朗読詩「どうせ塞がる傷ならば」
どうせ塞がる傷ならば、
この庭に大きな柿の木でも植えてみれば良かった。
ディナーには野うさぎを出して
キッチンの小窓から見える夕陽を
まるで絵画みたいだなんて話してみたりして
昨晩の愚痴を肴にしたり
たまには街に降りて花を買ってみたりしてもいいと思ってもよかった。
どうせ塞がる傷ならば、
開いたページの角を折ったりしなければよかった。
いつか古本屋に売ってしまうような
誰でも書けるような恋愛のポエムも
使い古された恐竜の図鑑も
何度もあくびを我慢した空想小説も
読んだ印をつけることなく
ひっそりと売りに出せれば良かった
折り目だらけのページを見て
ライターを探すようなものだった。
どうせ塞がる傷ならば、
痛がったふりもしなければよかった。
でも僕はまだ何も言ってない。
言ってやらない。
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