ネームレス・クラブ(0:0:2)
【配役】
◆アルマ:
元国立劇団副座長。知らない人は居ないムービースター。アルマ・アンデルセン。作中男性だが、性別不問とする。
◆パティオ:
夢を叶える覚悟をし始めた脚本家。パティオ・アンダーソン。劇中の性別は女性ですが性別不問とする。
すべての創作者と、すべての表現者へとか言ってたら
なんでも許されるとか思ってない?本当、そういうところだよね。
いいから練習しろよ、ほら。
アルマ:今日は、ワークショップの予約は入ってなかったと思うんだけど……えっと、名前、なんだっけ。
パティオ:国立劇団の、パティオ・アンダーソンです。
アルマ:あー!はいはい、そうだ、パティオくん。
アルマ:どうしたんだい?アポイントも無しに
アルマ:普通はスターに会いに来るならたとえ同業者でもアポイント入れるんだけど、まだ教えて貰ってないのかな?
パティオ:……アポイントを取ったら、会って頂けないと思ったので、すいません。
アルマ:デバガメ?パパラッチと同じことしてるじゃない、うわあ、良くないなあそういうの。
パティオ:すいません。
アルマ:それで、一体なんの用なの?
パティオ:『ワークショップ』を、受けさせてください。
アルマ:……え?なに?ワークショップを受けさせて欲しいって言った?
パティオ:はい。言いました。
アルマ:……この間やったよね?確か、国立劇団、3人組で。忘れちゃった?
パティオ:……覚えてます。
アルマ:ならなんで?もうあれで終わったよね、あとは自分の劇団で練習したらいいんじゃない?
パティオ:あれは、本当にワークショップでしたか?
アルマ:え、なに?バカにしてる?
パティオ:……あれは、本当に、ワークショップでしたか?
アルマ:……何しに来たの?本当に。
パティオ:『ワークショップの申し込み』です。
アルマ:君もしかして、馬鹿なのかな。
パティオ:馬鹿では、無いつもりです。
アルマ:だとしたら愚かすぎるよね。厚顔無恥も甚だしいよ。
パティオ:あれは、本当にワークショップでしたか?
アルマ:……めんどくさ。
パティオ:答えてください、アルマさん、あれは本当に、ワークショップでしたか。
アルマ:……ワークショップだよ、紛れもなく、君たちに伝えた『ダメ出し』は全くもって事実だっただろ?
パティオ:でも、私たちはまだ何も掴んでないです。
アルマ:充分答えはあげただろ?ダメ出しって何のためにするか知ってる?わかってない?
パティオ:わかってます、でも
アルマ:でも?
パティオ:あの5時間と少しの時間、あの時間のほとんどは、嫌がらせだったのでは無いでしょうか。
アルマ:君やっぱりバカだろ?
パティオ:なんと、なんと思われても構いません。
アルマ:やめてくれる?そういう真っ直ぐな瞳もちだしてくるの。
アルマ:まるで自分が主人公みたいな気分でいるでしょ、それ。
パティオ:今の国立劇団が、嫌いなんですよね。
アルマ:嫌いだね、とても。
パティオ:だから、ああやって私たちに嫌がらせをしながら実力を測った、違いますか。
アルマ:ねえ、それ本当に君の言葉?違うだろ?あれか、あの前科者の子。あの子の入れ知恵じゃないの?
パティオ:……ドルチェは前科者じゃありません。
アルマ:あーもう取り繕うのも面倒だな。
アルマ:本当に何しに来たの、君、この間の事の復讐?
アルマ:あのピアニストの子を殴ったから?
パティオ:『ワークショップの申し込み』に来た、だけです。
アルマ:そんなの信じるアホがどこにいるの!
アルマ:タチ悪いな君!
パティオ:…………。
アルマ:……ちょっと待って、本当に、ワークショップの申し込みに来たの?
パティオ:……はい。
アルマ:ちょ、ちょっと、まって、ぷ、ぷくくく
アルマ:ほ、本気!?本当にあの経験の後に!?
アルマ:ワークショップを!?受けに来たの!?
アルマ:個人で!?
パティオ:……はい。
アルマ:ば、バカなんじゃないの!?ほんとに。
アルマ:え、空気読めないの?どう考えても、ねえ
アルマ:空気読めてないよ、それ、ねえ、まって、おっかしい
パティオ:あなたに負けない為に、あなたの持つものを吸収したいと思う事は、間違ってますか?
アルマ:才能無しが何言ってんの、舐めないでくれる?
パティオ:舐めてません。
アルマ:舐めてるだろ?君なんかが私の演技の何を吸収するって?
アルマ:演技の「え」の字もわかってない才能無しがさ。
パティオ:あなたが、どう考えても私たちの敵なのは私でも理解できました。
パティオ:ドルチェも言ってました、あなたの顔を
パティオ:自身の居たマフィアでも見かけたことがあるって。
アルマ:ふうん、知ってたんだ、あいつ。
パティオ:だからきっと、明確にあなたは、私たちを敵視してる、それはわかってます。
アルマ:わかってて、なんでまた来たの?
