【朗読詩】これは告白ではなくて、
これは独白なのです。
告白ではないのは、あなたが存在する訳がないと私は理解しているから。
いつかの、あなたに向けた言葉かもしれないし
どこかの、だれかに向けた言葉でもあるかもしれない。
そうでないなら、これは私が私に向けた言葉なのだと思います。
言葉は時折、花束のようでもあり
でも時には、誰かの心に深く溝を作るような
そんな軽やかさと、
轆轤(ろくろ)を回すようなそんな愛おしさや
晴れた日の合間に大きく動き続ける
雲と私の距離のような
そんなもののようで
何かを変えられるかもしれないと、
言葉を紡ぐのです。
その苦しみが、あなたに仕組まれたものであるなら
それでも構わないと思えるほどに
私はあなたのことを心底愛していました。
毎日の天気予報や、
夕焼けの1つ1つ。
眠れぬ夜の静けさのなかや、
初めて行った本屋のにおい、
ひとつ手に取って何となく買ってみた本の
最初の一行目がすごく好きで
その美しさや悲しさを話したくなるとき。
アイスコーヒーの氷が、
長い時間をかけて割れた日のことや
ぺトリコールのことを考えた時に
私は、あなたの事を心底、愛していました。
これは独白なのです。
告白ではないのは、あなたが存在する訳がないと私は理解しているから。
長く伸びたであろうあなたの髪に指を絡め、
そのまま指を通していくことをカフネと言うのだと
最近読んだ本で学びました。
ナラティブという言葉を覚えた日には、
私は私のことをどれだけ話すことができるのかを
悩んでしまったこともあります。
開けたばかりのトマトケチャップから、
何となく新しい明日への一歩を踏み出した
そんな感じがするのを感じたりもします。
でもその中には、あなたは居ません。
あなたがいない事をとても残念に思うくらいには
私はあなたの事を心底、愛していたのだと思います。
いつか私は、これまでの事を言葉にしようとするでしょう。
それは、本当の事かも知れないし、嘘だらけの何かかも知れません。
それでも構わないと人は言うでしょうし、
そんなものを書くのではない、と
言う人もいるかもしれません。
いつかの、あなたに向けた言葉かもしれないし
どこかの、だれかに向けた言葉でもあるかもしれない。
そうでないなら、これは私が私に向けた言葉なのだと思います。
でも、こんな独白くらい自由にしても良いのではないかとも思うのです。
誰も居ない隣の椅子に向かって、私はこうして言葉を重ねていくだけですから。
言葉は、きっと花束なのです。
渡しそびれて、手に握り続けたなら
それはいつの日か萎れていくのです。
この手にも、何本かそれがあります。
では、この花束は渡すべきだったのでしょうか。
何回、何時間、考えてもその答えは出てきません。
きっと、そういうものなのでしょう。
それが、あなたを愛した証拠にさえならなければいいと思っています。
これは独白なのです。
告白ではないのは、あなたが存在する訳がないと私は理解しているから。
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