Ghost note(0:0:2)
【配役】
◆メイヴ:
元・天才役者。国立劇団座長。メイヴ・ハーティ。
作中男性だが、性別は不問とする。
◆エコー:
国立劇団に出没するピアニストの幽霊(?)エコー・フォン・ベスティアンブラーヴェン。
作中女性だが、性別は不問とする。
【詳細】
ジャンル:ヒューマンドラマ
配役:性別不問2名
時間:約20分
すべての創作者と、すべての表現者へ。
【本編】
メイヴ:ほ、ほほほほ、本当に出た!!!!!
エコー:出たとはなんだ失礼な奴だ。勝手に私の演奏を盗み聞きとは。
メイヴ:か、勝手にって、ここをどこだと思ってるんだ!?
エコー:国立劇団であろう?
メイヴ:わかってるじゃないか!
エコー:それがどうしたというのかね?
メイヴ:ふ、ふんぞりがえってやがる……。
エコー:ふんぞりがえるも何も、貴様の頭が高いだけだ。
メイヴ:え、偉そうに……。
エコー:当然だ、私を誰だと思っている?
エコー:このピアノの持ち主、いいや、守護霊と言っても過言ではない。
エコー:エコー・フォン・ベスティアンブラーヴェンとは私のこと。
メイヴ:や、やっぱり幽霊、幽霊だ、幽霊が出た、幽霊なんだな!?
エコー:いかにも。私が幽霊だ。
メイヴ:で、で、で、でたあああああ!
エコー:……ふむ。
メイヴ:やばいやばいやばい、クロード、本当に出た、やばい、スマホ、ああっ
メイヴ:スマホどこだ、やばい、手が震えて……
エコー:ばあ!
メイヴ:ひ、ひい!!
エコー:にゃははは。面白い奴。
メイヴ:じょ、成仏してくれ、成仏、アーメン、ナムアミダブツ、主よ、どうか許しを……!!
エコー:まあ待て、座長殿。何も取って食おうという訳では無い。
エコー:私はこのピアノ以外何にも干渉することもできない、ほこり一つ動かすことさえできないさ。
メイヴ:な、何が目的だ、ああ、神よ、なんてことだ、なんてこった。
エコー:落ち着けと申しておるだろう、座長殿。
メイヴ:は、はい。
エコー:もう一度言うぞ、座長殿。私は何も貴殿を取って食おうというわけではない。
エコー:今宵、少しばかり月明かりが綺麗だったものでな……守護霊らしく、ピアノの音色が聞きたくなったところだったのだ。
メイヴ:そ、そうですか。
エコー:なぜ敬語だ。
メイヴ:え……
エコー:貴殿はここの座長であろう、もっと堂々としたまえ。
メイヴ:そ、そうか、それもそう、だな。
エコー:よろしい。
メイヴ:……本当に幽霊?
エコー:幽霊かどうかがそこまで重要かい?まったく、役者というものは。
メイヴ:な、何がだよ。
エコー:普段存在しない何かを演じておきながらやれリアリティだの、本物だのにこだわるくせに。
エコー:いざ本物に出逢うと、そんな風に弱腰となる。もっと貪欲に目の前のリアルを受け入れたらどうかね?ん?
メイヴ:幽霊に説教されたのは流石に初めての体験すぎる……。
エコー:貴重な体験おめでとう。にゃはは。
メイヴ:……ありがとう?
メイヴ:そ、それにしても、私がここの座長で在ることを把握してるのか?
エコー:当然だ。なんなら貴様の家の場所も言い当ててやろうか?
メイヴ:やめてくれ、怖すぎる。
エコー:チャイが好きなのだろう?うん?
メイヴ:やめてくれ怖すぎる!
エコー:にゃはは。
メイヴ:……エコー、フォン、なんて言ってた?さっき。
エコー:む。聞いてなかったのか。
メイヴ:め、面目ない。
エコー:まあいい、私は寛大な守護霊であるからして。
エコー:もう一度、ホスピタリティの心で名乗って差し上げようではないか。
メイヴ:そりゃ、どうも。
エコー:我が名は、エコー・フォン・ベスティアンブラーヴェン!
エコー:音楽の名家、ベスティアンブラーヴェン家に生まれし、時代の麒麟児、ピアノの神童とは私のこと!!!
エコー:さあ、覚えて帰るがいい、私のこの輝かしい名前を!