パティオ:「あなたが、天才である事に変わりはないから」
アルマ:……。
パティオ:……正直今でも腸が煮えくり返りそうです。
パティオ:私も、あなたの事、多分、嫌いです。
アルマ:厚顔無恥な上に随分失礼だね?
アルマ:君、自分の立場わかってる?
アルマ:こっちはスターなんだけど。
パティオ:私だって、国立劇団です。
アルマ:……へえ。随分と自信があるんだね?国立劇団って看板に。
パティオ:当然です。
アルマ:昔に比べて役者の質も落ちてる、脚本だってオリジナルだかなんだか知らないけど興行収入全然伸びない。
アルマ:伝統や、先人の守ったものをかなぐり捨てて
アルマ:何が新生だって?何が新しい演劇だって?
アルマ:そんなの、国立劇団でやるなよ。
アルマ:小さい地方の劇団でやれよ。
アルマ:君たちがしてるのは敷居を下げてんじゃない、格を落としてんだよ、わかる?
パティオ:どうして、そう思うんですか。
アルマ:は?
パティオ:「まだ、変化しはじめて、登頂すらしてない私たちが、格を落としてるかどうかなんて、なんでわかるんですか」
アルマ:わかるだろ、どう見ても、誰が見ても、明らかだ。
パティオ:「あなたは、この道に居ないのに?」
アルマ:……は?
パティオ:……あなたは、国立劇団に、居ないじゃないですか。
アルマ:おい、才能無し、その口を慎めよ。
パティオ:あなたは、国立劇団を辞めた、部外者でしょ?
アルマ:帰れよ、才能無し。お前と話すことは何も無い。そもそも才能の無いやつが、人に意見するなよ。
パティオ:嫌です。
アルマ:通報するけど。
パティオ:構いません、それでも、嫌です。
アルマ:しつこいし、めんどくさいな!
アルマ:なんで嫌ってる劇団の奴に演技を教えないとならないんだ!ふざけるのも大概にしろよ。
パティオ:「あのワークショップは、ワークショップだったんですよね、アルマさん」
アルマ:そうだって言ってるよね?何回言わせるの?だからもう終わりだっての。
パティオ:(終わりだっての、から割り込む)
パティオ:だとしたら、アルマさん、あなたにはワークショップの講師としての才能は、無いんですね。
アルマ:………………は?今なんて言った?
パティオ:あなたは、演技の天才で、何回も賞を取るすごい役者さん。間違いなく、名俳優で、天賦の才がある。
パティオ:でも、それを人に教える才能は無かった、そういうことになる。
アルマ:……勝負に出たなあ!?才能無し、それで挑発してるつもり!?
アルマ:あー、やだやだ!これだから才能無いやつは困るんだよ。
パティオ:「これだから、才能無い講師は困るんですよ」
アルマ:君さ。
パティオ:演技塾『ネームレス・クラブ』、あの天才アルマ・アンデルセンの演技指導のワークショップから
パティオ:私みたいな才能無しが産まれたら、それこそこの演技塾の名前に傷がつくんじゃないですか?
アルマ:脅すの?そんなネタで。
パティオ:はい、脅しです、これは。
アルマ:脅せると思ってるの?
パティオ:思ってます。
アルマ:バカなんじゃないの?
パティオ:バカでは無いつもりです。
アルマ:愚かすぎるでしょ、どう考えても。
パティオ:形振り(なりふり)なんて構ってられないんですよ。
アルマ:それ、私に関係ある?
パティオ:ありません。
アルマ:バカだな。
パティオ:あなたが敵だとしても、私に足りないものをあなたが持ってる以上私はあなたの事を尊敬してやまないんですよ!!!
アルマ:……。
パティオ:あなたが、どんなに悪人でも
パティオ:あなたが、私たちをよく思って居なかったとしても
パティオ:私はあなたの、アルマ・アンデルセンの演技にだって負けたくない
パティオ:私のすべてを知らないのに、勝手に値踏みして、価値が無いなんて、才能無しだなんて決めつけるのは早すぎる
パティオ:そうでしょ!?
パティオ:あなたが、あのワークショップが、ワークショップだったって胸を張って言えるなら!
パティオ:あなたは、指導者としても天才で居ようとすべきだ!
アルマ:……生意気なこと言ってくれるじゃないか。
パティオ:……すいません。
アルマ:気に食わないね、そういう君も、そんな君を許している国立劇団も。
パティオ:……。
アルマ:安っぽいんだよ、言ってること全部。
アルマ:ただの理想論、ただのオママゴトだ。
アルマ:君が言ってるのは、「仲良く皆でゴールしましょうね」って手を取りあってゴールテープをきるような話だ。
アルマ:そんな生き方を、認めろって?
アルマ:そんな演技を、思想を、すばらしいでちゅね、よくできまちたね、って褒め讃えろって?
