魔法少女は死んでいた。(0:0:3)
【配役】
◆ひびき:
性別不問、男性として演技 双子の妹『藍沢 れん』の兄。 妹の一周忌に、ずっと閉ざし続けていた妹の部屋を開けたところ 契約魔獣である『ちりぢん』と出会う。 妹の死をまだ受け入れる事のできないひびきと、 ひびきとれんの区別がつかない『ちりぢん』。 『恋宮はあとになれ』と呼びかける契約魔獣を前にひびきは揺れる。 人は死ぬ。簡単に。『恋宮はあと』がいた事で世界は恋宮はあとにすべてを擦り付けていた。 なら、恋宮はあとなんて居ない方がいいのでは? 彼の葛藤が始まる。
◆ちりぢん:
藍沢れん扮する『恋宮はあと』の契約魔獣だった。ちりぢんは錬金術の力を経て誕生した契約魔獣であり、彼に触れて呪文を唱えることで藍沢れんは『恋宮はあと』となっていた。 れんとひびきが同じ魂の形をしているがために、区別がつかずひびきをれんと勘違いし 変身して闇の住人と戦う事を強要する。 死という概念に希薄。ひびきの言う『れんの死』を理解できず、語る言葉がひびきの知らないれんの一面を埋める。
◆『にぐれど』:
錬金術を悪用し、使役魔獣を一般民に植え付けていく存在。現在『U市(舞台)』では、使役魔獣に取り憑かれた人々を『びいすと』と呼び、出現の際は射殺の許可が降りている。 警察の発砲により『びいすと』が死ぬ事を悲しく思っており、鋭意死なない個体を作成中。 恋宮はあとが出てこなくなった事で退屈さも感じている。
『あらすじと説明』
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声劇シナリオ企画
『ゲキアサ! -全員、メタモろーぜ-』
公式シナリオ
カテゴリ:side MAGICAL(魔法少女)/男性主人公ver
▼企画詳細は特設サイトにて
https://gekiasa.amebaownd.com/
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【あらすじ】
僕の大好きだったあの魔法少女は、キラキラと光る杖を掲げて闇の世界の住人を葬っていた。
誰もが、彼女の登場に安堵して。
誰もが、彼女にすべてを託していた。
託しすぎていた。
その日は、僕の妹である『藍沢 れん』の一周忌だった。
なんてことは無い、誰にでも有り得るような交通事故だ。信号を無視したわけでも、歩きスマホをした訳でもない。
ただ、道を歩いていただけ。それだけで、人は死ぬのだ。
ずっと、閉ざされていた妹の部屋を開ける決心がついたのは、朝のニュースでまた今日も一人闇の世界の住人に取り憑かれた市民が警察に射殺された話で持ち切りだったからだ。
妹が死んだあの日からずっと。
正義の魔法少女、『恋宮はあと』は、
この街を。
世界を。
救わなくなった。
がちゃりと戸を開く。
埃が舞うその部屋は、なんだか魔法にでも掛けられたみたいで。
その部屋の真ん中で、毛むくじゃらのそいつは言った。
「遅かったじゃないか、待ちくたびれたよ。恋宮はあと!さあ、世界を救いにいこう!」
【本編】
ひびき:(モノローグ)
ひびき:僕が愛して止まなかったあの魔法少女は、そのキラキラと光る杖を掲げて
ひびき:『びいすと』と呼ばれる闇のけものを祓っていた。
ひびき:誰しもが、彼女の登場に安堵して。
ひびき:誰しもが、彼女にすべてを託していた。
ひびき:託しすぎていた。
ひびき:夕方のリビング、何気なくつけたニュース番組には町の混乱が映る。
『にぐれど』:さあ、闇を抱えた人間よ。
『にぐれど』:誰かが救ってくれると、信じていたか?