エコー:エコー・フォン・ベスティアンブラーヴェン!はい、復唱して!
メイヴ:え、エコー
エコー:横着するなすべて復唱しろ!はい!エコー・フォン?
メイヴ:エコー、フォン
エコー:ベスティアンブラーヴェン
メイヴ:ベスティアンブラーヴェン
エコー:素晴らしい、ブラボー、エクセレント。これで貴殿は二度と私の名前を忘れないであろう。
エコー:私も貴殿の事は忘れない、メイヴ・ハーティ、かつて天才と謳われた名俳優!
エコー:若くして国立劇団の座長となった貴殿のことを、私は!そう私は!特別に覚えていてやろう!
メイヴ:は、はあ。
エコー:さあ、それではこの劇的な出逢いも名残惜しいがここいらでお開きとしよう!
エコー:出口はあちらだ、アヂュー・フォーエバー・ベストフレンズ。
メイヴ:なぜお前が仕切る。
エコー:ちっ。それもそうだ、じゃあ、構わない、主導権は君に返そうじゃないか。
メイヴ:……なんか偉そうだな!?
エコー:それもそうだろう?メイヴ・ハーティ、私は天才ピアニスト。しかもキミよりも何百年も魂の先輩ということになる。
エコー:もはやこれは偉そうとかではない、こうあって当然ということだ。どうだね?うん?
メイヴ:なんだかお前のその「いい性格」のおかげで怖くなくなってきたよ、ありがとう。
エコー:にゃはは、もっと褒めてもいいぞ。
メイヴ:皮肉で言ってるんだよ。
エコー:なんだ、皮肉だったのか。
メイヴ:はあ。なんだか急にどっと疲れが……腰が砕けてる。
エコー:存外弱虫なのだな?メイヴ・ハーティ。
メイヴ:うるさいな、誰だって怖いだろ、こんな深夜に人の居ない倉庫からピアノの音だぞ?
エコー:そういうものか?
メイヴ:そういうものだ。
エコー:もっと寛大でなければならぬよ、劇人よ。
メイヴ:幽霊に言われたくないな。
エコー:幽霊だから言える事もあるであろうよ。と言えば、そうさな。いい機会だ。
メイヴ:いい機会?
エコー:なあ、メイヴ・ハーティ。
メイヴ:なんだ、幽霊。
エコー:幽霊、ではない。エコー・フォン・ベスティアンブラーヴェンだ。
メイヴ:そう呼ぶには長すぎる。
エコー:ならエコーでもいい。
メイヴ:……ふー、なんだ、エコー。
エコー:貴様の率いる「国立劇団」だがな。
メイヴ:……なんだよ。
エコー:一流の俳優が揃い、一流の脚本家が集まり、最高の劇を演出している、そうだな?
メイヴ:……それが、国立劇団だからな。
エコー:「最低の集団」だな。
メイヴ:……なんだって?
エコー:最低の集団であると言ったのだ、座長殿。
メイヴ:オーケー、この幽霊は喧嘩がご所望らしい。
エコー:喧嘩でもなんでもござれだ。天才ピアニストとして貴殿にはもの申してやろう、国立劇団は「くその掃きだめ」であると。
メイヴ:言ってくれるじゃないか。どうすればいい?塩でも撒いてやろうか?
エコー:そんなもの、いくらでも撒いてみたらいい。
エコー:塩をいくら撒こうが、ここが「チンパンジーのバナナ置き場」で在ることに変わりはない。
メイヴ:お前とんだ厄介者だな?
エコー:褒めるな、照れる。
メイヴ:褒めてない。
エコー:なんだ、褒めてないのか。
メイヴ:くそ、調子が狂うな。
エコー:このままでは、この国立劇団はお前の代で終わるであろうな、退廃の王よ。
メイヴ:さっきから言わせておけば実に失礼なもの言いをしてくれるじゃないか、エコー。
メイヴ:なんだ?お前に何がわかる?お前は役者か?俳優だったのか?ピアニストだろう?
エコー:はん!笑わせてくれるなあ、メイヴ・ハーティ!
エコー:その通りだ、私は天才ピアニスト、時代の麒麟児。
エコー:だからこそ、このクソミソ集団の腐りきった部分に物言いができようとも!
メイヴ:……国立劇団は、クソミソ集団なんかじゃない。
エコー:ほう?
メイヴ:全員、信頼のできる役者だ。裏方に回る団員も、受付を担当する人間も、もちろん脚本家も!
