【朗読詩】Magic hour
急に呼び出してごめんな。
お前はいつだってすぐに来てくれるよな。
そういえば、高三の春に連絡したときも
深夜だっていうのにお前はすぐ来てくれたよな。
あの時から俺らは、誰かの声にびくびくしてて
放課後の夕陽が射し込むあの教室だけが
俺らの安息地だったみたいな
そんなことで笑い合えるくらい
もう昔のことになっちまったよな。
あの教室ってなんの部屋だったんだっけ、
うそうそ、お前が覚えてるか
試してみただけだよ。
あの美術準備室で、好きだとも言えずに終わった恋の事
お前が覚えてるか試してみただけだって。
眩しいよな。
あんななんでもない日のことを
未だに眩しく思ってるよな。
言い忘れてたけど、あの時大事にしまってた、
白紙のキャンバスの行方は
実は俺しか知らないことになってるんだ。
いつだって、そうやって、知らないふりや
忘れたふりをしてきた。
全部お前のためだって言いたくもないのにさ。
死にたいって思い続けた日々は、
どうやって今みたいな優しい嘘に代わっていったんだろうな。
あの日の夕焼けのこと、忘れたわけじゃないのに。
苦しくて、苦しくて、吐き出せなかった死にたいが
いつの間にか誰かに何かを伝える言い訳になってる。
五月蝿いだろ?わかってる、そんな風に、今もまだ。
いつだって、そうやって、知らないふりや
忘れたふりをしてきた。
俺たちに足りなかったのは、正々堂々と死ぬための感動的な物語ってだけで。
もしそれが、もしそれがあの時の俺たちにもしも存在していたなら。
きっとその1ページ、1ページを、めくる度に。
なんでもないあの日の教室の隅で、今でもお前はびしょ濡れで泣いてるのかもな。
誰かに、言い訳をしながら、あの日死ねなかったことを後悔して。いや、そんなことも無いか。
だって、
五月蝿いだろ?わかってる、そんな風に、今もまだ。
別に呼んだわけじゃなくても、
お前はすぐに来てくれるよな。
いつだってすぐに来てくれるよな。
抱きしめた数だけ優しくなれるんじゃなくて、
抱きしめられなかった事を許す日々の中に優しさがあるのに。
何もかも、忘れちまったよみたいな顔をして
生きることの辛さを語るのは、どうやらお門違いってものらしいことを、ほら、また忘れちまったよみたいな顔してる。
俺らに足りなかったのは、
正々堂々と死ぬための大袈裟な物語で。
誰かの悲しみの1つにだってなれてたら、きっと今頃こんな風にお前のこと呼んだりしてなかったのかもな。
どうなった?あれから、なんて、聞くのは野暮なのかもな。
五月蝿いだろ?わかってる、それでも、今もまだ、あの日の夕焼けのことを、忘れられない自分が。
あまりにも、あまりにもさ。
いつだって、そうやって、知らないふりや
忘れたふりをしてきた。
全部お前のためだって言いたくもないのにさ。
死にたいって思い続けた日々は、
どうやって今みたいな優しい嘘に代わっていったんだろうな。
あの日の夕焼けのこと、忘れたわけじゃないのに。
苦しくて、苦しくて、吐き出せなかった死にたいが
いつの間にか誰かに何かを伝える言い訳になってる。
俺たちに足りなかったのは、正々堂々と死ぬための感動的な物語ってだけで。
もしそれが、もしそれがあの時の俺たちにもしも存在していたなら。
今ごろ、俺はきっとお前の呼び方も、忘れられてたんだろうな。
五月蝿いだろ?わかってる。
今もまだ、わかってる。
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