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臍帯とカフェイン|声劇シナリオ・ポエトリー

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【配役】

◆ガブリエラ:

ガブリエラ・ミュージニア・ハインスタイン。ミュージニア教会に住む、シスター。劇中の性別は女性ですが男性が演じる事を許可します。ただし、男性に変更をせず女性としての演技を行う事。


◆レイチェル:

レイチェル・アイベルク。若き新聞記者。独自の調査で、38名行方不明事件を追う。性別変更不可。


【詳細】

ジャンル:サスペンス

配役:性別不問1名(ただし女性としての演技を求める) 女性1名

時間:20分

合作相手:シーカー様



レイチェル:……失礼します。

レイチェル:初めまして。私はトリビュートタイムスより取材に参りました、レイチェル・アイベルクと申します。

レイチェル:この度は、取材に応じていただき、誠にありがとうございます。


ガブリエラ:トリビュートタイムス。あの偏見記事で有名な新聞社ね?


レイチェル:まさか、読んでいただけているとは思いませんでした。

レイチェル:……ですが、貴女の載る記事に嘘偽りは載せないと誓います。


ガブリエラ:しー。

ガブリエラ:駄目よ、そんなこと言ったら。


レイチェル:……申し訳ありません。

レイチェル:えっと、それでは取材にあたり、内容を録音させていただきます。

レイチェル:よろしいですか、シスター。


ガブリエラ:何故?


レイチェル:何故、というのは……?


ガブリエラ:何故、そんなことを聞くのかしら。


レイチェル:何も伝えず会話を録音されることを嫌う人もいます。

レイチェル:なので、録音をするときは許可をいただくのが筋ではないかと。


ガブリエラ:殺人鬼に人権があると思う?


レイチェル:私は……あると思います。


ガブリエラ:……そう。

ガブリエラ:38人の命を奪った私も、法律に守られ、人権を主張してもいい。

ガブリエラ:あなたは、そういう気持ちでぇ……ここに来てくれたのね……?


レイチェル:……そう、ですね。貴女に限らず、ですが。

レイチェル:それはともかくとして、録音をさせていただいてもよろしいでしょうか、シスター。


ガブリエラ:どうぞ、自由にして。


レイチェル:ありがとうございます。

レイチェル:……では、本題に入らせていただきます。

レイチェル:シスター・ガブリエラ。貴女は一般市民38人を殺害する罪を犯し、ここにいる。

レイチェル:……貴女は、それを認めた。間違いありませんか?


ガブリエラ:ええ、そうよ。裁判上では、ね。


レイチェル:裁判上では……?

レイチェル:では、証言台での言葉は、嘘もしくは『強制されたもの』だった、と?


ガブリエラ:『そんな事どうでもいいと思わない?』


レイチェル:……申し訳ありませんでした。


ガブリエラ:いいの、レイチェル。

ガブリエラ:私はね。

ガブリエラ:あなたと『お話』がしたいと思っているのよ。

ガブリエラ:私が本当に人を殺したのかどうかなんて、今この時間に比べたらどうでもいいじゃない。

ガブリエラ:さあ、聞かせて? 私の何を、取材しにきたのかしら。


レイチェル:私は……。

レイチェル:私は、貴女が何故あの38人を殺したのか……。

レイチェル:いえ、何故あの38人だったのか、を知りたいです。

レイチェル:私は、あなたを知りたいのです。シスター・ガブリエラ。


ガブリエラ:あの38人と、私を知ることは同義かしら?

ガブリエラ:それは、ただの興味本位?

ガブリエラ:大量に人を殺害した脳内を見開いてみたい、そういう類いの欲求かしら?

ガブリエラ:理由、理由、理由、理由。

ガブリエラ:理由の中にドラマティックを感じたい?