メイヴ:全員が、信頼できる優れた団員しかいない。
メイヴ:「演技」をするに置いて、誰一人妥協のない、優れた団員だけだ。
エコー:にゃはははは!
メイヴ:……何がおかしい?
エコー:そうだろうね。
メイヴ:……は?
エコー:そうなんだろうね、国立劇団っていうのは。
メイヴ:なにがだ?
エコー:わかんないんでしょ。そうだよね。
メイヴ:何がだと言っている!
エコー:メイヴ・ハーティ。あんたは「演技」の天才だよ、きっと、それを指導することすらも天才じみているのかもしれない。
エコー:でも、「芝居」じゃない。
メイヴ:なにを。
エコー:「演技」ができても、それは「芝居」じゃないのだよ、メイヴ・ハーティ。
メイヴ:「演技」ができても、「芝居」じゃ、無い……?
エコー:そうだ。あんたら国立劇団の「演技」は確かに最高だ。
エコー:どの劇団も、どんな役者も、ここを目指したくなるほどに、ここは一流で
エコー:ここが、そう、あんたらが言う「エベレスト」、目指すべき「踏破すべき存在」なのは間違いない。
メイヴ:……。
エコー:だけどね。メイヴ・ハーティ、座長殿。
エコー:あんたの劇団に足りないのはただ一つだ。
メイヴ:何が足りないっていうんだ。
エコー:わからない?
メイヴ:……わからないな。
エコー:わかってよ。
メイヴ:無茶を言うな。
エコー:怒ってる?
メイヴ:当たり前だろ!!!
エコー:……だから、誰も意見しないんじゃない?
メイヴ:な……。
エコー:今、座長殿、貴殿に意見できる人間は、誰がいるのかね?うん?
メイヴ:何を言って……。
エコー:忌憚(きたん)なく、君達が作り上げる「表現」に。「創作」に。
エコー:もの申すことのできる人間は、誰なんだい?
メイヴ:……クロードが居る。
エコー:クロード・クリスウェル!名俳優であり、名作「グリーンブーツ」を書き上げた新進気鋭の若き超新星!
エコー:確かに確かに、そんな存在もいた!でも、本当に?本当にそうかい、座長殿。
メイヴ:まどろっこしいな、何が言いたいんだ先ほどからお前は。
エコー:「同じ場所から見ても、月の裏側は見えないよ、座長殿」
メイヴ:……月の、裏側、だと。
エコー:「ゴーストノート」というものを知ってるかね、座長殿。
メイヴ:ゴースト、なんだって?なんだ、それは。
エコー:楽譜というものがあるだろう?音楽には絶対的に必要な、あの楽譜さ。
エコー:打楽器も、弦楽器も、ピアノも、指揮者さえも、楽譜を読んであのオーケストラミュージックを完成させる。
エコー:音楽は、協奏曲は、オーケストラは、楽譜が命だ、楽譜こそが命だ。
エコー:だけど、「ゴーストノート」は存在する。しなければならない。
メイヴ:だから何だって言うんだ?ゴースト?ノート?
メイヴ:幽霊の譜面だとでも言いたいのか?
エコー:そうだ。
メイヴ:は?
エコー:「幽霊の譜面」、目に見えないのに、そこにある。存在する。
エコー:存在しないのに、存在する。
エコー:楽譜には書かれていない、音と音の間に存在する、非常に小さな音。
エコー:それが、「ゴーストノート」である。
メイヴ:音と、音の間に存在する、小さな音。
エコー:まさしく。「幽霊の譜面」というわけだ座長殿。
エコー:見えないのに、存在するのだ。
メイヴ:「幽霊の譜面」の話を、幽霊にされるとはな……
エコー:いい劇団だとも、国立劇団は。
メイヴ:言ってることがコロコロと変わるな……?
エコー:だが、しかし、しかしだ座長殿。それは各々が、「いい演技」をしているだけ。そうだろう?
メイヴ:……「芝居」では無い、って?
エコー:もっと、いい芝居ができるはずだ。違う?
メイヴ:……言ってくれるな?エコー。
エコー:もっといい芝居ができたなら、それはもっといい「演劇」になっていく。
エコー:そうだろう?座長殿。
メイヴ:……悔しいけど、そうだな、そうだと思うよ。
メイヴ:言い返せないほどに、その通りだ。
メイヴ:じゃあ、どうすればいい?お前はそれを、どうしろと言ってるんだ?