『にぐれど』:なら見せてみろ。
『にぐれど』:その期待が壊れる瞬間を。
ひびき:(モノローグ)
ひびき:その日は、魔法少女は現れなかった。
ひびき:逃げ惑う人々、悲鳴とニュースキャスターの焦りと共に『にぐれど』の声明が響く。
ひびき:放たれた黒い塊が人々の胸に入り込む。獣の咆哮が聞こえる。
『にぐれど』:目を逸らすな。それは君たち自身だ。
『にぐれど』:恐怖も、怒りも、絶望も。どれも燃料としては優秀だ。
『にぐれど』:安心しろ、特別なことは何もしていない。
『にぐれど』:君たちは、ただ“人間らしく”あればいい。
ひびき:(モノローグ)
ひびき:その日、魔法少女は現れなかった。
ひびき:被害総数は300人を越え、警察だけでなく自衛隊も出動する程だった。
ひびき:もはや、それは災害と呼べる程で。もはや、それは悪夢だった。
『にぐれど』:……なるほど。なるほど、なるほど。
『にぐれど』:二時間、か。思ったよりは保ったな。
『にぐれど』:壊れる理由が分かれば、壊れない形も見えてくる。
ひびき:(モノローグ)
ひびき:決死の総攻撃により、『びいすと』は沈黙。
ひびき:でも、それでも、魔法少女は現れなかった。
ひびき:ぼーっと眺めるテレビ。この部屋には辛勝した警察を讃えるキャスターの声と
ひびき:誰でもない、父と母の泣き声が響く。
ひびき:魔法少女が現れなかった日、その日は、僕の妹が死んだ日でもあった。
『にぐれど』:人も、『びいすと』も、絶命の叫びは同じか。
ひびき:(タイトルコール)
ひびき:『魔法少女は、死んでいた。』
0:【場面】藍沢家
ちりぢん:遅かったじゃないか、待ちくたびれたもふ。恋宮はあと!さあ、世界を救いにいこう!
ひびき:(モノローグ)
ひびき:その日は、妹「藍沢れん」の一周忌だった。
ひびき:一年間、頑なに誰もが開けるのを拒んだ妹の部屋を開けたのは
ひびき:今朝のニュースで、妹と同じような事故で亡くなった女の子の報道がされていたからだ。
ちりぢん:はあと?どうしたもふ?早く変身して、『にぐれど』を探しにいくもふ!
ひびき:……俺は、恋宮はあとじゃないよ。
ちりぢん:えっ!?ち、ちがうもふ!?で、でも、間違いなく魂の形がはあとと同じもふ!
ひびき:……それは、きっと、妹の「れん」だ。
ちりぢん:いもうと……? そっか!君はお兄さんのひびきもふね!
ひびき:ああ。
ちりぢん:はっ!ということは、まずいもふ!ちりぢん、いろんな事を今バラしてしまったもふ!!!
ひびき:そうだね。いろんな事が、今、合致したよ。
ひびき:(モノローグ)
ひびき:魔法少女は、あれ以来現れなかった。妹の、藍沢れんが亡くなってから丁度一年。
ひびき:ぴたりと、世界を救うのをやめていた。それは、そういうことだった。
ちりぢん:れんはどこもふ?
ひびき:居ないよ、もう。
ちりぢん:どういうこともふ?おでかけもふ?
ひびき:そうじゃないよ。
ちりぢん:そうじゃないもふ?
ひびき:れんは、もう、どこにも居ないんだよ。
ちりぢん:居ない・・・?
ひびき:死んだんだ。藍沢れんは。
ちりぢん:死んだ・・・?
ひびき:恋宮はあとは、死んだんだよ。もう、居ないんだ。
ひびき:(モノローグ)
ひびき:僕の妹は、魔法少女だった。
0:【場面】『にぐれど』の隠れ家、闇の狭間
『にぐれど』:あの鉛の銃弾は結構厄介だな、『ほむんくるす』よ。
『にぐれど』:魔法でしか終わらないはずのものが、
『にぐれど』:鉛で終わる。
『にぐれど』:それもまた、錬金の理か。
『にぐれど』:削ることも無しに、黄金は輝かない。
『にぐれど』:だから私は、削る。
『にぐれど』:泣こうが、喚こうが、輝くまで。
0:【場面】藍沢家
ちりぢん:……じゃあ、もう、れんは居ないもふ?
ちりぢん:恋宮はあとには、なれないもふ?
ひびき:そうだよ、ちりぢん。
ちりぢん:そんなのおかしいもふ、だって、恋宮はあとは無敵の魔法少女で
ちりぢん:今までだって一度も『びいすと』に負けたことなんかなかったもふ!
ひびき:知ってるよ、無敵の魔法少女だった。
ちりぢん:恋宮はあとの魔法のちからがあれば、怪我だってすぐに治っちゃうもふ!