ガブリエラ:ねえ、レイチェル・アイベルク。

ガブリエラ:もっと真に迫る質問を頂戴。


レイチェル:気分を害してしまったのなら、申し訳ございません。

レイチェル:ですが、貴女を知るのなら、何故を聞くのは当然ではないかと……。


ガブリエラ:そんな事よりもっと、私の真髄に触れて欲しいわ。だって、『38人殺したことが、私そのものではないもの』

ガブリエラ:私の事、どんな人間だと思っているの? レイチェル。

ガブリエラ:どんな人間だと思って、取材に来たのかしら。


レイチェル:貴女はシスターでありながら、38人を殺害した人です。

レイチェル:正直に言ってしまえば、どんなシリアルキラーが出てくるのかと思っていました。

レイチェル:ですが、貴女は……そうは見えない。

レイチェル:理知的で、悲惨そうな暗さも見えない。

レイチェル:むしろ、自分を知って欲しがっている。

レイチェル:……まさか、ただの承認欲求ではないでしょう。


ガブリエラ:承認欲求程度で人を殺せるなら、間違いなくサイコパスの類でしょうねえ。


レイチェル:ですが、どんな人間かを問うということは、求めているものはそれではない。

レイチェル:そうですよね。


ガブリエラ:ええ、記事にするのでしょう?


レイチェル:では、貴女の根幹とは何なのでしょう?


ガブリエラ:何なのだと思う?

ガブリエラ:いえ、その前に。

ガブリエラ:根幹とは何のことなのかしらね。

ガブリエラ:私が、譲れないもの?

ガブリエラ:それとも、私の幼少期の体験?

ガブリエラ:はたまた、毎日見る悪夢の話?

ガブリエラ:根幹とは何かを聞かれて、

ガブリエラ:口から出るものに、真実があるのかしら?


レイチェル:それも、そうですね。


ガブリエラ:例えば、あなたの根幹は何?

ガブリエラ:答えられる?


レイチェル:私の、根幹?


ガブリエラ:そう、あなたの根幹。


レイチェル:私は……、誰かに認められる何かになりたかった。

レイチェル:別に何もかもができる完璧な人間じゃなくてもいい。それでも、何か一つでも、誰かに認められるものが欲しかった。


ガブリエラ:そう、認められたかったのね。

ガブリエラ:認められたくて、『認められている人達を、追って』記者になる道を選んだの?


レイチェル:……人を追えば、認められるだけの理由を見つけられるかもしれない。

レイチェル:そう思って、記者を選びました。

レイチェル:ですが、そうはなれなかった。

レイチェル:だから、私には、何も無い……。


ガブリエラ:……他の新聞記者の依頼はね、すべて断ってきたの。


レイチェル:……何故、私の取材依頼は、受けてくださったのでしょう。


ガブリエラ:あなたの書く記事、何度も拝見したわ。


レイチェル:それは、ありがとうございます。


ガブリエラ:あなたの良さは、物事の弱さを文章にする事ができるところ。


レイチェル:物事の、弱さ……?


ガブリエラ:人間は、得てして強さを誇示しようとするでしょう?

ガブリエラ:煌びやかな部分、見せたい部分。

ガブリエラ:それらを見せる為に、物事を語る、文章を書く、言葉をかける。

ガブリエラ:でも、あなたは、そうじゃない。

ガブリエラ:人の、事象の、物事の弱さを、あなたは言葉にすることができる。それこそが、あなたの持つ力だわ。

ガブリエラ:だから、あなたには『38人を殺した理由』だなんて、どの記者も私に聞きたがることで、言葉を紡いで欲しくない。

ガブリエラ:私の、ガブリエラ・ミュージニア・ハインスタインの、知りたいことを、書きたいことを、聞いてきて欲しいわ。


レイチェル:この問いについては、子供っぽい聞き方になってしまってすみません。

レイチェル:ですが、この聞き方以外に思い付きませんでした。

レイチェル:貴女は、38人を殺して、何が欲しかったのでしょうか。

レイチェル:地位や名声などとは、思っておりません。まして、承認欲求などとも。

レイチェル:……貴女は、この38人を殺して、何を得たかったのでしょうか。


ガブリエラ:『そんな事誰にもわからないわよ』


レイチェル:……わからない?


ガブリエラ:あなたは、どうしてもその38人殺したことが気になって仕方ないのね。

ガブリエラ:『人を殺して、何かを得られると思うことが烏滸がましいわ、レイチェル』


レイチェル:……では、何故。

レイチェル:何故、人を殺したのですか。


ガブリエラ:では、何故あなたは言葉を紡ぐの?


レイチェル:……私は、私のこれは、ただの仕事で……。


ガブリエラ:『ただの仕事だから、しているの?』


レイチェル:……いえ、私は、私の言葉で、誰かに認めて欲しい。……私が唯一出来たのは、これだけだったから……。


ガブリエラ:『あなたは、その言葉を紡いで何かを得たの?』

ガブリエラ:『いいえ、得たのではなく、与えたのでは無いかしら』

ガブリエラ:与えたことによる、満足や、幸福を、あなたは得るのではないかしら。


レイチェル:私が、何かを与えた……?満足や幸福を得た……?