エコー:……『音楽』だ。
メイヴ:……『音楽』?
エコー:そう、音楽、座長殿、この劇団には、音楽が足りない。
エコー:キミ達役者が熱を振るう瞬間!人が死んでしまいそうな静寂を練り込んだ瞬間!
エコー:その瞬間に!音楽が、必要だと思わないか!
メイヴ:……それは、既にあるだろう?国立劇団にも、専門の楽団がいる。
エコー:だけど、一流じゃない。
メイヴ:一流じゃ、ない。
エコー:気持ち悪いんだよ、すごく、すごく。
エコー:キミ達役者の演技は最高だ!一体化して、物語の筋道を作り上げている!
エコー:だが!だがしかし!気持ち悪い!!!
エコー:キミ達の音楽は、音響は!ただそこに置いているだけだ。
エコー:舞台装置として、そこに音があるだけだ!
エコー:そんな音楽で、そんなもので、本当に一流と言えるのか!
メイヴ:なんで、そこまで熱くなれる?
エコー:え?
メイヴ:お前は、役者では無いのだろう?ピアニストなのだろう?それなのに、なぜ。
エコー:音楽も、一人で行うことはできるだろう?座長殿。
メイヴ:ああ。
エコー:だが、交響曲や協奏曲、オーケストラは「一人」では完成しない。
エコー:それは、それはだな、「演劇」も、同じではないだろうか。
メイヴ:……主役だけでは、完成しない。
エコー:うむ。
メイヴ:ストーリーの軸には必ず脇役がいて、そして、それを支える裏方もいる。
エコー:我々は、一人でも、楽しむ事はできる。
エコー:でも!この「表現」を、「創作」を、人生を最大級にエクセレントなものにするには。
メイヴ:……「一人では、実現できない」。
エコー:にゃはは。
メイヴ:……今、それが、国立劇団には足りないか?
エコー:足りない。
メイヴ:音楽は、演劇に寄り添っていないか。
エコー:ぜーんぜんだめだね!なってない!不協和音だ。
エコー:まくし立ててしまうけどね、ゴーストノートは目立たなくていいんだ。
メイヴ:足りないって言っているのに?目立たなくて良い?
エコー:そう。目立つ必要はない!言っただろう、座長殿。
エコー:小さい音でいい、小さい音でいいんだ、その沈黙を沈黙とするためのほんの少しの音でいい。
エコー:ゴーストノートとは、それでいい!ひけらかさない、聞こえるか聞こえないかの、ほんの小さな音だっていい!
メイヴ:それを、お前ならできるのか?
エコー:当たり前だ!できる!その為に私はここに来たと言っても過言ではない!!!
メイヴ:……へえ????
エコー:……あ。
メイヴ:ふーん、へーえ、そーう?
メイヴ:その為にここに来たのかい、「エコー・フォン・ベスティアンブラーヴェン」様?
エコー:……な、なんの事かわからないね。座長殿。
メイヴ:ピアノの守護霊?
エコー:ぴゅー、ぴゅ、ぴゅぴゅー
メイヴ:下手な口笛を吹くなよ、幽霊のくせに
エコー:にゃ、にゃっはっはっはー、幽霊は口笛が苦手なのだー
メイヴ:(ふー、と息をふきかけ、ピアノに積もっていたほこりを吹きかける)
エコー:ばか、やめろ、ほこりが飛んでくるだろ!
エコー:は、は、は、へくちっ(くしゃみ)
メイヴ:……へえー、幽霊もくしゃみするんだな?
エコー:その通り!幽霊も、ほこりには弱いのだ、にゃはは。
メイヴ:嘘つくなこの!幽霊じゃないだろお前!
エコー:あーん!痛い痛い痛い!やめてやめて!ごめんなさいー!
メイヴ:何が天才ピアニストだ!演技派じゃないか!この!
エコー:にゃ、にゃははは、これなら演技もできちゃうかなーなーんて、にゃはは
メイヴ:……まったく。
エコー:……でも、天才ピアニストっていうのは本当。
エコー:さっき言った話も、全部本音だ。
メイヴ:……なら尚更、だろ。なんでこんな事した。
エコー:……いい劇だったよ、メイヴ・ハーティ。
メイヴ:……なんの話だ?