ひびき:そうだな、ちりぢん、恋宮はあとなら、そうだったんだろうな。
ちりぢん:どういう意味もふ……?
ひびき:……ちりぢん。妹は、れんは、魔法少女である前にひとりの女の子だったんだよ。
ちりぢん:でも、でも、ちりぢんは砕けてしまっても、塵になっても
ちりぢん:元に戻れるもふ。にんげんは、戻れないもふ?
ひびき:にんげんは、できないんだよ。
ちりぢん:どうして。
ひびき:……どうしても。
ちりぢん:いやもふ、れんが居ないと、恋宮はあとが居ないと困るもふ。
ひびき:だめなんだよ。
ちりぢん:いやもふ!れんに会いたいもふ!
ひびき:……だめなんだって。
ちりぢん:諦めちゃいけないもふ!魔法の力があれば、元に戻せるもふ!
ちりぢん:そうだ、ひびき、ちりぢんと一緒に変身するもふ!それで魔法のちからで……
ひびき:だめなんだって言ってるだろ!!!!
ひびき:なんでわかんないんだよ!!!!!!
ちりぢん:…………ひびき、怖いもふ
ひびき:分かれよ、理解してくれよ
ひびき:人は、死んだら戻って来ないんだよ、戻ってきちゃいけないんだよ
ひびき:れんが居なくなって、父さんも、母さんも、この家はぐちゃぐちゃだよ
ひびき:ずっとずっと暗いまんまだ、ずっと壊れたまんまだ
ひびき:でも、それでも、そんな簡単に、生き返らせるとか言うなよ!!!!
ひびき:そんなこと、あっちゃいけないんだよ!
ちりぢん:どうしてもふ……戻ってきたら、みんな、嬉しいもふ
ひびき:それで、戻ってきて、また、戦わせるのかよ
ちりぢん:あ……
ひびき:生き返らせて、また、変身させて、戦わせるのかよ
ひびき:全部、全部れんに擦り付けて、全部、れんに背負わせて
ひびき:そうして、世界は知らんぷりかよ
ちりぢん:……でも
ひびき:でもじゃねえよ!!!!
ひびき:ニュース知らねえのかよ、警察が何百人と束にならないと倒せない化け物なんだよ、『びいすと』ってやつは!
ひびき:それを、それを、俺達はたった一人の魔法少女に託して、託しすぎて
ひびき:全部全部全部、全部押しつけてたんだ。全部、れん一人に、押しつけてたんだ。
ちりぢん:……ちがうもふ
ひびき:違わないだろ
ちりぢん:ひびき、怖いもふ
ひびき:れんは、もっと、怖かった、きっと。
ちりぢん:……でも、れんにしか、『恋宮はあと』にしか、世界を救うことはできないんだもふ
ひびき:……そんな、一人に全部を託さなきゃいけない世の中なら、滅んだほうがマシだ。
ちりぢん:……なんで、そんなこと言うもふ、ひびき。
ひびき:大義名分はいいよな。それがあるだけで、俺達の心は一切無視だ。
ちりぢん:たいぎ、めいぶん……。
ひびき:飲み込めるかよ……。
ひびき:あいつが居なくなった事も、飲み込めてないのに。
ひびき:あいつが、魔法少女だったなんて
ひびき:いつも俺達を助けてくれてた、正義の味方だったなんて
ひびき:そんなの、飲み込めるわけないだろ、そんな簡単じゃないんだよ
ひびき:死んじゃうって、そんな簡単じゃない
ひびき:居なくなるって、命って、そんな簡単に
ひびき:そんな、魔法みたいに、都合よく扱っていいわけないだろ……
ちりぢん:……ごめんね、ひびき。わかってあげられなくて、ごめんもふ。
ひびき:……なあ。
ちりぢん:うん……
ひびき:なんであいつ、魔法少女なんてやってたんだよ……
ちりぢん:…………たすけてくれたもふ。
ひびき:……助けた?
ちりぢん:野良犬に、追いかけ回されてたちりぢんを、れんは助けてくれたもふ。
ひびき:……泣き虫の、あいつが?