アルマ:はん!舐めてる、他人を、観客を、演劇の墓場に積み上がった死体達を舐めてやがる!
パティオ:演劇の、墓場……。
アルマ:感じないのか?わからないのか?
アルマ:今、まさしく、この今の瞬間に!
アルマ:何人もの俳優が夢を捨ててる。
アルマ:何人もの俳優が、舞台から降りてる。
アルマ:「それはなぜか!?」
アルマ:「才能が無いからだ!」
アルマ:「才能とはなんだ?」
アルマ:「その舞台に上がり続ける為の資格だ」
アルマ:舐めてる、舐めてる舐めてる舐めてる!!
アルマ:何人もの俳優が、役者が、その舞台袖で血を流してるから国立劇団には意味がある!
アルマ:そのカーテンコールの幕を開く時、ビロードの幕は血の色をしてるだろ!違うか!?ああ!?
パティオ:……わかりますよ、すごく。
アルマ:わかってない!お前はわかってないよ!
パティオ:私だって、一度、舞台を降りたんだ!
アルマ:……そらそうだろうね、才能、ないもん。
パティオ:「じゃあ、シルバ・ブライトマンはなんであなたを副座長にしたの!」
アルマ:……は?
パティオ:あなたが、あなたが尊敬してやまないと言った
パティオ:「国立劇団初代座長、シルバ・ブライトマン」は!
パティオ:自分より才能の劣るあなたを、なんで副座長にしたの!?
アルマ:……やるね、君。
パティオ:……バカじゃ、無い、つもりです。
アルマ:……はー、大声出したら疲れちゃった。
アルマ:なんか飲む?
パティオ:……え。
アルマ:飲み物くらい出すよ、いくらムカつく相手でも。
パティオ:……ありがとう、ございます。
アルマ:何飲むのか好みも知りたくないから、勝手に用意するけどいいよね。
パティオ:……構いません。
アルマ:(準備しながら)
アルマ:才能無しで、こんなに食らいつきて来たの君がはじめてだよ。
パティオ:……すいません。
アルマ:今更謝る?意味わかんないわ。
パティオ:冷静になると、トンデモナイ事をしてるなと言う自覚はある、ので。
アルマ:ここに来ること、あんたのとこのクソ座長には言ってきたわけ?
パティオ:いえ。言って、ないです。
アルマ:なんで?あ、そういう秘密特訓が美徳だとでも思ってる?かー、浅はかだねえ。
パティオ:……悪いですか。
アルマ:悪だろ、そんなの。隠れて特訓をするなんて「当たり前」の事だろ。
パティオ:……ほんと、口が悪いですね。
アルマ:私は口が悪いんじゃないの、当たり前の事を当たり前に言ってるだけ。
パティオ:……。
アルマ:ほら、出来たよ、勝手に持って行って。
パティオ:……これは?
アルマ:は?「チャイ」だけど。
パティオ:……。
アルマ:何?アレルギーとかある?やめてよね、ここでぶっ倒れるとか。
パティオ:……無いです。
アルマ:じゃあぼーっとしてないで、はやく持っていってくれる?
パティオ:……いただきます。
アルマ:(飲みながら)
アルマ:……まぁ、全然君の思想には共感しないし
アルマ:君たち、今の国立劇団を認めるつもりも毛頭ないよ。
パティオ:(飲みながら)
パティオ:わかってます。
アルマ:絆(ほだ)されるつもりも無いし、
アルマ:君みたいな才能無しと思想のぶつけ合いも
アルマ:話し合いもするつもりは無い。
パティオ:構いません。私も、分かってもらえるとは思ってないですから。
アルマ:弁えてほしいよね、そういう所。
パティオ:……。
アルマ:1週間。
パティオ:え。
アルマ:1週間だけ、演技のダメ出ししてあげるよ。
パティオ:いいんですか。
アルマ:人の事散々煽っておいて、いいんですかとかやっぱ舐めてるよね。
パティオ:……すいません。
アルマ:君、名前なんて言うんだっけ。
パティオ:……パティオです。
アルマ:フルネームで言えよ。
パティオ:……パティオ・アンダーソンです!
アルマ:声でかいよ、加減わかんないの?
パティオ:すいません。
アルマ:君が何かを掴もうが、掴めなかろうが
アルマ:私がダメ出ししてやるのは1週間だけだ。
アルマ:その1週間は、ワークショップ講師として見てあげるよ。
パティオ:……ありがとうございます!
アルマ:でも、バカだよ、君。普通はこんな事しない。
パティオ:……なんでも、食らいついて行きたいんです。
アルマ:その心意気だけは買ってあげるよ、パティオ・アンダーソン。
アルマ:才能無しがどこまでやれるのか、見せてごらんよ。
アルマ:まあ、クソミソをどう味付けてもクソミソだけど。
パティオ:……ご指導、よろしくお願いします!!!
アルマ:だから煩い(うるさい)っての。
アルマ:やっぱバカだろ、あんた。
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