きっとその迷いは、正しかったかの迷いじゃないんだ。
メイヴ:じゃあ、なんの迷いなんだよ。
ウィンストン:「開拓」の迷いさ。
メイヴ:開拓、ねえ。
ウィンストン:道無き道を歩むんだ、これから。
メイヴ:……そう、だな。
ウィンストン:……「人生」ってさ。
メイヴ:うん?
ウィンストン:……これから歩む道のことを、指さないんだ。
メイヴ:じゃあ、何を指すんだ?
ウィンストン:「今まで、歩んできた道のりや足跡」を、人生って呼ぶんだと思うんだよ。
メイヴ:……そうだな。
ウィンストン:いつだってその足跡は、何かを始めるときの初めの一歩だったはずなんだ。
ウィンストン:初めの一歩が、連なって、増えていって、いつの間にかそれが人生になってる。
メイヴ:……広大な人生の、一歩だな。
ウィンストン:うん。それを、その初めの一歩を、君は真っ白な白銀の山道に、方向を向けたのさ。
メイヴ:だから、迷ってるんだな、俺は。そこに、誰の足跡も無いから。
ウィンストン:そういうこと。
ウィンストン:今から、君だけのエベレスト踏破の道がはじまるのさ。
メイヴ:悪くないかもな。
ウィンストン:悪くないよね。
メイヴ:んはー、なんか、いいな、今、すごく。
ウィンストン:いいね、なんかすごく。
メイヴ:……いい劇団に、するんだ。
ウィンストン:ふふ、なってるよ、今でも。
ウィンストン:……メイヴさ、「運命の相手」って信じる?
メイヴ:なんだよ、藪から棒に。
ウィンストン:信じる?
メイヴ:はいはい、信じるよ、お前とリリィなんてまさしくそんな感じだもんな。ご馳走様。
ウィンストン:そ、そういうことが言いたいんじゃなくてぇー!
メイヴ:最近よくのろけるねえ、ウィンストン先生は。
ウィンストン:だから違うの!そーじゃなくてー!
メイヴ:はは、ごめん、からかっただけ。
ウィンストン:も、もー!
メイヴ:「運命の相手」?
ウィンストン:そう、運命の相手。
メイヴ:そりゃ、いるだろうな、茶化すわけじゃなく、あんなドラマティックな出会いそうそうないだろ?ウィンストン。
ウィンストン:れ、恋愛も、そうなんだけど。
ウィンストン:……僕と君だって、運命の相手だろ?
メイヴ:あー、そういうことか。まあ、そうだなあ。
メイヴ:そう言われれば、運命の相手は尚更いるな。
ウィンストン:これって、ばっちりパズルのピースが合わさる相手って意味に思いがちじゃない?
メイヴ:実際そうじゃないか?
ウィンストン:……うーん、僕は最近はそう思わないんだ。
メイヴ:へえ?聞かせて欲しいな、それは。
ウィンストン:「なっていく」んじゃないかな、運命の相手っていうものに。
メイヴ:「なっていく」?
ウィンストン:そう。
ウィンストン:例えば僕たち、最初の出会い覚えてる?
メイヴ:……ろくろ争奪スマッシュブラザーズ。
ウィンストン:あははは。そう言われてたよね、そんなゲームが流行ってた時期だったし。
メイヴ:今思い出しても恥ずかしいな。
ウィンストン:……あの時って、パズルのピース、ハマってた?
メイヴ:……どちらかの言うと、嫌いだったな。
ウィンストン:今は?
メイヴ:……なにが。
ウィンストン:今はどう?
メイヴ:……わかるだろ?
ウィンストン:言わないと分からないこともあると思わない?
メイヴ:お前結婚してからなんか余裕出てきたよな。
ウィンストン:あはは。奥さんがそういうのちゃんと言って欲しいひとだから!
メイヴ:くー……英才教育までしてるのか、リリィは。
ウィンストン:日々コレ精進だからね。で、今は?
メイヴ:……好きだよ。
ウィンストン:僕もすき!
メイヴ:改めて言うとむず痒いだろこういうの!
ウィンストン:あはは、たまにはいいじゃない!
メイヴ:はー!熱い!めちゃくちゃ熱い!
ウィンストン:……昔と今で、違うでしょ?
メイヴ:ふー……まぁ、確かに、そうだな。
ウィンストン:だからね、運命の相手っていうのは、育てていくものなんだよ。なっていくもので、見つけるだけじゃダメなんだ。
メイヴ:……いいこと、言うなあ、ウィンストン。
ウィンストン:ふたりきりだからね、なんか懐かしいね、こういうの。
メイヴ:そうだな、ふふ。
ウィンストン:……君の劇団員たちは、君によく似てきてるよ。
メイヴ:……そうかな。
ウィンストン:そうさ。きっとそこには沢山のドラマティックがあって、たくさん、君の運命と重なっていくんだよ。
メイヴ:なら、しっかりしなきゃな。
ウィンストン:ふふ、しっかりしなくたっていいよ。
メイヴ:ダメだろ?座長がしっかりしなきゃ。
ウィンストン:それは「前座長」の道だろ~?
メイヴ:……そっか。
ウィンストン:弱いところも、ダメなところも、見せたらいいんだよ、メイヴ。
メイヴ:……怖がりな所とか?
ウィンストン:……実はスナック菓子好きな所とか?
メイヴ:……結構短気なところとか?
ウィンストン:それは多分皆知ってる。
メイヴ:おい。
ウィンストン:あはは。……挫折を、味わったことがあることとか。
メイヴ:……諦めたのに、諦めきれなかった演技バカなところとか?
ウィンストン:あはは、いいねえ!
メイヴ:言われたよ、エコーに、演技バカだ、って。
ウィンストン:伝わってるじゃない。君のいい所も、弱いところも。
メイヴ:……恥ずかしいけどな。
ウィンストン:弱い所を見せることができる人の方が、強いだろ?
メイヴ:……そうだな、そう思うよ、ウィンストン。
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