ガブリエラ:言葉を紡ぐとは、何かを得るためではない。何かを伝えるため、そうでしょう?

ガブリエラ:与えているのよ、言葉を紡ぐということは。

ガブリエラ:情勢を、感情を、事実を、虚偽を。


レイチェル:私は、……私は、何かを与えられているのでしょうか……?


ガブリエラ:少なからず、私があなたをここに呼んだ理由になるくらいには。


レイチェル:……何故、何故私なんですか。

レイチェル:現に私は、貴女の期待に応えられてはいない。貴女の求めている解答がわからない!

レイチェル:何を、何を期待しているんですか、この私に!

レイチェル:……何も持っていない私に、何かを持っている貴女はわからない……


ガブリエラ:あなたに期待してるんじゃないの。


レイチェル:じゃあ、何故……?


ガブリエラ:あなたの『未来』に期待してるのよ。


レイチェル:私の、未来……?


ガブリエラ:今ここでの私とのやり取りが理解できなくたっていいの。

ガブリエラ:偏屈な女の戯言でもいいわ。


レイチェル:38人の未来を奪った、そんな貴女が、私の未来に期待してる……?


ガブリエラ:そうよ、だってあなたは

ガブリエラ:私のことを、唯一理解できる人なのだから


レイチェル:私が、貴女を……?

レイチェル:まさか、そんなわけ……!


ガブリエラ:いいえ、きっと理解する。

ガブリエラ:だって、あなた、どうして私を取材したかったの?

ガブリエラ:他にも殺人鬼はいるわ。

ガブリエラ:もっと、凶悪な事件も、たくさん。

ガブリエラ:38人だなんて、数、たかが数値でしかない。

ガブリエラ:じゃあ、なんで、私だったの?


レイチェル:……貴女に、惹かれたから。

レイチェル:私には無い、芯を、貴女が持っていたから。


ガブリエラ:そこを『見抜いたのでしょう?』

ガブリエラ:他の記者は、奇特な、ネタになるからという理由だけで取材の申し込みをしてきた。

ガブリエラ:でも、あなたは違う。

ガブリエラ:それ以上に、あなたの価値と信念を表す証明があるかしら?


レイチェル:貴女は私を、……何も無い空っぽな私を、私よりも知っているのですね。……本当に、神のよう。


ガブリエラ:『神なんて、居ないわ』


レイチェル:……シスターである貴女がそう、言うのですか。


ガブリエラ:そうよ。

ガブリエラ:神なんて存在しないの。

ガブリエラ:何も無い所に、私たちが、そうあれば良いとそこに創り出しただけ。

ガブリエラ:何かと似ているわね?

ガブリエラ:空っぽだと思っている何かが、私の目の前にも要るわ。

ガブリエラ:何も無いとおもっている、あなたが。


レイチェル:……私が何も無いと思っているからこそ、私には何も無い、と……?


ガブリエラ:ふふ、いいこね、レイチェル。

ガブリエラ:じゃあ、どうすれば、そこは空じゃなくなるのかしら?


レイチェル:私が……、私を信じること……?

レイチェル:私が、何かになれると、信じること……?


ガブリエラ:ふふ、本当に、いいこ。

ガブリエラ:こんな窓、無ければ良かったわね。

ガブリエラ:さあ、レイチェル。

ガブリエラ:今のあなたならきけるはずだわ。

ガブリエラ:事件のことではない。

ガブリエラ:私自身に、取材したいこと。

ガブリエラ:いいえ、聞きたいことは、なに?


レイチェル:…………私は、貴女のように、なれますか……?


ガブリエラ:なれるわ、当然よ。

ガブリエラ:私になれる。私がしたことも、すべてあなたにも出来る。


レイチェル:は、ははっ、はははっ……!

レイチェル:……私は、貴女に、成ります。

レイチェル:……本日は、ありがとうございました。

レイチェル:これにて貴女の、……いえ、私達の取材を終了いたします。


ガブリエラ:待ちなさい、レイチェル・アイベルク。

ガブリエラ:最後に、私からもひとつ聞かせて?


レイチェル:……何でしょうか?


ガブリエラ:『まず、誰から、愛してあげる?』

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