ちりぢん:泣いてたもふ。怖くて、足も震えて、でも、助けてくれたんだもふ。
ひびき:……。
ちりぢん:傷だらけで、ぼろぼろで、でも、最後には笑って言ってたんだもふ。
ちりぢん:「私がいるから、もう大丈夫だよ」って。
ひびき:……はは、正義の味方みてえ。
ちりぢん:……ひびきが、教えたんでしょ。
ちりぢん:れん、いつも言ってたもふ。
ちりぢん:「怖いって気持ちで居ちゃだめだ」って。
ちりぢん:「誰かを助ける時、絶対正義の味方は笑顔なんだ」って。
ちりぢん:「誰かの為に、笑顔で居られる人が、世界を救うんだ」って。
0:警報が鳴る。
ちりぢん:なにもふ……?
ひびき:……『びいすと』が出たんだ。
ちりぢん:た、大変もふ、『にぐれど』もそこにいるもふ、行かないと、行かないと!!!
ひびき:行って、どうするんだよ。
ひびき:『恋宮はあと』はもう居ないんだ、行く意味なんて、ないだろ。
ちりぢん:……それでも、れんならきっと、見て見ぬ振りなんてしないもふ。
ひびき:それは、れんが魔法少女だったからだろ!!!
ちりぢん:れんは、魔法少女になったから人を助けたんじゃないもふ!
ひびき:……。
ちりぢん:人を、誰かを、助けたいって、思うれんだったから、ちりぢんは魔法の力をれんに託したんだもふ。
ちりぢん:魔法少女だったから、正義の味方だったんじゃない。
ちりぢん:れんが、人を助けられる人だったから……だから、だからちりぢんは。
ちりぢん:れんを、信じたんだもふ。
ひびき:でも、本当のあいつは弱虫で、泣き虫で、いつも俺の後ろをついてきてた、ただの女の子だったんだぞ……
ちりぢん:……れん、言ってたもふ。いつも。
ひびき:なんだよ……
ちりぢん:正義の味方みたいな、お兄ちゃんに憧れてるんだ、って……
ひびき:……
ちりぢん:それって、ひびきのことでしょ……?
ひびき:……
ちりぢん:ひびきがいたから、れんは、人を助けたかったんだもふ
ちりぢん:ひびきが、れんを助けてたから、いつも、守ってたから
ちりぢん:それって、悪いことなの?れんがしてたことは、間違ってたもふ?
ひびき:…………間違ってなんか、ないよ。
ちりぢん:…………
ちりぢん:……れん、よく言ってたもふ。
ちりぢん:『大切なのは笑顔。自分のじゃなくて、誰かが、誰かのために放つ笑顔』って。
ひびき:……。
ちりぢん:それ、れんの言葉じゃないもふ。
ちりぢん:ひびきが、れんに言った言葉だもふ。
ひびき:……テレビでさ。
ひびき:『恋宮はあと』が、その言葉を言うたびに
ひびき:俺、思ってたんだ。
ひびき:――そうじゃないかって。
ひびき:薄々、そうなんじゃないかって。
ちりぢん:……ひびき。
ちりぢん:れんは、もう、いないもふ……?
ひびき:……そうだよ、ちりぢん。
ひびき:もう、藍沢れんは。
ひびき:恋宮はあとは……居ない。
ちりぢん:わからないもふ……。
ちりぢん:どうすればいいもふ。
ちりぢん:ひびきの魂の形が、れんと同じなんだもふ。
ちりぢん:誰かの笑顔のために、何かができる人だって
ちりぢん:ずっと、そう言ってるもふ。
ひびき:でも……もう、居ないんだよ。
ひびき:れんは。
ちりぢん:そんなこと、ないもふ。
ちりぢん:だって……。
ひびき:……だって?
ちりぢん:れんは、その言葉を、大事にしてたもふ。
ちりぢん:その言葉は、ひびきが、れんにあげたもふ。
ちりぢん:れんの中には、ひびきがいたもふ。
ちりぢん:ひびきの中には……れんは、いないもふ?
ひびき:それは……。
0:れんの部屋にあったテレビが、ふと点灯する。
ひびき:(モノローグ)
ひびき:破壊される街。
ひびき:逃げ惑う人々。
ひびき:恋宮はあとを求める声が、テレビから溢れていた。
ちりぢん:『恋宮はあと』は、弱い人たちを見捨てなかったもふ。
ちりぢん:それは、ひびきが、れんに
ちりぢん:そうしろって、言ったからもふ……。
ひびき:……そうだよ。
ひびき:俺が言ったんだ。
ひびき:誰かの笑顔が、一番大事だって。
ひびき:誰かの笑顔のために、生きろって……。
ちりぢん:ひびき……。
ひびき:いるよ。
ひびき:……いる。
ひびき:俺の中に、れんは、まだいる。
ひびき:弱くて、泣き虫で、頼りなくて
ひびき:それでも、誰かのためなら
ひびき:平気な顔して、身体張って、傷だらけになれる
ひびき:そんな妹が……まだ、俺の中にいる……。
ちりぢん:……ひびき。
ちりぢん:れんは、なんで、死んじゃったもふ?