エコー:「モーフィウス卿(きょう)」
メイヴ:……懐かしい名前だな、それは。
エコー:だけど、全然奮わなかった。
メイヴ:ぜ、全然ってことはない。
エコー:全然でしょ。メイヴ・ハーティ、誰も言わないけど。
エコー:他の小さな劇団に比べたら御の字だったかも知れないけど。
エコー:「グリーンブーツ」にも届かない、他の劇にも、届いてない。
メイヴ:……そうだな。
エコー:私が居れば、そんなことにはならない。
メイヴ:……言うね?
エコー:言うさ、メイヴ・ハーティ。私はね、好きな事を一流にしなきゃ気が済まないんだ。
メイヴ:一度吐いたつばは飲み込めないんだぞ、幽霊。
エコー:私は、エコー・フォン・ベスティアンブラーヴェン。
エコー:天才ピアニストだ、君が、キミ達が、絶対に必要な、この劇団の音楽家になる者だ!
メイヴ:……不法侵入者なのに?
エコー:うぐっ
メイヴ:なぁぁんで不法侵入なんてした!エコー!答えろ!
エコー:痛い痛い!ぐりぐりしないで、やめて、あーん!
メイヴ:こ・た・え・ろ!エコー!
エコー:えーん、だってお金なくてピアノ買えなくて……
エコー:劇団に使ってないピアノがあるんだったら使わせてほしくてぇ……
メイヴ:お前それが目的だろ!
エコー:でも!
メイヴ:なんだよ。
エコー:才能はある。
メイヴ:……まったく。
エコー:ほら、見てくれ!履歴書も持ってきた、ほら、このチラシ、ほら!
エコー:募集、してるんだろう!?劇団員も、スタッフも!
エコー:才能があるぞ、私は!絶対にこの国立劇団をもっともっと良い物にできる!
メイヴ:……ふむ。
エコー:私なら!メイヴ!キミに忌憚なく!すべての意見が言える!座長殿!
メイヴ:……。
エコー:私が絶対に必要だ、座長殿!絶対だ!後悔はさせない!
エコー:私は、私は……「私は、ここに在る」んだ!
メイヴ:……まったく、うるさいヤツだな。
エコー:私はしつこいぞ!メイヴ・ハーティ!うんと言うまで延々ピアノを弾き続けてやる!
エコー:ショパンからベートーヴェン、キラキラ星に「おお牧場は緑」までノンストップだ!
メイヴ:……次からは日中に来い。
エコー:それって。
メイヴ:入団を認めるかどうかは別だ!オーディションは絶対に行うからな。
エコー:……ピアノは、触りに来ていいってこと?
メイヴ:知り合いにな、いるんだよ、不法侵入が得意なヤツがさ。
エコー:不法侵入が得意なやつ!?
メイヴ:そいつは、美術館の館長の家に忍び込んで、納屋の壁にガムを貼り付ける達人だった。
エコー:私も達人ということだな!
メイヴ:褒めてないぞ?
エコー:あ、褒められてなかったか。
メイヴ:……教えてくれ、その、ゴーストノートの極意ってのを。
エコー:……にゃはは。もちろんだとも、我が友メイヴ!お任せあれだ!
エコー:台本というものにも空間を読むというのが必要だろう!?ゴーストノートもつまりはそういうことで……
メイヴ:わかったわかった、今いっぺんに言うな。
メイヴ:まったく、毎晩続いた幽霊騒動がまさかこんなオチだったとはな……。
メイヴ:クロードに話したら、笑われそうだ。
エコー:毎晩?
メイヴ:ああ。一週間くらい前から、ずっと忍び込んでたんだろ?
エコー:ん?
メイヴ:ん?
エコー:国立劇団に来たのは今日がはじめてだ!
メイヴ:ん?
エコー:忍び込んで、見つかったから幽霊のふりをしただけだぞ?
エコー:そしたら座長殿がまんまと怖がってくれたからなんとなく続けてただけで
メイヴ:……不法侵入は、今日がはじめて?
エコー:そうだ
メイヴ:ピアノをひいたのも
エコー:もちろん、今日がはじめてだ。これちゃんと調律しないとだめだぞ、いい調律師を紹介しようか?
メイヴ:……お
エコー:お?
メイヴ:お……
エコー:なんだ?
メイヴ:俺怖いの苦手なんだよ!!!!
エコー:安心しろ、座長殿!私がいれば安心、そうだろう?にゃはは。
0コメント