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臍帯とカフェイン|声劇シナリオ・ポエトリー

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【朗読】よも夜申しひらき

ああ、聞いてくださいますか。どうかどうか、この私の話を聞いてくださいますか。

よもやよもやの、申し開きにございます。

こんなこと、あってはならないはずなのです。

どうしてって、わかりますでしょう?

身を割く思いとはこのことです。

約束を反故にされ、酷い思いをしたのであります。

これは私が悪いのでしょうか、いいえ、そんな風に仰らないでください。

私が悪いのかどうか、まだ私は何も話してはおりません。

どうか、どうか最後までお聞きください。

ええ、どうか、そうです、どこから話すべきか悩むところではございますが。

あの方は私を酷く叱ったのです。

私は、どうにもここしばらく食事をとることもできず

この深い深い道をさ迷っていたのであります。

ええ、すぐにあの方が迎えにきてくだされば、そもそも、こんな話にはならなかったはずです。

そこも加味して、お決めいただきたい。

私は、とても空腹だったのであります。

長い時間歩いた先にひとつの家がございました。

そこでは質素ながらもとてもおいしそうに

三合ほどの米が炊かれていて、そばにはキウリの漬物まで並んでいたのです。

悪いとは思いました、そんな風に頭ごなしに叱らないでくださいまし。

それではあなたもあの方とおなじ、最後まで話をお聞きください。

空腹で腹と背がくっついてしまいそうなほど飢えたなら、目の前の漬物を我慢できましょうか?

それを右手でそっと摘むと、もう我慢などできません。

かぽり、かぽりとひと齧りするごとに白米のかおりが、ふふんと鼻をくすぐるのです。

そうとあれば、食べぬほうが礼儀を欠くというものでございましょう?

ええ、そうです、無我夢中でございました。

大きい声を出さないでください、まだ話は終わりません。

そうして腹を満たしたことをあの方は酷く怒るのでございます。

それだけではございません、あの方の悪辣非道は。

いえ、悪辣とまでいかずとも、あの方は私に酷く恥をかかせたのでございます。

私とあの方の出会いは、普通とは違いました。

目を見た瞬間に私たちは瞳から心の臓まで稲妻が走ったのでございます。

そうではございません、これは、あの方が私に恥をかかせた話なのであります。

ふつう、殿方のほうから声をおかけになりますでしょう?

あなたの瞳がとても眩しいだとか、

月が綺麗だとか、

地獄にさえ落ちても構わないだとか。

ええ、どんな文句でも私は構いません。

どんな言葉でも、殿方から声をおかけになられるでしょう?

でも、いくら待とうがあの方はもじもじと

地面を蹴るばかり、どんなに待とうとあのお方が私に声をかけることはございません。

気持ちはこんなにも通じておりますのに、こんなにもです。

なので私から声をかける他ありませんでしょう?

ですから、声をかけたあと

私はこの出会いをやり直すべきですと

あのお方にお告げしたのです。

そうしてあの方は私に恥をかかせるような方なのです。

一番酷いのは先程の事でございます。

つい先程でございます、ええ、本当につい先程。

ようやく迎えに来たかと思えば、あのお方は私が食事をしたことを酷く叱るのです。

ええ、それは先程お話させていただきましたが

それではないのです。もっと、もっとあのお方は酷い酷いことをなされていかれました。

それをどうにかして頂きたく、こうしてあなた様に上告しにきたのであります。

あのお方は、決して振り向いてはならないというお約束を守ってくださいませんでした。

この帰り道、一度でも振り返ってはならぬという約束を反故にしたのです。

あとほんの少し、あとほんの少しであの輝く太陽のもとに戻ることのできるすんでのところでした。

私があの方の名前を呼ぶと、あの方は何食わぬ顔でゆっくりと私のほうを振り返ったのであります。

一度も、一度足りとも、振り返ってはならないと

何度も何度もお伝えしましたのに、あの方は振り向いたのでございます。

今思えば出会いの頃からあの方はどうにも初心(うぶ)が過ぎると思っておりました。

その初心があの方のよきところでもあれば、頼りのないことでもあるとも思います。

それでも、振り返らないというたったひとつの約束でさえもあの方は破られたのです。

私が空腹を耐えることができなかったことを責め、おんおんと女の腐ったように泣くのです。

ですから私、言ってやりました。

あなたがそうして約束を守ってくださらなかったから、私はあなたの国の命を日に千人奪いますと。

そうしたら、あの方、なんて言ったと思いますか?

どうか、どうか、お聞きください、あの方は

私に向かってこんな風なことを言ったのです。

では私は日に千五百を産むと。

ああ、なんて酷い話でしょう、私はあの方を恨み辛み、一生をかけて思い続けなければならないのでしょうか。

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