ひびき:……男の子を、助けた。
ひびき:飛び出してきた車から……突き飛ばして……
ひびき:身代わりに、なったんだ。
ちりぢん:……そっか。
ちりぢん:れんは、最期まで
ちりぢん:『恋宮はあと』だったもふね。
ひびき:…………。
ひびき:……そうだよな。
ひびき:お兄ちゃんが、こんなところで
ひびき:へこたれてる場合じゃ、ないよな。
ちりぢん:ひびき。
ひびき:……ひびきじゃない。
ちりぢん:……?
ひびき:俺は、ひびきじゃない。
ひびき:俺は――
ひびき:『恋宮はあと』だ。
0:【場面】決戦
『にぐれど』:ちりぢん、その姿で会うのは久しいな。
ちりぢん:『にぐれど』……もう、もうやめるもふ。
ちりぢん:それ以上、世界を壊してはいけないもふ!
『にぐれど』:世界を壊す?おかしな事を言う。
『にぐれど』:世界を壊しているのは、こいつらだろう?
0:逃げ惑う人々を指さす『にぐれど』
『にぐれど』:揺らぎ、罵り合い、挙げ句には擦り付け合う。
『にぐれど』:自身が世界の頂点であると思い込んだまま。
『にぐれど』:自身も、世界の一つでしか無い事を忘れ、愚かな王でいるのは奴らだ。
『にぐれど』:魔法とは、錬金術とは、過程ではない、結果の産物だ。
『にぐれど』:過程は、奴らの物で在る。だから、『びいすと』は産まれる。
『にぐれど』:さあ、ちりぢん、世界を壊しているのは、どちらだ?
ちりぢん:……にんげんは、確かに脆いもふ。必ずしも、すべてのにんげんが正しいわけではないかもしれないもふ。
ちりぢん:でも、でも……!!
『にぐれど』:そうした一部の人間が、我が錬金術を利用した。
『にぐれど』:豊かにするためのこの魔法を、この技術を、塵を金にするすべを。
『にぐれど』:ちりぢんよ、人は闇を産む。輝かしい金に、その悪意を写す。
『にぐれど』:戻る事を許可する。ちりぢん。
ちりぢん:戻らないもふ。
『にぐれど』:何故だ。
ちりぢん:人の心にも、黄金はあるんだもふ。
『にぐれど』:下らぬ。
ちりぢん:下らなくても、あるんだもふ。
ちりぢん:ちりぢんは、その黄金を信じたいもふ。
ちりぢん:人の中にある、誰かのための笑顔を、信じたいもふ。
ひびき:ちりぢん。
『にぐれど』:……なんだ、その男は。
ひびき:……どうすればいい、ちりぢん。れんは、どうやってた。
ちりぢん:ちりぢんと、手を握るもふ。ぎゅって、握るんだもふ。
ひびき:……わかった。
0:そして、手を握る二人。
ちりぢん:後は、唱えるだけもふ。
ひびき:……その後は、言わなくてもいいよ、ちりぢん。
ひびき:わかってる。正義の味方は、こうやって、戦うんだ。
ひびき:(同時に)変身!
ちりぢん:(同時に)へんしん!
0:まばゆい光が放たれる
『にぐれど』:…………一年ぶりだな。今まで何をしていた。エセ魔法使いが。
0:剣の姿になるちりぢん、それを握り、ローブを纏う姿へとなっていくひびき。
ひびき:口上は知ってる。『恋宮はあと』の一番のファンは、俺だったんだから。
ちりぢん:やっちゃえ!ひびき!
ひびき:ひびきじゃないだろ
ちりぢん:はっ、そ、そうだったもふ!言い換えるもふ!
ひびき:『誰かの笑顔を守るため、煌めくハートと震えるビート』
ひびき:『恋宮はあと、参上!!!!』
ちりぢん:やっちゃえ!!!『はあと』!!!!!
