朗読詩 群青
燻らせた煙草は、慣れない煙を吐き
高架下の小煩い(こうるさい)飲兵衛横丁を
通り過ぎながら、解けていく様は
どうにもかくにも君の泣き顔を思い出すには
十分過ぎて、痛みを覚えるこの肺は
その為の罰なのだと、電車は無常にも走り抜ける。
最後の夏は、花火を一度も見ることなく終わりを迎え
道端の蝉の死骸の数を数えながら
そうか明日は自分の番か、なんて考えながら
ペダルを漕ぐスピードは落ちていった。
来年の夏も、おそらく花火を一度もすることなく終わり
集めきった蝉の抜け殻を砕いては
そうだ君と僕の晩夏、どこに置いたのか
わからなくなったサンダル、探す日々、
ペダルを漕ぐスピードは落ちていった。
火種の落ちた煙草は、次の火種を探すのに
足りぬくらいの温度で地面に倒れ
それを救うべきか踏みにじるべきか
迷いながら、この夏の暑さを思い出しては
高架下、ベンチ、解けていく、どこまでも、僕。
暗がりで吸った煙草は、ほんの少しだけ
僕の周りを群青に光らせて
吐き出した煙には、なんの罪もなかった
なんの罪もなかった、ただ僕は恋をした。
高架下、ベンチ、解けていく、どこまでも、僕。
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