0:『にぐれど』が黒い杖を取り出し、『恋宮はあと』に直接襲いかかる
ひびき:くっ!!!
『にぐれど』:そんな訳がない、恋宮はあとは、あのエセ魔法使いは女であっただろう
『にぐれど』:しかし、どういうわけだ。魂の形が同じ?
ひびき:離れ、ろっ!!
0:剣を振るうひびき、躱される
『にぐれど』:そうか、双子。貴様、あの『恋宮はあと』ではないな。
ひびき:それがあんたになんの関係があるって?
『にぐれど』:死んだか。あの女は?
ひびき:……死んで、ない!!!
ひびき:俺が、俺が『恋宮はあと』である限り、あいつは死なない。
『にぐれど』:詭弁だな。それは、魂の本質を理解しない人間の戯れ言にすぎない。
ひびき:戯れ言でも、それが真実であることだってあるんだよ!
『にぐれど』:等価交換の法則というものを知らぬのかね、人間というものは。
『にぐれど』:等しく価値のあるものを差し出し続ける、それが錬金術であり魔法だ。
『にぐれど』:拐(かどわ)かされたな、ちりぢんに。
ひびき:俺が、選んだんだよ!!!おら!!!!
『にぐれど』:選んだと、錯覚しているだけだろう。
『にぐれど』:そうして人間というものは自身で決めた事を大義として盲信してゆく。
ひびき:盲信……そうかもな、そうかもしれない。
ひびき:でも、それでも、お前がどうこうしていい理由になんてなるか!
『にぐれど』:少女に、すべてを擦り付ける集団を。
『にぐれど』:守る意味があるのか?エセ魔法使い。
『にぐれど』:いいや、魂のスペア。
ひびき:……それでも、それでも守るんだよ。
『にぐれど』:何故?
ひびき:世界に、笑顔が溢れて欲しいから。
『にぐれど』:綺麗事だ。
ひびき:綺麗事だよ、綺麗事だ。
ひびき:でも、その綺麗事を、本気で実現させるために!
ひびき:『れん』は戦ってたんだ!
ひびき:俺が、俺が知っているれんなら、
ひびき:恋宮はあとなら!
『にぐれど』:思想と思想のぶつかりでしかないな。
『にぐれど』:どちらが正しいのか。
『にぐれど』:いいや、違うな、生き残ったほうが、正しいのだ。
ひびき:あんたの事だって、
ひびき:きっと、きっと『れん』は!!!!
『にぐれど』:……肉弾戦は分が悪いな。
0:離れる『にぐれど』
『にぐれど』:金を強くするには、削れば良かったのだ。
『にぐれど』:簡単な事だった。削り、あてがうだけ。
『にぐれど』:一時間だ。一時間だけ、これは動く。
ひびき:何を言って……
『にぐれど』:私はただ、人の闇にこれをあてがうだけだ。
ちりぢん:……『びいすと』を作るつもりもふ!
ひびき:させるか……!
『にぐれど』:遅い。もう産まれている。
0:突如現れる『びいすと』の大群
ひびき:ちっ……数が多い……
ちりぢん:『はあと』!防御魔法を展開するもふ!
ひびき:要らない。
ちりぢん:ええ!?
ひびき:知らないのか、ちりぢん。
ちりぢん:なにがもふ!?
ひびき:「攻撃は最大の防御」だって、れんにも教えてたんだけどな……!
ちりぢん:……攻撃!するもふーーーー!!!
『にぐれど』:絶望する暇も与えん。かかれ、『びいすと』
ひびき:(一息置いて)
ひびき:……れん、見てろ。
ひびき:(詠唱)砕けた希望を束ね、祈りを刃に変え、
ひびき:この世界に――“まだ終わらせない”という証を刻め。
ひびき:集え、光。
ひびき:我が名に従い、夜を裂け。
ちりぢん:最大出力の光魔法もふ!!!
『にぐれど』:放ってみろ、『恋宮はあと』
ひびき:食らえ!!!ラ・ピュセル!!!!
ひびき:(モノローグ)
ひびき:なあ、れん。安心しろよな……
ひびき:俺が、笑顔でさ、世界を救ってやるよ。
ひびき:俺はさ、お前の兄ちゃんだから。
ひびき:その日、魔法少女は現れなかった。
ひびき:現れなくても、ここにいる。
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